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2008年07月24日
自治体格差が国を滅ぼす
■ 書籍情報
【自治体格差が国を滅ぼす】(#1281)
田村 秀
価格: ¥735 (税込)
集英社(2007/12/14)
本書は、「中央と地方のあり方、その中でも地方自治体の現状と課題について、具体的な事例を数多く挙げて問題提起を行ったもの」です。著者は、執筆の動機を、「地方自治体の関係者はもとより、これまで地方自治体とのかかわりをあまり持っていなかった方々にも、地域や地方自治体のこと、そして中央と地方の関係などについて、身近な事柄としても関心を持ってもらえれば」と語っています。
第1章「拡大を続ける地域間格差」では、「大都市と地方」という対立軸以外に、「新たな対立軸」として、
(1)人口増加自治体と人口減少自治体
(2)豊かな自治体と貧しい自治体
(3)その自治体の住民の経済状況
などの対立字句を見出すことができると述べ、「それだけに地域の問題は深刻化している」と解説しています。
また、「人口が減少し、大規模災害の危険性も指摘される状況下では、地域と地域が助け合う、共助の精神を持つことが必要だ」と述べています。
第2章「勝ち組自治体?」では、千葉県浦安市について、「東京に隣接する小さな漁村」であったが、1958年の本州製紙江戸川工場の悪水放流に対して、浦安の漁民が同工場に乱入するという事件が起きたように、東京湾岸の海域汚染が進み、漁民の漁業の先行きに対する不安は高まり、浦安の漁業は衰退し始めた」ところに、「ある企業から浦安町に対し、海の一部を埋立て、東洋一の遊園地を造りたい」という申し出があり、町が千葉県に埋立て事業の促進を要望した結果、
・住宅地の造成
・大規模遊園地の誘致
・鉄鋼流通基地の形成
の3点を基本方針として、県の事業として埋立て事業が実施されることとなった経緯を解説しています。
そして、埋立て前には、面積が4.43平方キロメートルだった町の面積が、1981年には16.98平方キロメートルと、約4倍にまで拡張されたと述べています。
また、浦安市の公共施設の中でも有名な図書館について、「同規模の都市の中では日本一充実しているという評判」だとして、蔵書数は、同規模の市の平均の45万冊の倍以上である100万冊を超え、市民一人当たりの年間貸出冊数も、動機思しの平均値の倍以上である約12冊、市は年間7億円以上の経費をかけていることも、「全国的に見てもトップクラスの豊かな財政だからこそ」であると述べています。
さらに、愛知県豊田市について、その税収は、2005年度には1000億円を超え、人口100万人未満の県はもちろん、宮崎県よりも多く、人口121万人をかかえる山形県の税収に匹敵すると解説しています。
第3章「負け組自治体?」では、夕張市の財政が破綻した責任について、地方分権時代のキーワードである「自己決定・自己責任」に照らせば、決算を偽装する「自転車操業」を続けて来た夕張市に最大の責任があり、「それをしっかりとチェックできなかった夕張市議会の責任もきわめて大きい」としながらも、「夕張市の財政破綻のきっかけは炭鉱の閉山である」として、「国のエネルギー政策の転換という意味では、国自身にまったく責任がないとするのはちょっと無理がある」と述べるとともに、「国と同様に北海道の責任というのも忘れてはならない。市町村の地方債の許可権限は都道府県」にあり、「市町村財政に関しては長年北海道が指導を行ってきた」と述べています。
また、千葉県木更津市については、「木更津市ほど、地価の乱高下に踊らされた自治体もない」として、「1987年に1平米当たり82万円だったのが、ピークの1991年には385万円とわずか4年で4.7倍に資産価値が膨れ上がった」にもかかわらず、「バブルの崩壊と足並みをそろえるかのごとく、毎年20%前後地価を下げ続け、2006年には11万4000円とピーク時のわずか3%の額にまで下落してしまった」と述べています。
さらに、大阪市西成区について、「格差社会の縮図の街」であるとして、全国平均よりも6歳以上と「飛びぬけて男性の平均寿命が短い地域」であると紹介した上で、大阪市の生活保護率の高さについて、「離婚率や失業率、特に日雇い労働者の割合が保護率の格差に与える影響が大きい」として、1996年から2003年にかけて、生活保護世帯数は、「あいりん地域だけに限ると4倍を超えている。また、市全体の国民年金の未納率は5割を超えている」と述べています。
第4章「模索する自治体」では、群馬県大泉町について、「外国人の割合が群を抜いて、全国一大会ことで知られている」と述べた上で、その原因は、「不足する単純労働者を補うために町と中小企業が積極的に働きかけた結果である」と述べています。
また、三重県亀山市について、シャープ亀山工場の誘致成功のポイントとして、「総額135億円という国内では破格の補助金」を大きな要因の1つと挙げた上で、
(1)三重県の熱心な支援・協力体制
(2)三重県に地の利があったこと
(3)世紀の変わり目のさまざまな変化を絶好の時期と捉えて、異例ともいえる巨額の補助金交付を迅速に決定した北川前知事の行政手腕
の3点を挙げています。
さらに、徳島県上勝町について、高齢化率48.5%と「限界自治体の仲間入りをもうすぐしてしまいそうな小さな山間の町」であるが、「いろどり事業」と名付けられた「いわゆる葉っぱビジネスの成功によって、全国の自治体から注目され、マスコミでも再三取り上げられるようになった」と述べ、その成功の秘訣として、「何と言っても、高齢者パワーの活用」を挙げ、「"つまもの"の生産に携わる農家の平均年齢は67歳、それも女性が中心であるが、この人たちがまさに元気印なのである」として、「今では、月に100万円を稼ぐお年よりも珍しくなく、中には年間で1000万円以上稼ぐ人も出てきた」と述べています。
第5章「新潟から見た格差」では、「明治の初期は新潟県が一番人口の多い県だった」が、現在までに、日本全体で人口が3倍以上となっているのに、新潟県では1.5倍程度にとどまっていることを指摘しています。
そして、2014年問題として、「北陸新幹線の開通によって上越新幹線のポテンシャルが低下し、場合によってはローカル線化し、結果として新潟県経済が地盤沈下してしまうのではないか」という指摘を取り上げています。
また、新潟県で以前から課題となっていた、大学進学率の低さについて、1990年代以降、こうせつ民営の大学が相次いで設立された結果、それまで最下位付近であった進学率が、全国で36番目にまで順位を上げたが、「大学進学率が低いのは、新潟が専門学校王国ということの裏返しとも言える」と述べています。
第6章「中央と地方、対立か、それとも共存か」では、「地方あっての中央」であるとして、
・電気はどこからくるのか:首都圏の生活は新潟や福島県にある東京電力の原子力発電所に支えられている。
・水はどこからくるのか:利根川水系の水源の多くは群馬県の山々によって守られている。
・食べ物はどこからくるのか:東京都の自給率はわずかに1%にとどまる。
などの点を指摘しています。
そして、として、「中央と地方の関係は人間の血管にたとえるとわかりやすい」として、「中央のエネルギーの源は、地方によって供給される水や電力、空気や食べ物、そして若い人材だ」と、「これらは地方から中央への動脈の流れのようだ」と述べる一方で、「中央から地方へと産業廃棄物が大型トラックなどによってあたかも静脈のように運ばれていく」と述べています。
著者は、「自治体生き残りのための十ヵ条」として、
(1)情報公開を徹底させること
(2)国際化、高齢化を素直に受け入れること
(3)地域の素材で勝負すること
(4)国頼み、都道府県頼みから脱却すること
(5)官も民も、総力戦で地域の生き残りを模索すること
(6)安全、安心の地域社会を構築すること
(7)中央と地方のつながりを深めること
(8)公共事業頼りから環境保全、国土保全に力を注ぐこと
(9)住民自治の仕組みを充実させること
(10)共助の地域社会を構築すること
の10点を挙げています。
本書は、一口に「自治体」という言葉では括りきれない多様性を持つ、全国のさまざまな地域を紹介してくれる一冊です。
■ 個人的な視点から
営業戦略上ということもあってか、「格差」が、「国を滅ぼす」と銘打たれてはいるものの特徴的な自治体のさまざまな境遇を解説してはいるものの、なぜそれが「国
を滅ぼす」のかはよく分かりませんでした。
まあ、キャッチコピーだから、と言われてしまえばそれまでですが。
■ どんな人にオススメ?
・自治体間の格差は問題だと思っている人。
■ 関連しそうな本
日本経済新聞社 『地方崩壊再生の道はあるか』 2007年10月09日
松本 武洋 『自治体連続破綻の時代』 2007年01月04日
三浦 展 『下流社会 新たな階層集団の出現』 2007年11月14日
山田 昌弘 『希望格差社会―「負け組」の絶望感が日本を引き裂く』 2006年01月11日
橘木 俊詔 『日本の経済格差―所得と資産から考える』 2006年02月10日
苅谷 剛彦 『階層化日本と教育危機―不平等再生産から意欲格差社会(インセンティブ・ディバイド)へ』 2006年02月14日
■ 百夜百マンガ
ドラマとしては『ショムニ』の後番組だったというのも不思議な縁ですが、仲人さんはポニョポニョの宮崎師匠なのだそうです。
そう言えば『働きマン』の主題歌はユニコーンでしたが、作者自身が『ヒゲとボイン』を描いている人の姪に当たるというのは偶然なのでしょうか。
投稿者 tozaki : 2008年07月24日 06:00
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