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2008年04月13日
暴力はどこからきたか―人間性の起源を探る
■ 書籍情報
【暴力はどこからきたか―人間性の起源を探る】(#1179)
山極 寿一
価格: ¥1019 (税込)
日本放送出版協会(2007/12)
本書は、「人間と類人猿との遺伝的な違いは、類人猿と他の霊長類との違いよりも小さい」などといった「系統的な違いに基づき、さまざまな主の生態や行動についての最新の報告」と著者自身の「長年のフィールドでの知見を踏まえながら人間の特長について考えて」いるものです。
第1章「攻撃性をめぐる神話」では、スタンリー・キューブリックの『2001年宇宙の旅』の冒頭シーンにおける、「道具を持たなかった猿人たちが、あるとき宇宙から来たと思われる謎の物体に遭遇して霊感のように知性のひらめきを得、動物の骨を狩猟の道具として用いることを思いつく」シーンを紹介し、「人間の祖先が武器を用いて狩猟者としての能力を高め、それを同種の仲間へ向けて戦いの規模を拡大してきた」というロバート・アードレイの説や、「攻撃性というものがいかに動物たちの基本的な行動を形作っているかを解説し、同種の仲間に対する攻撃が内的な衝動によって引き起こされるものである」かを説いたコンラート・ローレンツらの説を紹介し、現在では、「この考えが間違いであることは、いくつかの証拠によって明らかとなっている」と述べています。
また、「食と制という異なる葛藤とその解消法は、霊長類のさまざまな生態と社会の特性に応じて多様に発達してきた」と述べ、「人間の社会にみられる争いも、和解の方法も、その延長線上に形作られているのである」と解説しています。
第2章「食が社会を生んだ」では、「私たち人間にとっても争いごとの原点は食物にある」として、「他の生命とさまざまにぶつかり合いながら、それが致命的にならないような方法を編み出して共存にいたる」と解説しています。
また、中高生の霊長類が、「単独で目立たないように行動する性質を進化」させるという夜行性の霊長類の対捕食者戦略をやめ、「群れを作ることで捕食者の危険を減じようとした」として、「捕食者を早く発見し、素早く逃げたり、数を頼りに対抗する戦略を発達させた」と解説しています。
第3章「性をめぐる争い」では、19世紀の人類学者たちが、「家族が人間の社会を特徴づけるものであること、それがインセストタブーによって成立していることを論じた」ことを紹介した上で、「人間の家族は、その始まりにおいて、ペア社会から生まれたものではない。群れがまずあり、そこに家族というペア社会を可能にする仕組みができたのだ」と述べ、「ペアではない集団生活からどのようにして、ペアに性交渉を限定するような家族が生まれたのか。そのプロセスにインセストの禁止が大きな働きをしているはずである」と述べています。
また、伊谷純一郎が、「霊長類の社会構造を動かしている回転のシャフトは、インセストの回避機構であると考えた」ことを紹介しています。
さらに、チンパンジーやボノボなどの父系社会では、「メスは子どもを産む前に生まれ育った集団を離れることが知られている」と述べ、「初期の人類社会がもし類人猿と同じような父系的な性格を持っていたならば、やはりインセストの起こる可能性が高かったに違いない」が、「それを人類はタブーという規範にして社会をつくったのだろうと思われる」と述べ、「そんな規範が必要だった」理由として、「インセストの回避によって親子兄弟姉妹が性的な競合を減じて共存できる」点を挙げています。
第4章「サルはどうやって葛藤を解決しているか」では、ニホンザルが「優劣順位によって場所の優先権を認め合い、争いが起こらないようにしている」ことを紹介し、「オスの間には直線的な優劣順位がある」のに対し、「メスたちは、母親から順位を継承し、自分の属する家系のメスを援護することによって、直線的な順位を維持している」ため、「すべてのメスと順位を確認しあう必要はない」と解説しています。
そして、優劣順位が、「あくまで群れの中でサルたちが共存しあうための了解」であり、「群れの外でも通用するわけではない」と述べています。
また、ボノボの「変わった仲直り行動」として、「メスどうしが対面し、膨張した性皮を左右に擦り合わせる」という「ホカホカ」と呼ばれる行動を紹介し、「ボノボは社会的緊張が高まると、性交渉によってそれを解消しようとする」と解説しています。
さらに、チンパンジーやボノボが、「生きるために必ずしも重要とは思えない食物をあえて分配している」ことについて、「食物を社会的な手段として用いて、互いの関係を調整していることを示唆している」と解説しています。
第5章「暴力の自然誌」では、「オスによる子殺しは多くの霊長類で見つかるようになった」ことについて、「子殺しが起こる種は、メスが群れ外のオスと交尾をしないという特徴」があり、「発情に季節性がなく、メスが一斉に発情しないという特徴」があると述べ、他の類人猿との比較では、「形の上で単独生活やペア生活を送るか、複雄複雌で完全な乱交という交尾様式の主には子殺しが起こっていない」が、「雄の雌に対する占有志向が強く、それが果たせないような社会型や交尾様式の種に子殺しは起こる」と解説しています。
また、食物を「分け与える」ことと「分かち合う」ことは異なると述べ、「負債のイデオロギー」と「共存のイデオロギー」とを対比させています。
著者は、「大量殺戮を辞さないほどの苛烈な戦争が人類に起こるようになった」要因として、「言語の出現と土地の所有、そして死者につながる新しいアイデンティティの創出によって可能になった」と述べ、「現代は、そうした人間のアイデンティティをそのままにして、ボーダーレスに突入してしまった混乱の時代である」と指摘しています。
本書は、人間の本質を、我々に近い類人猿の社会の観察に求めた一冊です。
■ 個人的な視点から
よく凶悪な事件、特に肉親の間の殺人事件などが起こると、「太古の人類にはこんな自然の法則に反したような犯罪はなかった。人類が自然を忘れてきたことへの警告として受け止めるべきではないか」的な、「社説」なり「読者投稿」(実際には同じ人が書いてるのかもしれませんが)が掲載されたりしますが、原初の人類や類人猿や自然をあまりに美化しすぎるのも考えなさ過ぎな気がします。
■ どんな人にオススメ?
・なぜ人間は戦争をするのかを考えたい人。
■ 関連しそうな本
西田 利貞 『人間性はどこから来たか―サル学からのアプローチ』 2008年03月09日
リチャード・ドーキンス (著), 日高 敏隆, 岸 由二, 羽田 節子, 垂水 雄二 (翻訳) 『利己的な遺伝子』 2006年09月26日
ジャレド ダイアモンド 『人間はどこまでチンパンジーか?―人類進化の栄光と翳り』 2006年09月29日
ニコラス ハンフリー (著), 垂水 雄二 (翻訳) 『喪失と獲得―進化心理学から見た心と体』 2006年4月15日
ブライアン サイクス (著), 大野 晶子 (翻訳) 『イヴの七人の娘たち』 2006年06月24日
リチャード・G. クライン 『5万年前に人類に何が起きたか?―意識のビッグバン』 2006年10月21日
■ 百夜百音
【和田弘とマヒナスターズ】 和田弘とマヒナスターズ オリジナル盤発売: 2005
マヒナスターズと言えば、若い人にとっては、コーネリアスのお父さんが在籍していたグループとして有名ですが、もともとお座敷向けの歌なので、カラオケである年齢層以上だと単純に盛り上がれるのもポイント高いです。
投稿者 tozaki : 2008年04月13日 21:00
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