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2008年07月11日
ウィキペディアで何が起こっているのか―変わり始めるソーシャルメディア信仰
■ 書籍情報
【ウィキペディアで何が起こっているのか―変わり始めるソーシャルメディア信仰】(#1268)
山本 まさき, 古田 雄介
価格: ¥1995 (税込)
九天社(2008/05)
本書は、「ウィキペディアにまつわる疑問を明らかにし、日本語版ウィキペディアが抱える問題を多くの方々に知って」もらうことを目的とするとともに、「ウィキペディアのライトユーザー、ヘビーユーザー、管理者、そしてウィキペディアを利用するあらゆる人たちの対話と情報公開の場所とすることを目標と」したものです。
第1章「ウィキペディアとは」では、「ウィキペディアの仕組みは複雑である。ちょっと大げさに言えば、まるで法律の勉強をしているみたいだ」と述べています。
そして、ウィキペディアが、2001年に創始され、「日本語版のユーザーが現実的な数に増え始めたのは2003年1月頃からだ」と述べています。
また、ウィキペディアの参加者が、
(1)IPユーザー:ウィキペディアに何ら情報を登録せず、匿名掲示板に書き込むような感覚で参加する。
(2)ログインユーザー:ウィキペディアの利用者として登録した利用者名でログインする。
の2種類に分けられることを解説しています。
さらに、ウィキペディアには、
・みんなが守るべきものである。
・その量が膨大義テ、すべてを理解することが困難を極める。
という点で法律に似た、「基本方針とガイドライン」があると述べ、「すべてのユーザーが理解して実践すべき最低限の方針」として、
・偏見を避ける。
・独自の調査を載せない。
・著作権を侵害しない。
・ウィキペディアは百科事典。
・他の参加者に敬意を払う。
という「五本の柱」が存在することを解説しています。
第2章「ウィキペディアで起きた事件」では、
・楽天証券の当事者編集事件
・「西和彦」ページの大幅削除問題
などのトラブルや、IPユーザーの所属が明らかになった、
・省庁によるウィキペディア編集問題
などの問題を紹介しているほか、「特定の個人が頻繁に問題を惹き起こすケース」として、「ウィキペディア日本語版の2008年02月現在において、確認できる最大級の迷惑ユーザーである」「排除にあらゆる手を試みるも現在のWikipediaシステム上このユーザーを完全に排除することが不可能なのが現状である」と言われ、「全ウィキプロジェクトで最大とされる1043もの多重アカウントを所有」し、「ソックパペットによって公正な議論を妨害したり、編集合戦を起こしたり」するユーザー「Peace」等について解説しています。
第3章「ウィキペディアの管理は問題山積み」では、「ウィキペディアの成長の歴史を調べてみる」と、「人類が何千年という時間をかけて獲得してきた、統治システム、政治システムといった"システム"を得る過程を、ウィキペディアはわずか数年で達成している」として、「まさに社会学の縮図といってもいい」と述べています。
そして、ネット訴訟の問題で例に挙げられる「2ちゃんねる」と対比し、「訴状の送り先にすら困るウィキペディアと、訴訟を起こしても責任者が裁判にすら出廷せず損害賠償金も支払わない2ちゃんねる、いったいどっちがマシなのか、ある意味、難しい話といえなくもない」と述べています。
また、「現在、ウィキペディアの管理者は、多くを求められ過ぎているのかもしれない」として、
・コミュニティを統率しうるのに十分な人格
・日々の項目の編集作業
・荒らし対策
・悪質ユーザーのブロック作業
などを挙げ、「実質的には一ユーザーでしかないにもかかわらず、ウィキペディアを代表するものとすら見なされる」ため、「これでは管理者がなかなか増えないのも無理はない」と述べています。
さらに、多くのソーシャルメディアが持つ、「一発目はノーチェック」という性質について、「ウィキペディアは既存メディアに比べても、誤報や名誉毀損のリスクが高い」と指摘しています。
第4章「それぞれが考えるウィキペディア日本語版」では、「ウィキペディアの管理者」とは、「2ちゃんねるでいう『削除人』みたいなもので、『サイトの管理人』ではない」にもかかわらず、「『管理者=管理人』という誤解が常について回」ることが語られています。
また、アンチウィキペディアの立場を取る「Beyondo(吉本敏洋)」は、「ウィキペディアの危うさ」として、「悪意のある参加者を排除できないシステムであること」を挙げ、「目立って活動している『荒らし』ならブロックできるけど、こっそりと複数アカウントをとって、少しずつ恣意的な編集を行うような人は見つけることが難しい」ことを指摘しています。
第5章「変わり始めるソーシャルメディア信仰」では、「ソーシャルメディアではユーザーが消費者であり、かつ生産者である」という特徴を挙げた上で、マスコミに対するアンチメディアとして、
(1)リアルタイム性
(2)黙殺することはできない
の2つの特徴を持つインターネットの登場によって、「マスコミの側で報道の誤りを握りつぶすことができなくなった」ことを指摘しています。
著者は、ソーシャルメディアが、「単なる反権力としての立場を終え、次のステージに進みつつある」として、「それは反権力としての力を維持しながら、同時に政治、企業、マスコミといった権力との融和も見せる、第二のステージだ」と述べ、「もはやネットは社会の一部分にある」と述べています。
本書は、単なる便利なネット百科事典ではないウィキペディア日本語版に起こっている現象を分かりやすく解説した一冊です。
■ 個人的な視点から
最近では、ウィキペディアを丸写しした卒論が問題になって、ウィキペディアからの引用を禁止したり、自動的にネット上のパクリかどうかをチェックするソフトができたりしているようですが、国の外郭団体の中にはウィキペディアをそのままコピペして調査事業の報告書にしてしまうところもあるようなので、学生のことを笑えません。
■ どんな人にオススメ?
・ウィキペディアは単なる便利な無料の事典だと思っている人。
■ 関連しそうな本
アンドリュー・キーン (著), 田中 じゅん (翻訳) 『グーグルとウィキペディアとYouTubeに未来はあるのか?―Web2.0によって世界を狂わすシリコンバレーのユートピアンたち』
吉沢 英明 『Wikipedia ウィキペディア 完全活用ガイド』
ポストメディア編集部 『笑うウィキペディア』
ジェームズ・スロウィッキー 『「みんなの意見」は案外正しい』 2006年08月29日
鎌滝 雅久 『MediaWiki使いこなしガイド―あなたもWikipediaが作れる!』
西田 圭介 『Googleを支える技術 ~巨大システムの内側の世界』
■ 百夜百マンガ
水野美紀主演の香港映画でリメイクされるらしい1970年代の映画の原作がこれです。どの作品も同じに見える独特の世界を受け継いだ人はいないものでしょうか。
投稿者 tozaki : 2008年07月11日 06:00
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