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2008年05月28日

水戦争―水資源争奪の最終戦争が始まった

■ 書籍情報

水戦争―水資源争奪の最終戦争が始まった   【水戦争―水資源争奪の最終戦争が始まった】(#1224)

  柴田 明夫
  価格: ¥798 (税込)
  角川・エス・エス・コミュニケーションズ(2007/12)

 本書は、「深刻化する地球温暖化とエネルギー・金属・食料資源の有限性という問題を、『水』というフィルターを通してより鮮明にしてみようと試みたもの」です。
 第1章「枯渇の危機に瀕する水資源」では、「世界中で食料の生産拡大の動きが始まっている」ことが、「砂漠化や水源の枯渇などの新たな『水ストレス』を招いてしまうことになる」として、「21世紀の世界の食糧生産の鍵を握るのが水なのは間違いない」と述べています。
 そして、近年の世界各地での穀物の増産において、「地下水の過剰な汲み上げがあり、農業用水から必要以上の水が蒸発したり、水漏れが起きたり、といった不適切な灌漑施設の管理を伴なう農業活動があった」とした上で、「様々な問題を抱える農業用水を合理的に利用すれば、世界の水需給のバランスが改善されることを意味する」と述べています。
 また、わが国の水資源の利用について、「農業用水が66%と圧倒的に多く、水分の蒸発散という形で水を浪費させつつも、実は莫大な水資源を節約している」と述べています。
 第2章「地球温暖化がもたらす水と食糧の危機」では、北朝鮮の食糧生産が極度に悪化した例を挙げ、「天候に左右されやすい食糧生産条件があるところに、ひとたび工業生産が落ち込めば、たちまち農業機械や肥料、農薬、燃料が不足する」と述べ、「食糧生産減少→工業生産減少→食糧生産のさらなる減少」という悪循環に陥ると述べ、「今後、深刻化する地球温暖化は食糧生産へのダメージということを通じて、北朝鮮の政治体制を一気に突き崩す可能性さえある」と指摘しています。
 また、中国について、天然資源に恵まれ、食料の主要生産国でもあるが、「あまりにも人口が多いため、1人当たりで計算すると、それらの資源量は極めて少なくなってしまう」として、その典型として水を挙げ、中国の水需給の特徴として、
(1)国土や人口の大きさに比べて水資源量が少ない。
(2)中国内における水の総給水量が減少傾向にある。
(3)用途別に見た水需要構造の変化が著しい。
の3点を挙げています。
 第3章「巨大な利権とビジネスが動かす水」では、世界中で水をめぐる問題が深刻化することで、「国連などの国際機関による本格的な水問題への取組が進むと同時に、水関連のビジネスが急拡大している」と述べ、欧米では、「官民一体となった『水関連ビジネス』という潮流が起きつつある」として、「いまや世界の水資源はエネルギーや金属、食料にも増して資源化しているともいえる」と指摘しています。
 また、水不足や水の汚染の問題の深刻化への対策として期待されるビジネスとして、
(1)海水淡水化:日本企業は、ナノテクを武器に水処理膜の高機能化などで攻勢をかけると同時に、インフラ整備などを通じて産油国との関係強化を図ろうとしている。
(2)使用した水を再処理し、中水として利用する:日本の工業用水の使用料の80%近くが、再処理水(中水)の利用という形になっていて、世界有数の存在である。
の2点を挙げ、日本では、これらの2つをまとめて「造水」と呼ばれていると述べています。
 著者は、「21世紀の水は、石油をもしのぐ資源ともいえ、将来、原油のように取引所で取引される商品となり得る可能性も否定できない」と述べています。
 第4章「資源大量消費時代の到来」では、BRICsに代表される新興国経済の台頭が、「世界経済の成長率を押し上げているばかりでなく、エネルギー・資源市場に価格高騰という形でも大きなインパクトを与えている」と述べ、近年の世界経済の成長をもたらしている、「新興国のモノづくり」や「それを支える高速道路、発電所、港湾、情報網などのインフラ(社会基盤)整備」が、「世界規模でエネルギー・資源の需要」を喚起していると述べています。
 また、高騰する原油価格が、
(1)巨額のオイルマネーを手にした産油国の間で資源ナショナリズムが高まったこと。
(2)原油価格の高騰は非鉄や鉄鉱石、石炭、レアメタルなどの資源の価格高騰を招き、改めて消費国に資源の枯渇問題を突きつけた・・・「ピーク・オイル問題」
(3)原油高騰は代替物としてのバイオエタノールやバイオディーゼルなどバイオ燃料の急速な普及をもたらし、その結果、食糧市場とエネルギー市場の競合あるいは連動性が強まった。
の「3つの面から世界情勢におけるパワーバランスを大きく塗り替えようとしている」と指摘しています。
 第5章「穀物をめぐる3つの争奪戦と穀物メジャーの戦略」では、「穀物も戦略物資としての性格が強まる可能性」に言及し、今後、「世界では食料をめぐって3つの争奪戦が激化する可能性がある」として、
(1)国家間の争奪戦
(2)エネルギー市場と食糧市場との争奪戦
(3)新興国における工業部門と農業部門との水と土の争奪戦
の3点を挙げています。
 また、穀物メジャーの主要な機能として、
(1)生産者から小口の穀物を大量に集荷し、それらをまとめて大口の規格品に仕立てる。
(2)規格品の穀物を大量に輸送し、輸送コストを削減する。
(3)年間を通じて、安価な国際穀物市場に大量に供給する。
(4)輸入国の市場環境や需要動向を探索し、穀物の流通を合理的に調整する。
の4点を挙げています。
 第6章「水の超大量消費国・日本はどうすべきか」では、1990年代前半から使われだした言葉である「バーチャルウォーター」について、「乾燥地帯の中東は一見水不足のように見えるが、実際には他国で大量の水を使って生産した農産物を輸入しているため水資源が乏しくても水不足に陥らない」という考え方であると解説した上で、日本が2000年度に輸入したことになる農産物とバーチャルウォーター係数を掛け合わせて、「バーチャルウォーター貿易に総輸入量」を、「650億立方メートル」と算定し、「日本国内の年間の灌漑用水の使用料が570億立方メートルだから、バーチャルウォーターの輸入はこれを大きく上回ることになる」として、「日本は水資源総量では比較的恵まれていながら、多くの水を海外に依存している」と指摘しています。
 そして、「日本は膨大な食糧を海外から輸入しているからこそ、国内の水資源をそれほど使わずに済んでいる」、すなわち、「食料輸入を介しての世界の水に依存しているのが我が国」であると述べています。
 さらに、「水資源の循環利用を考える上で、政策的に低価格に設定されている水料金との比較で、経済合理性をいかに確保するかが最大の課題」であるとして、日本の産業部門が、「廃水処理レベルを改善する過程で様々な工程転換を進め、水資源の回収率を上げてきた実績」を持ち、「ここで培われた経験やノウハウは今後、広東省の水循環の高度化を考える上では活用すべき大きな財産である」と述べています。
 本書は、「水」をキーワードに、激化するグローバルな資源獲得競争を読み解いた一冊です。


■ 個人的な視点から

 なかなか輸送に手間のかかる「水」のことだけに、グローバルな獲得競争と言ってもぴんときませんが、本書で取り上げられている「バーチャルウォーター」は国境を越える水の概念について分かりやすく説明しているものだと思います。


■ どんな人にオススメ?

・水はタダだと思っている人。


■ 関連しそうな本

 柴田 明夫 『食糧争奪―日本の食が世界から取り残される日』
 柴田 明夫 『資源インフレ―日本を襲う経済リスクの正体』
 柴田 明夫 『エネルギー争奪戦争』
 宮脇 淳 , 眞柄 泰基 『水道サービスが止まらないために―水道事業の再構築と官民連携』 2007年11月28日
 国際調査ジャーナリスト協会(ICIJ) (著), 佐久間 智子 (翻訳) 『世界の"水"が支配される!―グローバル水企業(ウオーター・バロン)の恐るべき実態』
 ロビン クラーク, ジャネット キング (著),沖 大幹, 沖 明 (翻訳) 『水の世界地図』


■ 百夜百マンガ

1・2のアッホ!!【1・2のアッホ!! 】

 ジャンプのヘタウマギャグ路線の代表作。このころのジャンプのデタラメさは子どもたちの心を捉えてました。

投稿者 tozaki : 2008年05月28日 06:00

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