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2008年07月10日

災害防衛論

■ 書籍情報

災害防衛論   【災害防衛論】(#1267)

  広瀬 弘忠
  価格: ¥756 (税込)
  集英社(2007/11/16)

 本書は、「人類に絶滅をもたらさないまでも、きわめて大きな打撃を与えるにちがいない現代の災害やリスクを取り上げ、いかに対処すべきか、現時点で考えうる最善の方向性と方法」とを、「受動的安全」と「災害弾力性」の2つのキーワードとともに述べているものです。
 第1章「鉄壁の災害防衛線を築く」では、「災害を予防する力と災害に耐える力を合わせたもの」を「災害抵抗力」と、そして、災害抵抗力に「被害からの回復力を加えた総合力」を「災害弾力性」と名付け、災害弾力性の要素として、
(1)災害への抵抗力
(2)災害から回復する力
の2点を挙げた上で、この2つを軸に、
 
        災害への抵抗力
      ある       ない
災 
害 あ  弾力型社会   虚弱適応型社会
か る


復 な 防衛鈍重型社会   ぜい弱型社会
す い


 
の4つの災害への反応タイプを分類しています。
 また、「深刻な危険のなかにおかれた人間」が、「全体が見えないために、どうでもよい些細なことにこだわる」という「瑣末主義と危機状況の無視の同居」の原因として、
(1)脅威を与えるかもしれない情報に対する恐怖と蔑視
(2)自分自身も他の人間も、基本的には「生き物」だという認識が欠けていること
の2点を挙げています。
 第2章「災害をビンの中の魔神とする」では、「完全に予知できる災害など存在しない」ので、「受動的安全をまず第一に考えなければならない」と述べています。
 また、緊急地震速報の一般利用が遅れた原因として、
(1)誤報が起こる可能性
(2)自身自体の大きさ(マグニチュード)と各地の揺れの大きさ(震度)の予測精度に限界があること
の2点を挙げた上で、最大の理由として、「地下街や駅での大勢の人が出口に殺到するパニックの発生へのおそれ」を挙げ、「このおそれは何の根拠もない」、「災害の発生までに数秒から十数秒間しかない状態は、パニックが発生するための時間的余裕さえ与えない」と述べ、「あいかわらず『パニック神話』を信奉している人々が行政の中にもメディアにも多いことに、改めて驚いた」と指摘しています。
 第3章「災害をはねかえし、災害からはねかえる力」では、「都市には、災害弾力性がある」として、「都市は本質的に災害に弱いといわれることが多いが、これはウソである。事実はその反対だ」、「災害が都市のアキレス腱を切断した場合には、都市の機能は麻痺してしまう」が、「アキレス腱の断裂が命を奪うことはない」として、「豊かに発展、成長した都市は、滅亡するかに見えるほど破壊されても、フェニックスのように自らの体を焼いたその灰の中から蘇る」と述べています。
 そして、「災害弾力性」について、
(1)災害に出会ってもそれをプラスに変える能力
(2)常に楽観主義的態度と持続的エネルギーを持ち続け、プラス思考で、災害の新たな展開を予想して予防し、被害を最小限に抑え、被害を受けた地域への救援活動を効果的に続ける能力
(3)災害による重大な破壊を被っても、すみやかに回復することができる能力
の3点を挙げています。
 また、災害弾力性がある状態を、
(1)豊富で多様な政治的、社会的、経済的な資源を持っているということ
(2)実行能力
(3)普段に行動方針を見直し吟味する、柔軟で想像的な立案・検証能力
(4)楽観主義と忍耐力
の4つの要素から成り立っていると解説しています。
 さらに、現代の災害が、変幻自在な「プロテウス性」を持っているとして、「われわれもまたプロテウスのような融通無碍の変身の術を身につけよう」と述べています。
 第5章「情報を収集し、分析し、判断する力を磨く」では、デンマークの心理学者エドガー・ルビンが、「図と地の関係」として、「『図』は明瞭な形を持つものとして、前方に出てくるように見えるのに対して、『地』はうしろに退き、単なる背景を作るに過ぎない」ため、「我々の意識の中では『地』は形をなさない」、「『図』はより強い印象を与えて記憶されるのに対して、『地』は印象が薄く、記憶されにくい」と述べています。
 そして、「すべての陰謀や不意打ちは、『図と地』の関係を利用して、意図的に謀略を『地』のなかに埋め込むことによって成功する」と述べています。
 本書は、災害に強い社会づくりのヒントを与えてくれるかもしれない一冊です。


■ 個人的な視点から

 同じ著者による『人はなぜ逃げおくれるのか』は、「パニック神話」が神話に過ぎないことを指摘する点で読み応えがありましたが、本書は、災害に弱いと言われている都市の「災害弾力性」について言及している点が特色でしょうか。ただし、その根拠がわかりにくいので思い付きっぽい印象を受けてしまうのが残念です。


■ どんな人にオススメ?

・都市は災害に弱いと思っている人。


■ 関連しそうな本

 広瀬 弘忠 『人はなぜ逃げおくれるのか―災害の心理学』 2006年08月16日
 山村 武彦 『人は皆「自分だけは死なない」と思っている -防災オンチの日本人-』
 広瀬 弘忠 『無防備な日本人』
 藤本 建夫 『甲南大学の阪神大震災』
 藤本 建夫 『阪神大震災と経済再建』 2006年09月01日
 広瀬 弘忠 『心の潜在力 プラシーボ効果』


■ 百夜百マンガ

クロサギ【クロサギ 】

 テレビドラマや映画にもなった作品。詐欺師をだます詐欺師を本当に「クロサギ」と呼ぶのかどうかは知りませんが。
 そういえば、海外ドラマの『華麗なるペテン師たち』の2つ目のシリーズが昨日から始まったようです。

投稿者 tozaki : 2008年07月10日 23:00

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