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2008年08月12日
もっと長い橋、もっと丈夫なビル―未知の領域に挑んだ技術者たちの物語
■ 書籍情報
【もっと長い橋、もっと丈夫なビル―未知の領域に挑んだ技術者たちの物語】(#1300)
ヘンリー ペトロスキー (著), 松浦 俊輔 (翻訳)
価格: ¥1470 (税込)
朝日新聞社(2006/08)
本書は、技術者が作る「橋、ビル、ダムなど地上で最も大きな建造物」を讃えたものです。著者は、そのような成果の背後に、「しばしば、その計画と同じほど人物の大きな技術者の物語がある。そうした人々があきらめずに追った夢は、今、我々の現実の一部となっている」と述べています。
第2章「アメリカの橋さまざま」では、「ポートランドのように、橋の町だといえる都市はアメリカにたくさんあるが、美しく珍しい橋の数の点で言えば、オレゴン州の沿岸地域に勝る地域はほとんどない」として、その主任技術者コンディ・B・マッカローの天賦の際を讃え、「マッカローが設計した主要な橋は、どれをとってもまったく同一というものはないが、そのほとんどにマッカロー作品の特徴となる要素がある」として、「優美なコンクリートのアーチと、橋の入り口にあるアール・デコ超の塔」を挙げています。
そして、「地元の地形や政治の都合で妙な形をしていたり、橋の利用者には業績がすでに忘れ去られた技術者を記念する変わった名がついていたりしても、どの町にも、それぞれに代表的な橋がある」として、「橋や橋を架けた人の物語には、歴史――土地や人々や、人々が描いた夢――の、豊かで得るところの大きいひとこまが潜んでいる」と述べています。
第4章「浮体橋」では、「恒久的な大きな浮体橋は、基本的には複数の船体をくまなく並べて、連続した橋床ができるように舗装したものだ」としたうえで、「橋を設計するときには、航路として使える部分が取れるようにしなければならない」と述べ、「そのためにはたいてい、台船どうしの間を開け、その開いた部分を橋桁などの普通の橋と同じようなもので渡したり、何らかの稼動部分をつけたりすればよい」と述べています。
第6章「ノルマンディー大橋」では、ノルマンディー大橋(ボン・ド・ノルマンディ)を、「多き話といえばほとんどが荘であるように、独特の技術問題に対する傑出した解決策であり、かつ、もっと広く歴史的に見れば、すべての橋の問題を解決するものでもある」と述べたうえで、「世界的な橋の場合、設計はすべて、個々の技術者の夢として始まり、その技術者が自身の美学的・構造的判断に対して抱く自信が、依頼主の財政的・政治的判断に対する自信と合致する場合に動き始める」と述べています。
第7章「ブリタニア橋」では、「大規模な土木事業における経済の相対的意味」について、「後から見れば無駄と思えるものも、難しい判断を下さなければならなかった当時には、経済的なことと見えたかもしれない――判断は、必ずしも技術者だけがするのではなく、事業に財政的・社会的に責任をもつ、実業家や政治家とも強調して下される」と述べ、「工学的・科学的知識が少なくても、もっと経済的で構造的に優れた展開がいつか分からない将来に来るのを待つよりも、既知の経済的・技術的リスクをとって、さいは投げられた」と解説しています。
第10章「ミレニアム橋」では、ゲーツヘッドのミレニアム橋に関するデザイン・コンペについて、「デザイン・コンペ賛成/反対の議論は、たぶんコンペがある限り、どこにでもあったことだろう」とした上で、「建築家と技術者は昔から、コンペが、意図してのものでなくても、わずかな対価で、幅広い専門家の仕事と意見を得る、巧妙な方法だという点で一致している」と述べ、19世紀の終わりの土木・機械技術者、J・W・C・ホールデーンが、「建築家や技術者がひどく酷使されてきた仕事として、『コンペ』という言葉で知られる仕事ほどのものはない」と書いていることを紹介しています。
第11章「ミレニアムの遺産」では、「ロンドンのセントポール大聖堂の近くにあるシティという金融街の峻厳な建物と、テムズ川の対岸にある、元は壮大な発電所を改装したテイト近代美術館とをつなぐ」歩行者専用の橋であるロンドン・ミレニアム橋について、2000年6月10日の開通日に、10万人近い人々が橋を訪れた結果、「軽量の橋床は、それとわかるほどに横に揺れ」、「25万人もの歩行者が利用した3日後には閉鎖され、技術者たちが揺れ方を理解し、押さえる方法を求める間、ずっと閉鎖された」と述べています。
そして、研究の結果、「ミレニアム橋は、歩行者と構造物の相互作用、つまり、『群集誘発型動的歩行者負荷(クラウド・インデュースト・ダイナミック・ペディストリアン・ロード)』とでもいうべき作用」を示し、「偶然、十分な数の歩行者の歩調がそろえば、わずかでも路面を横向きに動かすことがありえた。ところが、この動きは比較的高い頻度で生じ、人間は高い頻度の運動には敏感になる傾向があるので、わずかな動きが頭や体の中で増幅された。感知された運動に反応して、そのとき橋の上にいた人々は、橋の動きと同期して横に動き始め、これが、子どもが乗ったぶらんこを親が押してやると一回ごとにぶらんこが描く弧が大きくなるのと同じように、橋の動きを増幅する」と解説しています。
第12章「壊れた橋」では、「どんな時点でも、技術・設計、分析は、それが基づく知識や前提以上にはよくならない。来るべき地震について端が安全かそうでないかは、当の地震のあり方がきちんと分からなければ確実なことはいえない」として、「技術者は、新しい端や現存の橋を、議論や審査の余地がある程度残ったままの判断で設計、分析しなければならない」と述べ、「いろいろな地震から学んだ教訓のおかげで、技術者は、限界はあっても、未来の地震にもっとよく耐えられる新しい橋などの構造物を設計できるようになる」と解説しています。
第15章「ビルバオ」では、「彫刻のような構造をさっと描いたスケッチを実現するのに相当の時間と費用がかかった例」として、シドニーのオペラハウスを挙げ、「最終的な費用は当初の見積もりの15倍近くになった」にもかかわらず、「ここでは大規模なオペラがきちんと上演できず、オペラ愛好家をがっかりさせている」と述べています。
第18章「摩天楼の崩壊」では、「2001年9月11日のテロリストによる攻撃は、単に世界貿易センターのツイン・タワーを倒しただけ」ではなく、「世界中の高層ビルの計画、設計、建設、利用の新時代の始まりを告げた」として、「当面、少なくとも西洋社会では、超高層ビルはテロリストの標的となる可能性があり、維新を求める借主が、看板高層ビルをこれからも借り続けるか、ますます検討することになる」と述べています。
そして、「局所的に損傷を受けて柔らかくなった構造が上にある部分の重さに耐えられなくなると、下の階に向かって崩れていく。ビルの上層階から下層階に伝わっていき、鋼鉄の柱がそれ自体を伝った熱である程度柔らかくなっていくと、『パンケーキ・クラッシュ』と呼ばれる連鎖反応が起こってすべてが次々と崩れ落ちていく」と解説しています。
第23章「技術者の夢」では、「英仏海峡トンネル、ジブラルタル・ダム、太陽発電や潮汐発電の普及など、壮大な技術の構想」を描いた、ウィリー・レイが1954年に出した『技術者の夢』について、「相当多くの人の記憶に残」り、「長く読まれ続けている」のは、「この本が、環境に対する大きな影響の潜む大規模な地上の事業を唱えていて、たとえ半世紀前の技術で語られているとしても、どんなにささやかな技術でも大規模に行えばこの惑星の姿を変えうるということを考えさせるからだ」と述べています。
本書は、巨大構造物に対する人間のチャレンジと、それを支える社会的ドラマを簡潔に切り取った一冊です。
■ 個人的な視点から
これまで多くの著書で建造物をめぐる失敗の歴史を描いてきた著者としては珍しく前向きなベクトルが強い一冊です。もちろん、失敗や試行錯誤は次の挑戦に向けた貴重な教訓となるのですが、本書が基本的に前向きなことは、著者が歴史の文脈の中ではなく、現在の時間軸の中で語っているという点で、ちょっとだけ物足りなく感じる人もいるかもしれません。
■ どんな人にオススメ?
・巨大な建造物にロマンを感じる人。
■ 関連しそうな本
ヘンリー・ペトロスキー (著), 忠平 美幸 (翻訳) 『ゼムクリップから技術の世界が見える-アイデアが形になるまで』 2008年04月17日
ヘンリー ペトロスキー (著), 忠平 美幸 (翻訳) 『フォークの歯はなぜ四本になったか―実用品の進化論』 2005年12月31日
ヘンリー ペトロスキー (著), 池田 栄一 (翻訳) 『本棚の歴史』 2006年03月12日
ヘンリー ペトロスキー (著), 中島 秀人, 綾野 博之 (翻訳) 『橋はなぜ落ちたのか―設計の失敗学』 2008年08月09日
ヘンリー ペトロスキー (著), 渡辺 潤, 岡田 朋之 (翻訳) 『鉛筆と人間』 2008年07月04日
ヘンリー・ペトロスキー (著), 忠平 美幸 (翻訳) 『〈使い勝手〉のデザイン学』
■ 百夜百マンガ
フェアチャイルドの曲で「わたしと鰐の一日」というのがありましたが、当時ワニを飼うのが流行ったりしたのでしょうか。
投稿者 tozaki : 2008年08月12日 06:00
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コメント
興味深い本ですね。
買ってみます。
情報ありがとうございました!
投稿者 太陽発電 : 2008年08月27日 10:27
【Pink 】