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2008年06月20日
博物館学を学ぶ―入門からプロフェッショナルへ
■ 書籍情報
【博物館学を学ぶ―入門からプロフェッショナルへ】(#1247)
水藤 真
価格: ¥1995 (税込)
山川出版社(2007/11)
本書は、「博物館学の教科書」を意識しつつ、「歴史系博物館を中心に、博物館の本質、機能や役割、業務のないよう、学芸員の仕事などが一通り分かるように」書かれたものです。
著者は、日本は、博物館が約5000館もある「博物館大国」であるが、「問題は中身である」として、「文化の薫り高い、豊かな生活のできる、そういう社会の一翼を担う博物館の在り方を考えていきたい」と述べています。
第1章「博物館の定義」では、「博物館は、組織・運営形態を問わず、あらゆる資料を収集・保存・調査研究・周知伝達・展示を行い、調査研究・教育・楽しみに資する公共に開かれた非営利の常設恒久機関である」と定義しています。
第2章「博物館の本質と種類」では、博物館の展示が、「美術館に並べられる美術品と大きく性格を異にする」として、「並べられた品々が単体で完結性が高く、かつそれぞれが独立したものほど、理解がし易い」が、「ここの品々の理解もさることながら、その相互の関係の理解や展示の構成全体を通じて、内容を理解してもらおうという展示ほど、分かり難いものになる」と述べています。
また、日本の博物館の分類方法として、
(1)博物館法の手続を経たかどうか:登録博物館・博物館相当施設と博物館類似施設・「その他の博物館」
(2)設置者による分類:国立・公立・私立
(3)扱っている資料や内容による分類(学問分野別の分類):(1)総合博物館、(2)歴史博物館・郷土博物館、(3)美術館、(4)自然系博物館(自然史博物館・理工博物館)、(5)動物園・水族館・植物園・動水植物園
の3つの分類方法を示しています。
また、わが国の学芸員が、「高いモラルを維持している」理由として、
(1)実際にものに触れることの喜び
(2)学芸員がじつは弱い立場の存在である点
の2点を挙げています。
第3章「資料と分類」では、博物館が、「多種多様な資料を収集・保存し、調査・研究するところ」であり、「博物館・博物館学の考察は、人類の営みの全貌を明らかにすることに繋がる」として、「これが博物館の最初の目的であり、かつ最終目標である」と述べています。
そして、様々な分類方法について解説した上で、「「世界にある、ありとあらゆるものの分類・統一化、これも求められている事柄の1つ」だと述べ、「過去数百万年にわたって、人類が生み出したものの系統的な把握が達成されれば、自ずから足りないものも判明するだろう。足りないものが何であるかが分かれば、今後の方向も見えてくる。私たちが目指すあらゆる資料の分類は、このためのものである」として、博物館と博物館学は、「21世紀社会の展望」という「きわめて重要な役割を担っている」と述べています。
第4章「資料の収集と整理・保管」では、博物館が資料を収集する方法として、
(1)購入:資料の所有者に対価を支払って受け入れる
(2)寄贈:所有者からの博物館への寄付
(3)寄託:一時的に博物館が当該資料を預かること
(4)借用:一時的に資料を借りるもの
(5)交換:実際にはあまり行われていない
(6)採集:動物や植物の採集がごく自然に行われる
(7)発掘:地中に埋まっているものを掘り出して、取得する方法
(8)製作:大きくは複製と製作に二分される
の8点を挙げ、解説しています。
また、資料生理について、「簡単なようで、案外大変」だと述べ、「「資料の保存・管理は、博物館の根幹の1つである。図書館に図書目録があって、誰でも本を閲覧できるように、博物館も収蔵資料台帳が完備され、資料の閲覧ができるようになれば嬉しい」と述べています。
第5章「資料の保存・分析・修理・製作」では、資料の保存に影響を与えるものとして、
(1)温度(熱)
(2)湿度(水)
(3)光
(4)生物
(5)空気
(6)天災
(7)人災
の7点を挙げ、「なかでも人為的理由で、ものの取り扱いの不注意によって、資料を破損することは、ぜひとも避けたい」と述べています。
また、修理技術者の素養として、
(1)技術のみあれば良いという考え方
(2)技術を持つのはもちろん、ものにも通じているべきである
という2つの考え方があり、「在来技術とヨーロッパの技術との間には、この2通りの考え方が交差しているように思う」と述べています。
第6章「博物館の事業展開」では、1つの展示が達成されるまでに、
(1)展示案の検討
(2)展示資料の検討(何を見せたいのか)
(3)展示案と展示計画の確定
(4)展示の実行
(5)会場の設営
(6)展示の補助
(7)関連事業
(8)広報――展示案内(ポスター・チラシ・ホームページの作成など)
(9)撤収
の内容と工程(スケジュール)があると解説しています。
また、著者がある大学で、「どこかの博物館の学芸員になったと仮定して資料の借用をお願いする手紙を書いてください」と課題を出したところ、「当博物館の特別展示○○に貴下がご所蔵の○○を貸して下さい。展示は○月○日から○月○日です。それがあるととても良い展示になります。ご返事をお聞かせください」等の文面が過半であり、「かしてもらえるという前提で書いている」と嘆いています。
さらに、博物館活動の中で、「教育・普及活動は飛躍的に増えている」が、「博物館側のこうした動きの障害」として、
(1)受験戦争に代表される進学競争
(2)博物館みずからが、資料や収蔵庫から市民を遠ざけている側面を内在している
の2点を挙げています。そして、現場の学芸員から、「学芸員は雑芸員である」という自嘲の声があがることについて、「1館当り数人の職員で構成されるわが国の博物館は、紛れもなく零細企業なのである。その分小回りが効き、開拓の可能性が大きい」と語っています。
第7章「博物館の情報」では、情報技術の活用例などを紹介した上で、「情報の発信源は、あくまでも『資料』なのであり、その資料は、博物館に大切に保存されているのである」と述べています。
第8章「博物館の維持管理」では、博物館活動に使われる経費について、
(1)人件費(職員の給料、あるバイトの賃金など)――3分の1
(2)博物館の管理費(光熱費、建物や設備の点検・補修など)――3分の1
(3)博物館事業費(資料の購入・補修や燻蒸、調査研究費、展示の維持改善、特別展の開催費、講座・イベントの開催日、報告書や図録の作成費など)――3分の1
の3点を挙げています。
第9章「これから博物館学を学ぶ人へ」では、「お気に入りの博物館・美術館」として、
(1)足立美術館(島根県安来市)
(2)博物館明治村(愛知県犬山市)
(3)トヨタテクノミュージアム産業技術記念館(愛知県名古屋市西区)
(4)大塚国際美術館(徳島県鳴門市)
(5)名和昆虫博物館(岐阜市大宮町、岐阜公園内)
(6)日本玩具博物館(兵庫県姫路市)
(7)函館市立博物館(北海道函館市青柳町、函館公園内)
の7館を紹介しています。
本書は、博物館学を学びたい人には、学びたいことが凝縮された一冊です。
■ 個人的な視点から
「学芸員」といえば専門職中の専門職というイメージですが、「雑芸員」という自嘲が込められた呼び名は実態を結構表しているのではないかと想像されます。
■ どんな人にオススメ?
・博物館を奥深く知りたい人。
■ 関連しそうな本
村井 良子, 上山 信一, 三木 美裕, 佐々木 秀彦, 平田 穣, 川嶋-ベルトラン 敦子 『入門ミュージアムの評価と改善―行政評価や来館者調査を戦略的に活かす』 2005年11月17日
神奈川県博物館協会 『学芸員の仕事』
太陽レクチャー・ブック編集部 『ミュージアムの仕事』
高橋 隆博, 森 隆男, 米田 文孝 『博物館学ハンドブック』
全国大学博物館学講座協議会西日本部会 『新しい博物館学』
リュック ブノワ (著), 水嶋 英治 (翻訳) 『博物館学への招待』
■ 百夜百マンガ
世界に知られた日本のSF漫画/アニメの代表的作品、は『甲殻』のほうですが、国内で作者の名前を知れ渡らせた作品。22世紀の世界といってもドラえもんが生まれた頃としか想像がつきませんが。
投稿者 tozaki : 2008年06月20日 06:00
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