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2008年04月02日

地方財政改革論―「健全化」実現へのシステム設計

■ 書籍情報

地方財政改革論―「健全化」実現へのシステム設計   【地方財政改革論―「健全化」実現へのシステム設計】(#1168)

  小西 砂千夫
  価格: ¥2100 (税込)
  日本経済新聞社(2002/09)

 本書は、「いわゆる行革先進自治体のさまざまな試みを念頭に置きながら、地方財政を単に数字の上ではなく、システム全体として健全にするためには具体的に何をすればよいかを明らかにする」ことを目的としたものです。著者は、「役所はその気になれば、整合性の取れた意思決定ができる組織として蘇ることは可能である』との考えを示しています。
 序章「地方行財政は健全化できるか」では、「地方自治体の行財政システムはどうもうまく機能していない、もっと言えば不健全である」と前置きした上で、解決策は、「そのシステムの担い手が、地道に努力を積み重ねていく以外に決定的な方策はない」として、本書が、地方行財政システムの「あるべき改革の設計図」を示そうとするものであると述べています。
 また、著者が、「いくつかの自治体の行政改革に学んだ経験」を踏まえ、「これからの自治体の財政運営のあり方を検討し、改革の包括的プランを示す提言」を行うとしています。
 第1章「破綻に瀕する地方財政」では、小渕・森内閣時代に地方債残高が急増した理由として、
(1)地方税が伸び悩み、財源不足を地方債で賄った
(2)景気対策の後始末
の2点を挙げ、「国費を使わない景気対策として、地方団体に公共事業を担わせ、その財源として地方債を発行させ、その元利償還金の多くの部分(おおむね5割程度)を、当時は比較的余裕があった地方交付税の増額でまかなうこと」とした、「地方単独事業」という手法がとられたため、「地方はわずかな持ち出しで大きな事業ができるように」なり、地方自治体が競ってハコモノ(会館、美術館、音楽ホール、図書館等)を造り出したと解説しています。
 そして、竹中内閣の「ふるさと創生」の流れを汲むこれらの手法が、「その後の地方財政運営に2つの大きな禍根を残した」として、
(1)役所や議会において放漫財政に対する危機感が薄れ、財政規律の弱体化をもたらした。
(2)地方には無駄な公共事業が多く、都会の金にたかって無駄の限りを尽くしているというイメージが定着した。
の2点を挙げています。
 著者は、「地方財政制度は、結局のところ、主役は地方交付税であって、それが他の制度の変更を吸収する側面がある」と述べ、バブル崩壊後の財政運営によって、「交付税及び譲与税配付金特別会計」(交付税特会)は、平成13年度末で40兆円を超える借入金を抱え、「自治体にまったく交付税を配らずに交付税財源を借入金の返済だけに使ったとしても、3年近くかかる計算になる」という「制度としては、もはや崩壊したといっても過言ではない」状況にあることを解説し、「地方交付税は、長年の制度運営の中で、制度ができた当初とは違う部分がたくさん盛り込まれ、それが未整理なかたちでいまに至っている」が、「本来の形に制度を変えていけば」、「決して批判を浴びるような制度ではない」と述べています。
 そして、地方交付税の問題点として、「考え方が悪いわけではなく、量的に大きくなりすぎたことでナショナル・ミニマムの確保という本来の意味から実態として離れたこと」を挙げ、「実態として、最低限の財源保障と財政力の格差の2つの機能を、ときに使い分けて制度運用されてきた」ことが、「現在のように制度のあり方を考える場合の混乱要因となっている」と指摘しています。
 著者は、地方財政の本当の問題として、「行政運営の現場で、全体的に健全な財政運営が進められていくようにシステムが設計されていないこと」であると述べ、その原因として、「戦後の地方自治制度の発達のなかで、国の政策を地方を通じてやらせるというしくみに、させる側の国もさせられる地方も安住したことによるのではないか」と指摘しています。
 第2章「地方財政における『不健全さ』の源泉」では、「国の枠組みで歳入が固定されている状況では、出ずるに応じて入るはコントロールできない」ことから、「全国の自治体からもう交付税はいい、地方税源を充実させよ」という声が大きくなっていることについて、「その意味が全国一律での地方税の増収か、地方税収を増額する裁量権を高めろということなのかは、自治体間でも同床異夢のところがある」と指摘しています。
 そして、地方財政制度に存在する「2つのパターナリズム」として、
・財政再建団体制度
・地方債の発行許可制
の2点を挙げ、前者については、金融機関の護送船団方式のようなモラル・ハザードを生み、自治体の財政運営能力の向上という点でマイナスに働いたこと、後者については、「自治体は放っておくと借金を繰り返し、目先の事業量を確保し負担を後ろに送ってしまうために、財政状況が逼迫する自治体が続出するので、起債制限が必要という保護者意識」があることは否めない、と述べています。
 また、総務省が、自治体に報告を命じている、「経常収支比率、実質収支比率、実質単年度収支、起債制限比率、財政力指数などの財政指標」について、
・外郭団体や出資法人、債務負担行為の動きについては十分に反映されない。
・ストックベースの動きについては十分把握されない。
という問題点を指摘し、「そのような不完全な指標しか提供しなかった責任を、総務省の問題と指摘することができる」としています。
 さらに、財政運営に関して、「大きな金額を扱う割には金融的なノウハウを欠いている点」を指摘しています。
 第3章「地方財政健全化のためのシステム設計」では、薬害エイズ事件で、菅直人が厚生大臣に就任したとたんに、所在不明としていたファイルが出てきたエピソードを紹介した上で、「役所を動かすためには、役人の職責をはっきりさせ、その職務が役所としてやるべきであることを納得させ、結果についてトップは逃げないで責任をとるという信頼を得ることが必要である」と述べ、「役人は基本的に使命感を持っており、外から見えるほどには無気力でも無能力でもない」としています。
 また「政策評価を行えば、ただちに無駄な歳出が減る」という考えが、「科学万能主義に通じる落とし穴である」と述べた上で、「事務事業評価のなかで見過ごされがちであるのは、実は評価ではなく、コストの把握である」として、「人件費というコストを事業評価に際して見直していく作業は、実に有用である」と述べています。
 第4章「財政健全化のための発生主義会計の活用方法」では、発生主義会計を活用するときの方向性として、
(1)発生ベースでコストを把握する習慣や意識を醸成する。
(2)ハコモノの建設・運営コストのライフサイクルでの把握に用いる。
(3)バランスシートや行政コスト計算書を使って債務償還能力を分析し、それを使って地方債の適正な発行額を決める。
の3点を挙げています。
 そして、著者の経験から、「自治体の財政運営上で必要な情報は、バランスシートとは大いに関連はあるが、ぴったり同じではない」として、「完全なバランスシートを作ることは悪いことではないが、そこに記載されるべき情報の一部があれば十分である」と述べ、「バランスシートの導入を、自治体改革の戦略の一つとして結びつけていくためには、バランスシートが表現できる部分を過大に評価しないで、それを役所の財政運営に結びつける方向性と意図を明確にすることである」と述べています。
 また、これまでの地方財政制度が、「債務償還能力そのものを定義して、それを具体的な目標として財政運営をしていくという観点を欠いていた」ことを指摘し、起債制限比率という指標が、「いかにも制度に守られた財政運営という印象」を与え、「自治体としては、監督官庁に許可される範囲で地方債を発行していればいいという感覚で、債務償還能力を自己管理する発想すら持ってこなかった」と述べています。
 さらに、これまでの自治体の財政破綻が、「財政状態のよしあしをすべてフローの数値によって判定してきた」が、「真に財政力の分析」といえるものである「債務償還能力の分析」を行っていなかった点を指摘し、「自治体の場合には当面の資金繰りには困ることはない」ため、「債務償還能力の分析に集中すればよい」と述べています。
 第5章「健全化のための地方財政制度改革」では、「地方財政の健全化が進まないのは、地方交付税に多くの自治体が財源を依存しているからであり、地方交付税を地方税に振り替えていくことで、自治体の自助努力を引き出すべきだという見方」について、「相した奉公での改革は、やり方次第では、自治体間の財政力格差を助長し、地方財政の基盤を崩すような副作用がある」と指摘し、「当面は、地方交付税制度の枠組みや考え方は残した上で、財源保障すべき範囲を抜本的に制限縮小することが重要である」と述べています。
 そして、「地方交付税に期待されていること」として、
(1)交付税によって保障されているサービス水準を今後も下げない
(2)国税・地方税合わせた税負担はいまよりも増えない
(3)自治体間で提供されるサービス水準は財政力が違っても格差をできる限りつけない
の3点を挙げた上で、「地方交付税に対する理解は十分でない」最大の理由として、「どんな自治体でもナショナル・ミニマムを確保する」という交付税の基本的な性格が、「いまや実態とはかけ離れて、『国が用意した制度や政策を運営するに必要な財源を総額として保障する』といった一種のブロック補助金(財政力格差を反映した)になっているにもかかわらず、そのような説明が十分でないこと」であると指摘しています。著者は、「地方交付税はそこで想定されている標準行政が、ナショナル・ミニマムの範囲である間は望ましい制度であるが、それを超えるものになったとたんに、結局は総花的行政を保障し、奨励する手段となって、制度そのものが堕落する」と指摘しています。
 また、「地方交付税は、貧しい団体にぎりぎりの低い水準のナショナル・ミニマムを保障するときにのみ、正当性が主張できる。いわば目的税の文脈に近い」とした上で、「その税目の税収が伸びて、財政需要を上回ってしまうと、目的税ほど始末に負えないものはない。効率性の低い歳出を続ける権利を保証するからだ」と述べています。
 さらに、交付税改革の方向性として、
(1)地方財政計画のもとになっている政策メニューを見直すこと。
(2)地方交付税制度の発足当時の基本的な考え方に沿って、運用を本来の形に戻していくこと。
の2点を挙げ、「財源がないときには調整率をかけて無理をして配らない発想」が必要であり、そのためには、「交付税に盛り込まれた政策メニューを、必修科目と選択科目、すなわち自治体に義務づけられた政策(いわゆるナショナル・ミニマム)と、自主的に選択する部分に分けることが必要である」と述べています。
 終章「自治体に学び、国は財政改革を急げ」では、「地方の健全化を成功に導くノウハウは、国の財政システムの健全化に直接役立てることができる」として、「健全化のための確実な設計図を引くことが、政にも官にも、そして学にも求められている」と述べています。
 本書は、地方財政について、システム全体としての見地からの改革を論じた一冊です。


■ 個人的な視点から

 著者の小西先生には勉強会などでお世話になっています。地方財政のフィールドである、地方自治体と総務省の2つの現場に精通されたうえでのお話は、どちらかに依拠した研究や、理論をベースにした研究にはない力強い説得力があります。


■ どんな人にオススメ?

・地方財政をどげんかせんといかんと思っている人。


■ 関連しそうな本

 赤井 伸郎, 山下 耕治, 佐藤 主光 『地方交付税の経済学―理論・実証に基づく改革』 2005年01月27日
 吉富 有治 『大阪破産』 2006年10月20日
 赤井 伸郎 『行政組織とガバナンスの経済学―官民分担と統合システムを考える』 2006年11月24日
 平嶋 彰英, 植田 浩 『地方債』 2006年12月14日
 白川 一郎 『自治体破産―再生の鍵は何か』 2006年10月30日
 持田 信樹 『地方分権の財政学―原点からの再構築』 2007年03月15日


■ 百夜百マンガ

ブラブラバンバン【ブラブラバンバン 】

 「ブラバン」といえば吹奏楽というイメージがありますが、厳密にいうと「ブラスバンド」と「吹奏楽団」は違うものだそうです。

投稿者 tozaki : 2008年04月02日 22:00

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