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2008年07月17日
パックマンのゲーム学入門
■ 書籍情報
【パックマンのゲーム学入門】(#1274)
岩谷 徹
価格: ¥1575 (税込)
エンターブレイン(2005/9/17)
本書は、名作ゲーム『パックマン』を世に送り出した著者が、ゲーム業界を担う次世代に向け、「ゲームはクリエイターの経験や人間性が現れるもの」という「想いやゲームづくりのノウハウを託すこと」を目的としたものです。
第1章「パックマンズ・メソッド 1955-1980」では、東京に生まれ、幼少時を秋田で過ごした著者が、自然の中で、「落とし穴をつくったり、草を結んでおいてみんなを呼んで、引っ掛けたり」という「他愛もないイタズラ」のなかで、「ゲームデザイナーとしての原点ともいうべき『仕掛け』への愛着」が始まったことや、雪の中で「肥だめ」という「人糞の底なし沼に落ちた恐怖の経験」が、「罠(トラップ)の持つ驚きの経験」が、「ゲームのシステムを考える際に『トラップ(仕掛け)』にこだわる」ことの原体験であったと語っています。
そして、高校、大学と「ピンボール」にはまっていた著者が、"『遊び』をクリエイトする"というナムコのキャッチフレーズに、「ここなら自分にも何かできそうだし、ピンボールをつくれるかもしれない」とひらめいたこと、入社直後に、先輩から「特許が一杯あってなかなかつくれないんだよ」とピンボールつくりの夢を一蹴されてしまったこと、ナムコのドライブゲームマシン『F-1』のデッドコピー品を訴えるために某倉庫に証拠写真を撮りに忍び込んだところで警察に通報され、建造物不法侵入で逮捕された経験などを語っています。
また、1979年、『スペース・インベーダー』の大ヒットの影響で、各社が、「エイリアンを打ち殺す殺伐としたゲームを大量にリリースした」ため、「ゲームセンターも女性が足を踏み入れてはいけない雰囲気」になってしまったことに「危機的状況を察知」し、「女性やカップルでも楽しめるゲームを作れないか?」と考え、「一切れだけ食べた残りのピザの形が、口を開けているキャラクターに見えた」ことから『パックマン』のアイディアが誕生した瞬間を語っています。
さらに、ナムコが「第一次黄金期」を迎えた1980年代について、当時のナムコが、「まだ上場していない会社で、予算もはっきりしないような状況」の中で開発していて、「ある意味、ゲーム制作者たちにとっては、非常に恵まれた環境」だったとして、「まさに、真っ白なキャンバスに自由に絵を描けた時代だった」と語っています。
第2章「ゲーム学」では、「ゲームの題材やテーマのインプットの対象は、おおよそ人間が関わる広大な世界全体に及び、ゲームという媒体を用いてどんなことも表現できる可能性を秘めている」として、「あらゆる分野にもゲームの題材を求めることができる」と語っています。
また、ゲームをプレイしたいという動機を与えるための第一の条件として、「ゲームに注目」してもらうことを挙げ、その要素として、
(1)新奇性(しばらくあるいは今までに一度も経験していない)
(2)不確定性(わからない事柄や、試行錯誤の後、疑問を解いていくもの)
(3)複雑性(構成要素の種類や数が多いほど複雑)
の3点を挙げた上で、第二の条件として、「ゲーム目的がはっきりしている」ことを挙げ、
(1)ルールとゲームクリアー(勝敗)が悩まずに分かる
(2)ひと目でそのゲームの持っている特長(遊び・奥行き)が理解できる
の2点を挙げています。
さらに、ゲームの難易度設定について、「設定する難易度カーブの上昇具合が急すぎたり、大きな壁があったりするとプレイヤーの支持が得られず、プレイヤーの技術達成の予測を誤り、難易度カーブの飽和点を低く設定していた場合は、プレイヤーには手ごたえのないゲームになってしまう」ため、「クリアごとに徐々に難易度も上がっていくことが、プレイヤーをホットにさせ、初心者でも上級者でも、ある程度、継続したプレイに導くことが可能になる」と述べています。
第3章「ゲーム開発の実際」では、企画担当者に求められている能力として、
(1)発想力:生まれてから、現時点に至るまでに得た後天的な知識・情報を選択し、掛け合わせて、「絶妙なもの」をつくり出す
(2)情報を収集・整理する能力
(3)関係者を動員していく能力
(4)臨機応変に問題に立ち向かい、対応する能力
の4点を挙げています。
また、プロデューサーに求められる能力として、
(1)千差万別な問題に「気づき、分析する力」
(2)問題を解決するための「構想力」
(3)人心を動かす「説得力」
(4)対立する利害関係をまとめる「折衝・交渉力」
(5)「人情の機敏を知る力」
などを挙げ、なかでも「問題に気づく」能力について、「これが欠落していると、俗にいう『マニュアル人間』になってしまい、そうなってしまっては、自らが企画し、また問題を解決していかなければならないプロデューサーとしては失格」だと述べています。
さらに、「ゲームソフトは、映画や書籍と同様、大衆に対するつよいメッセージ性を持ったメディアのひとつ」であるため、「その表現の方向を誤ってしまった場合、社会問題・人種問題といった重大問題にも発展しやすく、最悪の事態が起こる可能性もある」と述べ、「クリエイターは常に自らが社会の中の一員であるという意識を持ち、独りよがりな発想や自分本位に偏らないよう留意する努力が必要だ」と語っています。
第4章「対談 宮本茂」では、宮本が、「ハッピーエンドのゲームクリアーは、たくさんの選択肢の一つでしかないけれど、バッドエンドのゲームオーバーには理由が必要」だと語っています。
また、宮本は、いまのゲームが、「昔のゲームにあった『わかりやすく面白い』という方向性から、『複雑化し多様化したシステムでユーザーを満足させる』というものになって」きたと語っています。
第5章「対談 小口久雄」では、『パックマン』や『リブルラブル』が、「これ以上何も足せないし消せない」ゲームだと語っています。
本書は、本来のターゲットである、ゲームのクリエイターを目指す人はもちろん、『パックマン』を懐かしいと感じる人にとっても、お薦めの一冊です。
■ 個人的な視点から
本書を読んで、久しぶりにパックマンがやりたくなって、ネット上のフラッシュ版のゲームをやって見ましたが、簡単だと思ってもなかなか簡単にはクリアさせてもらえないゲームバランスは見事だと思いました。
■ どんな人にオススメ?
・パックマンに青春を思い出してしまう人。
■ 関連しそうな本
坂村 健 『痛快!コンピュータ学』 2005年07月02日
相田 洋 『電子立国日本の自叙伝』
山形 浩生 『コンピュータのきもち 新教養としてのパソコン入門』 2005年07月23日
ハワード ラインゴールド (著), 青木 真美, 栗田 昭平 (翻訳) 『思考のための道具―異端の天才たちはコンピュータに何を求めたか?』 2006年01月07日
アラン・C. ケイ (著), 鶴岡 雄二 (翻訳) 『アラン・ケイ』
西田 宗千佳 『美学vs.実利 「チーム久夛良木」対任天堂の総力戦15年史』 2008年07月09日
■ 百夜百マンガ
月刊誌の『アフタヌーン』の四コマで認められ(?)、よりメジャーな『モーニング』でストーリーものの連載を持つも、その設定の特異さゆえに幅広いファンをつかむことができなかった作品。超ニッチなファンの心は鷲づかみしたかもしれません。
投稿者 tozaki : 2008年07月17日 22:00
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