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2008年02月28日

ネットワーク社会の深層構造―「薄口」の人間関係へ

■ 書籍情報

ネットワーク社会の深層構造―「薄口」の人間関係へ   【ネットワーク社会の深層構造―「薄口」の人間関係へ】(#1134)

  江下 雅之
  価格: ¥882 (税込)
  中央公論新社(2000/01)

 本書は、「ネットワークというムーブメントの本質を探ろうと思ったら、ネットワークを受け入れる下地が何なのかを分析し、さらにその下地がネットワーク浸透後、どういう方向に進むかを予測しなくてはいけない」という問題意識から書かれたものです。著者は、本書の関心事項として、「ネットワークでの拘留はどういう必然性から導かれたのか、それがどういうライフスタイルに結びつくのか、その交流にどういう原理が作用しているのか」、等を挙げています。
 第1章「ネットワークの実像」では、娯楽小説や映画での描写を参考に、「新しいテクノロジーが一般大衆にどの程度認知されているか」を知ることができるとして、「すくなくとも80年代前半を境にして、ネットワークは一般個人が私的な用途で利用する身近な存在であるとの認識が広がり始め、90年代半ばにはほぼ日常的な存在と認められたと見なしてよさそうだ」と述べています。
 また、ネットワークがマスメディアと明確に異なる点として、「ネットワークの向こうには『人』がいて、ときにはその『人』からインフォメーションやトランザクションの機能を引き出せる点」を挙げ、「ネットワークを単なる伝送路にあらざるものと意味づける要素は、人どうしの接触や交流の現場になりうる点にこそある」と述べています。
 第2章「メディア産業とネットワーク」では、「そもそもネットワークはどういうチャネルになりうるのだろうか」という問いに対して、「ネットワークを情報の宝庫と無条件に賛美することもできなければゴミ箱と切って捨てることもできない」と述べ、「産地直送の『ナマモノ』」であり、「それを活かせるかどうかは、素材に接した人の料理の仕方、味わい方次第である」と解説しています。
 そして、メディアが未発達な時代には、「共同体の『門番(ゲートキーパー)』が世論を先導することがあった」が、マスメディア登場後は、「メディア自体が影響力を行使するようになり、全国規模あるいは全世界規模の『有名人』が世論を引っ張ることもあった」としたうえで、「ネットワーク時代には、個々の関心領域を単位として、門番やオピニオン・リーダー、有名人とは異なる小教祖(ミニ・カリスマ)的な役割を持つ者が一種の均衡点として出現するだろう」と述べています。
 第3章「バーチャル・コミュニティの過去・現在」では、「耐久消費財や対消費者向けサービスでは、利用者が増えれば増えるほど需要面でも供給面でも市場拡大要因が大きくなる」として、「普及率がある一定の段階を超えると、爆発的な相乗効果が発揮される」という閾値を「Critical Mass(CM)」と呼ぶと解説し、1997年の時点で「ネットワークを利用できる環境にある人が総人口の8~10パーセントに達した」ことを指摘しています。
 また、「電子コミュニティ」の特徴を、「いつでも、どこでも、誰とでも」としながらも、「誰とでも」の部分は、携帯電話とネットワークでは異なり、「物理的な制約だけでなく、社会的制約をも離れ、接触する機会をもてそうになり人とも交流できる可能性があることを意味している」と御ベテいます。
 第4章「ネットワーク上に見られる現象」では、「われわれは職場や学校、家庭において、その場に応じた『役割』を演じている」ことが、「束縛感や一種の圧迫感をもたらすことがある」とした上で、ネット上で、「キャラクターを意図的に設定するという行為」の典型として「ネットおかま」を挙げています。
 また、ネット上という「多様な価値観の持主が集うことを期待される<場>であっても、結局は類似性・同質性の原理が作用する」と述べ、この同質性という原理の元では、<場>の状況は、
(1)覇権争い:同質性のスタンダードを追及する過程
(2)調和的交流:何らかの関心事あるいは行動原理を共有しているという前提での交流
(3排除:異質なメンバーの追放)
の3種類のいずれでしかありえないと述べています。
 さらに、ネットワーク上で加熱したコミュニケーションが発生し、「感情的な誹謗や揚げ足取りに終始する状況に陥ること」を「バトル」や「フレイミング(flaming)」と呼ぶことを解説しています。
 第5章「コミュニケーションの原理」では、<現実社会>と<仮想社会>の直感的な区別として、
・現実社会=身体が居合わせる機会を持つことを前提とした人間関係
・仮想社会=メディア空間上の記号を通じた人間関係
と解説しています。
 また、電子ネットワーキングの社会的現実感の決定要因として、
(1)制度レベル:社会的な位置関係
(2)対人環境レベル:社会的・対人的な存在感
(3)信念レベル:自分の持つ常識との一貫性
の3つのレベルがあることを紹介しています。
 さらに、ネット上で匿名を実現する方法として、「隠す」と「仮想する」の2通りのうち、後者については、
(1)ペンネームを用いること
(2)「他人の実名を盗む」という方法
(3)一人で複数の人格を装うことで、自分の「本体」をくらますという方法
の3種類の方法があると述べています。
 第6章「ネットワークというコミュニケーション革命」では、「ネットワークという言葉を『網状の構造を持つもの』の比喩としてとらえるならば、『ネットワーク社会』とは、人間関係がネットワーク上のトポロジーを取る社会と解釈できる」と述べ、
(1)集団の形成要因に注目したもの
(2)情報化社会の進展結果として、情報の発信源である個人どうしの相互依存関係に注目したもの
(3)情報民主主義という考え方
の3つの論点に注目したいと述べています。
 本書は、ネットワーク社会の構造を読み解くきっかけを与えてくれる一冊です。


■ 個人的な視点から

 本書は2000年3月に出版されたものですが、この当時に比べて8年経ち、インターネットと関わりを持つ人も相当増えたので、本書で紹介されているような、ネット上の習俗のようなものも、慣れてしまってそれほど目立たなくなったのか、少数派になってしまったのでしょうか。なんとなくピンと来なくなってしまった気がします。


■ どんな人にオススメ?

・ネットワークの姿を見たい人。


■ 関連しそうな本

 今井 賢一, 金子 郁容 『ネットワーク組織論』 2005年03月19日
 オリヴァー・E.ウィリアムソン 『市場と企業組織』 2005年04月19日
 池田 信夫 『ネットワーク社会の神話と現実―情報は自由を求めている』 2005年09月17日
 ダンカン ワッツ (著), 辻 竜平, 友知 政樹 (翻訳) 『スモールワールド・ネットワーク―世界を知るための新科学的思考法』 2005年09月28日
 増田 直紀, 今野 紀雄 『複雑ネットワークの科学』 2005年11月18日
 アルバート・ラズロ・バラバシ (著), 青木 薫 (翻訳) 『新ネットワーク思考―世界のしくみを読み解く』 2005年10月24日


■ 百夜百マンガ

黒鉄【黒鉄 】

 作者の代表的な作品です。まだ完結していない作品だけに、ハツカネズミが終わったことで再登場の機会がある?

投稿者 tozaki : 2008年02月28日 23:00

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