« ローカル・ネットワークの時代 ミニコミと地域と市民運動 | メイン | 集合住宅と日本人―新たな「共同性」を求めて »
2008年06月12日
奇妙でセクシーな海の生きものたち
■ 書籍情報
【奇妙でセクシーな海の生きものたち】(#1239)
ユージン・カプラン (著), 土屋 晶子 (翻訳)
価格: ¥2310 (税込)
インターシフト(2007/11/15)
本書は、大学で生物学を教える研究者である著者が、「ホルモン満載の若い男女の心を、講義ではなすテーマにつなぎとめるにはどうしたらいいだろうか」という難問に、「講義でセックスの話を惜しみなくしていく」ことで、「沸き立つホルモンが渦巻いている頭の持ち主たち」の耳を傾けさせる、という「生物学をうまく教える秘訣」を実践した物語をまとめたもので、「海にすむ動物たちのつがい行動や性に関連した習性がテーマ」となっています。
第2章「マダコ狩り大会」では、「タコこそ百獣の王である」として、「瞬時にからだの色を変えること」ができ、「ジェット推進を発明」し、「形態的にも科学的にもびっくりするような多様性が試されていった進化の歴史を体現」していると述べ、「もし、あなたがライオンにかまれたら、命が助かる確率は、ヒョウモンダコからかまれたときよりも高いに違いない」と述べています。
第3章「真夜中の怪談話」では、人間の局部を狙ってくる魚カンディルを取り上げ、「その魚が怖いのは、人間の尿道口から侵入し、膀胱の中にまで入り込み、ついにはその人間を殺してしまうところにある」と述べ、どうみても腐肉食動物であるカンディルが人間を狙う理由として、「誘因は尿ではないか」という説が有力だが、「排出される尿の流れがカンディルをよびせるのだろうか」と述べています。
第5章「ロマンスの現実」では、エビの甲殻に印をつけて、「オス・メスの貞節度」を調べたところ、「彼らは同じ相手と一ヶ月以上つがいになるケースはほとんどない」ことが分かった一方で、クマノミの「気性の荒い小柄なオスと、のっそりした大柄なメス」は、「終生に渡る関係を結ぶ」と述べています。
第8章「学名が唯一つけられた雄性生殖器」では、19世紀にメスイカの外套腔のなかから発見された、「小刻みに動く奇妙な『物体』」について、「メスだけに寄生するまれな種類の寄生生物」として発表され、新しい属名「ヘクトコトゥルス」がつけられたが、「何年も後になってから、ヘクトコトゥルスと名づけられた生物は、オスイカの先端がちぎれたものだったと判明する」と述べ、「繁殖のさなかの激しい動きで、精包
を渡す役目のオスの交接腕の先が、メスの外套腔のなかで切れて残っていただけの話だった」と解説し、その後も、頭足類の「精子を運ぶ腕の先端部」をヘクトコトゥルスと呼ぶようになったと述べています。
第10章「オスが『出産』する」では、タツノオトシゴのメスが、「数百個の卵を『オスの腹の育児嚢』に注入」誌、「オスが『出産』の日を迎えるまで、育児嚢は文字通り、子どものゆりかごとなる」と述べています。
第13章「死と隣り合わせの美味」では、東京のフグ料理店で日本のフグ文化とであった著者が、唇に「ぴりぴりした快い刺激を感じはじめ」、椅子から立ち上がるときには、「指先がしびれているような感じ」がした、という「スリリングな思い出」を語り、「調理人が包丁捌きを間違えていれば、ハッピーエンドにはならなかったかもしれない」と述べています。
そして、魚毒に関する日本の毒物学者たちの仮説として、海底の海草を食べる植物食の魚が、海草の表面の毒性のある「渦鞭毛虫類」を一緒に食べてしまい、「毒がどんどん蓄積されて」いき、「植物食の魚を手当たり次第に食べていった肉食魚は、シガトキシンの保有者となる場合がある」と解説しています。
第14章「海のウサギ」ではアメフラシについて、「雌雄同体」であるアメフラシの交接が始まると、その匂いで別のアメフラシが寄ってきて、最初の「オス」として精子を放出したばかりの「オス」の後ろに並び、「ペニスをその『オス』の生殖腔に入れる」という「数珠つなぎ」の状態になることを解説しています。
第15章「貝紫への情熱」では、第二次世界大戦のガダルカナル島での熾烈な戦いの後、一息ついた若い米兵が、海岸で、「白地に茶色の斑点」が入った「つやつやした美しい円錐状の巻き貝」を見つけ、拾い上げようとしたところ、「貝の口から逆さとげの突いた銛が突き出て、彼の手のひらにぶすりと刺さ」り、若者は数分後、「からだじゅうが震えはじめ、ついに死んだ」というエピソードで、猛毒を持つアンボイナ(Conus geographus)だったと解説しています。
第16章「大きいほうがいい?」では、「並外れて接着力の強い分泌物で岩にくっついて」いるフジツボが、「近くの『メス』から性的に刺激される成分が海水中をふわふわと漂ってくる」と、「オスのフジツボの蓋がひめやかに開き、柔らかの肉の突出部が現れ」、「性的フェロモンの源の方へとしなやかに進」み、殻の長さよりもまだ遠い、メスの場所までちゃんと届き、「受精は無事成立する」ことを解説し、「フジツボたちのジレンマに対する解決策は、どの動物よりも大きなペニスを持つように進化することだった」と述べています。
そして、「古くからのやり方を変えないフジツボたちの繁殖システム」が、ネオダーウィニズムを唱える人々からすると、「生息場所を動かない生物のオスがペニスを持つのはサバイバル上、何らかの有利な点があるからだという見方につながっていくだろう」が、空腹の捕食者に食べられてしまうリスクを考えると「これはどうも有利な方法だとは思えない」と述べ、「進化には決まった方向性というものはないのではなかろうか。現在の体の構造や行動は、代わりになるほかの突然変異のセットが起こらなかったから、その結果として存在しているだけなのかもしれない」と述べています。
第19章「奔放なセックスライフを送るには」では、メスのエビが交尾可能になるには、交尾の前に脱皮していなければならないため、「性行動を行うには、脱皮の時期をコントロールする必要がある」ことを解説した上で、ブラックタイガーの養殖のため、エビが繁殖行動を行うように、片方の眼柄を切除してしまう、という解決策を紹介しています。
第23章「ヒトデとカキの戦いの真実」では、カキ漁師たちがカキを食い荒らすヒトデを駆除しようとして、ヒトデをナイフで真っ二つに裂き、海に戻したところ、ヒトデたちがそれぞれ再生し、「カキたちはヒトデに食べつくされ、市場への出荷もままならなくなった」と述べています。
第27章「性的に抑圧されていたビクトリア時代の分類学者」では、「巻き貝のなかにも女神に関わる名前をもらったものがいる」として、「その形状が女性の外性器に良く似ている」タカラガイ科キュプラエア(Cypraea)について、女神「アフロディアゆかりの島であるキプロス(Cyprus)を意味する」と述べ、「アフロディアは多産の神ともされている」と解説しています。
第31章「タコと見つめ合うとき」では、人間の眼が3タイプの錐状体で赤・緑・青の波長を吸収し、それをもとに3万種類の色調を区別しているのに対し、シャコたちの視物質は、最大で16種類もあり、そのうち12タイプが、「色」を識別する能力のベースとなり、「微妙な色の違いまではっきり捉えることができる」ほか、「紫外線や可視光線の偏光もキャッチできる」ため、「彼らは何百万色もの微妙な色合いの世界を見ていることになる」と解説しています。
本書は、目立つ邦題ではありますが、きちんと読めるしっかりとした生物学のポピュラー・サイエンスの一冊です。
■ 個人的な視点から
本書の邦題の「セクシー」は、原題のニュアンスやプロローグの辺りから付けられたものではないかと思いますが、なんとなく、キワモノっぽいというか、さすがに人間がドキドキするようなセクシーさではないことは分かっても、「へんないきもの」のような海の生き物の変わった生態をただ紹介するだけの単調な本のような印象を受けてしまいました。
とはいえ、人によってツボも違うと思いますのでこういう本のタイトルは難しいと思います。
■ どんな人にオススメ?
・豊かな海の営みの中に飛び込んでみたい人。
■ 関連しそうな本
デイヴィッド バラシュ, ジュディス リプトン (著), 松田 和也 (翻訳) 『不倫のDNA―ヒトはなぜ浮気をするのか』 2007年08月04日
リチャード・ドーキンス (著), 日高 敏隆, 岸 由二, 羽田 節子, 垂水 雄二 (翻訳) 『利己的な遺伝子』 2006年09月26日
マーク・E・エバハート (著), 松浦 俊輔 『ものが壊れるわけ』 2007年12月01日
ジョン・D・ バロウ (著), 松浦 俊輔 (翻訳) 『科学にわからないことがある理由―不可能の起源』 2007年06月24日
キース・J. レイドラー (著), 寺嶋 英志 (翻訳) 『エネルギーの発見』 2007年03月04日
ピーター アトキンス (著), 斉藤 隆央 (翻訳) 『ガリレオの指―現代科学を動かす10大理論』 2006年5月5日
■ 百夜百マンガ
アフタヌーンでは結構エロ出身のマンガ家が活躍(というか半分くらいはそうなのか?)しているので、それ自体は珍しくもないのですが、「ゆらさん」のパパであったことは今日初めて知ってビックリしました。
投稿者 tozaki : 2008年06月12日 22:00
トラックバック
このエントリーのトラックバックURL:
http://www.pm-forum.org/MT3/mt-tb.cgi/1767
【世界の孫 】