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2008年07月31日
論理と心理で攻める 人を動かす交渉術
■ 書籍情報
【論理と心理で攻める 人を動かす交渉術】(#1288)
荘司雅彦
価格: ¥735 (税込)
平凡社(2007/8/11)
本書は、交渉術について、著者が学んできた「理論」に、著者自身の「経験知」を融合させ、「それを誰にでも理解できるように、分かりやすく噛み砕いて説明したもの」です。
著者は、「交渉術」を、「究極的に社会全体の利益を高めることを目的としたスキルで、理論と実際の経験知の融合によって生み出されるスキルである」と定義しています。
第1章「相手の心をつかむ――交渉の心理学」では、交渉理論について、「1980年代にアメリカで一つの重要な学問分野となり、近年は経済的利益だけでなく、人間の感情や心理面にもスポットが当てられるようになってきた」と述べています。
そして、交渉に当たって重要なこととして、
(1)交渉相手は「常識を備えた対等な人間」であることを前提とすること
(2)相手の主張にはそれなりの意味があることを認識し、しっかり耳を傾けることで以下の効果が期待できる。
(a)ガス抜き効果
(b)自分が話を「聴く姿勢」をもっていることを、相手にはっきり示す
(c)相手の主張を全部聴いてしまって、「隠し球」や「後出し」を封じてしまう
(d)どんどん相手に話をしてもらうことは、相手を自発的に自分御側の情報を次々と開示していくことになる。
などの点を挙げています。
また、古典的な交渉テクニックとして、
(1)ドア・イン・ザ・フェース・テクニック:最初に大きな要求をして、譲歩という「貸し」をつくってから目的を果たす。
(2)フット・イン・ザ・ドア・テクニック:小さなコミットメントから始めて、大きな要求をしていく。
(3)権威のある材料:交渉のイニシアティブを握りやすくなる。
などの点を挙げています。
第2章「心を揺さぶる、感性の交渉――ストーリー理論」では、「パワーポイントでの数字や図表の羅列ではなく、優れたストーリーによってこそ人を説得できる」という「ストーリーテリング」について解説し、その最終目的は、「理屈抜きに、観る者、聴く者の『心情』や『感情』を大きく揺さぶることにある」と述べています。
そして、「交渉」の場において、「相手の『心情』に訴える『具体的事実の提示』は極めて有効」であると述べています。
第3章「落としどころを見極める――ゲーム理論」では、「交渉というものは、相手の戦略を予想して自分の戦略を立て、相対する形をとるものですから、『ゲーム理論』の理解なくして戦略立案はできない」と述べています。
また、交渉の落としどころとして、
(1)成立の落としどころ:双方の利益が重なり合う場合、その範囲内であれば必ず「落としどころ」がある。
(2)絶対に成立しない双方の利益が重なり合わない。
の2種類があると述べた上で、「『落としどころ』というのは、交渉の場合、双方が持っている情報を基準にして、どちらも完全な満足は得られないが、成立させないよりははるかにいい。と判断できる条件」であると解説しています。
さらに、「交渉の武器」となるものとして、
(1)代替的選択肢(BATNA: Best Alternative to a Negotiated Agreement)
(2)オプション:オプションをたくさん持っていることを相手に示すことは、相手をして一目置かせる効果がある。
(3)時間的コスト:合意にかかる時間価値が、他方より安いほうが交渉では有利
の3点を挙げています。
第4章「確実に攻めるためのツール――クリティカル・シンキング」では、クリティカル・シンキングについて、「論理を最重要としているのではなく、論理を使って検証するように物事を見る」ことであると解説しています。
そして、クリティカル・シンキングのツールである「演繹法」と「帰納法」について、「この2つのツールを用いることによって、最低限、筋の通った説明ができる」上、「論理的に破綻のない文書を書く基本」でもあると述べています。
また、帰納法が、「発見した『事象』の質や量、そして『結論』にいたるまでの因果関係が、主観に左右されやすいという欠点」を指摘しています。
さらに、「もれなく、ダブりなく」という「MECE」(Mutually Exclusive and Collective Exhaustive)について、「極論すれば、ピラミッド構造にならないような主張は、理由のない感情論か、論理破綻を来たした主張ということ」にあると指摘しています。
第5章「機先を制する交渉のスタイル」では、交渉のときの服装について、「交渉の場では、できるだけきちんとした服装が好ましい」ことについて、「『権威への服従』という心理学的な効果を相手に与える」と述べています。
また、「相手の情報はなるべくたくさん収集したほうがよい」として、「こちらの情報をまず出させることが大切」だと述べています。
本書は、交渉理論の基本をコンパクトにまとめた一冊です。
■ 個人的な視点から
「交渉術」というと労務交渉の専門家とかビジネス交渉の専門家とかが書いているイメージがありますが、日本の弁護士がこういう本を書いてくれること自体が価値があると思います。内容的には特に目新しいところはないのですが。
■ どんな人にオススメ?
・「交渉術」が実際の交渉で使われているか疑問がある人。
■ 関連しそうな本
マックス H・ベイザーマン (著), マーガレット A・ニール (著), 奥村 哲史 『マネジャーのための交渉の認知心理学―戦略的思考の処方箋』 2005年07月04日
ロバート・B・チャルディーニ (著), 社会行動研究会 『影響力の武器―なぜ、人は動かされるのか』 『説得と影響―交渉のための社会心理学』 2006年02月23日
フランク・ベトガー (著), 土屋 健 『私はどうして販売外交に成功したか』 2006年11月17日
印南 一路 『ビジネス交渉と意思決定―脱“あいまいさ”の戦略思考』 2005年6月28日
鈴木 有香 (著), 八代 京子(監修) 『交渉とミディエーション―協調的問題解決のためのコミュニケーション』 2005年09月30日
■ 百夜百マンガ
ラーメン王が関わっているからかリアリティのある作品というものになっていますが、ラーメンというものに対する日本人のこだわりの強さを感じる作品です。
投稿者 tozaki : 2008年07月31日 06:00
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