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2008年06月04日

チャット恋愛学 ネットは人格を変える?

■ 書籍情報

チャット恋愛学 ネットは人格を変える?   【チャット恋愛学 ネットは人格を変える?】(#1231)

  室田 尚子
  価格: ¥735 (税込)
  PHP研究所(2005/7/16)

 本書は、「チャットは人を変えてしまうのか?」という素朴な疑問に対する、「チャット人間」側からの回答です。著者は、「チャット恋愛がもたらす喜びと困難さの原因」について考えるとしています。
 第1章「ネットにおけるコミュニケーション」では、ケータイ、メール、メーリングリスト、掲示板、チャット、メッセンジャーの特徴について整理したうえで、「チャットだけが、『文字』と『一対多』と『リアルタイム』という3つの要素を兼ね備えている」と指摘しています。
 第2章「チャットとは何か?」では、著者がチャットルーム(CR)に「ハマった」理由として、CRの特徴である「ルームを自分で開設できる」というところにあったと述べています。
 また、ネットにおける「氏ね」のやり取りに関して、「ネットの外から見ると、ネットは『攻撃的な言葉のやり取りによって心が麻痺した人間の集まる場』という風に映ってしまう」ことについて、「それは少しヒステリックな見方」ではないかと述べています。
 そして、「他者との関係の中でしか自分のリアリティを獲得できない現代社会で、ゲームとか、チャットといったコミュニケーションのためのツールに『ハマる』のは、ある意味で必然的なこと」であると述べています。
 第3章「チャットが届けるもの」では、オンライン上の人格である「オンライン・ペルソナ」について、「大多数の人は、ひとつのオンラインん・ペルソナは、一人の現実の人間とリンクしているという前提で会話を交わしている」が、「現実の人格とはまったく正反対のオンライン・ペルソナ」を演じることができるとして、「騙し」の顕著な例として「ネット・オカマ」の略である「ネカマ」を挙げています。
 そして、「社会的なアイデンティティからはほぼ完全に自由」であるチャットという場所で、「ハンドルネームを名乗り、新しいオンライン・ペルソナを獲得していく」として、「社会の『こうあれ』という要求にしたがってつくりあげたのは『偽の自分』である、『ハンドルネームとしての私』こそが、自分自身がこうありたいと願う『ほんとうの自分』なのだ、と感じること」は、「現代社会においては必然なのではないか」と述べ、「ある時期チャットに『ハマる』ことは、『生きづらさ』を抱えている人たちにとって、一種の救いになるのかもしれない」と述べています。
 また、「実際の生活の中では、よほど親しい間柄の相手にしかできない」告白、自己開示が、「ほとんど初対面」の「素性もよく分からない相手にできてしまうのは、チャットという場がつくりだす、独特の相手との距離感ゆえ」であると述べ、「匿名である」ということから生まれる「ネットに特有」の距離感が、「現実の社会では考えられないようなスピードで、一気に縮まる」のだと述べています。
 第4章「チャット恋愛の心理学」では、「ネット上で異性に魅力を感じる社会心理学的な理由」として、
(1)類似性
(2)自己呈示
(3)自己開示と相補性
(4)理想化
の4点を挙げ、「二人だけのチャットであるPMやMJ」に「よって交わされる情報の密度、そしてそのスピードは、実際の社会とは比べ物にならないほど濃くて、速い。それゆえ、チャット恋愛では、お互いに『理解しあえている』という感覚を強くもつことになる。また、容姿や職業などを超えて『心が通い合えている』という実感は、お互いに『ほんとうの自分を理解してくれる相手だ』という認識をもちやすい」ことから、「チャット恋愛は、普通の恋愛よりも強く、濃密な関係になりやすい」と解説しています。
 その上で、「チャット恋愛がそうした『真の心の結びつき』だと感じる背景には、チャットという装置に特有のいくつかの仕掛けが働いている」として、「匿名であることや、時間の流れるスピードとその密度の問題」等を挙げ「そうしたことにあまりに無自覚なまま恋愛に入ってしまうと、チャットという装置がはずされた時、つまり現実の交際がスタートしたときに、相手を過度に理想化していたことに気づいて、幻滅するという結果を招きかねない」と述べています。
 また、「通常のチャットと、チャット恋愛の間にあるもの」として、「相手が『ほんとうの自分を理解してくれている』という実感の強さ」ではないかとして、「一緒に時を過ごす努力を惜しまないこと」は、「異性に魅力を感じる重要なポイントの一つ」であると述べています。
 さらに、2005年に、「未成年の女性を3ヶ月にわたって監禁した」として、無職の24歳男性が逮捕された「監禁王子」事件を取り上げ、「本来なら決して出会うはずのなかった男女が、ネットというメディアを得て、不幸にも出会ってしまった事件」だが、「裏返せば、ネットというものは、そういう『場』なのである」として、「チャットで簡単に人と出会えるということは、実は簡単に恐ろしい犯罪とも結びついてしまう危険があるのだ」ということを注意しておく必要があると述べています。
 著者は、チャット恋愛が破局に終わってしまう理由として、
(1)相手のことを「こういう人だ」と認識するそのイメージが理想化されやすい。
(2)「本等の自分」を相手の前だけで出せる、という感覚。
(3)やはりチャットの中だけではどうしても見えてこない相手の性格というものがある。
の3点を挙げ、「チャット恋愛が失敗に終わる原因は、実はどれも、現実の恋愛でも陥りやすい落とし穴」であるが、その可能性を、「チャットという装置が増大させてしまっている」として、「相手と恋愛への過度の依存が、チャット恋愛の悲劇を生む」と述べる一方で、「チャットならではの恋愛のあり方、というのはたしかにあるが、それが現実の恋愛とまったく異質なものであると考える必要はない」と述べています。
 本書は、チャットに「ハマった」本人による、過去の自分を振り返った一冊です。


■ 個人的な視点から

 本書の内容は、チャット常連の人にとっては当たり前のことなのか、アマゾンの書評では酷評している人も結構いますが、チャットどころかネットもあまり触らない人にとっては、こんなふうに相対化して解説してくれるのはありがたいのではないかと思います。


■ どんな人にオススメ?

・チャットで恋愛なんてヒトゴトだと思っている人。


■ 関連しそうな本

 渋井 哲也 『ウェブ恋愛』
 渋井 哲也 『チャット依存症候群』
 パトリシア ウォレス (著), 川浦 康至, 貝塚 泉 (翻訳) 『インターネットの心理学』 2005年10月15日
 T. コポマー (著), 川浦 康至, 山田 隆, 溝渕 佐知, 森 祐治 (翻訳) 『ケータイは世の中を変える―携帯電話先進国フィンランドのモバイル文化』 2007年09月02日
 水越 伸 『コミュナルなケータイ―モバイル・メディア社会を編みかえる』 2007年11月29日
 小林 哲生, 天野 成昭, 正高 信男 (著) 『モバイル社会の現状と行方―利用実態にもとづく光と影』 2007年08月06日


■ 百夜百マンガ

釣れんボーイ【釣れんボーイ 】

 釣りか仕事か・・・男なら誰でも一度は迷う人生の選択を毎日のように行なう人の話です。やっぱり釣れるといいですね。

投稿者 tozaki : 2008年06月04日 22:00

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