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2008年02月22日
NPOバンクを活用して起業家になろう!―組織作りから資金調達まで
■ 書籍情報
【NPOバンクを活用して起業家になろう!―組織作りから資金調達まで】(#1128)
北海道NPOバンク
価格: ¥1995 (税込)
昭和堂(2007/06)
本書は、「コミュニティ事業として活動するための組織作りからマネジメント及び資金調達の手引きを示して事業体としてのNPO支援をはかり、市民が担う公共事業の推進を意図」し、「グローバルな視野にたって、ローカルな世界から地球社会を組み立て直す役割を担うものとしてNPOバンクの取組を位置づけている」もので、「NPOバンクは新しい社会のあり方を目指す夢のある目標を掲げている活動であることを知っていただきたいというのが執筆者一同の願いである」としています。
第1章「地域金融の潮流」では、「この金融閉塞期に、NPOバンク八重子ファンド、ミニ公募債などの形で、資金の出し手である消費者・個人投資家の意思に直接訴える仕組みが相次いで登場した」理由として、「これまで金融機関まかせで、なおざりにされてきた足元出の資金の流れを根っこから活性化しようとする動きかもしれない」と述べています。そして、「自らの資金の行方を、投融資先の経済的リターンだけでなく、自分にとって、コミュニティにとって、必要とされる社会的リターンの評価で判断できるかどうかが問われている」と述べています。
また、コミュニティ・ファイナンスのあり方、非営利ファイナンスの在り方については、欧米の知恵と実績に、脱帽せざるを得ないとして、1977年に米国で、既存金融機関にコミュニティ向け融資を促す「地域再投資法(CRA)」が制定され、クリントン大統領時代に全面的に改正・強化され、「既存金融機関のコミュニティ向け融資の誘導を強める一方で、コミュニティに地域資金を循環させるNPOバンク(米ではローン・ファンドと呼ばれる)などをCDFIs(コミュニティ開発金融機関)と位置づけ」、その支援のため、「財務省が無償資金を供与するCDFIファンドも立ち上げた」ことを解説しています。
さらに、NPOバンクのルーツの1つとして、「わが国で中世以来、庶民の間で相互扶助の資金融通手段として活用されてきた頼母子講・無尽講」を挙げ、「NPOバンクが各地で芽生える現状を考えると、かつての庶民金融の精神は潜在的に残っているようだ」と述べています。
そして、日本のNPOバンクが、おおきくみると、
・連携型:地域の行政や既存の金融機関と何らかの形で提携や協力関係を築いていくアプローチをとっている。
・独立型:行政とも既存金融機関とも距離を置いて、自らの立ち上げの精神に立脚して、独自路線を展開している。
とに分けることができるとしています。
著者は、「地域再生の受け皿としてのNPOバンクを育て、地域の資金を地域内で活かすためにも、NPOバンクの自立的な動きを支える非営利ファイナンスのための新たな枠組み作りが、わが国でも不可欠と思われる」と述べています。
第2章「コミュニティ・ファイナンスの潮流」では、市民金融のさまざまなしくみとして、
(1)コミュニティファンド:地域が抱えるさまざまな課題解決に取り組む民間事業に対して、地域の生活者が少額出資をして作るファンド(資金)
(2)東京ソーシャルベンチャーズ:ビジネスにおけるベンチャーキャピタルのアプローチを採用
(3)市民風車等:大規模な事業の資金調達を事業単位で「プロジェクトファイナンス」を活用
(4)私募債:実態は市民事業団体が関係者が借金をすることに他ならない
等の例を紹介しています。
そして、事業活動が充実しているNPOの多くが、個人から借り入れており、「NPOの多くにとって、金融機関はまだ敷居の高い存在である」と述べています。
また、自治体からの公的資金の活用についての課題・論点として、
(1)自治体財政の厳しい現状認識
(2)協働への試行錯誤の取組
(3)トータルなサポートシステムの構築
の3点を挙げ、「資源の有効利用という視点で、行政機関、民間支援組織、金融機関などによるトータルでサポートするシステムが今後必要になってくる」と述べています。
第3章「NPOと資金」では、「NPOのファイナンス戦略は、組み合わせることができる多様な要素が存在し、その制度設計を変えることで、多くのスキームを創造することが可能」であるとして、「より望ましいファイナンスの新しい戦略を創造していく経営努力がNPOに求められる」と述べています。
また、NPO法人を「新たな公共・公益」の有力な担い手と認識するならば、
・資金繰り:全国レベルの政府系金融機関の融資制度の確立
・経営:民設民営の支援センターや都道府県レベルのNPO支援センターが経営相談をできる体制ができるよう支援する方策
・会計:公認会計士・税理士のNPO支援ネットワークと連携した「税務会計相談」支援
が必要であると述べています。
第4章「北海道NPOバンクの現在」では、「北海道NPOバンクの成り立ちのユニークさを説明するとき、触れずにはいられない3つの『発明』」として、
(1)ひとつの金融のしくみに市民(市民個々人やNPO、企業など)と役所(北海道や札幌市)が一緒に協働で出資や寄付をなしてできた制度である。
(2)NPOを支援する制度そのものがNPO法人である。
(3)公認会計士、税理士、あるいは大学の研究者や企業の経営者、銀行関係者など、さまざまな専門家の知見が、ひとつの金融のしくみをボランティア・ベースで下支えしている。
の3点を挙げています。
そして、2006年12月現在で北海道NPOバンクが持つ貸出原資として、
・自治体が出した出資金や寄附金:合計2000万円
・市民社会全体から集めた資金:2550万円
の4550万円となっており、「この原資を元手に、累計で1億3000万円を超える貸出実績を誇っている」と述べています。
また、北海道NPOバンクが、
・NPO法人北海道NPOバンク
・NPOバンク事業組合
のふたつの団体を組織併用することで可能になった仕組みであると述べ、この「組織併用」が、「札幌の市民社会の発明」というべきものであり、1999年にスタートした北海道グリーンファンドにその原型があると解説しています。
第5章「北海道NPOバンクの審査と融資事例」では、北海道NPOバンクの特徴として、
(1)NPO法によるNPOへの相互の資金提供の機構である。
(2)地方自治体との緊密な連携を図っている。
の2点を挙げ、この設立時の特徴が、「北海道NPOバンクの審査体制にも大きく影響している」として、
・NPOによるNPOへの相互的な資金提供という特徴は、融資に伴なう「情報の非対称性」を取り除く役割を果たしている。
・融資金額の上限を200万円として、貸付金の小口化を図ることによって貸倒リスクを低くしている。
の2点を挙げ、審査体制の特徴としては、
(1)理事会とは独立して審査委員会を組織している。
(2)審査にあたって融資判定表を用いている。
の2点を挙げています。
また、北海道NPOバンクが融資申込み団体の審査にあたって評価している点として、
・返済能力
・それを支える組織力
の2点を挙げています。
「おわりに◎ローカルガバナンスとNPOバンク」では、「市民活動が、その活動発展の延長線上にNPO法人を旗揚げするだけにとどまらず、NPO法人であることで可能な事業やあるいはNPOでなくては実施できない事業を考え推進することが肝心である。そうすることによって、NPO法人の活動が実践的になり、多様化し、NPOの役割を考えて活動するリーダーが増えていくことになる」と述べています。
本書は、新しい社会を金融のしくみで作り上げていくダイナミックな動きを紹介している一冊です。
■ 個人的な視点から
本書でNPOバンクのルーツの1つとして紹介されている無尽講ですが、現在、第二地銀となった相互銀行や消費者金融の多くが「無尽」をルーツとしているというのは知りませんでした。
なお、山梨県では、共同体や職場をベースにした無尽が盛んで地縁血縁選挙の基盤となっているということは、『選挙の民俗誌』を読むまで知りませんでした。
■ どんな人にオススメ?
・金融と言えば銀行や消費者金融を想像する人。
■ 関連しそうな本
ムハマド ユヌス, アラン ジョリ (著), 猪熊 弘子 (翻訳) 『ムハマド・ユヌス自伝―貧困なき世界をめざす銀行家』 2007年05月10日
シルヴァン・ダルニル, マチュー・ルルー (著), 永田 千奈 (翻訳) 『未来を変える80人 僕らが出会った社会起業家』 2007年03月28日
渡邊 奈々 『チェンジメーカー 社会起業家が世の中を変える』 2005年08月11日
C.K.プラハラード 『ネクスト・マーケット 「貧困層」を「顧客」に変える次世代ビジネス戦略』 2006年07月28日
町田 洋次 『社会起業家―「よい社会」をつくる人たち』 2005年02月16日
杉本 仁 『選挙の民俗誌―日本的政治風土の基層』 2007年11月07日
■ 百夜百マンガ
別人が描くドラえもんと言えば、世代的には方倉陽二先生の描く微妙に風船っぽいドラえもんが思い起こされるのですが、今の子どもたちは本人以外のドラえもんで育ったのかもしれません。
ちなみに作者とは高校時代に同じ駅を使っていたようなので、どこかですれ違っているかもしれないです。松田屋書店とかで。
投稿者 tozaki : 2008年02月22日 19:00
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