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2008年02月01日
ハイブリッド・コミュニティ―情報と社会と関係をケータイする時代に
■ 書籍情報
【ハイブリッド・コミュニティ―情報と社会と関係をケータイする時代に】(#1107)
遊橋 裕泰, 河井 孝仁
価格: ¥1890 (税込)
日本経済評論社(2007/03)
本書は、「モバイル化する社会を概観」し、「ケーターやインターネットなどの情報通信メディアが普及するにつけて、一見意味を失ったかのように見える『場』という環境が、コミュニティという人と人との関係性を持ち込むことによって再び輝きを増す」ことを論じているものです。
第1章「ハイブリッド・コミュニティ思考」では、「パソコン+インターネットでは実現できなかったほどに、ケータイは生活の現実感をネットワーク上の情報空間と結び付けている」としたうえで、「現実空間が情報空間と結びついたことで、改めて『人が社会システムの一部なのか、人のための社会システムなのか』ということを問い直す必要が出てきているのではないだろうか」と述べています。
そして、ケータイというメディアの特徴として、
(1)ネットワークとしてのケータイ:「いつでも、どこでも、だれでも」という理想型をもっとも体現している
(2)ケータイが扱う情報の質:今という時間や現実の出来事と非常に密着したコミュニケーション環境を提供
の2点を挙げています。
また、「社会全体でモバイル化が進行したことで、人の『存在の不確実性』が高まっている」と述べ、「場所や時間を越えた種々の文脈の接合点としての個人の認識をどのように考えていくのか」がコミュニティデザインのポイントであると述べています。
さらに、「情報空間と現実空間を横断する射程で社会システムデザインすることで、人と人との関係を元気に逞しくする仕掛けとしてのインターネットやケータイといった情報通信メディアが機能する」と述べ、「デザインによって両者を還流させるダイナミズムを作り出せないか」という思考が、本書で提案する「ハイブリッド・コミュニティ」の思考であると述べています。
第2章「情報社会が生み出す諸問題」では、「ICTがもたらした豊かさの光の裏側には、同時に多くの影も潜んでいる」として、
・携帯電話により派生した様々な問題
・インターネット上の誹謗中傷
・情報セキュリティに関わる問題
等を挙げ、これらの影をもたらす要因として、「ICTにより個人の能力が高まり、その社会的影響力が増幅されていることが深く関係している」と述べています。
そして、ICTが社会にもたらす問題として、
(1)住環境における問題
(2)地域環境における問題
(3)職場環境における問題
(4)ネット環境における問題
の4点を挙げています。
著者は、本書が「ICTにより新たに生じた、もしくは増幅された、社会におけるさまざまな局面での問題に対して、ICTを通じた新しい社会のデザインが持つ可能性を探ることを目指している」と述べています。
第3章「住環境のリ・デザイン」では、これまで住宅が、「家族を容れるハコ」(上野千鶴子)として、「家族構成、家族関係を空間的に表現し規定していく制度的な機能」を持っていたが、「家族のみんながケータイという「どこでもドア」を手中にした現在では、そのような空間の強制力を飛び越え、住宅の間取りが家族関係を反映するという前提が揺らぎつつある」として、「モバイル時代における住環境のあり方について、住居、家族がどのような変化の兆しを見せ、どの方向に向かう可能性があるか」について論じています。
そして、
(1)家族の細分化
(2)多様化する家族
(3)ライフスタイルの多様化
(4)家族のライフステージによる変化
といった要因が、「家族のハコである住居に影響を与え、単にnLDKの是非を議論するに留まらず、新しい住居のカタチが多様に個別に模索されることになり、それらの集積が現在の都市、社会を構成している」と述べています。
また、2006年3月のモバイル社会シンポジウムで発表した、「モバイル時代の『家族』と『住居』をテーマに一年間かけて行った分析と調査の結果」に基づいた戸建と集合住宅のイメージを紹介しています。
第4章「地域閑居のリ・デザイン」では、「情報技術の支援を得た的確なデザインを適用することにより、そこで生きるに足る地域を再設計し、創発的に構築しうる可能性について考察する」としています。
著者は、コミュニティを、「ある共通する関心を基礎にした、信頼に基づく、人々による自発的なつながり」と定義したうえで、地域が、「コミュニティの重層として構築され、発見される」と述べています。
そして、地域を「コミュニティから構築されるアーキテクチャ」、個々のコミュニティを「モジュール」として捉え、モジュールとしてのコミュニティが持つ役割として、
(1)アイデンティティの拠り所
(2)地域ガバナンスの基礎
(3)地域情報の苗床
の3点を挙げています。
また、「情報技術を適宜に装荷することにより、地域環境の再設計を行ない、安心・安全、かつ元気な地域を創発的に構築する試み」として、2004年に開設された「eコミュニティしまだ」を紹介し、「島田市に関わる少なくとも6~8名が、地域についての関心を増し、実際に地域活動を積極的に行うようになった」ことを挙げ、「地域において防災地図づくりに自主的に取り組むなどプロデューサー的な存在となって課題解決に取り組んでいる市民が生まれている」と述べ、「こうした動きは、多彩かつ継続的なブログの利用により蓄積される信頼、顔の見える関係の構築、個人ではなくグループでの利用に伴なう信頼の醸成とグループ運営からのプロデュース力の育ち、共有ポータルを契機とする地域経営の気づきなどを背景としている」と解説しています。
さらに、2005年に開始された地域ブログサービス「はまぞう」を取り上げ、聞き取り調査によって、「地域限定のブログサービスが、顔の見えるオフラインの関係も基礎にしつつ、地域に人のネットワークを作り上げていることが窺われる」と述べています。
著者は、「eコミュニティしまだ」及び「はまぞう」から導き出せる情報デザインとして、
(1)地域のもつアーキテクチャーに留意した、モジュールとしてのコミュニティを意識した設計の重要性
(2)モジュールとしてのコミュニティから生成される情報が可視化される場とともに、それらの情報が共有され一覧化される場の存在という重層的な可視化に基づく設計
(3)その重層性を活用し情報技術により自動化された、また運営者の視座に基づく、さらにもっとも重要なオフラインの場での「編集」の存在
の3点を挙げ、「この3つの要素を持つ情報デザインにより、地域の再設計及びそれを担う『人』の育ちが、地域特性などの個別的事情を超えて可能になる」と述べています。
そして、「地域における適切な情報デザインは、コミュニティを多様に編集し創発的な地域経営の核となる『人』を発見する。また、地域のなかで資源を見出し、的確には位置し、成果を上げる『人』の育ちをも可能とする」と述べたうえで、「地域は、オフラインとオンラインを横断して構築される。そこに生まれるのは情報環境の関与を受け、地理的範囲と関心を多様に交雑させたコミュニティ、ハイブリッド・コミュニティである」と述べています。
第5章「職場環境のリ・デザイン」では、スタンフォード大学のヘイム・メンデルソンらが提唱した、「eビジネスに対応する企業の能力」である「組織IQ」というフレームワークを取り上げ、組織IQには、
(1)外部情報の認識
(2)意思決定アーキテクチャー
(3)内部の円滑な知識流通
(4)組織のフォーカス
(5)eビジネス時代の事業ネットワーク
のディメンジョンがあると述べています。
そして、今取り組むべき課題は、「工場のようなパブリック空間と、パーソナルコンピュータのプライベートな空間との間に、コラボレーションの空間を創出することができるか」であると述べています。
第6章「ネット環境のデザイン」では、ネット・コミュニティを、「インターネット上に成立するコミュニティ」であり、「掲示板やチャットといったインターネット上のシステムを媒介として多数のユーザーを吸引し、コミュニケーションをつなぐ」と解説し、現実世界におけるコミュニティが、
(1)構成要員相互の交流がある
(2)共通の目標・関心などの絆が存在する
(3)一定の地理的範域を伴なう
という特性を持つのに対し、「ネットコミュニティでは、地理的範域のの制約が取り除かれ、交流や共通の目標・関心などが重要になる」と述べています。
また、パソコン通信の世界における初期のネット・コミュニティと、インターネット上のネット・コミュニティを比較し、「限定的な空間で少なからず顔が見えていたはずのコミュニティには、見ず知らずの人々が多数入り込み始め」、
・発言を行なう少数のメンバー(Radical Access Member: RAM)
・彼らの発言を見るだけの多数のメンバー(Read Only Member: ROM)
が構成されるようになると述べ、「RAMをRAMとして引き留めるもっとも基本的な仕組み」として、「互酬性の論理、あるいは交換の論理」を挙げています。
第7章「現実世界と情報社会を越えて」では、「情報通信技術の進展によって世の中の多くの社会システムは、ヒエラルキー型の情報処理(1×N)から、自律分散的な情報処理(N×N)を行なう形態に変化していく)と述べ、「階層構造を採らないN×Nのコミュニティでは、『命令』するコミュニケーションとその管理の仕組みが、個人の自由や創造性、価値観と衝突するので、『調整』するコミュニケーションと構成メンバーを育成する仕組みを志向する必要がある」と解説しています。
著者は、「本格的な情報社会の到来がもたらすもの、そえrは人間の活動の場としての新たなフロンティアの出現である」として、コミュニティのリーダーになろうとする者は、「現実社会とは異なる特徴を持った情報社会の特長を活かして、2つの空間を自在に組み合わせたハイブリッド・コミュニティを構想することができる」と述べたうえで、「どのようなハイブリッド・コミュニティを思い描くのかという構想力と、現実社会と情報社会の両方にまたがる社会システムのデザインが重要となる」と述べています。
本書は、ハイブリッド・コミュニティという「時代を作り出すための戦略思考」を、事例とともに解説した一冊です。
■ 個人的な視点から
モバイルと住居のデザインといわれてもすぐには結びつきにくいものですが、各自が「どこでもドア」を持っていると想像してみると結構深刻な問題ではないかと思います。そうなった場合、玄関はどこになるのでしょうか。
■ どんな人にオススメ?
・21世紀のコミュニティの形が想像つかない人。
■ 関連しそうな本
小林 哲生, 天野 成昭, 正高 信男 (著) 『モバイル社会の現状と行方―利用実態にもとづく光と影』 2007年08月06日
小檜山 賢二 『ケータイ進化論』
ジェラード・デランティ (著), 山之内 靖, 伊藤 茂 (翻訳) 『コミュニティ グローバル化と社会理論の変容』 2007年07月24日
パトリシア ウォレス (著), 川浦 康至, 貝塚 泉 (翻訳) 『インターネットの心理学』 2005年10月15日
T. コポマー (著), 川浦 康至, 山田 隆, 溝渕 佐知, 森 祐治 (翻訳) 『ケータイは世の中を変える―携帯電話先進国フィンランドのモバイル文化』 2007年09月02日
水越 伸 『コミュナルなケータイ―モバイル・メディア社会を編みかえる』 2007年11月29日
■ 百夜百マンガ
座頭市のようなキャラクターがどこまで受けるかは未知数だったようですが、大ヒットとは言わないまでも一定のファンを得ることはできたようです。
投稿者 tozaki : 2008年02月01日 08:00
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