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2008年08月19日
公会計改革―ディスクロージャーが「見える行政」をつくる
■ 書籍情報
【公会計改革―ディスクロージャーが「見える行政」をつくる】(#1307)
公会計改革研究会
価格: ¥1,890 (税込)
日本経済新聞出版社(2008/02)
本書は、「公会計改革とディスクロージャーを車の両輪として、地方自治のいっそうの充実を進めて」いくことを目的としたものです。
第1章「公会計改革の視点」(神野直彦)では、「『改革(reformation)』とは本来の姿に戻すこと」であるとして、「『公会計改革』も本来の目的を問い、公会計の本来の姿を追求していく必要がある」と述べています。
そして、「政府にとって決算の意味は、社会の構成員の決定どおりに執行したことの承認を得て、予算の執行責任を解除してもらうことにある」として、「決算の意義は、決算を審議することで明らかにされた事実について、政治的責任を選挙などで問うことができるようにすることにある」と述べています。
また、「企業の財務会計で発生主義を採用し、減価償却を実施するのは、利潤を確定することにある」が、政府は「利潤を確定する必要はない」ため、「政府という経済主体では、発生主義を導入して利潤を確定することには意味がない」が、「それにもかかわらず現金主義では財政状況が的確に把握できず、公会計に発生主義を導入すべきだと主張される背景には、政府機能の拡大に伴い租税という市場を通さない収入ではなく、市場を通した収入が増加していることがある」ことを指摘しています。
第2章「自治体の経営改革を統括する」(上山信一)では、「筆者自身の官民双方における実体験をもとに、行政が企業経営にどこまで学べるのか、またその際に評価とディスクロージャーがどういう役割を果たすのか」を考えるとしています。
そして、わが国のNPMが、「1990年代半ば以降に主に自治体に導入され、実践されてきた」、「3人の首長によって日本でもNPMが始まった」として、
・94年11月:逢坂誠二・ニセコ町長(現衆議院議員)
・95年4月:北川正恭・三重県知事(現早稲田大学大学院教授)
・95年4月:増田寛也・岩手県知事(現総務大臣)
の3人を挙げ、「いずれも従来型の与野党相乗り型選挙とは一線を画した選挙を経て当選した」共通点を指摘しています。
また、2005年から2007年にかけての関市長時代の大阪市の行政改革について、
(1)徹底した情報公開
(2)改革の方針を具体的に公文書に記述した
(3)個別具体の事業の中身が民間企業の経営分析手法を使って解明された
(4)財政問題について単年度収支だけでなく、負債と資産のバランスを視野に入れた財政再建策を立てた。
の4つの要素を挙げています。
著者は、これからの自治体経営にとって重要になる課題として、
(1)これからは積極的な情報公開が改革を進めるパワーソースとなる。
(2)改革にあたって公開すべき情報の中身を進化、あるいは深化させなければならない。
(3)行政情報を外から評価する"情報市場"の整備が必要である。
の3点を挙げています。
第3章「都市・自治体マネジメントの創造」(大住荘四郎)では、自治体のマネジメントの意思形成に共通するアプローチ手法として、
(1)マーケティング的アプローチ:組織の外部環境に着目し、住民のニーズや外部の期待を正確に抽出することで、地域・都市マネジメントからみたビジョン(将来像)や公共サービスの設計を目指す。
(2)戦略的アプローチ:組織を取り巻く外部環境の変化を組織のミッションとの関係で把握し、組織のあるべき姿(ビジョンとゴール)を導き、それらを実現するための施策体型へのリンケージを図る。
(3)組織論的アプローチ:急激な環境変化に適応できる柔軟で活力ある組織づくりを目指す。
の3つのアプローチを紹介しています。
また、「地域の潜在的な人材・地域の資源を活かし、地域の発展や公共サービスの確保のための多元的な都市・地域マネジメント像」の潮流を、「NPS(New Public Service=ニュー・パブリック・サービス)」と呼ぶこともあることを紹介しています。
第5章「公会計改革と総務省方式改訂モデル」(森田祐司)では、
「自治体経営に必要な情報は、現金主義や発生主義で表される財務情報だけではない」として、「過去情報と将来情報」、「財務情報と非財務情報」の2つの切り口によって、
・行政評価(過去情報・非財務情報)
・マニフェスト・総合計画(将来情報・非財務情報)
・財務諸表(過去情報:財務情報)
・予算・財政計画(将来情報:財務情報)
の4つに分類しています。
第7章「自治体がディスクロージャーをする意義」(石原俊彦)では、「自治体の行政経営改革における会計(学)の重要性を、事務事業評価と管理会計、ディスクロージャー(情報開示)、ならびに、財務会計の視点から考察する」としています。
そして、わが国の自治体で採用されている事業別予算の克服すべき欠点として、
(1)事業別予算が、人件費を含めたフルコストの事業予算になっていない。
(2)事業別予算における「事業」を、財政計画上の事業名としているケースがほとんどで、財政計画上の事業名と総合計画から演繹された実施計画の事業名に必ずしも関連していない。
(3)「目」の下で個別の事業名が設定されている関係で、款・項・目を跨いだ複数の事業を統合した事業レベルでの予算額を集計することが困難になっている。
の3点を挙げています。
また、「自治体の行財政改革を積極的に展開する際の『足かせ』」として、「各自治体の財政か職員の意識改革の遅れ」を挙げた上で、「バランスシートを作成する目的は、ほぼ財政課職員しか理解できていない自治体の財政構造を、民間企業流の決算書で整理し、それを住民に公表することで、より積極的な情報公開を行うことにある」と述べています。
第8章「情報公開と市民参加の自治体経営」(福島浩彦)では、「これまでの公共は『官が支配する公共』だった」とした上で、「これからは地域のコミュニティの中で、公共を担う民の主体を限りなく豊かにすることによって、公共はより充実させ大きくしながら、役所はより効率的で小さなものにしていく、という視点が大切」だと述べています。
そして、議会の役割は、「市民の合意を作り出すこと」と「行政の監視」の2つがあるが、「多くのいj地帯議会は、市民の合意形成の仕事は首長(執行部)に任せ、議会は要望と最後の決定だけを行っている」ことを指摘し、「この『市民の合意を作り出すこと』は、立法機関としての議会の最も重要な仕事だ」と述べています。
第10章「求められる地方自治体のアニュアルリポート」(小林麻理)では、米国において、「公会計基準審議会(GASB)」が設定した、「地方政府の財務報告に関する基本原則」にならい、わが国においても、「統一的な財務報告モデルとして自治体アニュアルリポートのフォームを確立し、アカウンタビリティを履行することが喫緊の課題である」と述べ、「自治体財政の透明性の実現のみならず、すべてのユーザーに対して、期間比較、相互比較、標準比較を行なって企業の財務分析をするのと同じ環境を自治体財政について提供すること、比較可能性を高めるとともに情報共有の有用なメディアとして機能することにこそ意義がある」と述べています。
本書は、テクニカルな会計論にとどまらず、自治体のガバナンスそのものを考えるきっかけを与えてくれる一冊です。
■ 個人的な視点から
こういう「~研究会」名義の共著ものの場合、人によって言っていることが180度違ったり、逆に同じような論調過ぎてつまらなかったりと、結構当たり外れが大きいものですが、本書は、公会計を軸に、さまざまな論調が適度に分かれていてお買い得ではないかと思います。
■ どんな人にオススメ?
・地味ではある公会計が実は重要だということを知ってしまった人。
■ 関連しそうな本
桜内 文城 『公会計革命―「国ナビ」が変える日本の財政戦略』 2005年02月28日
山本 清 『政府会計の改革―国・自治体・独立行政法人会計のゆくえ』 2007年04月24日
石原 俊彦 『地方自治体の事業評価と発生主義会計―行政評価の新潮流』
石原 俊彦, INPMバランススコアカード研究会 『自治体バランス・スコアカード』 2005年11月01日
ポール・R. ニーヴン 『行政・非営利組織のバランス・スコアカード―卓越した組織へのロードマップ』 2006年07月12日
ロバート・S. キャプラン, デビッド・P. ノートン (著), 吉川 武男 (翻訳) 『バランス・スコアカード―新しい経営指標による企業変革』
■ 百夜百マンガ
第1回目だけは『イガグリくん』の福井英一が書いていますが、売れっ子の多忙がたたった福井の急逝によって、作者が交代しています。
最近では、『代打屋トーゴー』で知られる、たかもちげんの死後、アシスタントが連載を引き継いだ例があります。
投稿者 tozaki : 2008年08月19日 06:00
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【赤胴鈴之助 】