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2008年05月05日

考えることの科学―推論の認知心理学への招待

■ 書籍情報

考えることの科学―推論の認知心理学への招待   【考えることの科学―推論の認知心理学への招待】(#1201)

  市川 伸一
  価格: ¥693 (税込)
  中央公論社(1997/02)

 本書は、「人間の推論について、心理学の立場から眺めてみよう」というもので、話題の多くは、「認知心理学や社会心理学の推論研究に基づいている」と述べています。
 第1章「形式論理と日常的推論」では、認知心理学者のウェイソンが実験に用いた「四枚カード問題」とか「ウェイソンの選択課題」と呼ばれる問題として、
「A」「K」「4」「7」の4枚のカードとともに
「ここには4枚のカードがある。どのカードも片方の面にはアルファベット、もう片方の面には数字が書いてあるということを、あらかじめ被験者は教えられている。そこで、次のルール
   母音の裏側には、必ず偶数がある
が成り立っているかどうかを確かめるためには、一体どのカードをめくってみる必要があるか」
という問題を示しています。
 第2章「論理的推論の認知モデル」では、「私たちの日常的な推論は、抽象的で一般的な形式に沿って行われるのではなく、領域固有性を持っている」と述べた上で、「私たち人間は、論理式を操作するような思考はおよそできず、視覚的なイメージをモデルとして操作しながら、さまざまな場合を吟味していくというやり方をとる」として、「裏返せば、イメージ的に考えることのできる図式表現を使うと、私たちの思考はずいぶん改善される可能性がある」と述べています。
 第3章「機能的推論」では、「ヘンペルのパラドックス」として、「すべてのカラスは黒い」という仮説をどのように検証すべきか、という問題を検討しています。
 第4章「確率・統計的な現象に対する理解と誤解」では、「コイン投げで何回か続けて表が出ると、次には裏の方が出やすくなると考えてしまう」という「賭博者の錯誤(gambler's fallacy)」について解説しています。
 そして、「検定」や「相関」、「回帰」など、統計的な理解に不可欠な概念について解説しています。
 第5章「ベイズの定理をめぐる難問・奇問」では、「条件つき確率」について、「ある情報が得られることによって、確率はその情報が得られたもとでの条件つき確率へと変化する」と述べ、
・事前確率:情報が得られる前の確率
・事後確率:得られた後の確率
について、解説しています。
 そして、「データから仮説の正しさを推論する」場合の「確からしさの程度を数学的に求める方法」として、「ベイズの定理(Bayes' theorem)」について解説しています。
 また、「私たちは、確率とはこのように振舞うはずだという信念のようなものをいくつか持っている」として、「三囚人問題」を解説し、「数学的な解答を聞いて、それが論理的に正しいことは理解できても、直感的には納得しがたいという意味で、相当の難問の部類に属する」と述べています。
 第6章「確率・統計問題での推論の仕組みと学習」では、「人間がどのようにして直感的な確率判断を行なっているのか。また、何らかの学習によって判断のバイアスを避けることができるのか」という問題を論じています。著者は、「ヒューリスティックス(heuristics)」という概念について、「常に正解に至るわけではないが、多くの場合、楽に速く正解を見つけられる『うまいやり方』をさし、『発見法』などと訳される」と述べています。そして、よく知られているものとして、「人間が確率判断を求められたときに、それを代表性(representativeness)に置きかえて判断してしまう」というものを挙げています。この他、「たまたま利用しやすいデータによって判断してしまいがち」だという「検索容易性(availability)」や、「出題者がヒントだと言っているわけではないのに、被験者のほうが勝手に与えられた値を基準にして、それを補正して答えてしまう」という「アンカリングと調整(anchoring and adjustment)」などについて解説しています。
 第7章「推論は知識に誘導される」では、「会話や文章の理解において私たちが使う知識体系」として、「スキーマ(schema)」を挙げ、「記憶というのは、聞き手のスキーマに適合するように解釈され、変容されていくものである」と述べています。
 また、「問題を説いた経験が他の問題の解決を促進する」という「転移(transfer)」に関して、「子どもたちのふだんの学習の様子を聞いてみると、問題が解けるにせよ、解けないにせよ、やりっぱなしのことが多いのが目につく」ことを指摘し、「問題解決プロセスの最後における重要な『推論』として、『なぜはじめはうまく解けなかったのかを考えて、一般的な教訓として引き出す』ということを強調している」と述べています。
 第8章「因果関係を推論する」では、「私たちが日常経験から作り上げた素朴な信念」である「素朴理論(native theory)」について解説しています。
 第9章「自己の感情と他者の圧力」では、「総意誤認効果(false consensus effect)」として、「他者の態度の分布を自分の態度に引き寄せて推測してしまうこと」を挙げ、例として、「タバコが好きな人は、タバコが嫌いな人に比べて、より多くの人間がタバコ好きだと推測しやすい」ことなどを挙げています。
 また、著者が、推論のバイアスやエラーなどを研究することについて、「心理学者は、こういう結果を出して、自分たちをバカにしているのではないか。他人が間違いをすることを示して、何が面白いのだろうか」と不快に思う人がいると述べた上で、「自分の判断のおかしさに気づいて、納得できたとき、私にとってそれは目の前が開けたような新鮮な経験となる。むしろそれは、より洗練された認識にいたる第一歩なのである」と述べています。
 本書は、人間がどのように考え、どのように世界を認識しているのかを知る手がかりを与えてくれる一冊です。


■ 個人的な視点から

 本書で「三囚人問題」として紹介されている問題は、「モンティ・ホール問題」と呼ばれる問題と同じ構造をもち、天才数学者エルデシュも引っかかった問題として知られています。


■ どんな人にオススメ?

・自分では論理的に考えているつもりの人。


■ 関連しそうな本

 ポール ホフマン (著), 平石 律子 (翻訳) 『放浪の天才数学者エルデシュ』 2005年11月06日
 ジョセフ・メイザー (著), 松浦 俊輔 (翻訳) 『数学と論理をめぐる不思議な冒険』 2006年12月16日
 ウィリアム パウンドストーン 『囚人のジレンマ―フォン・ノイマンとゲームの理論』 2006年09月11日
 ブルース シェクター (著), グラベルロード (翻訳) 『My Brain is Open―20世紀数学界の異才ポール・エルデシュ放浪記』 2006年11月25日
 ウィリアム・パウンドストーン (著), 松浦 俊輔 (翻訳) 『パラドックス大全』 2007年01月13日
 スティーヴン ウェッブ (著), 松浦 俊輔 (翻訳) 『広い宇宙に地球人しか見当たらない50の理由―フェルミのパラドックス』 2007年01月27日


■ 百夜百音

とんねるず【とんねるず】 とんねるず オリジナル盤発売: 2005

 結構芸歴も長いんですが、さすがに最近は音楽チャートに登場することはなくなりました。ちょっと世代がずれるせいか、何が面白いのか良くわかりませんが、今となっては独自のポジションを築いているようです。

『ベスト足跡』ベスト足跡

投稿者 tozaki : 2008年05月05日 21:00

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