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2008年05月15日
YouTube革命 テレビ業界を震撼させる「動画共有」ビジネスのゆくえ
■ 書籍情報
【YouTube革命 テレビ業界を震撼させる「動画共有」ビジネスのゆくえ】(#1211)
神田 敏晶
価格: ¥735 (税込)
ソフトバンククリエイティブ(2006/12/16)
本書は、「ユーチューブを取り巻くさまざまな現実を見つめ、動画共有革命が生み出す新しいビジネスや文化について、具体的な事例を紹介しつつ、考察」しているものです。
第1章「動画共有革命の衝撃」では、「ネットの世界で一番の激戦区である動画コンテンツ提供という荒海」にあって、「ユーチューブという小さなボート」が、「見事なクルージング技術で切り抜けてきた」ことが、「グーグルがユーチューブに魅力を感じ、買収した理由の一つ」であると述べています。
また、ユーチューブのチャームポイントとして、
(1)無料で大容量の動画をアップロードできる投稿機能
(2)膨大な作品の検索を可能にするタグ機能
(3)動画でコミュニケーションする共有機能
(4)埋め込みタグによるブログスフィア活用
(5)ひかえめな宣伝
(6)おおらかな著作権保護対応
の6点を挙げています。
第2章「ユーチューブのメディアパワー」では、ユーチューブに登場する「ネット映像らしいコンテンツ」として、「街中や公園で『FREE HUGS』と書かれた看板を掲げて通りかかる人々にアピールし、趣旨を理解して歩み寄ってきた人とやさしくハグ(抱擁)しあう」という「FREE HUGSキャンペーン」や、ソニーの薄型テレビ「ブラビア」のテレビCMのパロディ作品の例などを挙げた上で、「消費者の手によってコンテンツが生成されるメディアのことをCGM(コンシューマ・ジェネレーテッド・メディア)と呼ぶ」ことにナラって、「消費者が勝手に作る広告のことをCGCM(コンシューマ・ジェネレーテッド・コマーシャル)と呼ぶ」と述べています。
また、CGCMが直接的に売上げアップにつながった事例として、「メントス&コーク」の一連の作品を紹介しています。
第3章「方向転換を余儀なくされるテレビ業界」では、「ハードディスクレコーダーの登場で長時間録画が可能」となったことで、「いつでも瞬時に選択した番組を再生できる」、本格的な「タイムシフト」が実現するとともに、メモリースティックなどへの書き出しやインターネット経由での転送による、「見たい番組を見たい場所で見る『プレイスシフト』」が実現可能となったと解説しています。 また、「これまで、テレビの市場価値を測るモノサシは視聴率しかなかった」が、「いまや、視聴率の価値は崩壊寸前まできている」として、現在の視聴率には、「録画は含まれていないこと」を指摘し、「今後は番組の人気度を計るバロメーターとして、既存の視聴率だけではなく、『録画率』や『再生率』などもサーベイ(調査)されないと意味がない」と述べた上で、さらに、「広告主は視聴率よりも、商品&サービスへのトランザクションレート、つまり購買につながったか否かで番組を評価すべきである」と述べています。
著者は、「テレビCMによる無料放送ができる『地上波テレビ』」を、「テレビ1.0」と呼んだ場合に、「保存されたデータでネットワーク上で高精細な巨大なディスプレイに映せるものであればなんでも『テレビ2.0』に括られるようになった」本書の出版から2年後の世界(2008年)を想像しています。
第4章「動画共有が創造するビジネスモデル」では、「ネット広告業界全体が動画サイトへのCMをどう行なうか模索しているなか、ユーチューブではいくつかの試みが始められている」として、
(1)参加型動画広告(Participatory Video Ads = PVA)」:レート付けやコメント付加など、ユーチューブのコミュニティ機能をすべて備えた広告形式
(2)ブランドチャンネル:ブランド力を喚起するために、企業やアーティストと連動する広告チャンネル
の2点を紹介しています。
そして、2006年に「ナイキジャパンがインターネットCMに参入した」第1弾CMが、「オタクの聖地『アキハバラ』」で、「1人のサラリーマンが突然、戦隊もののコスプレをした集団に追いかけられ、アキハバラを逃げ回る」という内容であったことを紹介しています。
第5章「著作権2.0を考える」では、「ユーチューブといえば著作権、著作権といえばユーチューブというくらい、何かとユーチューブと著作権の侵害問題はセットで話題にされる」とした上で、「オリジナリティのある優れたコンテンツをどうやって集めるか」が、「大きな課題の一つ」だと述べています。
そして、「テレビ局からの著作権侵害や訴訟問題で違法サイトのレッテルを貼られたユーチューブ」が、「最初の頃はすぐに消えてしまうバブルなドットコム企業の一つ」と思われたが、実際には、「ユーチューブを目の敵にしているはずのテレビ局をはじめとしたコンテンツメーカーが次々と提携を持ちかけてきた」と述べています。
また、「著作者の名誉や作品の意図を守るために、いくつかの権利(Some Rights)は存在するが、それ以外のコンテンツの自由な利用を妨げる権利は放棄するという意思表示のあり方」として、ローレンス・レッシグ教授が提唱した「ネット時代に対応できる新しい著作権の仕組み」として、「クリエイティブ・コモンズ」について解説しています。
第6章「ユーチューブ後の世界」では、「いかに、自分たちのサービスとの接触時間をユーザーに保ってもらうかが命題となっている」として、「シェアの奪い合いの時代から、ユーザーの『可処分時間』を共有し、『競争から共創』する時代へと向う」と述べています。
そして、「他人に教えたくなる映像とは、画質や音質などの品質クオリティではなく、笑いのツボや空気感を伝えているものであるから人を魅了する」として、「映像を検索できるツールとしてユーチューブを一度認識してしまった僕たちは、既存のサービスが提供する、検索できない映像に対して不満やストレスを感じ始めている」と述べています。
また、「Living My Life Faster」や「メントス&コーク」のような、ユーチューブで流行するクリップに共通する「法則性」として、
(1)誰もが少しの努力でまねができそうと思える
(2)新しい表現手法に出会える
(3)自分でもやってみたいと思わせる
(4)さらに知人に知らせたくなる
(5)続々と同じことを始める人がでてくる
の5点を挙げ、「ユーチューブの世界観は、世界のユーザーが、小学校の一つのクラスに集められたかのように、世界中にネットワークされているところに意味があるのかもしれない」と述べています。
本書は、ユーチューブの紹介・解説とともに、「ユーチューブ後」の世界をわかりやすく語った一冊です。
■ 個人的な視点から
ユーチューブといえば、誰でもカンタンに画像をアップロードできることから、著作権的にまずい画像でも無料でたくさん見ることができる、動画の「置き場」としての性質が強調されすぎてきた気がしますが、むしろその本質は、検索やネットワークの方にあり、その意味では非常にグーグルの思想に近いのではないかと思います。
動画を「マイミク」のようにネットワーク図的に表示する機能もつくようになりましたが、近い将来、動画だけではなく、Webページもこのネットワークに飲み込んでいくと、グーグルのトップページはユーチューブの画面になってしまうのではないかとさえ思います。
また、グーグルが「グーグル・デスクトップ」でPC内のファイルも検索対象にしたように、ユーチューブのネットワーク図にローカルのドキュメントやメールが関連づけられるようになるのではないかとも予想します。
■ どんな人にオススメ?
・動画がつながる世界を体験したい人。
■ 関連しそうな本
佐々木 俊尚 『グーグル―Google 既存のビジネスを破壊する』 2007年11月20日
ピーター モービル (著), 浅野 紀予 (翻訳) 『アンビエント・ファインダビリティ―ウェブ、検索、そしてコミュニケーションをめぐる旅』 2007年11月26日
アルバート・ラズロ・バラバシ (著), 青木 薫 (翻訳) 『新ネットワーク思考―世界のしくみを読み解く』 2005年10月24日
スティーヴン・ストロガッツ (著), 蔵本由紀, 長尾力 (翻訳) 『SYNC』 2006年04月10日
吉野 次郎 『テレビはインターネットがなぜ嫌いなのか』 2008年05月03日
池田 信夫 『電波利権』 2007年05月07日
■ 百夜百マンガ
単行本がなかなか出版されないことで知られている人ですが、『陸軍中野予備校』の時は、最終巻の6巻を買おうとして、間違えて2冊5巻を買ってしまったこともあります。
投稿者 tozaki : 2008年05月15日 06:00
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