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2008年06月25日

入札関連犯罪の理論と実務

■ 書籍情報

入札関連犯罪の理論と実務   【入札関連犯罪の理論と実務】(#1252)

  郷原 信郎
  価格: ¥2310 (税込)
  東京法令出版株式会社(2006/2/17)

 本書は、談合罪に関して、その「解釈をめぐって対立が続いている間に、わが国の公共調達については、恒常的かつ継続的な談合によって受注者が決定される非公式の『談合システム』が次第に定着していき、その一部の行為だけを切り取って処罰することが困難な状況に」なったなかで、
(1)競売入札妨害罪のうち入札に関する犯罪である談合罪及び入札妨害罪についての解釈上の問題を整理、検討すること。
(2)その背景となっている制度的、社会的問題などを分析すること。
(3)操作実務および立証に関する実務上の問題を検討すること。
等を目的としたものです。
 第1編「序論」では、わが国において、「明治22(1889)年に契約制度が法律上確立して以来、一貫して一般競争が原則とされてきたが、現実には、その時々の社会経済情勢に応じて指名競争、随意契約という例外的措置を取りうる範囲が拡大され、公共調達の運用の実態としても、むしろ一般競争の方が例外的といえるような状況が続いていた」が、欧米諸国との経済摩擦の激化や、「ゼネコン汚職事件」の摘発などにより、平成6年1月18日に「公共事業の入札・契約手続きの改善に関する行動計画」が閣議了解され「それまでほとんど指名競争入札方式で行われていたわが国の公共工事の発注は一般競争入札方式採用の方向への大きな変革を迎えることとなった」と解説しています。
 第2編「競売入札妨害罪の構成要件とその解釈」では、「公正なる価格」の解釈について、昭和19年大審院判決から振り返った上で、「『公正なる価格』の意義については、学説上も『競争価格説』と『利潤価格説』とが対立している」と述べ、「最高裁判例が採っている『競争価格説』が通説であるが、『利潤価格説』も有力に主張されている」と解説しています。
 そして、「不正の利益を得る目的」について、「当該談合行為との関係において談合行為者がその利益を獲得しようとすることに社会通念上悪質性が認められるか否かという観点から判断されることとなる」として、
(1)利益の学
(2)利益獲得と当該談合との対価関係の直接性
(3)利益の正確
の3点が、判断基準として考えられると述べ、「『不正の利益を得る目的』が認められるか否かは、上記(1)ないし(3)を総合的に考慮して判断をすべきである」と述べています。
 また、入札妨害罪と談合との関係について、
(1)入札参加舎監で談合が行われず、自由競争で入札が行われる場合に、一部の入札参加者が他の入札参加者の、意思を抑圧し、または錯誤・不知に陥れる形態。
(2)談合を成立させるためには、談合に加わらない入札参加者を威迫して談合に加わるよう強要したり、談合に応じないものが入札に参加できないように、入札指名から排除するようにしたりする行為。
(3)談合が成立していることを前提に落札者に利益を得させるための行為。
の3通りがあると述べています。
 さらに、談合への入札施行者側の関与について、「受注者が業者間の談合によって決定されていることを黙認している場合も多く、それにとどまらず、積極的に談合による受注者の決定を示唆したり、談合による受注に協力するような行為を行なう場合もある」として、「このような発注者側の行為も、入札参加者の談合行為と同様に『公の入札の公正』を害するものである」と述べています。そして、入札施行者側の関与と犯罪の成立について、
(1)談合への直接の関与
(2)特定の者を落札させることについての示唆
(3)談合による受注予定者決定および落札への協力行為
(4)談合による落札者の利益を増加させる行為
の4つの類型の行為について、「入札施行者側にいかなる犯罪が成立するか」を検討しています。
 第3編「公共調達をめぐる談合システムの構造と歴史的経過」では、「談合行為そのものを、『反社会的・反道徳的行為』としての一般的な刑法犯と同様の犯罪行為として取り扱うことの困難性の最大の要因」について、「戦後長らく、公共調達に関する業務に関わるものの多くが、談合行為そのものか、それを前提とする業務に関わりを持ってきた」という実情をあげています。
 そして、いわゆる「大津判決」が、「公共調達をめぐる談合のシステムに、談合罪の解釈という面から法的な『お墨付き』を与え、その後、公共調達をめぐる談合システムをいっそう磐石なものとすることになった」と述べ、捜査機関の側も、「業者間の話し合いによる受注予定者決定という『業界内民主主義』的な談合は、むしろ、過去にあったような談合専業者や暴力団等の介在する談合と比較すれば、犯罪としての悪性の低い談合であり、処罰価値がないとの認識が広がっていった」結果、捜査機関と公共工事受注業者の間に、「談合金の授受を伴なうような談合ではないかぎり、談合罪による摘発は行わない」との「暗黙の了解のようなもの」まで生じたと解説しています。
 しかし、日米構造協議における、アメリカ側の日本の独禁法運用強化の要求を受け、「入札談合は、独禁法の適用対象として極めて大きなウェイトを占めツようになり、「談合に対する批判の高まり、公取委の談合に対する独禁法適用の効果等によって以前のように建設業協会などの場で公然と談合を行うことはできなくなり、親睦団体などの場で秘密裏に談合を行なう形態に変化していったが、そのような親睦団体も、独禁法違反による摘発が相次いだことで解散を余儀なくされた」と解説しています。
 そして、「談合システム」も、「かつてのような業者間における話し合いを中心とする『業界内民主主義』的なものから、発注者と受注者の癒着・腐敗を伴なう『天の声』が他の談合や業者間の利益配分を伴なう形態の談合に移行し、刑事事件としては悪質化の方向に向かっていると思われるにもかかわらず、刑事処罰による談合抑止はほとんど行われてこなかった」ことを指摘しています。
 第4編「競売入札妨害罪の捜査実務上の問題と検討」では、談合罪による摘発件数が極めて少なく、「同罪の捜査が積極的に行われてきたとは言い難かった」理由として、「捜査機関の側に『公正なる価格を害する目的』についての立証が困難であるか、可能であっても大きな負担になるとの認識が捜査機関側にあったこと」を指摘しています。
 そして、従来の検察官の「公正なる価格を害する目的」についての立証が、「確立した判例となっている競争価格説の観点というより、むしろ、利潤価格説に十分に配慮した立証が行われてきたというのが実情であった」と述べています。
 一方で、最近の裁判例における「公正なる価格を害する目的」の認定が、「自由競争が行われた場合の落札価格の推定に主眼がおかれ、それが『適正な利潤』を含むものか否かは、さほど問題にされていない」として、「最高裁判例の『競争価格説』の考え方をいっそう徹底したもの」だと解説しています。
 特別補講「経済事犯の動向と犯罪捜査の実務」では、「一般の犯罪と経済事犯に対する対応の違い」の原因である、「経済事犯の犯罪としての特質」について、
(1)反道徳性・非倫理性が希薄
(2)目的・動機の合理性
(3)記録化の必然性
の3点を挙げています。
 また、贈収賄についての要素として、
(1)賄賂の授受
(2)職務権限との関連性
(3)便宜供与
の3点を挙げています。
 本書は、入札関連犯罪の捜査に関わる人間にとっては、取り締まる側にとっても、取り締まられる側にとっても、わかりやすく解説してくれる一冊です。


■ 個人的な視点から

 もともとは取り締まる方にとっての実用書のはずの本書ですが、立証までのロジックを赤裸々に解説した本書は、取り締まられる側にとっても「実用書」になってしまうのではないかと勘ぐってしまいます。


■ どんな人にオススメ?

・入札に色々と携わっている人。


■ 関連しそうな本

 鬼島 紘一 『「談合業務課」 現場から見た官民癒着』 2006年03月15日
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■ 百夜百マンガ

黄昏流星群【黄昏流星群 】

 島耕作は社長になってしまいましたが、黄昏るまでにはまだバリバリに活躍するのでしょうか。

投稿者 tozaki : 2008年06月25日 06:00

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