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2008年03月28日

新聞報道と顔写真―写真のウソとマコト

■ 書籍情報

新聞報道と顔写真―写真のウソとマコト   【新聞報道と顔写真―写真のウソとマコト】(#1163)

  小林 弘忠
  価格: ¥777 (税込)
  中央公論社(1998/08)

 本書は、「無名の人が登場するときは名誉か不名誉かいずれの出来事に限られる」新聞の顔写真について、
(1)顔写真はいつごろから掲載されるようになったのか。
(2)顔写真の丸型(あるいは卵形)と四角型(あるいは矩形)について。
(3)最近、民間人の顔写真が新聞の社会面で見られなくなったこと。
等の不透明な点を明らかにすることを目的としたものです。
 第1章「されど顔写真」では、大きな事故があったとき等の顔写真について、新聞記者が符丁として使っている「ガン首」という言葉を紹介し、「死者を冒?するひびきがあり、死者が出たことを歓喜している不埒な様子も伺える」としたうえで、「新聞に故人の顔は載せて欲しくないという遺族の心情はお構いなく、なかば強引に『ガン首』をとるのだから、顔写真集めにはさまざまな悲喜劇がつきまとっている」として、葬儀の準備に追われている家族を尻目に、「祭壇の遺影を盗み撮りしたり」、「記者であることを明かさずに『警察のほうからきた』と偽ったり、額縁の写真を無断拝借することもなくはない」と述べています。そして、「戦国時代、武将の首級の数を競ったように、顔写真は記者の資質判定の素材でもあった」と述べています。
 また、航空機事故の取材では、
(1)取材班
(2)本社内での名簿整理班
(3)サイド記事の執筆班
の3つの班が編成されると述べ、「3つの班の中でも重要視されるのは名簿班」であると述べ、名簿が正確でなければならないのは、「名簿がニュースであることのほかに、名簿を手がかりに顔写真を集めないといけないためだ」と述べています。そして、昭和60年の日航ジャンボ機墜落事故では、
・朝日117枚
・毎日572枚
・読売892枚
と新聞社によって顔写真の数が大きく異なっていることについて、朝日新聞は、日航機の遭難が確実になった12日当日の午後9時に、「いくら頑張っても、明日の朝刊の締切時間までに全部集めることは無理だ」という理由から、「顔写真集めをやめる決断をした」と述べています。
 さらに、過去の大事故の新聞記事から、「秩序だった顔写真の掲載が見られ始めたのは、昭和20年代後半になってから」であると述べています。
 第2章「顔写真の歴史をひもとく」では、現存する日本人撮影の最も古い銀板写真として、安政4年(1957)の島津斉彬像を挙げています。
 そして、「新聞に写真が掲載されるようになったのは、写真が生活に溶け込み始めた」明治後期であるとして、「世間の写真流行と比べると、新聞写真の登場は大幅に遅れていた」と述べたうえで、明治37年正月の報知新聞に日本で初めて新聞に写真が登場し、報知新聞は、明治37年の日露戦争開戦時に7,8万だった部数を、年末には一挙に20万部まで増やしたことが述べられています。
 第3章「写真競争はじまる」では、写真掲載初期の明治37年前半の新聞の人物写真は、ほとんどが軍人で、「各誌とも初出写真後しばらくは真正面の全体像で、二段ないし三段組みの肖像がほとんどだった」と述べ、人物写真が大きく掲載された理由として、「なまのニュース、報道写真がそれほど頻繁に掲載できなかった技術上の理由のほか」、当時の新聞が、おおよそ7段組で、現在の15段に比べると一段幅が大きかったという新聞の段数を原因として挙げています。
 また、顔写真は、明治37年(1904)5月1日の東京日日新聞に掲載された「名誉の戦死者」と題された、日露戦争で亡くなった軍人たちの一段組みの真四角の人物写真を黒ワクつきで掲載した写真が走りであるとして、「顔写真の歴史も戦争が契機になっている点は注目されていい」と述べています。
 さらに、事件事故の顔写真が、「まず被害者、犠牲者が先行する形で掲載され始めた」後、明治後期には、「まれではあったが、ともかくも被害者と容疑者の顔が読者の目に飛び込んでくるようになった」として、「顔写真は軍人、美女といったブロマイド的肖像から完全にニュースになったのである」と述べ、「その背景に日露戦争後の犯罪増という社会状況があった点を考慮すると、顔写真にニュース性を持たせたのは社会変動だったことになる」と述べています。
 第4章「大正、昭和初期の顔写真」では、大正期の顔写真について、「各紙共通の顔写真が目につくこと」の不思議さを指摘し、その理由として、「新聞者にカメラマンがいなかったために、写真製版所が写真撮影を受け持っていた」という証言を取り上げ、「現場写真も顔写真も、撮影は製版所まかせで、新聞社は書く専門という分業体制ができていた」と述べています。
 また、昭和の戦時中の新聞の顔写真では、軍人の使者たちが目立つことについて、「戦死者は軍国美談として記事にされ、『殉忠報国の精華』『特別攻撃隊の偉勲』『二階級特進の栄』などの麗句とともに顔写真が紙面を埋めた」と述べています。
 第5章「戦後の事件の顔全調査」では、最近の社会面には「犯人のモンタージュや手配写真は載るが、逮捕されても顔はあまり掲載されず、被害者でもかつて新聞では必須だった子どもや女性の顔写真もほとんど見られなくなった」ことを指摘し、顔写真が減ってきたきっかけとして、マスコミ界で一般にいわれているのは、平成元年3月に発覚した東京の女子高校生コンクリート詰め殺害事件で、「むごい結末を迎えてしまった被害者の女子高校生の顔写真を、マスコミ各誌が事件の経過を追いながら掲載した点が反省されたということになっている」と述べています。
 また、新聞の顔写真の形について、「犯罪面に限ってみると□と○の形によって<悪玉>(□=容疑者)と<善玉>(○=被害者)が峻別されている」と述べ、「各紙とも昭和30年代までは、容疑者、被害者の形状にバラつきがあったのに、40年代になると容疑者は□型が圧倒的に多くなり、被害者は○型がふえている」と述べています。
 さらに、昭和20年代までは「むごい現場状況が実写されて、読者の目にも触れていた」が、「世の中が落ち着くにつれて、こうした写真は新聞からは次第に消えていく」と述べ、女性たちからの抵抗や、人権意識の高まりをその理由として挙げています。
 第6章「新聞でみる顔相考」では、「通信社から手に入れる外国人の顔写真は笑顔が多いのに、日本人の顔は一般に真面目なこと」を指摘しています。
 そして、「今日までの紙面で一番輝いた顔が掲載された時期は、戦争直後の昭和20-25年だろう」と述べ、「やはり人の顔は、時代を映し出しているのである。時代とともに人間の面相はまちがいなく変わっている。と同時に、新聞の顔に関する限りでは、世相、社会、風俗を敏感に察知する報道政策側の主観によって掲載されている点も忘れてはならない」と述べています。
 第7章「写真のマコト、写真のウソ」では、太平洋戦争最大の攻防戦と言われた硫黄島の戦闘において、「丘の頂上にひるがえった星条旗を写した写真」が、「当時アメリカでは熱狂的な歓迎を受け、連合国軍側にも喧伝されたピュリッツァー賞獲得の歴史的な映像である」が、「この歴史的写真は、実は最初に頂上に立てられた星条旗を撮影したもの」ではなく、「最初にポールが立てられたのは、それよりも三時間も前で、旗が小さいため立て直しをしていたとき、偶然ローゼンソールが撮影した」ものであり、「おまけにポールを立てている6人は、硫黄島の戦いに参加した兵士たちでもなかった」ことを明らかにしています。
 そして、「映像が『ある事実』をとらえているのはまちがいではない。しかし『ある事実』を強調し、事実をゆがめる場合があるのもまちがいではない。さらに『ある事実』が利用されるのも同じくらいたしかである」と指摘しています。
 また、近年、新聞に顔写真掲載が減っていることについて、「顔写真にたいする疑義が記者たちのなかでふくらみはじめてきたこと、新聞の制作側もひところのように、顔にこだわらなくなった」ことを指摘しています。
 本書は、顔写真を通じて、新聞記事の読み解き方の一つの視点を提供してくれる一冊です。


■ 個人的な視点から

 本書を読むまであまり気にしていませんでしたが、同じ写真でも卵型のワクで写っているのと、四角いワクで写っているのとでは、たしかに四角ワクの写真に収まると悪人っぽい印象を受けてしまうような気がします。


■ どんな人にオススメ?

・自分の写真は丸い枠に収まりたい人。


■ 関連しそうな本

 菅谷 明子 『メディア・リテラシー―世界の現場から』 2005年09月07日
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■ 百夜百マンガ

アリエスの乙女たち【アリエスの乙女たち 】

 ナンノが主演した大映ドラマで知られている作品ですが、少女マンガの王道を突っ走る感じはまた違ったよさがあります。

投稿者 tozaki : 2008年03月28日 23:00

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