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2008年02月07日
市民が主役の自治リノベーション―電子自治体2.0
■ 書籍情報
【市民が主役の自治リノベーション―電子自治体2.0】(#1113)
須藤 修, デジタルコミュニティズ推進協議会
価格: ¥2000 (税込)
ぎょうせい(2007/07)
本書は、「沈滞しつつある電子自治体がやがて水面上にその姿を現し、自治体の改革を推進していく原動力になるという確信を持って執筆されたもの」です。
第1章「これから求められる情報化社会と電子自治体構築の現状」では、「時間的、空間的な制約を克服することが情報化社会を実現する要件の一つである」としながらも、「付加価値を生み出すことができない地域社会は、ネットワークにぶら下がった消費地に過ぎなくなり、人口流出が続き淘汰されていく」 と述べています。
そして、業務別のオンライン化状況について、「「住民に最も近い行政サービス分野からオンライン化が進んでいることが改めてわかる」と述べています。
また、前佐賀市長の木下敏之氏の著書を引用し、「行政改革や電子自治体を進めていくことは、力強いトップダウンと縦割りの弊害を取り除いていかないと進まない」と指摘しています。
さらに、電子自治体の構築は、「単なる電子化の推進だけでは実現できない」ものであり、「業務フローを見直し、ムダを徹底して排除することと人員の配置を見直し、新規に必要となる業務に対して大胆に人員の再配置を行なっていくことが重要である」と述べています。
第2章「電子自治体の実態と課題」では、佐賀市がメインフレームからのダウンサイジングに成功した要因として、
(1)メインフレームからサーバへのダウンサイジングによりハードのコストダウンを図る。
(2)ソースコード公開により地元業者参入可能な競争環境を構築することで、運用保守のコストダウンと地元業者の育成を図る。
の「2つの明確な目標を掲げて市長をはじめとする強力なリーダシップの元にプロジェクトが遂行されたこと」を挙げています。
また、IT投資によって税収や収入を増やすという考え方として、
(1)地元企業育成による税収増加:地元企業による保守・運用(佐賀市)
(2)システムの貸与による収入確保:自ら開発したシステムを他自治体に貸与し、使用料金を徴収する(横須賀市の電子入札システム)
(3)システムの販売による収入確保:自ら開発したシステムの販売(千葉県の人事給与等申請システム)
(4)経済政策の一環としてのシステム開発:(札幌市コールセンター)
などの手法を紹介しています。
さらに、電子自治体の3つの目的として、
(1)行政経営にITを活かす
(2)市民との新たな関係構築にITを活かす
(3)地域経営にITを活かす
の3点について、「目的が達成されたとはいいがたい状況である」と検証しています。
著者は、「行政経営の仕組み(NPM)がインプリメントされていなければ、手段としてのITを戦略的に使う(BPR)ことができない」と指摘し、「困難に立ち向かうだけの動機づけとなる目標値もなければ、目標達成によって得られるものも示されていなければ誰も行動しない。この目標値や報酬を明確に示し、職員の動機づけを行なうものが行政経営に他ならない」と述べています。
第3章「全国各地で始まった自治体CIO体制―中小自治体の現状と課題―」では、「一部を除く多数の自治体、特に中小自治体においては、その組織体制、関係者の意識及び情報化への対応能力(専門知識・能力のレベル)が必要な水準に達していない場合が多く、ITの有効活用による業務改革や効率化・合理化は思うようには進んでいないのが実情である」と指摘し、「このような状況から脱却するためには、『組織体制の整備と関係者の意識改革』及び『情報化対応能力(専門知識・能力)の確保』が緊急の課題となる」と述べています。
そして、電子自治体推進の鍵は、「『自治体CIO体制の確立』とそれを有効に機能させるための『自治体CIO補佐の活用』」であると述べています。
第4章「自治体の電子化に求められる基盤の整備―市民と行政の連携―」では、「いかに自治体の電子化を進めるのか」という課題の解決法の一つとして、「行政と市民の『接点』の整備、とりわけ行政の広聴制度の充実」について論じ、「一見電子化とは遠いところにあるような広聴制度にこそ、電子化推進の鍵が隠されている」と述べています。
そして、広聴制度を、想定する参加者の方に注目して、
(1)参加者流動型:インターネット広聴、パブリック・コメント、コールセンター、懇談会・座談会・ミーティング・出前講座・トーク、施設広聴、窓口相談、調査広聴、提案箱、提言・提案はがき、模擬議会
(2)参加者固定型:モニター制度、市民会議
に分けて解説しています。
著者は、「まず市民と以下に行政が付き合うのか。自治体の電子化が進んでも、この課題は常に解決を迫られるだろうし、その課題を解決しない限り、電子は進んでいかない」と指摘しています。
第5章「市民が主役の電子政府・電子自治体とは」では、北川正恭早稲田大学大学院教授(前三重県知事)と須藤修東京大学大学院教授が、「市民が主役となるような電子政府・電子自治体のあり方」をテーマに行なった対談を収録しています。
そして、「今後の電子政府で一番重要となるのは、国民や企業の満足度を高めること」であるとしたうえで、「今後問題になるのは、トップリーダーがどこで立ち位置を変えるのかということ」であるとして、「行政は、官が『してあげる』というサプライサイドの発想からデマンドサイド、つまり生活者の起点に立って、自由に申請が行えるというユビキタスな社会を実現するという発想へと思い切って発想方法を切り替える必要がある」と語っています。
また、「権力者が作ってきたあらゆるバリアを取り払わないと、ユビキタスな社会は機能しない」が、「権力者が作った秩序を壊すものだから、権力者もなかなか変えたがらない」と指摘しています。
第6章「電子自治体推進のための考え方と手法」では、「中小自治体にとって特に重要でかつ緊急度の高い」問題点として、
(1)「基幹系システム更改の際にベンダーから提示された新機種の見積り金額」への対応の問題
(2)「庁内情報システムの全体像の不明確化」に関わる問題
(3)「EA、レガシー連携、共同アウトソーシングなどの潮流への対応」に関わる問題
の3点を挙げています。
「おわりに」では、行政の改革を、「市民の視点を取り入れて『(行政が)これまで当たり前でやってきたおかしいこと』を指摘することから始めなければならない」と述べています。
本書は、電子自治体が技術的には「夢」から「現実」に迫ってきたことで見えてきた現実の重さを考えさせてくれる一冊です。
■ 個人的な視点から
一時のバラ色の電子自治体ブームと言うか、「ITゼネコン」が盛り上がったe-JAPANの時代が去った後、さて自治体は実際のところどう変わったのか、これからどう変わっていくのかというところをフォローしてくれるのは大変ありがたいことではないかと思います。実際、ブームに浮かれていたところ、きちんと歩を進めたところ、何もしなかったところで相当の差が出た数年間だったのではないかでしょうか。
■ どんな人にオススメ?
・「電子自治体」という言葉にリアリティを感じない人。
■ 関連しそうな本
榎並 利博 『電子自治体―パブリック・ガバナンスのIT革命』 2005年04月21日
木下 敏之 『日本を二流IT国家にしないための十四ヵ条―佐賀市「電子自治体」改革一年の取り組みから』 2006年10月18日
金子 郁容, 藤沢市市民電子会議室運営委員会 『eデモクラシーへの挑戦―藤沢市市民電子会議室の歩み』 2005年10月21日
横江 公美 『Eポリティックス』 2005年02月11日
岩崎 正洋(編著) 『eデモクラシー』 2005年05月02日
小林 隆 (著), 自治体議会政策学会 (監修) 『インターネットで自治体改革―市民にやさしい情報政策』
■ 百夜百マンガ
版画で漫画って路線はさすがに追随が難しいみたいで、なかなか版画で描いている人という話は聞きません。
投稿者 tozaki : 2008年02月07日 22:00
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