« 日本全国おもしろユニーク博物館・記念館 | メイン | 近代日本の農村的起源 »
2008年07月01日
一番やさしい自治体政策法務の本
■ 書籍情報
【一番やさしい自治体政策法務の本】(#1258)
田口 一博
価格: ¥1890 (税込)
学陽書房(2005/10)
本書は、「政策法務という土俵の上に、一人でも多くの人が乗ること」を目指したもので、読者が、「政策法務を21世紀の自治体、日本、そして世界や地球環境をも、自分の問題として考える道具として使いこなして」いくことを意図しているものです。
第1章「政策法務、超入門!」では、政策法務を、「財務における戦略会計と同じように、『政策実現のための道具として使う法務』のこと」であると述べ、「法務もまた、政策の表現」であると解説しています。
そして、政策法務の考え方の基本が、
(1)政策は問題に一番近いところでつくろう
(2)政策の実施方法をきちんと法的な言葉で表現しよう
の2点であると述べています。
第2章「『政策』+『法務』→『?』」では、政策法務の「学派」について、鈴木庸夫・千葉大学法科大学院教授による整理として、
(1)武蔵野学派:自治体が地域づくりのため、独自の政策を展開しようとするとき、そのよりどころとして法務を利用しよう、という考え方。
(2)行政法学改革派:法政策学として、法システムを改革しようとする。
(3)研修改革派:行政の実務者ばかりでなく、議員や市民も含めた研修を行うことで、政策法務を進めて行こうとする。
の3つの「学派」を紹介しています。
第3章「法の種類と法環境」では、「条例の位置づけが中央省庁の発する省令の下請け、落ち穂拾い」にすぎないという「自治体の閉塞状況」が、第一次地方分権改革によって、
(1)法解釈は中央省庁の「有権解釈」によるものだ、という考えを改めて、自治体には独自の法解釈権があることを明らかにした。
(2)条例制定の範囲の飛躍的な拡大→法定受託事務と自治事務について、どちらでも自治体の事務であるのだから、自治体の条例制定権は原則どちらにも可能であり、かつ、条例制定ができるのだから、自治体議会もまた検査権等を持つ。
の2点で大きく変化したことを解説しています。
また、「地方分権改革後に現れた自治体条例をめぐる変化」として、
(1)自治体の憲章としての自治基本条例や住民投票条例
(2)落ち穂拾いから脱却しようとする「串刺し」条例
の2点をその代表として挙げています。
第4章「地方分権改革と政策法務」では、「最近、政策法務が注目されるワケ」として、「30年以上前に理論的に説明されていた政策法務」が、「今日、一部の先進自治体だけのものから、普遍的にすべての自治体において実施段階に入っている」と述べています。
第5章の「行政職員のための政策法務」では、「条例案の起案が難しい理由」として、
(1)法令案の作成を通じた一般的な理由:条例案そのものを法律の言葉として練り上げる難しさ、既存の法・条例体系の中に矛盾なく収めていく目配り
(2)その自治体に固有な理由:条文の書き方や用字などのローカル・ルールの存在、規則・執行体制の作り方
の2点を挙げて解説しています。
第6章「議員のための政策法務」では、「自治体の基本的なことがらは条例で決めていこう」という「自治基本条例」について、「自治体の憲章として扱うためには、議会審議において他の条例との整序をきちんとつけなければ」ならないと解説しています。
第7章「市民のための政策法務」では、条例を含んだ法令の解釈が、「誰にでも開かれたもの」であるとして、「法令を執行する立場の行政機関に属するものでないことはもちろん、目的と照らして妥当かどうかというのは、市民一人ひとりもまた、判断しなければならないこと」であると述べています。
第8章「政策法務研修(1) 筋肉トレーニング編」では、政策法務研修の類型として、講師の出身が、「実務家←→研究者」という軸と、「政治学に属する行政学系←→法律学に属する行政法学系」の軸とで4つに分けられるとして、政策法務研修の「入口」が、
実務家 研究者
行政学系=政策重点 (1)政策実施過程研究 (2)政策形成過程研究
法律学系=法務重点 (3)条例立案 (4)訴訟=判例研究
のように分類できるとしています。
また、「筋肉トレーニング後の政策法務の『使用上の注意』」として、
(1)政策法務は、ことの善悪に中立
(2)政策法務は、誰にでも、立場にかかわらず使用可能
(3)政策法務は、ケンカにも、和解にも使用可能
(4)政策法務は、現実を知らなくても使用可能
(5)政策法務の活動から得られる結果は、政策法務の方法によらなくても得ることができる
の5点を挙げています。
第9章「政策法務研修(2) 自治力トレーニング編」では、「分権改革後の条例のライフ・サイクル」として、
(1)問題発見
(2)問題の絞り込み
(3)行政内調整
(4)解決策の条例案要項
(5)パブリック・コメント
(6)条例案作成
(7)規則案等作成
(8)執行体制の検討
(9)説明資料作成
(10)議会審議
(11)条例交付
(12)予算決定
(13)執行体制確立
(14)施行 →(1)(に循環)
というサイクルを挙げています。
第10章「法務のいろいろ」では、「法務」の種類として、
(1)訴訟法務:企業でも自治体でも、もっとも古典的な法務
(2)解釈法務:抽象的に書かれている法律や条例をどのように具体化して適用するか
(3)法制執務:用語や用字、「てにをは」までも一手に引き受ける。
(4)立法法務:連綿と行われてきた「秘技」が、ようやく一般に公開されるようになってきた
などについて解説しています。
第11章「政策法務の支援組織」では、自治体行政機構に「政策法務課」というセクションを置くべきか、という問題に関して、政策法務課の果たすべき機能として、
(1)事前介入型
(2)事後監視型
の2つの機能を挙げて解説しています。
本書は、「政策法務」という奥の深い世界の入り口を、自治体職員に限定せず分かりやすく解説した一冊です。
■ 個人的な視点から
著者の田口さんには、色々な勉強会等でお世話になっています。自治体職員として、アカデミックな世界と両方に軸足を持ちながら、現場と研究の世界を橋渡ししている姿には頭が下がります。
■ どんな人にオススメ?
・「政策法務」はマニアのためものだと思っている人。
■ 関連しそうな本
山本 博史 『行政手法ガイドブック―政策法務のツールを学ぼう』 2008年04月15日
東京都市町村職員研修所 『これだけは知っておきたい政策法務の基礎』
太田 雅幸, 吉田 利宏 『政策立案者のための条例づくり入門』
木村 純一 『行政マンの政策立案入門―キャリア・アップ!』
兼子 仁 『自治体行政法入門―法務研修・学習テキスト』
鈴木 庸夫 『自治体法務改革の理論』
■ 百夜百マンガ
自画像がヘビメタなマンガ家だったことが印象に残っているのですが、この人も今年50歳になるかと思うと時の流れの速さを感じます。
投稿者 tozaki : 2008年07月01日 22:00
トラックバック
このエントリーのトラックバックURL:
http://www.pm-forum.org/MT3/mt-tb.cgi/1786
【いつも心に太陽を 】