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2008年05月03日
テレビはインターネットがなぜ嫌いなのか
■ 書籍情報
【テレビはインターネットがなぜ嫌いなのか】(#1199)
吉野 次郎
価格: ¥1575 (税込)
日経BP社(2006/11/30)
本書は、「インターネットの影響で、放送ビジネスが大きな転換期を迎えている状況を解説」したものです。
序章「五十年かけて密かに築いた"おいしいビジネス"」では、「テレビ局に、どうしこれほど富が集中しているのだろうか。他の先進国を見回しても、ここまでテレビ局が成功している国はない」と述べ、「日本のテレビ局が、半世紀をかけて、優れたビジネスの仕組みを築き上げた成果である」と語っています。
そして、「テレビ局がインターネットを嫌う理由は、たった7つに集約できてしまう」として、それを本書の章立てにしたと述べています。
第1章「地上デジタル巡る攻防戦」では、「映像を配信できるインフラ」である電波を独占してきたテレビ局に対して、「通信会社がブロードバンド回線で本格的に攻勢をかけようとしている」という状況を解説しています。
そして、テレビ業界がブロードバンドで番組を流すのを認めない理由が、「高い視聴率を維持したい」という答えにたどり着くとした上で、世界でもまれに見る「有料放送大国」となってしまって勢いを失った米地上波テレビ業界の惨状を解説しています。
第2章「揺れる最強の番組流通システム『系列』」では、テレビ局がインターネットに番組を提供しない理由として、表向きは、「著作権の処理が大変だ」という理由を挙げているが、実は、「単純に『儲からない』というだけである」という理由を述べています。
また、キー局が「全国規模で事業を営んでいる大手企業からの広告依頼」を受け、「系列の地方局に番組と一緒にCMを放送してもらうことで、こうしたスポンサーから巨額な広告費を集められている」と解説しています。そして、「キー局のCM収入の仕組み」として、
(1)タイムCM:特定の番組につくスポンサーのCM
(2)スポットCM番組が終わってから次の番組が始まるまでの"すき間"の時間帯を埋めるCM
の2種類のCMについて解説し、キー局が、「潤沢なタイムCMを基に、魅力的な番組を作り上げ」、「さらに、残ったタイムCM収入で地方局に電波料を払って、その番組を全国に流してもらう」とともに、「番組の制作費はタイムCM収入で賄えているし、地元だけで流すCMなので地方局に払う電波量も不要」なスポットCM収入の「ほとんどをそのまま粗利益として確保できる」と述べています。
第3章「成長力失った公共放送はネットに夢中」では、「悲願のネット進出」を果たすためのプロパガンダ装置として、NHKが「NHKアーイカイブス」を建設したとして、「NHKが、「ラジオ放送、テレビ放送、BS放送とメディアを増やすことで、拡大してきた組織」であり、「新たなメディアに手を出さないと、いずれ成長が止まるという宿命を抱えている」と解説しています。
そして、民放テレビ局がNHKのネット進出に反対している理由は、「NHKは黙って今の公共放送に専念していろ」というものであり、「NHKが節度を持って従来通りの公共放送を提供していれば、民放テレビ局が望む『二元体制』が維持できると考えている」と解説しています。この「二元体制」とは、NHKが、「まじめな報道番組や教育番組、教養番組を多く流している」ため、民放が「娯楽番組の量産」に専念できる、というものであると解説しています。
第4章「家電業界の戦略商品『ネット対応テレビ』の破壊力」では、テレビ界では、「画面が汚れる」という言葉が、テレビ局の放送以外の情報が映り込むことを表し、テレビ局はメーカーに「勝手に画面をいじるような機能を付けるな」、「あなた方は、テレビ放送を映す装置を作っているんですからね」と言っていると述べています。
第5章「芸能界とテレビの蜜月に陰り」では、テレビ局が芸能界を引き寄せるために、「タレントに支払う『高額な出演料』とタレントの知名度を高める『大きな宣伝効果』の二つ」を使ったと述べ、「大物のお笑い芸人」には1回の番組出演で最高数百万円もの高額な出演料を支払っているのに対し、俳優は「テレビで効率的に稼げない仕組」だが、「大きな宣伝効果がある」こと、そして、ミュージシャンは、「テレビの宣伝効果に期待」し、CDやコンサートチケットの売れ行きの伸びを期待するモデルであることを解説しています。
第6章「コンテンツの支配者が下克上に怯える」では、テレビ局の「番組を大量に生産できる体制」が、400社にも上るといわれる「外部の番組制作会社」によって支えられていると述べた上で、テレビ局が、「大きな番組制作費と、リスクの小さな政策環境の2つを与える上で、テレビ局は制作会社を自らの下に集結させてきた」と述べています。
そして、「制作会社を引き寄せていたテレビ局の求心力」が、ネットの影響で低下してきた動きを後押ししているのが、「テレビ局による制作会社の支配が日本のコンテンツ市場の成虫を阻んでいるとして、市場構造の改革を目論んでいる」経産省であると述べています。
第7章「政府とテレビ局に亀裂が走る」では、「テレビ放送用の電波」という「滅多に手に入れることができない貴重な財産」をテレビ業界に使わせている総務省が、その代わりに、「一般の報道番組や臨時の災害報道、文化の向上につながる放送など、社会に役立つ放送サービスを提供してもらっている」と解説しています。
しかし、「通信と放送の融合」推進派の勢いが増したことで、「テレビ局は、自分たちの"商売の種"である番組を、インターネットの発展のために差し出せと政府から言われるようになった」と述べています。
著者は、「インターネットとテレビを組み合わせて、新しいビジネスを創造できたとき、テレビ局は電波に改めて新たな価値を宿らせるだろう」とした上で、「すでに出来上がったビジネスモデルの上に乗り、楽に過ごしてきた世代」である今のテレビ局社員たちに、「電波の価値を生かせる新ビジネスを作り上げられるのだろうか」と述べています。
本書は、誰もが知っているようで実は知られていないテレビ局のビジネスモデルを解説した一冊です。
■ 個人的な視点から
在京キー局が儲かっていて、デカイ社屋を建てたり給料が良かったりというのは、単に全国ネットの番組を作っているからというだけではなく、綿密に練り上げられた"儲かる仕組み"があるからだということを認識させてくれる一冊です。
■ どんな人にオススメ?
・在京キー局の強大な権力の源を知りたい人。
■ 関連しそうな本
池田 信夫 『電波利権』 2007年05月07日
原 克 『悪魔の発明と大衆操作―メディア全体主義の誕生』 2008年02月24日
歌川 令三 『新聞がなくなる日』 2008年03月29日
池田 信夫, 林 紘一郎, 山田 肇, 西 和彦, 原 淳二郎 『ネットがテレビを飲み込む日―Sinking of TV』
国際社会経済研究所, 青木 日照, 湯川 鶴章 (著) 『ネットは新聞を殺すのか-変貌するマスメディア』 2008年02月29日
池田 信夫 『ネットワーク社会の神話と現実―情報は自由を求めている』 2005年09月17日
■ 百夜百音
【黒船】 サディスティック・ミカ・バンド オリジナル盤発売: 1975
今のCDの「クリア」な音も良いですが、昔のテープコンプの聞いた音はいいですね。入力のインジケータが真っ赤になって隣のトラックにも音が漏れ出すようなゴチャっとしたサウンドは最近あまり聞かない気がします。
『20 Songs to 21st Century -BEST OF SADISTIC MIKA BAND-』
投稿者 tozaki : 2008年05月03日 06:00
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