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2008年02月04日
金融NPO―新しいお金の流れをつくる
■ 書籍情報
【金融NPO―新しいお金の流れをつくる】(#1110)
藤井 良広
価格: ¥819 (税込)
岩波書店(2007/07)
本書は、「自分達の力で、自分達の意思で、必要なお金を集め、必要なところ回そうではないかという市民の活動」である「金融NPO」を紹介しているものです。著者は、金融NPOの活動の広がりの背景として、「お金を、単に利を生む手段として扱うのではなく、環境や地域社会などを良くするためにこそ使いたいという『意志あるお金』の持ち主が増えていること」を上げています。
第1章「日本の金融をどう見るか」では、江戸時代に隆盛をきわめ、第二次大戦後のある時期まで庶民金融として根づいていた『講』を取り上げ、「講の参加者が自分たちで小学の掛け金を出し合い、定期的に行なうクジ引きに当たった人が、その一定額を借りる権利を得る仕組み」であると解説しています。
そして、金融NPOのタイプとして、
(1)NPOバンク:まとまった資金を元手に、地域活性化のための事業や人に必要資金を貸し出す。
(2)市民投資ファンド(コミュニティ・ファンド):自然エネルギー発電事業や地域の企業を市民資金で実現する。
の2つのタイプを挙げ、「経済的リターンと社会的リターンの両方を評価する視点がないと、既存の金融だけでは、資金は流れ込んでこない」と述べています。
著者は、金融NPOづくりの背後にある、「お金を人任せにせず、自分の意思で必要なところに活かそう、という意識の広がり」について、「市民が金融を自らの手に取り戻す行動」につながっていると述べています。
第2章「広がるNPOバンク」では、設立が増えているNPOバンクのタイプについて、銀行と違いは「貸し出しの元手となる資金の集め方」にあるとして、「NPOバンクは正式の銀行免許を持たないため、預金を集めることができない」ため、「自分達のヘソクリや、市民・住民に呼びかけて出資金を集める」と述べています。
そして、大半のNPOバンクが、
・市民から「意志ある資金」を集める受け皿機関
・貸金業登録をして融資をする機関
の2段階構造をとっている理由について、貸金業登録の規定で、役員の履歴の提出が必要であったため、「出資者の中には現役の公務員や金融関係者も複数いたため、『貸金業に加わった』ことがわかると、職場での説明がわずらわしいだけでなく、立場上難しくなる懸念」が生じたためであることを解説しています。
そして、NPOバンクの代表格である「未来バンク」について、理事長の田中優氏が、「自分が郵便貯金に預けたお金が、環境破壊的な事業に使われることを、たとえ貯金者が知らない場合でも、その貯金者が財投計画に『白紙委任』を与えたのと同じ」であると考え、当時、「環境・社会性への意識を明確に据えた金融機関は皆無だった」ため、「自分で受け皿となる金融機関を作ればいい」と考え、当時の西独の「エコバンク」をモデルに未来バンクを立ち上げた経緯を紹介しています。
女性・市民信用組合設立準備会(WCC)については、地域活動に携わる女性が、「女性というだけで、銀行が一切融資してくれない」という不審を抱き、「銀行が私たちに資金を貸してくれないなら、私たちで銀行を作るしかない」と考え、信用組合の設立を目指したことが紹介されています。
東京コミュニティパワーバンク(東京CPB)については、特徴として、グラミン銀行の互助システムをモデルにした、「一人一人では信用力に少し難がある場合でも、4人以上の賛同者を集めて『団』を結成すると、相互保証の格好で融資を受けることができる」仕組みである「ともだち融資団」を紹介しています。
北海道NPOバンクについては、「地域社会の活性化を重視する地方自治体などと協働の形で活動を展開」するNPOバンクの代表格として、道庁が「市民と行政との共同による自立的な地域社会づくり」を打ち出し、「市民活動の育成策の一つとして『NPOバンクへの支援』を盛り込んだ」ことが解説されています。
第3章「多重債務者を救え」では、2006年に提案された貸金業法改正案が、「NPOバンクの便法を封じ、バンク活動そのものを停止に追い込みかねない衝撃となった」理由として、金融庁には、NPOバンクをいじめるつもりはなく、「単に、NPOバンクの存在を知らなかったためのようだ」と述べ、結局、「NPOバンクに営利性がないことを条件として、監査義務づけの例外規定を法律に盛り込んだ」ことを解説しています。
そして、多重債務者向けの救済資金の提供にはるか以前から、取り組み、独自のファイナンスを築き上げてきた「日本共助組合」を取り上げ、そのルーツは、「戦後に米国やカナダからやってきたカトリック教会の若い宣教師や神父たち」であったと述べています。
また、多重債務者問題のもう一つの先駆者として、「岩手方式」として注目されている「岩手県消費者信用生活協同組合」を取り上げ、生協を登録認可するのは都道府県となっているため、「都道府県によって信用生協の扱いが異なることが、目下の一つの課題でもある」と述べています。
第4章「市民ファンドで企業支援」では、1998年に、旧三菱信託銀行の行員だった片岡勝氏が立ち上げた「市民バンク」を取り上げ、同バンクの活動が、「貸出よりも市民出資によるファンド設立による企業支援、あるいは企業活動そのものの実践に軸足をシフトさせている」と述べ、「社会のさまざまな問題を解決すること自体を事業とするコミュニティ・ビジネスの立ち上げこそが必要だ」との片岡氏の言葉を紹介しています。そして、片岡氏の活動と、片岡イズムに共鳴した経営者、研究者、団塊世代、若者たちといった実践者とサポーター集団が、「ここ数年の間に、いくつもの企業支援ファンドを生み出してきた」と述べています。
第5章「寄付で促す資金の還流」では、収益性を度外視する環境・社会活動系のNGO(非政府組織)や国際ボランティア、あるいは設立間もないNPOにとって、一番欲しいものは、返済不要な「寄付」による「自由に使える資金」であると述べ、日米間の個人寄付に関する税制優遇措置の差を解説しています。
また、「寄付の力を自治体の政策と結び付けようという『寄付による投票条例』を提唱し、各地の自治体に条例導入を働きかけてきた」、非営利型株式会社の「寄付市場協会」を取り上げ、「経済的リターンを求める投資家は当然、NPCには投資しないだろう。しかし、社会投資家は、NPCの活動が社会に貢献しているという社会的リターンをみて判断する」という渡辺清氏の言葉を紹介しています。
第6章「米英の金融NPOの担い手たち」では、地域社会の活性化を支える非営利金融の法制度の代表格である米国の地域再投資法(CRA)について、「同法は営利金融と非営利金融の相互還流を促す役割を果たしている」と述べ、「地域社会で非営利金融を提供する主体」として、地域開発金融機関(CDFI)を紹介しています。
そして、法的枠組みとしてのCRAと、実施機関としてのCDFIが、クリントン政権時代に「制度的につながった」として、「94年のリーグル地域開発・規制改善法によって公的なCDFIファンドを創設した」ことを挙げています。
また、王手銀行などが、「CRAで義務づけられた地域の低所得者向け住宅ローンなどを、地域に根づいているCDFIらと競って提供するのはコスト的に厳しい」ため、「大手銀行による地域活動の範疇に、地域内のCDFIへの投融資も認めることにした」と述べ、このことが、「CDFI側にも財務的な健全性・安定性を高める意欲を働かせる効果も期待できる」と述べています。
著者は、「米国の金融NPOの現場を歩いてみた」として、1985年設立の「ボストン・コミュニティ・キャピタル(BCC)」、シカゴの「イリノイ・ファシリティーズ・ファンド(IFF)」、ニューヨークの「ノンプロフィット・ファイナンス・ファンド(NFF)」等を紹介しています。そして、NFFの創設者であるクララ・ミラー氏が強調している「ミッションは金融的に持続可能でなければならない」という点、金融と社会性という「ダブル・ボトムライン」の思想を紹介しています。
第7章「『銀行』になった金融NPO」では、「各国の金融NPOの担い手たちが憧れる"三大メッカ"」として、
・トリオドス銀行(オランダ):金融、社会性、倫理性の「三つの道」
・GLS銀行(ドイツ):シュタイナー学校の建設運動が起源
・ショアバンク(米国):"ショアバンク・マフィア"と呼ばれる地元シカゴの銀行員であり、社会事業活動家たちによって設立。
の3つの銀行を紹介しています。
「おわりに」では、「社会を豊かにするために、一人ひとりは生きがいを得るためにお金を活かすポイント」として、
(1)営利金融の分野で偏在の度合いを強める資金を、社会・環境リターンを生み出す非営利金融に流し込む新たなシステムをどう設計するか。
(2)金融機関の企業としての社会的責任(CSR)。
(3)人の奮起。
の3つのポイントを挙げています。
本書は、金融とは決して金儲けの道具ではなくパブリックな役割を担うものであることを教えてくれる一冊です。
■ 個人的な視点から
昨年秋に、本書で紹介されているNFFのクララ・ミラー氏が来日され、立教大学でパネルディスカッションがありました。日本だとどうしても細々としたイメージが強いNPOバンクですが、法律を背景にした財務的な裏づけを持つNFFの規模と社会的なインパクトは、なかなか日本では想像がつきにくいものです。
■ どんな人にオススメ?
・NPOのためのお金が回るしくみが必要だと思う人。
■ 関連しそうな本
駒崎弘樹 『「社会を変える」を仕事にする 社会起業家という生き方』 2007年11月22日
デービッド・ボーンスタイン (著), 井上英之 (監修), 有賀 裕子 (翻訳) 『世界を変える人たち―社会起業家たちの勇気とアイデアの力』 2007年08月28日
渡邊 奈々 『チェンジメーカー 社会起業家が世の中を変える』 2005年08月11日
町田 洋次 『社会起業家―「よい社会」をつくる人たち』 2005年02月16日
斎藤 槙 『社会起業家―社会責任ビジネスの新しい潮流』 2005年06月01日
谷本 寛治, 田尾 雅夫 (編著) 『NPOと事業』 2005年01月28日
■ 百夜百マンガ
赤と青のキャンディーがちょっと欲しくなったりしました。子どもたちをドキドキさせた作品としても記憶されています。
投稿者 tozaki : 2008年02月04日 22:00
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