« 日本の統治構造―官僚内閣制から議院内閣制へ | メイン | 花失せては面白からず―山田教授の生き方・考え方 »

2008年03月26日

不安定雇用という虚像―パート・フリーター・派遣の実像

■ 書籍情報

不安定雇用という虚像―パート・フリーター・派遣の実像   【不安定雇用という虚像―パート・フリーター・派遣の実像】(#1161)

  佐藤 博樹, 小泉 静子
  価格: ¥2100 (税込)
  勁草書房(2007/11/8)

 本書は、
(1)非正社員の中でも大きな比重を占めかつパート社員の中で中核を構成する主婦パート
(2)アルバイトや契約社員の中でも若年層を主とするフリーター
(3)非正社員の中では比率は低いが新しい働き方である派遣社員
の3類型を取り上げ、「働いているものの視点から、それぞれの働き方の担い手やキャリア、就業実態、働き方の選択理由やその背景、働き方の問題点、今後のキャリア希望などを明らかにする」ものです。
 第1章「短時間だが職場の主力を担う人々」では、「子どもを抱えつつ、生活のためにそれなりの日数を働いている人」が、自分の働き方を「パートタイマー」とイメージしていることを明らかにしています。
 そして、多くの人が、「正社員から職業生活をスタートし、途中で主婦パートへ移動する過程で出産・育児を経験している様子が伺える」として、10年以上に及ぶそのブランク期間が、合計特殊出生率が低下傾向にあるなかで、「短くなると推測できる」としています。
 また、主婦パートが勤務先を選択する条件として、
・通勤に便利なこと
・労働時間や働く曜日などの条件があっていること
・働く曜日や時間を自分の都合に合わせて選べること
等を重視していると述べ、「主婦パートは、自分のペースを守るために働く場所、日数、時間数をある程度限定し、自分が思う範囲内で働きたいというニーズが強いようだ」としています。
 さらに、「週の労働時間が長い者ほど『まったく同じ内容の仕事をしている』正社員が勤務先にいるとする回答が多くなり、週労働時間が40時間以上ではその割合が3割を超える」と述べています。
 著者は、「現在、パートとして働いている主夫の人々」が、「正社員になりたいのになれないからではなく、自分の生活リズムや、生活を大事にしたいという価値観を実現するために、最も適合する形としてパートという働き方を選択している」と分析しています。
 第2章「正社員なみに働く人々」では、本書が用いている「19~34歳、未婚、アルバイトまたはパートまたはフリーターとして雇用されている者」という定義に該当する者のうち、「フリーターと自己認識している者は3割強であり、半数がアルバイトと自己認識していることが注目される」として、「他者評価と自己認識は一致しない」と述べています。
 そして、「現在、フリーターとして働いている者の中で初職が正社員以外であった人は73.0%と多く、他の働き方を大きく上回る」ことを指摘したうえで、「キャリアをフリーターで始めると正社員に転換しにくいということ」が確認できたとしています。
 また、平均時給が千円余りであるため、「かなりの時間数かつかなりの日数働いても、フリーターの年収は平均で140.4万円にとどまっている」ことについて、同年代の未婚正社員の年収の「半分にも届いていない」ことを指摘しています。
 第3章「定着した新しい働き方」では、派遣社員として働く人たちについて、
・女性が圧倒的に多数を占めている。
・40歳未満が68%を占め、特に25~34歳の占める割合は4割を超えている。
等の特徴を挙げ、「大雑把な言い方が許されるならば、派遣は"若い未婚女性"の働き方だと言える」と述べています。
 そして、パート、派遣、フリーターという働き方の選択に当たり、「未既婚という個人的環境の要素が大きく影響している」点を指摘し、「派遣社員の6割が制約条件なしに派遣を選択した」ことは、「未婚者の割合が高いことが影響している」と推測している。
 また、派遣社員のパソコンリテラシーがかなり高いと評価できること、他の非正社員に比べて資格やスキルアップに取り組んでいる人の割合が高いこと等の特徴を挙げています。
 結章「増大する非正社員と人材活用上の課題」では、主婦パート、フリーター、派遣社員の3つの類型の非正社員について、「仕事レベルなど就業実態は一様でなく、多様な実情が明らかにされた」としています。
 また、非正社員の正社員登用のメリットについて、
(1)労働条件を改善しキャリアを広げて、その定着や仕事意欲の向上を促す。
(2)より高度な教育訓練の機会を与えられる。
(3)実際の仕事振りを見て、その能力や仕事への意欲について適切に把握した上で、選抜できる。
(4)採用力が弱い企業にとって、正社員を補充する有効な仕組みとなる。
(5)パート社員募集の採用条件を魅力あるものにできる。
(6)パート社員の仕事や技能習得への意欲を高められる。
の6点を挙げています。
 本書は、「不安定雇用」という言葉で一括りにされる非正社員を捉える視点を提供してくれる一冊です。


■ 個人的な視点から

 「ワーキングプア」など格差問題はいろいろな面で問題になっていますが、「不安定雇用」と一括りにされている人たちの実態はあまり知られずに、極端な例ばかりがマスコミで取り上げられてきたような気がします。


■ どんな人にオススメ?

・不安定雇用と言われる人々の実態を知りたい人。


■ 関連しそうな本

 佐藤 博樹, 佐藤 厚 (編集) 『仕事の社会学―変貌する働き方』 2005年12月01日
 橘木 俊詔 『現代女性の労働・結婚・子育て―少子化時代の女性活用政策』 2006年08月18日
 佐藤 博樹 『変わる働き方とキャリア・デザイン』 2006年05月22日
 B.エーレンライク (著), 曽田 和子 (翻訳) 『ニッケル・アンド・ダイムド -アメリカ下流社会の現実』 2007年06月25日
 ポリー・トインビー (著), 椋田 直子 (翻訳) 『ハードワーク~低賃金で働くということ』 2006年03月08日
 スチュアート タノック (著), 大石 徹 (翻訳) 『使い捨てられる若者たち―アメリカのフリーターと学生アルバイト』 2006年11月14日


■ 百夜百マンガ

信長【信長 】

 絶頂期にパクリとの横槍が入ってそのままダウンしてしまう作品が多い中、きちんと書き直して後々からでも入手可能になったことは素晴らしいことなのではないかと思います。

投稿者 tozaki : 2008年03月26日 23:00

トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:
http://www.pm-forum.org/MT3/mt-tb.cgi/1686

コメント

コメントしてください




保存しますか?