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2008年06月06日
アキバをプロデュース 再開発プロジェクト5年間の軌跡
■ 書籍情報
【アキバをプロデュース 再開発プロジェクト5年間の軌跡】(#1233)
妹尾 堅一郎
価格: ¥790 (税込)
アスキー(2007/11/12)
本書は、「秋葉原クロスフィールド『産学連携機能』のプロデューサーとして、産学連携を軸とした先端技術による産業創出・活性化の拠点形成を進展させている」著者による、「アキバの午睡」を楽しむ一冊です。これは、「中世の頃、高野山には全国から多様な人が常に訪れるので、お坊さんは昼寝をしながらでも世間の動向を把握できた」という「高野の午睡」をもじっています。著者は、アキバを「伝統ある『テクノロジーの高野山』であり、『マニア文化(サブカルチャー)の高野山』である」と述べ、「そういった街をぐるりと歩くだけで、世界の最先端の動向を知ることができる」と述べています。
第1章「変貌をとげる『アキバ』」では、JR秋葉原駅の北側の、かつて”やっちゃ場”(青果市場を指す下町言葉)である神田市場があった区画に、国鉄秋葉原貨物駅の跡地を加えた土地を、東京都が「再開発に提供し、それを基点としていったいの再開発を提案した」ことから、「日本の最先端IT拠点」が整備されたことを解説しています。
そして、2001年に12~13万人の乗降客数だったJR秋葉原駅が、2007年には20万人程度に激増し、周辺の3駅(地下鉄日比谷線秋葉原駅、銀座線末広駅、つくばエクスプレス秋葉原駅)を加えると、「25万人を超えるのではないか」と言われるようになったと述べています。
また、ここ3年ほどでアキバのサブカルチャーが全国レベルで急激に知れ渡った要因として、
(1)フィギュア
(2)メイドカフェ
(3)電車男
の3点を挙げています。
著者は、秋葉原ダイビルの5階から15階までの11フロアを使った「産学連携機能」のプロデューサーとして、「先端技術を軸とした産業創出・活性化の拠点づくり」として、「秋葉原クロスフィールド」の創設に関わり、現在では、産学連携機能の充実と、秋葉原地区全体の活性化に携わっていると述べています。
そして、著者が当初ビルオーナーから「コーディネーター」を依頼されたが、「関係者の利害の調整役」であるコーディネーターでは、「平均的な案はつくることはできても、斬新な案を提示し、それを実施に移すことはやりにくい」として、「プロデューサーなら引き受けます」と答えたこと、そして、プロジェクト開始時に、
(1)産業活性化に「地域」は何が貢献できるか
(2)街づくりに「技術」は何が貢献できるか
の2点を自問したと述べています。
第2章「秋葉原とアキバ テクノとオタクの街の特徴」では、秋葉原の特徴として、
(1)交通利便性と知の集積性・・・秋葉原は知的なラインが結ばれている。
(2)知の三角形・都市の三角形・・・秋葉原は理系の心の故郷
(3)都市特性・・・エッジ、ディストリクト、パスノード、ランドマーク
の3点を挙げています。
そして、秋葉原の本質「アキバらしさ」について、
(1)徹底集積
(2)新旧融合
(3)構成の多重性
の3点を挙げています。
また、著者らが、秋葉原を「アキバ」と呼ぶ言葉の意味として、
(1)エリア名としての秋葉原の略・・・戦前は「あきばっぱら」と呼んでいた。
(2)秋葉原駅の近辺全体を秋葉原と呼ぶのに対して、電気街を中心にした商店街の中核地域を「アキバ」と呼ぶ。
(3)「アキバ」街区の物理的な空間の中から立ち上る、精神的な空間を”アキバ”と呼ぶ。
の3点を挙げています。
第3章「秋葉原クロスフィールド構想」では、「基本的な産学連携機能を、技術開発から事業家に至るまでのプロセスを軸に整理し、『2つの連携、3つの支援、2つの交流』として構成」したとして、
(1)2つの連携――産業創出素材の導出:大学主導の産学連携と産官主導の産官学連携の2つの連携が組み合わさるように、公的研究所や企業の研究機関を招いた。
(2)3つの支援――産業創出・活性化のリスクマネジメント:人財育成リスクの低減、ベンチャーリスクの低減、テクノロジー、特にIT開発検証リスクの低減
(3)2つの交流――産業創出・活性化への環境構築:技術関係者が交流を行なう「場と機会」の提供として「プレゼンテーション&デモンストレーション・スペース」「アキバテクノクラブハウス」を組み込む。
の3つの機能を上げています。
また、地域とベンチャーの関係のよくある議論で疑問視している点として、
(1)ベンチャーの成長段階を理解していない。
(2)米国のベンチャーの生態系を、そのまま日本に持ち込めば何とかなるという誤解が、多くの自治体にいまだに残っている。
(3)技術基点型のベンチャーとマイクロビジネスを区別しない議論。
の3点を挙げています。
第4章「秋葉原テクノタウン構想」では、「テクノタウン構想」の柱として、
(1)インキュベーション:秋葉原の資源である「技術」を活用した様々なアトラクション(サービス・商品)により、街全体が”テーマパーク”となる街づくり構想
(2)プロモーション:大学などの研究機関から民間への技術移転や共同研究のきっかけを作るための、「先端技術の産直市場」を構想。
(3)エデュケーション:次世代の技術人財育成のために、科学技術をテーマとした「体験教育(ハンズオンラボ)」と「実演販売(デモンストレーションショップ)」を主体とした”場と機会の提供”を目指す。
の3点を挙げています。
そして、2005年には、「アキバ・理科室2005」を内田洋行とラオックスと共催、「アキバ・ロボット文化祭2005」をクロスフィールドで開催、2006年に開催した「アキバ・ロボット運動会2006」では、有料イベントで1万7千人の動員を挙げ、アキバの動員記録を打ち立てたと述べています。
第5章「安心して楽しめる街づくりへ」では、「なぜ、アキバを24時間タウンにしないのか」という考え方に対し、夜10には裏通りはひっそりしてしまうアキバを「健全なるオタクの街」であり、深夜まで明るい街にすることで、飲み屋や風俗が増え、「そのスジのお兄さんたちが湧き出てくることで、「得るものと失うものを比べれば」ば、「アキバを『健全なるオタクの街』に留め置くべき」だと述べています。
また、旧万世橋駅や交通博物館があった万世橋地区の再開発について、もともと、「現在の中央線の東京川の起点」であり、「田舎から上京してきた人たちにとって、この須田町近辺こそが東京の中心地だった」と述べた上で、「万世橋」を、秋葉原の「ホワイエ」とする、
(1)多世代交流・次世代継承
(2)異業種交流・新事業創出
(3)多地点交流・次経路誘導
の3つのコンセプトを体現する”場と機会”を提供する「集客・誘導ゾーン」として構成すべきだと述べています。
そして、万世橋地区を、
(1)電気街にとっては「電気街への誘導機能」
(2)万世橋地区そのものとしては、「人々が楽しむ集客機能」
(3)秋葉原地域全体にとっては、「秋葉原地域の全体価値を向上させる価値付与機能」
であると整理しています。
本書は、著者のアキバへの思いが詰まった一冊です。
■ 個人的な視点から
「アキバ」と言ったときに、子どもの頃にいった交通博物館と電気街は一体になって記憶されているのですが、藪蕎麦に代表される、あの辺りの古い東京の雰囲気も、再開発で失われてしまうとしたらもったいないです。
■ どんな人にオススメ?
・アキバは単なる「萌え」とオタクの街だと思っている人。
■ 関連しそうな本
奥野 卓司 『ジャパンクールと江戸文化』 2008年01月06日
妹尾 堅一郎 『知的情報の読み方』 『グリッド時代 技術が起こすサービス革新』
アキバ経済新聞 『アキバが地球を飲み込む日―秋葉原カルチャー進化論』
森川 嘉一郎 『趣都の誕生 萌える都市アキハバラ』
隈 研吾, 清野 由美 『新・都市論TOKYO』
■ 百夜百マンガ
バード・ウォッチングを題材にした作品というのも滅多に目にしないと思いますが、子どもの頃は「動物記」モノが好きな人は結構いたような気がします。
投稿者 tozaki : 2008年06月06日 21:00
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