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2008年02月14日

観光を読む―地域振興への提言

■ 書籍情報

観光を読む―地域振興への提言   【観光を読む―地域振興への提言】(#1120)

  溝尾 良隆
  価格: ¥2310 (税込)
  古今書院(1994/01)

 本書は、「わが国で話題になっている観光の現象を解明し、数ある個別の現象を通じて一般化への理論構築をして、この一般理論から再び個別の現象を解明すること」を意図したものです。著者は、「観光」の語源は、「国の光を観る」、すなわち、「地域の優れているものを観せたり、優れた光を観にいくこと」であると述べ、「"光"とは、結局、地域の特性・個性」であると述べています。
 第1章「観光地域の動向」では、スキー場、海水浴場、温泉地、町並み観光地、都市観光地、農山村地域といったカテゴリーごとに課題を論じています。
 そして、信頼できない日本の観光地の統計の「最たるもの」として、海水浴の統計を挙げ、「水増ししているのではなくて、数え方がいい加減」であることを指摘しています。
 また、温泉地の盛衰要因として、
(1)交通体系の変化が明暗を分けている。
(2)自らの持つ優れた環境を悪化させたか、より良く生かしたか。
(3)旅行者の嗜好変化への対応の方法。
の3点を挙げています。そして、「望ましい方向」として、「温泉地は地域特性を生かしリゾートの方向を目指す」べきであると主張しています。
 さらに、農山村地域の同行として、著者が携わった群馬県新治村での「全村農村公園構想」について触れ、「リゾート地域として売り手市場であるから、こちらがしっかりとした計画をもち、必要であれば外部民間を選別していくこと」にし、「農業者と私とで、村全体が美しい農村で、そこでリゾート事業を展開していく構想計画を策定した」ことを解説しています。
 第2章「新たな観光と地域の対応」では、「全国各地で、ようやく水をいかすことが、美しい個性のあるまちになることに気づいた」として、岡山市の西川緑道や、出雲市の高瀬川、佐原の小野川などを取り上げています。
 また、NHKのテレビドラマについて、朝のテレビドラマと日曜日の大河ドラマを取り上げ、「朝のドラマは、比較的現実の姿を伝えており、観光客が訪れても期待に応えてくれる」一方で、大河ドラマは、「テレビ用のセットの世界」であり、「現地を訪れてもテレビをほうふつする雰囲気がない」ことを指摘しています。
 第3章「日本のリゾート開発」では、「わが国は今、これまでのリゾート開発のあり方を反省して、リゾートの原点に立ち戻り、経済市場主義から脱皮して、快適なリゾート地を整備し豊かな生活を享受することが必要であり、心の休まるリゾートづくりへ向けて再スタートすべきである」と述べています。
 そして、リゾート開発の形態として、
(1)内発型開発:
(2)外発型開発
(3)租界型開発
の3つの形態を挙げ、(1)については、「外発型開発の問題点を是正したものであり、地域が目指す望ましい開発方法である」と述べています。
 また、群馬県新治村の農村公園構想に関して、「企業がリゾート開発の対象地として狙うには絶好の村」であった状況を察知して、村の人たちと、
・新治村は、リゾートでは売り手市場である。安売りしてはいけない。
・村の全体方針を定めた上で、開発のないよう、民間企業を選択する。しっかりした計画がないままに、個々の計画を認めていくと村全体の土地利用が無秩序になる。
・自信をなくしている農業者が土地を売却しないために、農業とリゾート事業との結合を図る。
という方向を確認したことを解説しています。
 さらに、「これまでのリゾート開発は、国民が快適にリゾートライフを過ごすためと言うよりも、目先の経済的利益を目的として民間企業は開発を進め、国民は会員権の購入に走っていたのが実態であった」と指摘しています。
 第4章「魅力ある地域の創造へ向けて」では、観光地の多様化と老舗観光地の低迷として、
(1)街道町
(2)社寺観光地
について、「交通機関の発達、旅行の大衆化により観光地が多様化していく中で、これら老舗の観光地は追われる立場となり、観光地としての地位は低下していった」と述べ、「温泉地は依然としてわが国の宿泊地としての主力を担っているが、ここでも観光地の多様化のなかで、温泉地個々をみると盛衰がみられる」と述べています。
 また、各地の観光基本方針の各論部分の提案として、
(1)地域特性を生かすこと、ないしは数十年かけて観光対象に成り得る資源を作り上げること。
(2)長期滞在型が可能な観光地にすること。
(3)海外の観光地との競争を念頭におくこと。
の3点を挙げています。
 さらに、「広義の観光資源については地域の努力で達成できる。何一つ特色がない地域であれば、それは観光地としての魅力もない。何もないといっても、スポーツ活動や文化活動は日常の活動であり、そうした地域には他地域から交流を求めてくる」と述べています。
 本書は、15年近く前の本であるにもかかわらず、現在に通じる課題を取り上げている一冊です。


■ 個人的な視点から

 本書の中で、著者が携わったリゾート地域として群馬県の新治村を何度も取り上げていますが、現在では、2005年10月に合併により、みなかみ町となっています。
 先日、旧新治村の湯宿温泉に行ってきて、つげ義春の「ゲンセンカン主人」に描かれた寂寥感は感じられませんでしたが、筆者が主張していた「全村農村公園構想」に基づいて残された旧三国街道は情緒がありました。


■ どんな人にオススメ?

・観光は遊びと同じだと思っている人。


■ 関連しそうな本

 溝尾 良隆 『観光学―基本と実践』
 後藤 哲也, 松田 忠徳 『黒川温泉 観光経営講座』 2007年12月04
 後藤 哲也 『黒川温泉のドン後藤哲也の「再生」の法則』
 宮本 和義 『和風旅館建築の美』 2007年09月30日
 高野 慎三 『つげ義春を旅する』 2007年10月07日
 つげ 義春 『つげ義春旅日記』 2007年10月27日


■ 百夜百マンガ

リアル【リアル 】

 やっぱりバスケマンガのイメージが強い作者ですが、やはりドラマの運びのうまさがポイントだということに気づかされます。

投稿者 tozaki : 2008年02月14日 23:00

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