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2008年04月15日

行政手法ガイドブック―政策法務のツールを学ぼう

■ 書籍情報

行政手法ガイドブック―政策法務のツールを学ぼう   【行政手法ガイドブック―政策法務のツールを学ぼう】(#1181)

  山本 博史
  価格: ¥1575 (税込)
  第一法規出版(2008/04)

 本書は、「行政が一定程度関わって公共的に解決すべき課題(行政課題)」を解決するためのツールである「行政手法」を知り、「それぞれの行政手法(薬)のメリット(効能)ばかりでなく、デメリット(副作用)も知っておく」ことを目的としたものです。
 本書では、「条例等の制度設計の骨格」である、
(1)誰が(主体)
(2)何に対して(対象)
(3)どういう手段を(手法)
(4)どういう手続と基準で(手続と基準)
実施するかのうち、行政手法という「薬」のメニューについて、実例を挙げ、その「使用上の注意」を説明しています。
 著者は、本書執筆の動機として、「行政課題を解決するための『行政手法』は、きわめて身近な問題を扱って」いるため、「行政において秘匿されるべきものではなく、もっと開放されるべきものと考えて」いると述べています。
 第1章「行政手法の基本的な考え方」では、「行政手法」について、「公共的に解決することが求められる課題(行政課題)を処理するための、現実的で実用性のある手だて(政策法務のツール)である」と定義した上で、その類型として、
(1)行政活動の資源(リソース)に着目する類型
(2)行政活動の時間的な経過に着目する類型
(3)コントロールの性格に着目する類型
の3つの類型を挙げています。
 また、行政手法を採用するに当たっての留意点として、
(1)多くの行政手法を知り、その内容を理解すること
(2)各行政手法のメリットのみならず、デメリットも理解しておくこと
(3)複数の行政手法を検討し、最も適しているものを採用すること
(4)法令違反などをしないこと
(5)複数の行政手法の組み合わせも検討すること
(6)将来的に見直すことも視野に入れておくこと
の6点を挙げています。
 第2章「行政手法の諸類型」では、行政手法について、下記の6つに類型化し、それぞれ解説しています。
(1)計画手法:「具体的な現実の事象を基礎にした正しい現状認識」と「利用可能な行財政上の能力」とを考慮して、一定の目標年次までに達成可能と考えられる「具体的な行政目標とその実現手段」(目標プログラム)を示す手法
(2)誘導的手法:対象者(住民、企業等)に何らかのインセンティブ(誘因)を与えることによって、一定の行為を行なうよう、又は行わないように働きかける非権力的な手法――補助手法(経済インセンティブ手法)、経済的手法(経済的ディスインセンティブ手法)、情報手法、行政指導手法
(3)コミュニケーション手法:対象者(住民、企業等)と行政との間または対象者相互の間で、情報の提供・収集などのやりとりを促進・保障することにより、行政活動を円滑化させたり、関係者の合意形成を図る手法――ワークショップ、パブリック・コメント、パブリック・インボルブメント、ノー・アクション・レターリスクコミュニケーション等
(4)規制的手法:対象者(住民、企業など)の意思に反しても、一定の行為を行なうよう、または行なわないように働きかける権力的な手法――許可制、協議制、届出制(「届出+勧告命令」制)、確認制・指定制
(5)実効性確保の手法:義務を履行しない者等の身体または財産に直接実力を加えることなどにより、行政目的を確実に実現させるための手法――罰則制、命令制、許可制の取消しその他、立入調査、直接強制・即時強制など
(6)その他の手法――契約的手法、民間活力活用手法、紛争処理手法など
 第3章「行政手法の組合せ」では、行政手法が、「単独でその効果を十分に発揮できるのは、むしろまれ」であり、複数の行政手法を「組み合わせることにより、それぞれのメリットを最大限に生かし、又はそれぞれのデ
メリットを軽減させること」が必要であるとしています。
 そして、「様々な組合せ方法」として、
(1)「規制的手法」内における組合せ:「許可制」と「届出制」、「許可」と「変更許可」、「協議制」と「許可制」
(2)「規制的手法」と「実効性確保の手法」との組合せ:「許可」と「許可取消し」、「届出」と「命令」、「届出」と「罰則」
(3)「規制的手法」と「誘導的手法」との組合せ:「許可制」「基準に適合しない場合の行為の禁止」と「補助金」
(4)その他の組合せ
(5)条例立案等の実践における行政手法の組合せ
の5点を挙げて解説しています。
 また、千葉県において、「新規条例の立案過程の初期段階や、パブリック・コメントの案の公表」の際に作成・活用している「条例のチャート」について、「厳密性にかける部分もあるが、条例の基本構造と行政手法間の関係を短時間で把握し、説明するのに適したスキル」であると解説しています。
 第4章「条例立案のプロセスとスキル」では、「もしも新規条例の担当者になったら」という想定で、著者を投影した「政策法務担当職員Y」氏から、やさしく厳しい条例立案の指導を受けることができます。
 そして、条例立案に際してぜひとも知っておきたい重要なスキルとして、
(1)行政手法:多くの行政手法とこれらの組合せ方法を知る。
(2)立法パターン:基本的なパターンは、実はそれほど多く存在しない。
の2点を挙げています。
 まずは、「とにかく急いでつくれ」と上司に言われて血相を変えて飛び込んできた「原課」担当職員氏に、条例案の作成スケジュールとして、
(1)新規条例制定の方向性の決定(検討開始の決定)
(2)スケジュールの作成
(3)立法事実(条例の必要性を裏付ける事実やデータ)の収集・整理
(4)庁内調整(継続)
(5)市民参加(継続)
(6)審議会への諮問・答申
(7)条例案の作成
(8)他の自治体等との調整(継続)
(9)幹部職員への説明(適宜)
(10)予算・人員の確保の見込み
(11)条例審査
(12)検察協議
の手順を示し、「基本的に、短期間では条例はつくれない」と諭しています。
 また、「条例の目的・採用する行政手法を含めて、条例化の必要性・正当性を根拠付ける社会的な事実」である「立法事実」を説明する資料において、
・害悪などの抽出・分析
・これまで本県が取り組んできた対策とその限界の説明
・社会学的な調査や専門家の意見
・条例に盛り込もうとする行政手法を選択する理由
・関係法令の趣旨・目的に反していないことの説明
などを盛り込む必要があると解説しています。
 さらに、「タウンミーティングや勉強会の開催、専門家や公募委員などで構成される条例検討会」などの「市民参加」のメリットとして、
(1)市民の主体性が確保できる。
(2)多様な意見を条例案に反映できる。
(3)条例制定過程で、関係者等の一定の理解が得られる。
の3点を挙げる一方、そのデメリットとして、
(1)時間がかかる。
(2)一部の声の大きな者の意見が、すべての者の意見として反映されてしまうおそれがある。
(3)「条例でできること」、「条例ではできないこと」が理解されていないと、議論の収拾がつかなくなるおそれがある。
の3点を挙げています。
 そして、条例案の作成の段取りとして、
(1)条例チャート案(全体像)
(2)骨子案(項目)
(3)条例要綱案(文章化)
(4)条例素案(ラフな条文形式)
(5)条例案(緻密な条文形式)
の5つの流れを示しています。
 条例素案ができた段階では、条例立案に際して、「既存の法令との調整をしつつも、いわば"攻めの法務"」を行っている「政策法務担当」に加えて、「法令用語や既存の法令との整合性などのチェックを重視する、いわば"守りの法務"」を行っている「法規審査担当」によるチェックを受ける「条例審査」について解説しています。
 本書は、「政策法務」の最前線にいる実務担当者自らが、そのノウハウを隠すところなく明かした、大変お買い得かつ有用な一冊です。


■ 個人的な視点から

 著者の山本君は、同い年で十数年来の友人ということもあり、このたび単著を出したことは羨ましくもありつつも、日頃、深夜遅くまで忙しくしているのを見ていると、やっぱり実務の蓄積の大切さを感じます。


■ どんな人にオススメ?

・行政のさまざまな手法を体系的に理解したい人。


■ 関連しそうな本

 田口 一博 『一番やさしい自治体政策法務の本』
 東京都市町村職員研修所 『これだけは知っておきたい政策法務の基礎』
 太田 雅幸, 吉田 利宏 『政策立案者のための条例づくり入門』
 木村 純一 『行政マンの政策立案入門―キャリア・アップ!』
 兼子 仁 『自治体行政法入門―法務研修・学習テキスト』
 鈴木 庸夫 『自治体法務改革の理論』


■ 百夜百マンガ

るろうに剣心―明治剣客浪漫譚【るろうに剣心―明治剣客浪漫譚 】

 何となく時代劇のイメージで見慣れている江戸に比べ、明治維新後の東京はビジュアル的には江戸の雰囲気を引きずりながら常に変化し続けていて固定したイメージがないような気がします。

投稿者 tozaki : 2008年04月15日 06:00

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