« 近代日本の農村的起源 | メイン | 鉛筆と人間 »

2008年07月03日

量子暗号 絶対に盗聴されない暗号をつくる

■ 書籍情報

量子暗号 絶対に盗聴されない暗号をつくる   【量子暗号 絶対に盗聴されない暗号をつくる】(#1260)

  石井 茂
  価格: ¥1890 (税込)
  日経BP社(2007/10/25)

 本書は、「量子というミクロの世界の自然法則を利用することにより、決して解読されないことを保証しようとする暗号」である「量子暗号」について、「それがいかに生まれ育ってきたかという歴史を背景としつつ、解説しようとするもの」です。著者は、「量子暗号には、道の可能性を探るサイエンスとしての魅力と、実際に使えることを目指して開発するテクノロジとしての将来性が同居している」と語っています。
 第1章「量子暗号とは何か」では、量子暗号が、「古代から現代に至るすべての種類の暗号とは異なり、そもそも盗み見ることや、傍受すること自体を難しくしてしまう」ものであり、「これまでの暗号がすべて『古典力学』で説明できる世界を前提としていたのに対し、量子暗号は『量子力学』でなければ説明できない世界を前提とする」と述べています。
 そして、「量子暗号とは、信号を傍受すること自体によって、その信号がどんな情報を運んでいるかが決められなくなってしまう、という量子の性質を利用した暗号である」と解説しています。
 第3章「解読できない暗号とは」では、ギルバート・バーナムが考案した「自動暗号化装置」と、ジョセフ・モーボーンが考案した、「一度使った鍵は一回限りで捨ててしまう」「ワンタイム・システム」の考え方を組み合わせれば、「絶対に解読できない暗号が出来上がる」として、このような暗号システムを「バーナム暗号」と呼ぶことを紹介した上で、「鍵として使う文字の量が送信する平文の文字量と同じかそれよりも多く、また鍵の並びが不規則であれば、解読は不可能であること」がクロード・シャノンによって証明されたと述べ、「今日に至っても、解読が不可能であることが証明できるのはバーナム暗号だけである」と解説しています。
 第5章「最初の量子暗号」では、チャールズ・ベネットとジブ・ブラサールが提案した量子暗号方式「BB84」について、「送信者と受信者の間で任意の量の秘密鍵を共有する手段をもたらした」と述べています。
 また、「通信分野の慣例」として、
・「アリス」:正規の送信者
・「ボブ」:受信者
・「イブ」:盗聴者
と表記することを紹介しています。
 そして、1989年に、ベネットとブラサールが、BB84の実験システムを作り上げ、伝送距離わずか32センチメートルにとどまったが、量子暗号の伝送実験に成功したことを紹介しています。
 第7章「量子がからみ合う暗号」では、「いったん関係が生じると、その後は遠く離れても互いに影響しあうという量子エンタングルメントの状態にある光子のペア(EPR光子対)」について、「一方を測定すると、もう一方に影響が出る」という性質が、「傍受されたことを検地するという量子暗号の特徴を実現するのにぴったりである」と述べ、アルトゥツ・エカートが、「E91」と呼ばれる、「EPR現象を使って、安全に秘密鍵を配布できる量子暗号方式を提案した」ことを解説しています。
 そして、1999年に、ウィーン大学等によって、E91方式による量子暗号の実験に成功したことを紹介しています。
 第8章「量子暗号を中継する」では、光ファイバ通信において、「通信距離が伸びるとファイバ内を伝わっていく信号は距離に応じて劣化する」が、「単一光子をつかうことが前提の量子暗号では、普通の光通信と同じような増幅などの概念は考えられない」ため、「信号を増幅するのではなく、移動するうちに壊れていく光子の状態を何らかの方法で回復してやる必要がある」と述べています。
 第11章「おとり捜査をする量子暗号」では、「現実的な通信環境を使うことを前提に、通信距離や伝送速度を改善する方法」として、ホワン・ウォン・ヤンが、「鍵のデータを送る本当の信号光のほかに、おとりの信号光を紛れ込ませることによって、イブの存在をあぶり出す」方法である「デコイ法」を提案したことを解説しています。
 第16章「量子コンピュータでも解けない量子公開鍵暗号」では、「量子暗号の背景には、サイエンスとして追求すべき未知の領域がまだ残っている。その一方では、現状のネットワークを前提とする現実的なテクノロジとしての研究が進んでいる」として、量子暗号が「量子の直接的な応用を開く」先駆けとなると語っています。
 本書は、一般には馴染みの薄いものの、インターネットなどを使う上では欠かすことの出来ない暗号技術をわかりやすく解説するとともに、最先端の科学のワクワクを伝えてくれる一冊です。


■ 個人的な視点から

 暗号もののポピュラーサイエンスを読んだからといって、暗号そのものについての理解が深まるというわけではないのですが、メアリー・ステュアートの話にしても、暗号にまつわる様々なドラマは読み応えがあります。


■ どんな人にオススメ?

・暗号なんて自分に関係ないと思っている人。


■ 関連しそうな本

 サイモン シン (著), 青木 薫 (翻訳) 『暗号解読―ロゼッタストーンから量子暗号まで』 2006年05月03日
 ゲリー ケネディ, ロブ チャーチル (著), 松田 和也 (翻訳) 『ヴォイニッチ写本の謎』 2006年09月10日
 手嶋 龍一, 佐藤 優 『インテリジェンス 武器なき戦争』 2008年02月06日
 川成 洋 『紳士の国のインテリジェンス』 2008年02月16日
 サイモン シン 『フェルマーの最終定理―ピュタゴラスに始まり、ワイルズが証明するまで』 2006年09月02日
 ロビン・ウィルソン 『四色問題』 2006年07月18日


■ 百夜百マンガ

花より男子(だんご)【花より男子(だんご) 】

 台湾でもテレビドラマ化された少女マンガの超大ヒット作。『有閑倶楽部』にしてもそうですが、少女マンガの学園ものの舞台に超お金持ち学校が多いのは、女の子には小さい頃からセレブへの憧れがあるからなのでしょうか。

投稿者 tozaki : 2008年07月03日 22:00

トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:
http://www.pm-forum.org/MT3/mt-tb.cgi/1788

コメント

コメントしてください




保存しますか?