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2008年03月16日
黄金比の謎
■ 書籍情報
【黄金比の謎】(#1151)
渡邉 泰治
価格: ¥1785 (税込)
化学同人(2007/3/20)
本書は、「数学における美的感覚を通して『もののかたち』を議論し、なぜ黄金比が人々を魅了し続けるのか、その謎に迫ること」を試みたものです。著者は、造形美と機能美の底流にある感覚として、
・数学におけるちょうどよさ:黄金比、円周率、ネイピア数、虚数単位のような中途半端な数が造形的にも機能的にも美しさをもたらす。
・均斉的なちょうどよさ:黄金比を持つ長方形のように、えもいわぬつりあい感を醸しだす。
・最適なちょうどよさ:物理の法則や成長の法則などによってもたらされる。
・心地よいちょうどよさ:雲や風のように適当な揺らぎを伴なう。
などの「ちょうどよさ」を挙げ、「数学におけるちょうどよさ」、「自然の摂理におけるちょうどよさ」、「人間の間隔におけるちょうどよさ」の3つの意味での「ちょうどよさ」のすべてを具現化したものが黄金比であると述べています。
序章「黄金比との出会い」では、「(1+√5)/2」という「人類の長い歴史を通して数学者のみならず、多くの人々を魅了し続けている数」である「黄金比」について、割り切ることのできない「1.61803398…」という「中途半端」な値であり、無理数であると解説しています。
そして、「1,1,2,3,5,8,13,21,…」という「フィナボッチ数列」を取り上げ、「中途半端」な数である黄金比と、簡単な規則で生成される自然数の並びを持つフィナボッチ数列とが、「互いに密接な数学的関係がある」と述べています。
第1章「もののかたちと黄金比」では、「もののかたちをよくよく眺めることから、黄金比やフィボナッチ数列への旅が始まる」と述べ、正多面体や関数、黄金比の長方形、植物の葉っぱの出方に現れる「黄金角」などについて解説しています。
第2章「黄金比を解剖する」では、黄金比を数学の話題として始めて意識したものとして、ユークリッドによる、「線分を2つに分けるとき、全体と片方の線分でできる長方形の面積と、残りの線分でできる正方形の面積が等しくなるように分けよ」という幾何学の問題を提唱したことを紹介しています。
そして、黄金比を持つ長方形が、「自分自身の中に相似な図形を無限に内包している」という「自己相似性」という性質を持つことや、一辺が1の正五角形の対角線の長さが黄金比になることを紹介しています。
第3章「生物は黄金比を選択するか?」では、植物の分岐モデルの解説した上で、「共通の、しかもたいへん重要な性質」として、「一つの枝を切り離してみると、その枝にも残った部分にも同様の形が見られる」ことを挙げ、「一部分が全体と相似形である」という性質である「自己相似性」について解説しています。
さらに、ひまわりの種の出方や松かさの観察から、「植物は黄金角が好みのようである」と述べ、「黄金角を回転角に持つことにより、葉は、あたかも今までの葉が出た場所を避けて、できる限り開いている場所を選んで葉芽をだしているようにみえる、つまり、『ちょうどよい』場所に葉を出している」ことの結果、「はの重なり相賀少なくなり、葉には光や養分が効率的に供給され、植物としての頑強さを備えたかのように見える」と述べています。
また、カタツムリの殻の成長の観察から、らせんの性質について、
・アルキメデスらせん:等間隔で広がるらせん
・ベルヌーイらせん:等比率で広がるらせん
の2つを紹介し、後者が、「黄金比を持つ長方形に内接する」性質を持つことを紹介しています。
第4章「芸術に見えかくれする黄金比」では、「建築物や美術作品の中に見出される黄金比、フィボナッチ数列、ベルヌーイらせんについて、いくつかの有名な例を紹介」するとして、ピラミッド、パルテノン神殿、ミロのヴィーナスと北斎等の例を取り上げています。
第5章「数学の美しさと黄金比の中間たち」では、「ちょうどよさ」を「美の極致に通じるキーワード」であるとして、「数学の発展史を振り返ると、この人間臭い『ちょうどよさ』という妥協的、ご都合主義的、調整的な事柄が、美の極致まで昇華されていく過程を見出すことができる」ところに、「数学のやわらかさと美しさを感じている」と述べています。
第6章「自然も好む関数の造形と機能」では、「質量×加速度=働いている力」という関係にある「運動方程式」について、「この理論が自然界の置く深くまで見抜いた、あまりにもみごとなものであるため、そこに美しさを感じ」、「方程式から導き出される」といってしまいがちになるのは「私だけではないかもしれない」と述べています。
第7章「予測困難? 数列が織りなすかたち」では、自己相似性を持つ図形が、「自然界に存在するもののかたちの複雑さを連想させる」ことについて、「森全体から葉っぱ一枚にいたるまでの複雑な形状、入り組んだ海岸線の複雑な形状、雲や煙の形状、はたまた銀河宇宙から素粒子にいたるまでの複雑な形状の中に、部分的に自己相似性を見出すことができる」と述べています。
本書は、「黄金比」をキーワードに、自然の中に見出すことができる数学の美しさと「ちょうどよさ」を考えるきっかけを与えてくれる一冊です。
■ 個人的な視点から
本書の著者は、県立高校の教師として数学教育に携わっていて、現在は岐阜県立岐阜各務野高等学校の校長先生をされているようです。
こういう人が数学の先生だと、数学に興味のある人はとても楽しそうですが、個人的には数学に大きな壁とその向こうの魅力を感じる中学校の先生がこういう話をしてくれたら楽しいのではないかとも思います。
■ どんな人にオススメ?
・数学は味気ない世界だと思う人。
■ 関連しそうな本
藤原 正彦 『天才の栄光と挫折―数学者列伝』 2007年11月17日
E.T. ベル (著), 田中 勇 (翻訳), 銀林 浩 (翻訳) 『数学をつくった人びと』 2007年07月16日
シルヴィア ナサー (著), 塩川 優 (翻訳) 『ビューティフル・マインド 天才数学者の絶望と奇跡』 2006年11月20日
E・T・ベル (著), 河野 繁雄 (翻訳) 『数学は科学の女王にして奴隷』 2006年09月18日
チャールズ サイフェ (著), 林 大 (翻訳) 『異端の数ゼロ―数学・物理学が恐れるもっとも危険な概念』 2005年11月20日
サイモン シン 『フェルマーの最終定理―ピュタゴラスに始まり、ワイルズが証明するまで』 2006年09月02日
■ 百夜百音
【犬神家の一族】 サントラ オリジナル盤発売: 1976
市川崑監督の追悼企画で、76年版と2006年版の作品が放送されているようで、この曲は有名ですが、ボーカルバージョンがあるのは知りませんでした。というか、金子由香利さんを知りませんでしたが、他の曲も聴いてみたいです。
投稿者 tozaki : 2008年03月16日 07:00
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