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2008年08月10日

言葉を使うサル―言語の起源と進化

■ 書籍情報

言葉を使うサル―言語の起源と進化   【言葉を使うサル―言語の起源と進化】(#1298)

  ロビンズ・バーリング (著), 松浦 俊輔 (翻訳)
  価格: ¥2730 (税込)
  青土社(2007/03)

 本書は、学者たちの「興味をそそり、じれったく、かつまた期待を裏切られる問題」である「人間の言語という能力の進化」の問題について、「産出よりも了解の方が、人間が言語を使う能力を進化させた原動力だということ」を論じたものです。
 著者は、「了解の方が先んじている必要があることは、言語に向かう進化の道筋の上にあるあらゆる地点で、解釈が少なくとも一歩、産出に先んじている必要があることを意味する」と述べ、「合図の産出を改変して成功し、従って自然淘汰によって確保されるのは、その改変が、他の個体にあらかじめ存在している受容能力に合致する場合だけだ」と解説しています。
 第2章「笑み、目配せ、言葉」では、「言語で一番重要なことは、最も明白なこと」だとして、「言語によって、やすやすと事物のことを指せるようになり、さらにはそれらのことについて何ごとかを言えるようになる」と述べています。
 そして、「どこへ旅行しようと、笑顔はしかめ面より友好を意味するものである」として、「人類学者が、新しく調べる村で暮らしていく必要があるものの、言語はまだあまり勉強していないというときも、顔に出る表情を読みとることで、滞在先の人々の反応を判断することは容易にできる」と述べています。
 著者は、「一次近似として、言語はデジタルで、参照を容易にする。言語の大部分は、膨大な語彙を含め、学習しなければならず、これは、集団ごとに違ってもいいことを意味する」と述べる一方で、「われわれの笑い声、叫び声、うなり声、鳴き声、顰蹙、微笑は、他のジェスチャー=コールと同様、言語とは非常に異なるコミュニケーションを形成する。こちらはアナログ信号で、感情を伝えるのに優れている。言語ほど文化によるばらつきがないし、意思による制御もさほど受けない」と述べています。
 第3章「嘘と本当」では、ベルベットモンキーが、「その警戒の呼び声やうなり声で、暮らしている世界について、危険や捕食者についても、社会体制の様子についても、重要な情報を伝えている」と述べたうえで、「人間のジェスチャー=コールも参照的情報を伝えることができる」として、「われわれの笑顔は、少なくともベルベットモンキーのうなり声と同じくらいには、社会的関係について明らかにするに違いない」と述べています。
 そして、「一部の動物の合図の意味には『恣意的』と呼べるものがあるが、『離散的』とは違って、動物の合図に『恣意的』を使ったとき、単語について使ったときと同じ意味かどうかは明らかではない」と述べたうえで、「動物の合図の中に『恣意的』と言っていいものがあるというのは正しいかも知れないが、だからといって、それが言語に似ているとは言えない」と述べています。
 また、「言語と動物のジェスチャー=コールとの違いを強調」下上で、「進化論的に説明しなければならないのは、言語の独特の特徴である」と述べ、「われわれが言語を用いる能力が進化する様子を理解しようとすれば、検討しなければならないのは、言語の参照する力であり、デジタルなところであり、慣習により学習されるところであり、膨大な語彙であり、統語法と新造力である」として、「われわれが理解する必要があるのは、こうした言語の新しい特徴であり、われわれを他の霊長類から分ける特徴であり、そのような新しい特徴のほとんどは、認知に関わるものである」と解説し、「そうした特徴が、チンパンジーの心とよく似てはいても現代人の心とは違う心を持った動物に、どのように生じえたのか」という問題を提起しています。
 第4賞「心と言語」では、「相手の言語について何かを学ぶとすれば必須」となる「5つの具体的な認知の道具」について、
(1)相手と私は周囲の世界について、豊かな概念的理解を豊富に共有していることを前提にすることができた。
(2)相手と私は同じ対象と出来事に注目できることを前提にできた。
(3)私はまねする能力を前提にできた。
(4)指差す身振りと、参照する対象に似ている身振りとを理解できることを前提にできた。
(5)言語には反復可能なパターンがあることを前提にできた。
の5点を挙げています。
 また、チンパンジーが、「他者の視線の向かう先を追うことができる」一方で、「腕や指で指すことは理解できない」ことは、人間にとって奇妙なことに思えると述べています。
 さらに、「大型類人猿は、他の動物、さらにはサルと比べても、共同注意、模倣、誘導記号がうまいが、その技能は、現代人類がやすやすと学習するような言語を学べるほどのものではない」と慕う絵で、人間の早い時期の祖先について、「言語のひとかけらでもできてしまえば、それ自身が淘汰の対象になる」と述べ、「理解し話すことがうまい方が、生存と生殖に有利になっただろう」と解説しています。
 第5章「記号と合図」では、「音程の高い音はテンションの高さ、覚醒、興奮、熱意、活動、終わっていないことに対応する。音程の低さはテンションの低さ、弛緩、完了に伴う」として、「音程の高さの上がり下がりは、それとともに使う単語の意味を調節する」と述べています。
 そして、「音程の高い声は、小さいことをうかがわせる。弱さ、無力、服従、礼儀、自信のなさといった性質と関係する。低い声あるいは音程が下がることは、大きいこと、確信、権威、攻撃、自信、自足、威嚇をうかがわせる」と述べています。
 第6章「得られたアイコンと失われたアイコン」では、「聾唖者の中には、聴覚的に慣習化された合図を使うことがある」として、著者がインドの田舎で会った何人かの聾唖者が声を出すのに驚いた経験を語っています。
 また、アメリカ手話言語(ASL)には、「どんな話し言葉よりもはるかに多くのアイコン的なサイン、インデックス的なサインがある」と述べ、「サインが生み出される縦横奥行きの3つの次元が、話し言葉が閉じこめられている時間という1次元では無理なほど、アイコン性やインデックス性をもたらしている」可能性を指摘しています。
 著者は、「慣習化はコミュニケーションを加速し、産出する側の仕事を易しくするが、慣習化には他にも利点がある」として、「記号が標準化するにつれて、それは曖昧でなくなりもする」ことを指摘しています。
 第7章「わずかな音から多くの単語へ」では、「手の身振りによる視覚言語が始まってしまったら、声による聴覚の身振りへの切り替えを、何が誘発しえただろう」として、「言語に適応し、前適応した最古の性質は、すべて認知に関わるものだったと認識すれば、答えの一部になる」と述べた上で、「もともと言語ではない何かへの適応として、声道への意思による制御が先にあったとすること」を挙げ、「すぐに考えられる候補は、単語のない、何らかの歌唱だろう」と指摘しています。
 著者は、「憶測を恐れなければ、初期の人類に、音楽と言語の両方の祖先となる一種類の発生があったことは想像できる」と述べた上で、「石器時代の男と女は、互いの発生を魅力的だと思ったとすれば、性淘汰が声の技能の急速な増大を促したかも知れない」として期しています。
 第8章「統語法──生得のもの、学習されるもの」では、「統語法がわれわれの中で成長するときに自然発生的に育つのか、それともほとんど学習に依存しているのかという議論」に関して、チョムスキーが、自然発生的な成熟の側に立ち、「われわれがそれぞれ遺伝子にすでに組み込まれた言語の動き方の知識が相当にあって、それを持って言語学習の作業にかかるようになる」とする「普遍文法(ユニバーサル・グラマー)」説を唱えたことを紹介しています。
 また、「言語淘汰が意味する遅い変化と、クレオール化に見られる急速な変化との折り合いを付けるには、学習者が、われわれの子どもほど有能ではなかった言語の初期段階を振り返る必要がある」として、「機能的な言語があり得るようになるために変化しなければならないのは生物学的な構造ではなく、機能的な言語がまず言語淘汰の結果として出てきて、それから自然淘汰が作用する環境の一部となったということはあり得る」と解説しています。
 第9章「一歩一歩、文法へ」では、「統語法が発達した段階に関して推論するために用いられてきた、2つの全く異なる方向の証拠に依拠する」として、「一方では、統語法のうち、他の面がなくても使えた面がどれかと問い、そうして何が最初に出てきたかを問う。他方では、あいにくなことに『文法化』というぎこちない用語で呼ばれている、一群のよく知られた歴史的過程を検討する」と述べています。
 また、これまでの要約として、著者が唱えてきた、「変化が言語にもたらされる道」として、
(1)一人の人間の一生の間でさえ、言語のあらゆる部分が無作為の変化を受ける。
(2)文法化のサイクルの一部を成す変化。
(3)言語淘汰:外部言語の何らかの形が、子どもによって、他の外部言語よりも、自身の内部言語のお手本として好まれるときに生じる。
(4)自然淘汰と性淘汰によってもたらされる変化。
の4点を挙げています。
 第10章「権力、噂、誘惑」では、「言語能力の遺伝される違いがあれば、生殖がうまくいく度合いに差が付くことに寄与したに違いない」と述べる一方、「言語技能における遺伝子に基づく違いを求めることに反対する傾きは強いので、言語学者は言語の使い方や能力にある個体差に、そもそも目を向けようとしたがらない」と述べています。
 著者は、「二種類の個体差を認める必要がある「として、
(1)発音や声の質、一部の語彙の分野での特殊な発達、統語法に関わる個人に特有の細かい違いといった、些末なばらつきがあり、言語適性については何も言わない。
(2)言語能力が優るとか劣るとか、複合的なことができるとかできないとか、何かの目的について優れているとか劣っているとかの評価を何かの尺度上で付けられる差異もある。
の2点を挙げています。
 そして、「あとは、一番有能な旧石器時代の男女、他の人々よりも入り組んだ言語を扱えた人々が、平均よりも多い子どもを育てられたといえる理由を問うことである」と述べています。
 著者は、「性淘汰は、自然淘汰では説明しにくい行動については魅力のある説明である」が、問題点として、
(1)性淘汰は急速に作用するが、一貫性がなく、長期に渡って一つの方向に種を導くことはあり得そうにない。
(2)他の動物では、雌の選択のせいとされる特徴は、たいてい雌よりも雄の方で発達しているが、女は知的、言語的、芸術的能力の点で男とよく似ている。
があることを挙げています。
 その上で、「入り組んだ言語の進化の原動力となったのは、技術に関する技能よりも、社会的技能を促す淘汰だった」ではないかと述べ、「初歩的な言語を最初に使ってから、文字が発明されるまでの間、自然淘汰と性淘汰の圧力は、最善の社会的技能をもった個体に一番利益をもたらした」と述べています。
 第11章「言語はわれわれに何をしてきたか」では、著者にとって、「この世界の謎で最も深いのは、人間の意識という謎である」として、「科学は意識にはまだほとんど手を触れていない」と述べた上で、ニコラス・ハンフリーが、「われわれの意識が役に立つのは、それによって自分の動機、感情、行動について特権的な見通しが得られるからだ」と述べていることを紹介しています。
 また、「言語は長期の淘汰によらなければ、いかなる形でも発達しえなかったほど入り組んでおり、また良くできている。言語に見られるような適応した複合性を説明するには、他の方法はまったくない」と指摘しています。
 そして、著者自身が、半世紀ほど前に「ガロ」と呼ばれる人々の中で4年近くを過ごした経験を語り、「われわれは奇妙な種で、変わった存在にしたのは、他の何にもまして言語である。言語がどう始まったか、あるいはそれが人類の中でどう発達したかについて、詳細がわかることもないだろうが、推測がうまくなれば、言葉を使う猿としての人間の理解も向上することだろう」と述べています。
 本書は、私たちが普段当たり前に使っている言語が、進化の上では決して当たり前のものではないことを教えてくれる一冊です。


■ 個人的な視点から

 人間が言葉を使えるようになった過程については、色々な分野の研究者がアプローチしていますが、言語学者による本書のアプローチは切れ味も鋭く説得力もあります。もちろん、専門外の進化とか脳科学の部分はとってつけた感じもありますが、それも含めて専門家で議論してけばいいのではないかと思います。


■ どんな人にオススメ?

・言葉を使えるのは人間の当たり前の能力だと思っている人。


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■ 百夜百音

Q: Are We Not Men? A: We Are Devo!【Q: Are We Not Men? A: We Are Devo!】 Devo オリジナル盤発売: 1978

 8月10日のサマソニに登場。だいぶおじいちゃんという歳なのですが、赤い「エナジードーム」を頭にかぶり、黄色いツナギを着た人たちがたくさん来てました。


投稿者 tozaki : 2008年08月10日 06:00

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