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2008年05月29日

ふしぎの博物誌―動物・植物・地学の32話

■ 書籍情報

ふしぎの博物誌―動物・植物・地学の32話   【ふしぎの博物誌―動物・植物・地学の32話】(#1225)

  河合 雅雄
  価格: ¥777 (税込)
  中央公論新社(2003/01)

 本書は、「新しい博物学とは何かを知っていただき、また、生涯学習の友として役立つような興味深い話題を集めて構成した」ものです。
 第1章「オトシブミのゆりかご」では、「究極の糞の利用」である「糞食」について、「糞には未消化な栄養物の残渣がたくさん残って」おり、「糞を回収して栄養分として再摂取できれば、最高のリサイクルシステムといえる」とした上で、「糞そのものが栄養資源であり、もっといえば糞を再接種しなければ餓死するという動物」としてウサギを取り上げ、「捕食からいかに逃れるか」が大切なウサギにとって、「体が小さいから大きな醗酵胃を持つことはできないし、悠長に反芻しているわけにはいかない」ために、「糞食という特殊な消化システムを進化させた」と述べています。
 そして、昆虫が六本足である理由について、「地面のつけている足が3本、空中で前に進める足が3本」であり、「平面は3点の座標で決定される」という幾何学を用いると、「安定のまま、前方に伸ばした3本の足と交代させれば、サササーッの滑らか走行が完成する」と述べています。
 また、「アリだけを食べる変わったアリ」として、ヒメサスライアリを取り上げ、「他のアリの巣に押し入って、幼虫やサナギ、成虫までも餌食にしてしまう」と述べ、彼らが、「自分たちの体に非情な改造を行うことで、一糸乱れぬ全体行動を可能にした」として、「全員の目を無くしてしまった」ことで、「いつも仲間と体をくっつけあうようにしていないと、迷子になってしまう。その結果、自然と隊列が形作られる」と解説しています。
 さらに、「アリになりすまして、アリの巣の中に住み着いてしまうハチがいる」として、エイコアブラバチが、トビイロケアリの巣の中に入り込もうとする理由を、「アリが巣の中で買っているアブラムシに寄生するため」であると解説しています。
 第2章「熱帯雨林の妖怪ラフレシア」では、里山を、「薪炭の生産を目的として定期的に伐採・利用される二次林(薪炭林)のこと」であるとした上で、「世界に誇ることができる日本一の里山」として、北摂の里山を取り上げ、そのすばらしさを、
(1)当地の里山の歴史性
(2)里山が生きていること、つまり、里山の伐採、炭焼きによって、本来の里山景観が現在も持続していること
(3)大入道がつっ立って、両手を広げたような奇妙な形の台場クヌギの存在
(4)クヌギ林の昆虫群集
の4点にまとめています。
 また、ラフレシアが、「1818年、当時スマトラ島の副総督だったトマス・スタンフォード・ラッフルズ卿によって発見された」とされてきたため、「ラフレシア」という名前が生まれたが、1797年に、フランスの博物学者ルイ・オーギュスト・デシャンプによって最初に発見されたことが最近の研究でわかっており、彼が、「不幸にも戦争のため学術的な扱いを受けなかった」と述べています。
 第3章「象歯年代記」では、化石の魅力の一つとして、「現代の生き物とは違う独特な形を持っていること」を挙げ、「古生代の生き物は現代の生き物とは一味も二味も違うものが多く、とても魅力的な存在である」と述べています。
 また、「東京湾に面した都心のはずれに、奇跡的に開発を免れた自然の干潟がある」として、千葉県・小櫃川河口の盤洲干潟を取り上げ、「広大な葦原をともなった希少な塩生湿地が今も残されていることで有名だ」と述べ、ここに、「肉眼レベルの生物はもちろんのこと、顕微鏡レベルでも貴重な生物が発見されている」として、発見者の故小杉正人氏にちなんだ、「シュードポドシラ・コスギィ」を紹介しています。
 さらに、花粉について、「花は束の間の美しさの中にはかなく消えてゆくが、飛散した花粉は土の中にひっそりと永遠の命を保ち続ける」として、「その見えない花園は、壮大な過去の森の姿、森の歴史を物語ってくれる」と述べています。
 本書は、博物学の楽しさの一端を垣間見せてくれる一冊です。


■ 個人的な視点から

 博物学と言うと、博物館の中で顕微鏡を覗いているイメージがありますが、あらゆる自然を、博物学の目で見ることができたら、それはそれで楽しそうです。きっと楽しいに違いないと思われます。


■ どんな人にオススメ?

・身近な「ふしぎ」を発見する目を持ちたい人。


■ 関連しそうな本

 ピーター アトキンス (著), 斉藤 隆央 (翻訳) 『ガリレオの指―現代科学を動かす10大理論』 2006年5月5日
 荒俣 宏 『大東亜科学綺譚』
 亀谷 了 『寄生虫館物語―可愛く奇妙な虫たちの暮らし』 2006年08月26日
 リチャード・ドーキンス (著), 日高 敏隆, 岸 由二, 羽田 節子, 垂水 雄二 (翻訳) 『利己的な遺伝子』 2006年09月26日
 スティーヴン・ジェイ グールド 『ワンダフル・ライフ―バージェス頁岩と生物進化の物語』 2007年03月03日
 ビル ブライソン (著), 楡井 浩一 (翻訳) 『人類が知っていることすべての短い歴史』 2007年04月08日


■ 百夜百マンガ

おせん【おせん 】

 ドラマにもなった作品。食べ物の美味しそうな感じは、動画よりも、情報量の少ないマンガのほうが伝わる気がします。
 ところで、昔ながらの古い宿屋に泊まるのは風情があっていいですが、小さい子供連れではなかなか気後れしてしまいます。

投稿者 tozaki : 2008年05月29日 22:00

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