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2008年05月09日

入札激震―公共工事改革の衝撃

■ 書籍情報

入札激震―公共工事改革の衝撃   【入札激震―公共工事改革の衝撃】(#1205)

  
  価格: ¥1,470 (税込)
  日経BP社(2004/12)

 本書は、公共工事の入札をめぐる制度の変遷を克明にたどり、「それが公共工事や建設産業にどんな影響を与えてきたのかを様々な実例やデータを基に検証したもの」です。
 第1章「大胆に設計段階から施工者に任せる」では、2004年7月27日に入札公告が行なわれた「東京国際空港(羽田空港)D滑走路建設外工事」について、「設計・施工一括発注方式」に始まって、「維持管理費込みでの発注」、「総合評価落札方式」、「異工種JV」、「出来高部分払い」など、「これまでの公共工事の入札では考えられないほど多様な入札・契約制度を併用」したものである上、「工事の受注者には施工だけでなく、その前の設計段階から任せる『設計・施工一括発注方式』を採用した点」を、特に注目すべきであると述べています。そして、「設計・施工一括発注方式」が、「工事の受注者が持っている施工のノウハウや独自の施工技術を設計に反映しやすい」と述べています。
 また、「D滑走路工事の入札におけるもう一つの目玉」として、「国交省が求めた場合は完成後30年間の維持管理も設計・施工を担当したJVが担う点」を挙げています。
 第2章「民間の見積もり合わせを導入」では、「民間企業のように複数の建設会社と交渉して有利な条件で工事の発注ができないものか」という問題意識から国土交通省が、「公共事業コスト構造改革プログラム」に、「提案と対話による技術力競争を重視した調達方式の試行」を盛り込んだことを、「国交省版の『交渉方式』である」と述べています。
 そして、中部国際空港の事業費削減の事例に関して、事業費削減の成功要因としての契約手続きに関して、
(1)公共事業の予定価格に相当する「制限価格」を設定しながら、その価格に上限拘束性をもたせずに参考価格としたこと。
(2)中部国際空港が独自に調査した資材単価を使って制限価格を設定したこと。
(3)受注希望者が提出した見積価格が制限価格を下回った場合、最低の価格を提示した企業と契約すること。
の3点を挙げています。
 第3章「一般競争入札の導入前夜」では、「国の機関の入札・契約を制約する会計法や、自治体の入札・契約を制約する地方自治法において、指名競争入札は実は例外扱い」であり、「90年代前半までほとんど使われなかった『一般競争入札』が、法的には実は原則なのである」と述べています。
 そして、指名競争入札においては、「発注者の『恣意性』が問題になること」が多く、受注者にとっては、「受注調整、いわゆる談合をするうえでは、都合のいい仕組み」である一方、発注者にとっても、「指名される側の建設会社よりも、優位な立場に立ちやすい」上、「指名によってある程度の施工実績のある建設会社を選んでおけば、施工途中で工事を放棄されたり、手抜き工事をされたりといった心配は少なくなる」という、「それなりにメリットの大きな方式」であったと述べています。
 しかし、93年に「ゼネコン汚職事件」が置き、入札・契約制度の改革が続いたことに加え、80年代後半以降、「建設市場の国際化の流れ」から、「ガイアツ」という名の改革を求める圧力がかかっていたと解説しています。
 第4章「ゼネコン汚職事件で本格化した改革」では、「ヤミ献金疑惑」が明らかにあった直後の93年4月に、米国から「日本の建設会社は政治献金などを通じて、入札で優遇される一方、海外の建設会社は入札で不当に差別されている」地の指摘があり、同年6月の日米建設協議で、「米国が指名競争入札の廃止と一般競争入札の導入を求めたほか、さらなる独禁法の強化」を求めたとして、「入札・契約制度の改革を求める圧力はさらに強まってきた」と解説しています。
 そして、93年12月にまとまって中建審の入札・契約制度の改革案が、一般競争の入札の導入を目玉に、「今日に至るまで続いている日本の入札・契約制度改革のキーワード」である、「透明性」と「客観性」、「競争性」の3つのキーワードがすべて盛り込まれていたことを指摘しています。
 第5章「相次ぐ不祥事が情報公開へ突き動かす」では、1998年2月に中建審が、「予定価格を入札の後で公開する『事後公表』の取組に踏み切るべき」だと建議したと述べた上で、「予定価格の公表では自治体の方が先行している」として、「都道府県と政令市の約8割が予定価格の事前公表に踏み切った」と述べています。
 そして、「予定価格を事後公表した直後に落札率が低下した事実は、全国紙でも取り上げられるほどの話題となった」と述べたうえで、「予定価格や最低制限価格を事前公表するメリット」として、
(1)透明性の向上
(2)競争性の確保
(3)役所の職員が予定価格を探ろうとする不正行為に巻き込まれにくくする
の3点を挙げ、特に「不祥事をきっかけにして事前公表を急ぐ自治体」では、(3)を重視しているところが多いと述べています。
 第6章「コスト削減の切り札登場」では、「技術の裏づけもなく、単に過当競争の結果として落札価格が下がったのだとすれば、『安かろう、悪かろう』の構造物を生み出すことにつながりかねない」と述べ、90年代後半から、「民間企業の技術力を生かしてコストを下げる『VE(バリュー・エンジニアリング)方式』」が注目され始めたと解説しています。
 そして、VE方式のバリエーションとして、実施のタイミングによって、
(1)設計VE方式
(2)入札時VE方式
(3)契約後VE方式
の3種類の方式があると解説しています。
 一方で、課題として、
(1)設計内容が完全に固まった段階で施工方法だけを見直す入札時VE方式や契約後VE方式は、設計そのものを見直す設計VE方式に比べて制約条件が大きく、コストダウンの効果を得にくい。
(2)施工者から技術提案を受けるケースは少ない。
の2点を挙げています。
 第7章「価格競争の激化で超安値落札が急増」では、「制度改革に専攻して取り組んだ自治体」から「落札価格の大幅な下落が表面化した」とした上で、「良質な工事をする能力のない入札者を、てい入札価格調査で排除するのは難しかった」が、「かといって制度改革で品質が著しく低下したかというと、そうともいえない」と述べています。
 そして、「利益が上がるとは思えないような安値で落札するケースが後を絶たない」理由として、「価格競争をせずに"話し合い"で受注できる市町村発注の指名競争入札があるからだ」とする「建設会社の元幹部」の証言を紹介しています。
 第8章「増える技術競争を競う入札」では、「発注者が施工方法を限定する範囲を少なくし、民間企業から幅広く技術提案を受け付ける」ことで、「構造物に必要な機能や品質を確保しながら、一方で事業のコスト削減も図れる」と述べた上で、「民間の技術力を活用する代表的な入札・契約方式」として、
(1)設計・施工一括発注方式
(2)性能規定発注方式
(3)総合評価落札方式
の3点について解説しています。
 そして、「総合評価落札方式」が、「技術提案の優劣と入札価格の安さとをどのように勘案するかによって、仕組みが変わってくる」として、
・除算方式:技術提案による特典を入札価格で割る
・加算方式:技術提案と入札価格の得点を足す
の2つの方式を挙げ、前者はさらに、
・総合評価管理費計上型:標準案との差を定量評価
・標準加算点型:定量評価の「数値方式」のほか、定性評価の「判定方式」、「順位方式」がある
の2つに分けることができると解説し、「標準加算型の導入によって、発注者は騒音値の低減や工期の短縮日数などといった技術提案の評価の対象となる『評価項目』の検討に力を注ぎやすくなった」と述べています。
 また、自治体でも、東京都や神奈川県、埼玉県、兵庫県などが総合評価落札方式を導入し始め、「国交省が使っていない方式」である「加算方式」を「試行し始めた自治体も出てきている」と述べています。
 第9章「入札・契約制度改革は第二幕へ」では、改革の3本柱のうち、「透明性や客観性の2つの観点から見れば、かなり改善されてきたといえるかもしれない」としながらも、「競争性の視点から見ると、これまでの入札・契約制度改革が十分であったかいなかの判断は難しいところだ」と指摘しています。
 そして、「今後の入札・契約制度の行方にも大きく影響しそうな法案が、2004年10月に始まった秋の臨時国会に次々と提出された」として、
・独占禁止法の改正案
・「公共工事の品質確保の促進に関する法律案(品質確保法)」
の2つを挙げ、解説しています。このうち、後者については、「談合によって落札価格を一定水準に保つことによって、公共工事の品質が確保されてきた面がある。談合がなくなって価格競争が激しくなれば、落札価格は下がり、手抜き工事などが横行する」という主張が建設業界の一部にあるとして、「品質確保という誰もが反対しにくい"大義"を前面に押し出しているものの、最大の狙いは、行き過ぎた価格競争に歯止めをかけることにある」と述べています。
 さらに、桐蔭横浜大学の鈴木教授による、「地元企業を育成する立場と、調達者としての立場とのバランスに悩んでいる自治体も多いようだ」との分析を紹介しています。
 本書は、ここ15年ほどの入札制度改革の動きをおさらいする上で便利な一冊です。


■ 個人的な視点から

 本書は、さすがに専門紙の記事を基にしているだけあり、読み手も基本的には建設関係者を中心に捉えているのではないかと思われます。しかし、一般書籍として販売するのに十分な判りやすさも備えていて、建設関係者以外にも安心してオススメできる一冊です。


■ どんな人にオススメ?

・公共工事なんて全部談合だ、と思っている人。


■ 関連しそうな本

 桑原 耕司 『談合破り!―役人支配と決別、命がけの攻防記』 2007年09月25日
 桑原 耕司 『公共事業を、内側から変えてみた』 2006年02月22日
 桑原 耕司 『「良い建築を安く」は実現できる!―建築コストを20%も削減するCM方式』 2006年04月12日
 武田 晴人 『談合の経済学―日本的調整システムの歴史と論理』
 加藤 正夫 『談合しました―談合大国ニッポンの裏側』
 鬼島 紘一 『「談合業務課」 現場から見た官民癒着』 2006年03月15日


■ 百夜百マンガ

カスミ伝【カスミ伝 】

 忍者漫画ならではの楽しみ方というか、お約束を踏まえて見せるという点では、「サル漫」に近い部分もあるような気もします。ゆうきまさみの短編集にも似たようなくの一漫画があったような。

投稿者 tozaki : 2008年05月09日 06:00

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