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2008年04月01日
地方分権改革
■ 書籍情報
【地方分権改革】(#1167)
西尾 勝
価格: ¥2730 (税込)
東京大学出版会(2007/7/20)
本書は、「1993年の国会の衆参両院による地方分権推進決議を出発点とする現代日本の地方分権改革」について、現時点での著者の認識と評価を総括的に提示しているものです。著者は、本書の意図として、
(1)戦後日本の地方自治制度の特徴点を国際比較の観点から再確認する。
(2)地方分権推進委員会による調査審議と勧告を拘束していた諸条件を鮮明に浮き彫りにする。
(3)制度改革の構想には対象にメスを入れる切り口が必要であること、いいかえれば、有機的な複雑系の制度構造を明快に腑分けするキーワードの再構成が必要不可欠であることを指摘してみたい。
(4)地方分権改革と政治構造改革とは表裏一体の関係にあることを強調しておきたい。
の4点を挙げています。
第1章「戦後日本の地方制度の特徴点」では、日本の地方自治制度について、「集権・分権と融合・分離の両軸を組み合わせた累計区分」において、「集権融合型の特徴を維持してきている」と規定していると述べ、「日本の行政システムを先進諸国並みのグローバル水準に近づけようとすれば、さしあたりまずは、先進諸国に類例を見ない日本に独特の機関委任事務制度を全面廃止し、国と自治体の融合の度合を大幅に緩和することが求められる」と述べています。
また、明治維新以来の日本の地方制度の特徴点ともいうべき点として、「市町村横並び平等主義と呼ぶべき指向性」を挙げ、
・事務を自治体に移譲または委任する場合には、可能な限り、これを広域自治体である都道府県に対してではなく基礎自治体である市区町村に移譲または委任するという指向性
・市区町村に事務を移譲または委任する場合には、これをすべての市区町村に均等に行なおうとする指向性
の2点を挙げています。
第2章「第一次分権改革の構図」では、地方分権推進委員会が、発足当初3ヶ月の自由討議において、今後の委員会運営についての基本戦略として、
(1)現行の都道府県・市区町村の地方自治制度を大きく再編成し、地方分権の新しい受け皿を構築しようとする百家争鳴の「受け皿」論議は棚上げにし、現行の地方自治制度の下で可能な限りの分権化を図る。
(2)地方三団体を通して、自治体側の改革要望事項の集約と提出を求め、これらの事項について関係省庁に一つ一つ譲歩を迫り、その積み重ねによって着実に分権化を図る。
の2点を固めていたことを解説しています。
また、『中間報告』において、「委員会の調査審議の優先順位がかなり明瞭に暗示されていた」として、「機関委任事務制度及び国の関与を最優先し、必置規制と国庫補助負担金の改革を後回しにした」理由は、「後者の方がよりむずかしい課題と判断していたから」であると述べています。
さらに、第一次分権改革を起動させる契機として、
(1)国会衆参両院による超党派の地方分権推進決議
(2)内閣不信任議決に続く解散総選挙と自民党の分裂
(3)非自民大連立政権であった細川内閣による第三次行革審最終答申の受理
の1993年の3つの事件を挙げています。
著者は、「第一次分権改革の成果の範囲は、まず地方六団体の総意に依存したところで大きく限定づけられ、次いで関係省庁が同意した範囲内に限界づけられた」として、「まことに身も蓋もない言い方で恐縮であるが、これが厳然たる事実である」と述べています。そして、「自治体関係者は徹頭徹尾これを支援し続けてくれただであろうか。否である」として、「町村会、市長会、知事会に寄せられているのは首長を始め企画調整・総務系統の自治体トポクラートの意向である」のに対し、「自治体の事業部局系統の自治体テクノクラートは中央省庁の官僚と縦糸で結ばれたポリシー・コミュニティに属している」ため、「必置規制の緩和、国庫補助負担金の整理合理化、事務権限の移譲などについては、自治体内部の担当セクションの職員たちが反対に立ち上がることは決して珍しいことではなかった」と指摘しています。
第3章「第一次分権改革の成果と限界」では、「第一次分権改革の最大の成果は機関委任事務制度を、整理合理化でも原則廃止でもなく、全面廃止したことである」と述べています。そして、委員会が、従前の機関委任事務の振り分け先として、
(1)この機会に事務そのものを廃止するもの
(2)国の直接執行事務に引き上げるもの
(3)自治体の法定受託事務にするもの
(4)自治体の自治事務にするもの
の四類型を設けたが、「ほとんどすべての機関委任事務は(3)の法定受託事務か(4)の自治事務とされた」と述べています。
また、「機関委任事務制度の全面廃止によって生じる自治体の裁量の余地」について、
(1)条例制定の余地の拡大
(2)法令解釈の余地の拡大
の2つに分かれると解説し、「より重要なのはむしろ第2の法令解釈の余地の拡大の方である」と述べています。
さらに、国地方係争処理委員会の誕生が「難産をきわめた」にもかかわらず、「ただの一回しか活用されず、それ以来長らくいたずらに開店休業状態を続けているのは、どうしたことか。自治体関係者には国と抗争してでも地方自治の地平を切り開こうとする気概が欠けているのではないか、、と慨嘆せざるを得ない」と嘆いています。
地方税財政制度の改革については、『第二次勧告』に収録された改革について、
(1)国庫補助負担金の整理合理化
(2)存続する国庫補助負担金の運用・関与の改革
(3)地方税財源の充実確保
の3つの課題に分けられたと述べたうえで、「国庫補助負担金制度による関与には、これまでのような狭義の関与とはいささか性質の異なるもう一つの関与の側面、自治体政策を国の各省庁の期待する方向に『誘導』するというより広義の関与の側面があることに留意しておかなければならない」と指摘しています。
また、当時の橋本首相から、「都道府県から市区町村への事務権限の更なる移譲」と「国の事務事業の地方移管」という2つの課題を特命として設定されたうち、後者について、「どこからどのように切り込むか」という切り口が、
(1)計画行政体系の見直し
(2)公共事業分野の国直轄事業の都道府県への移管
(3)公共事業分野の国庫補助負担金の整理合理化
の3点であったことを解説しています。
著者は、地方分権推進委員会の活動の成果について、諸井委員長が、「地方分権改革の道程を登山にたとえ、ベースキャンプを設営した程度のことで、山頂に達するまでのこの先の道程は長く険しい」と語ったことを紹介し、「未完の分権改革」がこの先辿るべき道筋に残されている課題について、
(1)地方税財源の充実確保、いいかえれば地方財政秩序の再構築。
(2)法令などによる義務づけ、枠付けを緩和すること。
(3)事務権限の移譲。
(4)地方自治制度の再編成。
(5)住民自治の拡充。
(6)「地方自治の本旨」の具体化。
の6点を挙げています。
第4章「第二次分権改革」では、著者の時期区分と用語法として、「2000年4月施行の地方分権一括法の結実した地方分権改革を持って第一次分権改革と称し」、「地方分権一括法が施行された時点以降の地方分権改革を第二次分権改革と称してきた」と述べています。
そして、地方制度調査会専門小委員会の審議に資するため、2002年秋に、地方制度調査会の「お家芸」である、「事務当局である総務省としては提案しにくいような提案を総務省に代わって調査回復会長から個人的な試案として提出を求めるという方式」に沿って、「西尾試案」を提出した経緯が述べられています。
また、市町村合併の進展が道州制論議に連動していく道筋として、
(1)市町村合併の進展によって都道府県内の市町村数が激減してしまう都道府県が生じると、都道府県の存在理由を問われる事態に立ち至る可能性がある。
(2)市町村合併の進展によって都道府県内の政令市、中核市、特例市の数が増え、都道府県の事務権限をこれらの市に大幅に移譲しなければならなくなる都道府県が生じると、これほどまでに事務権限が空洞化してしまった都道府県が果たして必要か、都道府県の存在理由を問われる事態に立ち至る可能性がある。
(3)市町村合併を期に、都道府県条例によって都道府県の事務権限を大幅に市区町村に自発的に移譲する都道府県が生じると、これらの都道府県では事務権限の空洞化が進む。
の3点を挙げています。
さらに、道州成功沿うにっ衝いて論議する際に、「どのような道州制構想について論じ合っているのか、お互いに確認した上でのことにしなければならない」として、これまで提唱されてきた道州制の構想を、
(1)連邦制国家を構成する単位国家としての「州」、「邦」、「共和国」等を想定している構想。
(2)国の直下に位置する、国の第一級地方総合出先機関を想定している構想。
(3)国の第一級総合出先機関としての性格と広域自治体としての性格と併せ持つ融合団体を想定している構想。
(4)都道府県よりも原則として広域の、都道府県と並存する新しいもう一層の広域自治体を想定している構想。
(5)都道府県に変わる新しい広域自治体を想定している構想。
の5つに類型化し、第27次及び第28次地方制度調査会が示した道州制構想では、(1)ないし(3)の構想を却下し、(5)の構想を採用すべきとしたこと、自民党の道州制議連や道州制調査会での議論では、(3)の類型に属す構想が「大手を振ってまかり通っている」ことなどを解説しています。
著者は、地方分権改革推進委員会に心していただきたいこととして、「先の地方分権推進委員会の調査審議の仕方を決して見習ってはならない」と述べ、その理由として、「各省庁の同意を得られるようなことはほとんどすべて第一次分権改革ですでに達成されてしまっている」ことを挙げ、「地方分権推進委員会には勧告として内閣に提出する改革案を次々に立案する作業に先進することとし、関係省庁を承服させて改革案を実現に移す作業は内閣の責任に属す、と割り切ってしまうべきである」と述べています。
また、自治体関係者に望みたいこととして、
(1)地方六団体の結束
(2)個々の自治体と自治体職員が自ら最善と考える改革案を積極的に立案し提案していく
の2点を挙げています。
第5章「集権分権理論の再構成」では、戦後日本の地方自治制度の位置づけについて、著者の教科書から、「日本の地方自治制度は、戦後改革によって、戦前のそれに比べれば大幅に分権化され分離化されたとはいえるのだけれども、以下のような諸点が戦前から戦後にそのまま継承されているので、依然として集権融合型の特徴点を色濃く残している」として、
(1)自治体に対する授権は概括例示方式である。
(2)自治体を国の下部機構として活用する方式、なかでも自治体の執行機関を「国の機関」としこれに「国の事務」の執行権限を委任する機関委任事務方式を多用している。
(3)都道府県と市区町村の間に上下の指揮監督のヒエラルヒー構造を残しているので、依然として集権融合型といわざるを得ない。
の3点を指摘しています。
また、「第一次分権改革以降今日に至るまでの地方分権改革は、戦後改革移行の地方制度改革において繰り返し論じられてきた市町村優先で事務を再配分しようとする論議や、市町村合併、道州制、広域市町村県、広域連合といった地方自治制度を再編成しようとする論議」を「拡大し自治体の仕事を増やす量的な改革ではなしに、自治体に対する『義務付け』をできるだけ排除し自治体の自由度を高めようとする質的な改革であった」と述べ、「そのためには新しい概念の創出と新しい改革の切り口の発見とが必要であった」と述べています。
さらに、「国民国家を構成する近代以降の地方自治制度において、自治体が自己責任に基づいて自己決定できる自律的領域(団体自治)の範囲を確定し安定させるため」には、
(1)国民国家の憲法で地方自治の制度保障がなされ、自治体の自律的領域(団体自治)の範囲が国の法律によって確定されなければならない。
(2)この自律的領域(団体自治)の範囲をめぐって国と自治体の間に係争が発生した際に、この係争を憲法と法律に基づいて国の行政府から独立した司法府が裁定する仕組みを確立すること。
の2つの要件が必要不可欠であると述べています。
著者は、「地方分権改革を政治構造改革であると考えると、地方分権改革においてもっとも重要な論点は、国政と自治体政治を結び付けている陳情政治の構造の改革と自治体政治そのものの構造の改革であるともいえる」と指摘しています。
本書は、地方分権改革の第一人者、そして当事者であった著者が語る、生々しい、というよりは、自身をしっかりと客観視して語った一冊ではないかと思います。
■ 個人的な視点から
2000年4月1日の分権一括法の施行から丸8年がすぎました。ちょうど、知事や市町村長などの首長の任期で言えば2期分が過ぎたわけですが、一括法以後、「改革派知事」が話題になったり、それまでの町おこし的な名物市町村長ではなく、全国のトップを走る先進的な改革に取り組む分権時代の申し子的な市町村長が次々と登場するなど、地方自治体の首長が脚光を浴びるようになった8年間だったのではないかと思います。
『自治体トップの顔に見る分権時代』とかのタイトルで、評伝やインタビュー集を作ったら面白そうです。誰か手がけてくれたら絶対買います。
■ どんな人にオススメ?
・20世紀の自治体の姿はすでに遠い過去になっている人。
■ 関連しそうな本
西尾 勝 『未完の分権改革―霞が関官僚と格闘した1300日』 2007年04月09日
西尾 勝 『行政学』
石見 豊 『戦後日本の地方分権―その論議を中心に』 2007年02月09日
森田 朗 『会議の政治学』 2006年12月07日
大森 彌 『官のシステム』 2007年07月30日
金井 利之 『自治制度』 2007年10月24日
■ 百夜百マンガ
先日、「とことん! 石ノ森章太郎」で古いテレビシリーズを放送していましたが、個人的には世代的に第2シリーズの「ふきす~さぶか~ぜ~が~」の主題歌が大好きです。当時は、歌詞が難しくてきちんと覚えられなかったのですが。「誰がために」って子どもには読めませんって。
投稿者 tozaki : 2008年04月01日 07:00
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