« 自治体格差が国を滅ぼす | メイン | 治安はほんとうに悪化しているのか »
2008年07月25日
コミュニティ鉄道論
■ 書籍情報
【コミュニティ鉄道論】(#1282)
佐藤 信之
価格: ¥2000 (税込)
交通新聞社(2007/12)
本書は、「コミュニティバス」のアナロジーとしての造語である「コミュニティ鉄道」について論じたもので、著者は、「コミュニティという言葉を、地方公共団体という形で狭く捉えるのではなく、住民組織や市民団体・NPOといった利益を共有する地域社会の自発的な組織まで拡大すると、コミュニティバスという概念も拡大され、むしろ現在の地域交通の実態にふさわしくなる」と述べ、「市民主体のコミュニティ鉄道論は現在進行中のこと」であり、「本書が新しい鉄道論の原点になれば」と述べています。
第1章「コミュニティ社会と鉄道」では、明治41年に千葉県知事として赴任した有吉忠一が、「千葉県では、当時道路の修繕に適した砂利が産出せず、輸送費のかかる割高な県外産の砂利を購入する必要があった」ため、「道路改築よりも割安な軌道・軽便鉄道に着目した」と述べています。
そして、「木更津~久留里間」が、明治44年7月18日に軽便鉄道法により免許、「大原~大多喜間」が、同月15日に軌道法により特許となったと述べています。
また、東葛人車鉄道について「明治40年に設立された全線単線の人車鉄道(軌道条例)である」として、
・第1期:中山村鬼越~鎌ヶ谷村間
・第2期:中山駅前~行徳川原間
の路線であったが、「大正7年には早くも廃止の憂き目に合い、ごく短命に終わってしまった」と述べ、運行中止は、「大正7年2月ごろというだけで、正確な日付もわからない」と述べています。
さらに、「茂原・長南間軌道運輸車両組合」について、「県が同区間に敷設した軌道設備を利用して運行された人車の押夫たちの組合」であり、「明治42年から大正14年まで存在した」と述べ、ピークの大正2年には、1年間に4万3508人の旅客(1日平均119人)を運んだとして、「かなりの盛況振りであったと察せられる」としています。
「千葉県営大原・大多喜人車軌道線」については、「千葉県が建設して運営した唯一の人車軌道である」とした上で、「大正10年に夷隅軌道に譲渡されるまでの10年間にわたって運行された」と述べています。
第2章「鉄道の中間経営形態」では、「第三セクターにおける上下分離の現状を紹介した上で、とくにと紙が多第三セクターに絞って経営問題となっている資本火の負担について整理し、建設費にかかる元利償還に対する公的主体による支援措置の状況ないし経営形態の変更をともなう再建策について検討を加える」としています。
著者は、イギリスでは公共部門主体の都市鉄道整備への民間活力導入手法として導入されたPPP方式が、「日本では逆に民間主体の分野への公共側からのアプローチとして意義がある」として、「もともと民間が主として整備に当たってきた大都市内における鉄道路線の増設や新設については、近年民間が単独で事業化することが難しくなっている。それに対して、政府は第三セクターを設立することで建設財源に公的資金を投入する枠組みを整備しているところである」と述べています。
第3章「都市鉄道」では、「都市型第三セクター鉄道の経営形態の変更」として、「千葉急行電鉄」を取り上げ、「もともと小湊鉄道が計画した千葉延伸線を京成電鉄が引き取り、新たに京成電鉄と小湊鉄道が出資して設立された」が、「平成6年度には次期繰越損失が30億円に達することになり、開業3年目で早くも債務超過に陥ることになった」として、平成10年6月3日、出資者による「第2回緊急対策会議」において、「京成電鉄への営業譲渡により自主廃業すること」が決定されたことを解説しています。
第4章「ローカル鉄道」では、1990年代に、「公共施設や商業施設が郊外に立地するようになって、地方での生活には自家用車がなくてはならない必需品となった」ほか、「見落とされがちだがさらに重要な動きがあった」として、「自転車の利用の増加」を挙げています。
そして、近年のローカル鉄道が、「既に多くが廃止されてしまい、現在廃止が検討されている路線も少なくない」が、「その社会的便益に着目し、公的な経営支援によって維持しようという動きが出てきたことは心強い」と述べ、その公的支援の根拠となる「費用効果分析」については、「現在まだ試行段階であり、確立されたものとはなっていない」などの課題を指摘しています。
また、「762mm軌間」について、「ヤード・ポンド法で2フィート6インチにあたることから『ニブロク』という愛称で呼ばれ、かつては全国各地で見られた規格である」として、「もともと地形が厳しい場合や、地域の資本力の乏しいケースで、建設費用が安く建設が容易なより軽便な鉄道システムとして選択された」と解説しています。
さらに、「えちぜん鉄道」の再建に関して、「運賃の引き下げを敢行」したことについて注目し、「売れない商品は値下げして売れ残りが出ないようにするのが製造業の常道であるが、鉄道サービスは貯蔵できないために売れ残りという感覚がなく、安売りしようという動機も生まれなかった」と述べ、「鉄道経営者には値引はかなり勇気のいる問題であった」が、「えちぜん鉄道の場合は、設備投資のすべてを県が負担することになっていたために減価償却費の計上が必要なく、その文、値引が可能になったという特殊事情もあった」と解説しています。
また、「富山ライトレール」が、「計画の発表から3年という驚異的な短期間で実現できた」背景には、「国のLRT整備に対する支援制度の創設、JR西日本の協力、公安委員会の協力、地元の人々の理解があった」として、「特に富山市による地元説明会では、市の担当者が拍手で迎えられるという光景が見られた」と述べています。
第6章「最近の鉄道問題への取り組み」について、平成17年11月28日に、千葉県知事と千葉市長が会談して大筋合意した「千葉都市モノレールの会社再建と路線延伸計画」について、「自治体からの負債を株式化して財務内容を健全化する一方、自治体に資産の一部を譲渡して単年度の損益をも健全化するという、全国における第三セクター再建策の集大成といった形となった」と述べています。
第6章「提言」では、「第三セクターが行政目的と密接に関連しているという理由で、自治体の影響力を保つために設立されるケースが多いこと」を指摘し、「採算ベースに乗るならば、むしろ民間の方が効率的に運営することが可能である」として、「独立採算が可能ならば公営企業のまま残す意味はなく、完全民営企業に経営形態を転換すればよい」と述べ、「このような問題は、結局は公共部門と民間部門の役割の所在が明確にされていないことに起因するのではないだろうか」と指摘しています。
また、ローカル鉄道の問題解決には、「さまざまな交通機関との連携も必要である」として、「本来連携して初めて大きな効果が生み出されるプロジェクトに対して、縦割り行政にしばられることなく、一元的に計画を策定して実施するための支援制度の確立が必要である」と述べ、県単位での「地域交通整備基金」を低減しています。
そして、「地域の公共交通のあり方についてコミュニティの合意形成を前提とし、鉄道を存続させる決定をした場合には将来にわたって安定した経営が可能となる仕組みを用意することが必要である」と述べています。
本書は、コミュニティを支える重要なインフラである鉄道のさまざまなあり方を論じた一冊です。
■ 個人的な視点から
ローカル線の廃線を惜しむのは、全国から集まる「鉄」な人たち、という印象がありますが、廃線による影響は、普段鉄道を使わない人を含めて、じわじわ効いてくるような気がします。
■ どんな人にオススメ?
・ローカル線は鉄ヲタの郷愁だと思っている人。
■ 関連しそうな本
吉田 一紀 (著), ビーコム (編集) 『モハようございます。 あの人はなぜ、鉄道にハマるのか?』 2008年07月06日
野田 隆 『テツはこう乗る 鉄ちゃん気分の鉄道旅』 2008年03月08日
一坂 太郎 『東海道新幹線歴史散歩 カラー版―車窓から愉しむ歴史の宝庫』 2008年04月30日
青木 栄一 『鉄道忌避伝説の謎―汽車が来た町、来なかった町』 2007年07月18日
原田 勝正 『鉄道と近代化』 2007年11月30日
三戸 祐子 『定刻発車―日本の鉄道はなぜ世界で最も正確なのか?』 2005年10月10日
■ 百夜百マンガ
別に『ホームレス中学生』のネタ元というわけでもないようですが、ある意味で、家出物っていうのも子どもたちの憧れのストーリーのような気もします。『家なき子』とか。
投稿者 tozaki : 2008年07月25日 22:00
トラックバック
このエントリーのトラックバックURL:
http://www.pm-forum.org/MT3/mt-tb.cgi/1810
【僕といっしょ 】