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2008年05月26日
自治体病院再生への挑戦―破綻寸前の苦悩の中で
■ 書籍情報
【自治体病院再生への挑戦―破綻寸前の苦悩の中で】(#1222)
杉元 順子
価格: ¥2520 (税込)
中央経済社(2007/07)
本書は、「何十年もの長い間、地域の健康・医療を支えてきた住民の命綱」である自治体病院に押し寄せる「厳しい淘汰の波」について、「実際にはどんな状況にあるのか。生き残る道を模索する自治体病院の実情を、数年にわたって取材した」ものです。
第1話「合併の前提条件にされた町立病院民営化」では、大分県の佐賀関町を取り上げ、病院以上の際の町からの条件として、
(1)地域医療の継続
(2)新施設の建設
(3)公立病院時代の職員の雇用(または就職の斡旋)
(4)町が行なった新施設の設計の活用
の4点が示されたことを解説し、「職員は、ごく一部の退職希望者と転勤希望者を除き、基本的に全員雇用を達成した」と述べています。
そして、町立病院時代の人件費率58%が、「経営を圧迫していた」ことについて、目標を「40%台前半」に置き、「職員全体で平均20%ダウン、高い人(無資格者など)では30%ダウンした」と述べています。
第3話「合併で1市に性質の異なる3市立病院」では、岡山県備前市のケースについて、「努力している病院が報われるという図式は確保されるべきで、そうでないと自治体病院の明日は望むべくもないだろう」と述べています。
第4話「過疎・累積赤字の町の病院が生き返った」では、京都府大江町のケースを取り上げ、1市3町の合併協議の最大の焦点が、町立病院をどうするかであり、「大江町民にとって病院は命の砦であり、病院の存続は合併の最重要のテーマ」だったと述べ、結局、福知山市との合併に当たって、公立病院としての継承を拒まれたことで、「赤字の国保病院から、公設民営(指定管理者制度)でスタート」し、「ベッド稼働率のアップ」により、「国保新大江病院として初年度から黒字ベースの順調な運営」を達成していると述べています。
第5羽「民間への譲渡で過疎の町に病院が残った」では、新潟県巻町のケースとして、新潟市との合併期日までに、巻町立病院の民間譲渡期日が決定し、「自治体が民間医療機関に対し本格的な公募形式を取るのは全国的にも珍しいケース」となったと述べています。
第6話「苦闘10数年、県立・市立病院の統合実現」では、岩手県の、「多額の赤字を抱えた県立釜石病院と市立釜石市民病院の統合再編」を取り上げ、「学校統合については人口の減少に対応してきたが、医療機関は対応させてこなかったことが衰退の大きな要因」であるとした上で、「入院したい患者にとっては空床は便利なので、経営者以外は問題意識が薄れがちでこれまで流されてきた」との釜石医師会長の言葉を紹介しています。
第8話「なぜ進まない中核病院同士の機能分担」では、山形県の市立坂田病院と県立日本海病院の再編・統合問題を取り上げ、「同地域に県立、市立2つの機関病院があるという県内では珍しい病院配置」日打て、酒田市が県に対して統合を提案した形での再編問題に対し、県は「拒否あるいは消極的対応」であることについて、
・この提言が市から県になされたこと
・結果的に唐突の感があったこと
などが、「県当局の反発を招いたようだ」と述べています。
また、「地理的には歴史的な旧藩士などの流れの中の地域的背景から手法が異なったり、市民感情が対立することもある」と述べています。
第10話「行財政改革への決意が病院改革にも効果」では、「今、全国で起きている医療パニックは、大昔の長崎の縮図だ。いくら慌てても4~5年で修復はできない。ある程度つぶれるところまで行かないと立ち直れないかもしれない」とする、長崎県病院事業管理者の矢野右人氏の言葉を紹介しています。
本書は、何らかの処方箋を示そうというものではありませんが、自治体病院問題の深刻さを伝えてくれる一冊です。
■ 個人的な視点から
全国の自治体病院について、取材を重ねた本書は、もちろん読んでいて面白いのですが、その先に何が待っているのか、どうやって進むべきか、などを考える上では少し物足りない点もあります。ぜひ続編に期待したいところです。
■ どんな人にオススメ?
・公立病院はつぶれないと思っている人。
■ 関連しそうな本
伊関 友伸 『まちの病院がなくなる!?―地域医療の崩壊と再生』 2007年12月12日
兪 炳匡 『「改革」のための医療経済学』 2006年12月05日
小松 秀樹 『医療崩壊―「立ち去り型サボタージュ」とは何か』 2008年01月08日 06:00
永田 宏 『貧乏人は医者にかかるな!―医師不足が招く医療崩壊』 2008年04月09日
西村 周三, 田中 滋, 遠藤 久夫 『医療経済学の基礎理論と論点 講座 医療経済・政策学』
真野 俊樹 『入門 医療経済学―「いのち」と効率の両立を求めて』
■ 百夜百マンガ
「科学」と「学習」からの撤退が問題になっていますが、「まだかなまだかな~学研のおばさんまだかな~♪」のセールスレディは今でも2万人いるそうです。
投稿者 tozaki : 2008年05月26日 22:00
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