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2008年03月12日

グラミン銀行を知っていますか―貧困女性の開発と自立支援

■ 書籍情報

グラミン銀行を知っていますか―貧困女性の開発と自立支援   【グラミン銀行を知っていますか―貧困女性の開発と自立支援】(#1147)

  坪井 ひろみ
  価格: ¥1890 (税込)
  東洋経済新報社(2006/02)

 本書は、バングラディシュのグラミン銀行の女性を中心に、「マイクロクレジットとかかわることで、生活の質を高めようと、懸命に生き、挑戦する女性たちの姿を、具体的に伝えようというもの」です。
 第1章「マイクロクレジットとは何か」では、マイクロクレジットを、「貧しい人々を対象に、フォーマルな少額融資を行い、彼らの生活が成り立つように促す仕組み」であると述べ、これまで、「融資の対象と見なされず、まともに相手にされてこなかった」貧しい人々にこそ融資するのだと述べています。
 第2章「グラミン銀行誕生と貧しさの基本的な考え方」では、「グラミン」とは、ベンガル語の「村の」を意味し、1976年に、チッタゴン大学の経済学部長であったムハマド・ユヌス博士によって始められた貧困削減プロジェクト「グラミン・バンク・プロジェクト」からスタートしたことを解説しています。
 そして、ユヌス博士の言葉の中から、「グラミン銀行の哲学」が感じ取れる言葉として、
・クレジットは、基本的な人権である。
・人はだれでも、機会さえ与えられれば、よりよい生活をしようとする能力と意欲を持っている。
・貧困は外から規定され、人工的・社会的につくり出されたものである。
・人びとが銀行に行くのではなく、銀行のほうが人びとのもとに行く。
・グラミン銀行の原則、原理は、きわめて単純で、普遍であるので、私たちは組織を柔軟に運営することができる。
・貧しい人々が信用に値しないのではなく、既存の銀行が人びとに値しないのである。
等の言葉を紹介しています。
 グラミン銀行の特徴としては、
(1)貧しい人々しか融資を受けられないこと。
(2)メンバーになるためには自分たちで5人グループを作ること。
(3)担保はいらないが5人で連帯して返済に責任をもつこと。
(4)毎週集会所で開かれる集会に参加すること。
(5)支店の行員が集会所に来ること。
(6)自分たちで考えて経済活動に融資を活用すること。
の6点を挙げています。
 また、バングラディシュ社会において、「女性の生きる道は、結婚であり、子どもの頃から、男性に依存するように教えられ」、女性の生き方には、
(1)結婚
(2)跡取り息子を持つ妻
(3)自分の結婚も含め、重大なことに口出ししないこと
(4)夫に対し疑問の余地のない忠誠や服従を示すこと
の4つの伝統的な特質が求められたと述べています。
 そして、5人グループのメンバーは、グループ長とグループ書記を輪番制で公平に役割を経験することを、「女性たちにとっては"公的"で大きな経験となる」と述べ、「もともとリーダーとしての素質がある人にとっては、それをさらに開花させ、ない人にとっては、身につけさせるという訓練の意味合いがある」と解説し、毎週行なわれる40人規模のセンターでの集会において、「"公的"に人前で何かを話すという、この貴重な経験は、女性に自信を与えている」と述べています。
 さらに、女性が行う経済活動について、「多くの女性が屋敷内でできる仕事を選ぶ」理由として、
・すでに身につけている技術であること
・ほとんどがイスラム教徒であるため、さまざまな形で行動が抑えられていること
の2点を挙げ、「夫と共同で活用する場合」には、
・規模の大きな養鶏や牛の飼育
・機織
・三輪のベビータクシー
・リキシャ
・雑貨店
・野菜の栽培と販売
など、「男性の手を必要としたり、男性がする仕事であったり」するものであり、女性の行動が制約されていることや、交渉ごとに不慣れなこと、そして、「夫を巻き込んで共同で働く方が、むしろ家庭内のいざこざを避けることができるし、夫も自営の仕方が学べると、歓迎する向きもある」と述べています。
 第3章「グラミン銀行の活動」では、ベンガル語で「教育を受けていない人」といった場合に、「読み書きができないという技術的なことだけでなく、概念がつかめなかったり、思考の操作ができなかったり、他の人との関係を結び個人的な能力を形成できなかったりする人のこと」を指し、「教育を受けた人」との違いは、「抽象的な知識量の多少」ではなく、「期待される社会的役割の高低」であると述べています。そして、ほとんどが学校教育を受けたことがないグラミン銀行の女性たちにとって、グラミン銀行の行員は、「学校教育を受けた身近なモデル」であり、「言葉だけでなく、学校教育を受けた人とはどのような人かを身近に」示すものであると解説しています。
 また、女性たちが「グラミン銀行に入ってどんなことが変わったか」を訪ねたところ、
(1)子どもは少ない方がよいと思うようになった。
(2)知識が増えた。
(3)自信がついた。
(4)子どもの教育について関心が増した。
(5)以前より忙しくなった。
(6)人間らしい扱いを受けるようになった。
(7)家庭内で発言力が増した。
(8)家計のやりくりができるようになった。
(9)友達が増えた。
(10)夫や家族の付き添いがなくても村の外に出かけられるようになった。
という結果だったことを紹介しています。
 さらに、グラミン銀行が提供する住宅ローンによって、2004年12月現在で、60万4000戸の住宅が建てられ、メンバーの6人に1人が住んでいると紹介し、その条件として、「きちんとした返済実績があり、本人名義の宅地を所有している人」に限定されるため、「このローンを利用した女性は、ほとんどが夫から宅地を譲受けている」と述べています。女性が、本人名義の住宅を持つことは、
(1)安全な場所を確保すること。
(2)老後の住み家を確保すること。
(3)社会的な地位が得られること。
(4)財産を手に入れること。
などを意味し、「住宅を手に入れた女性は、離婚しても家を出て行く必要」がなく、「住宅を持っている女性たちは、幸福感にあふれ、家庭内で意見が通ることが多いと、自信をのぞかせている」と述べられています。
 第4章「フィールド・レポート――また女性たちに会いたくて」では、グラミン銀行2が力を入れている「物乞自立支援プログラム」に参加している女性たちについて、ユヌス博士が、「マイクロクレジットが最貧困層まで到達するということを証明するための実験である」と語っていることを紹介し、2004年8月現在で、1万7600人に910万タカが融資され、260万タカが返済されていること、87人が物乞いをやめ、正規のメンバーになったことなどを紹介しています。
 本書は、ノーベル平和賞を受賞したグラミン銀行の取組を、同じ女性の視点から描いた一冊です。


■ 個人的な視点から

 ノーベル平和賞を受けたことで世間一般に知られるようになりましたが、グラミン銀行の5人でグループを作って連帯責任を負わせる仕組みは、実は先進国にも応用可能なアイデアなのではないかと思います。日本ではどんな形が考えられるでしょうか。


■ どんな人にオススメ?

・グラミン銀行の仕組みを理解したい人。


■ 関連しそうな本

 ムハマド ユヌス, アラン ジョリ (著), 猪熊 弘子 (翻訳) 『ムハマド・ユヌス自伝―貧困なき世界をめざす銀行家』 2007年05月10日
 シルヴァン・ダルニル, マチュー・ルルー (著), 永田 千奈 (翻訳) 『未来を変える80人 僕らが出会った社会起業家』 2007年03月28日
 渡邊 奈々 『チェンジメーカー 社会起業家が世の中を変える』 2005年08月11日
 C.K.プラハラード 『ネクスト・マーケット 「貧困層」を「顧客」に変える次世代ビジネス戦略』 2006年07月28日
 ジェフリー サックス (著), 鈴木 主税, 野中 邦子 (翻訳) 『貧困の終焉―2025年までに世界を変える』 2007年06月20日
 ジェレミー シーブルック (著), 渡辺 景子 (翻訳) 『世界の貧困―1日1ドルで暮らす人びと』 2007年08月15日


■ 百夜百マンガ

彼女のカレラ【彼女のカレラ 】

 ポルシェ・カレラRSといえば、『サーキットの狼』の早瀬左近を思い出してしまう世代なのですが、この作品に登場するものには逆卍や撃墜マークはついていないようです。

投稿者 tozaki : 2008年03月12日 23:00

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