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2008年02月05日

市町村盛衰記―データが語る「日本の姿」

■ 書籍情報

市町村盛衰記―データが語る「日本の姿」   【市町村盛衰記―データが語る「日本の姿」】(#1111)

  西中 真二郎
  価格: ¥1,575 (税込)
  出版文化社(2004/04)

 本書は、大正9年から平成12年までの国勢調査を元に、市町村の人口の推移や合併の推移を追いながら「この国の姿」を見直しているものです。
 第1章「2000年調査」では、世帯当たり人口について、県別に見ると、「多いほうは、概して都市化が進んでいない農村部を多く持つ県」であるのに対し、少ないほうは、「大都市部とそうでない県が混在している」理由として、「若者の流出により過疎化が進み高齢化が進んでいる地域では、家庭の崩壊が起こり、世帯あたり人数の減少が進んでいる」のではないかと述べています。
 また、製品出荷額について、人口1人当たり40000万円を超え、全国第3位に相当する区として、「工業地帯というイメージとはほど遠い」東京都千代田区を挙げ、「そのほとんどすべてが『印刷出版業』」であると述べ、千代田区には、大新聞の本社や出版社が多く立地していることを解説しています。
 第2章「制度と歴史」では、明治22年4月1日にわが国に初めて市が誕生したときに市制を布いた市として、弘前、盛岡、仙台、秋田、山形、米沢、水戸、東京、横浜、新潟、富山、高岡、金沢、福井、静岡、津、京都、大阪、堺、神戸、姫路、和歌山、松江、広島、下関、高知、福岡、久留米、佐賀、長崎、熊本、鹿児島の32死を挙げています。
 そして、大正9年には、埼玉、千葉、宮崎の3県にはまだ市が生まれていなかったこと、町の数では、千葉県が75、愛知県71、福岡県50がトップ3だったことを紹介しています。
 また、郡について、「大正10年の郡制廃止までは、れっきとした地方自治体だった」ものであり、地方制度としての郡は廃止になったが、現在の地方自治法も、補則において、「郡の変更等は知事が県議会の議決を経て定めること、郡の区域内に市が生まれたときは、郡の区域は自動的に変更されること等を定めている」ことを解説しています。
 第3章「長い目で見た変化」では、大正9年から平成12年の間の都道府県人口の推移に地打て、「トップの東京都と最小の鳥取県だけは、どの時期をとっても同じ」だが、「概して言えば、関東地方の上昇と西日本の下降という傾向」が窺えるとしています。
 そして、「大正9年から昭和25年にかけては、都市化が進む一方で、田園部の人口も増加したが、昭和25年から平成12年にかけては、小さい方から大きい方へ、一方通行で人が急激に流れていった」と述べています。
 また、「戦後の混乱期は、同時に農漁村の全盛時代」であったとして、「当時の農村は、物資も娯楽も少なかったけれど、村には活気があった。青年団を中心とした盆踊りやお祭り、演芸会や野球大会等等、村には若者が溢れていた」と語っています。そして、「関東と近畿の市こそ昭和25年ピークのものは少ないが、四国、中国には、昭和25年ピークの市著烏孫、特に町村が極めて多い。また、東北、九州沖縄も同じ傾向にある」ことを指摘し、「逆にこの時期は、大都市の落ち込みの時期でもあった」と述べています。
 第4章「さまざまな合併」では、「合併慣れした市町村」として、山口県新南陽市を挙げ、なかでも富岡村は、「富岡村→富田町→徳山市→富田町→南陽町→新南陽市→周南市と6回の変化を見せ」、「個別に見ると、同村が全国最多の変化経験を持つ七変化の村と言えそうである」と述べています。
 また、千葉県の富津市についても、「大正9年当時の町村が富津町にまとまるまでの合併経験を見ると、環村、駒山村、関村、豊岡村が4回、大貫町、吉野村、湊町、天神山村、竹岡村、金谷村が3回、富津町、飯野村、青堀村、佐貫町が2回の合併を経験しており、富津市制の施行を計算に加えれば、いずれも3回から5回の変化を経験している」と紹介しています。
 さらに、合併促進のために、「市制施行」という「田舎にとって魅力のあるエサ」として、人口要件を緩和することについて、「いささか安易過ぎる方法ではないだろうか」として、
(1)「市」というものをどういう性格のものとして理解しようとしているのか。
(2)合併しない町村とのアンバランス。
の2点を指摘しています。
 また、市の改名の例として、1年以内の改名から、即日改名の例などを挙げ、「1年程度続いたケースは、多分市制施行の後、何らかの理由が生じて名前を変えたのだろうし、数箇月、更には即日といったケースは、地域の特殊事情などがあって、名称変更が最初からの筋書きに入っていたのだろう」と述べています。
 第5章「名付け考」では、著者なりの好ましい市町村名の要素として、
・読みやすく、読み間違いも少ない。
。類似市町村名が少ない。
・地名として大きすぎず、小さすぎず、実体に合っている。
・過去の市町村名とのつながりが判りやすい。
・地域の特性と歴史を反映している。
の5点を挙げています。
 また、市町村名に使われている文字のベストファイブとして、「川田山大野」の5文字を挙げています。
 本書は、日本を見る「長い目」を与えてくれる一冊です。

■ 個人的な視点から

 昔、自分の戸籍を見ると、自分が生まれた直後に町が合併を繰り返し、ついに市になったのを見て不思議な感じがしたのを思い出しました。平成の大合併直前に産まれた子供も、後になってから自分が生まれた古い市町村名を見て同じような感覚を抱くものなのかと思います。


■ どんな人にオススメ?

・日本の国の姿を長い目で見てみたい人。


■ 関連しそうな本

 佐々木 信夫 『市町村合併』 2006年03月27日
 町田 俊彦 『「平成大合併」の財政学』 2006年12月06日
 今尾 恵介 『住所と地名の大研究』 2006年07月06日
 吉村 弘 『最適都市規模と市町村合併』 2006年03月29日
 竹前 栄治, 中村 隆英, 天川 晃 『GHQ日本占領史 (13)地方自治改革』 2007年01月19日
 天川 晃 『GHQ日本占領史 (38)地方自治体財政』 2007年02月15日


■ 百夜百マンガ

ぼのぼの【ぼのぼの 】

 シマリスくんの「いぢめる?」が涙を誘った作品。作者がその持ち味である毒をかわいい動物キャラの中に隠した、「針を仕込んだぬいぐるみ」のような作品です。

投稿者 tozaki : 2008年02月05日 21:00

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コメント

 たまたま私の姓名を検索しておりましたら、このページに行き当たりました。小著を丁寧にお読み下さり、御評価賜りましたこと、厚く御礼申し上げます。大正以来の我が国の歩みを、国勢調査という切り口から、立体的に描いてみたいというのが私の意図でした。それにどこまで成功しているのかは判りませんが、その点をお読み取り下さり、このような御評価頂いたこと、何よりもありがたく存じております。遅ればせながら御礼申し上げます。

投稿者 西中眞二郎 : 2008年02月12日 16:08

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