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2008年09月08日

実践危機管理広報

■ 書籍情報

実践危機管理広報   【実践危機管理広報】(#1327)

  田中 正博
  価格: ¥1785 (税込)
  時事通信出版局(2008/4/30)

 本書は、広報担当者に対して、「危機管理広報のノウハウを習得し、万一の時には勇気を持ってトップにアドバイス」する、という「辛いミッション」を遂行して欲しい、との願いが込められたものです。
 プロローグ「危機管理広報の時代」では、危機管理広報手法として、
・公開質問状:質問内容を社会的に公開し、世論に訴えていく手法。マスコミ関係のみならず、多くのオピニオンリーダーや機関にも配布される。
・ポジション・ペーパーひとつのテーマについて、のアピール資料を定期的に、マスコミに持ち込み、マスコミ論調に影響を与える重鎮に説明し、関係者への理解を図る。
・ニューズレター:定期的に、理解してもらうことを目的に、多様な関係者に数ページの分量を送付する。
などの手法を取り上げ、事例とともに解説しています。
 また、広報担当者の機能として、マスコミ報道を分析して、その教訓を社内にフィードバックする機能を上げ、「広報の機能は、必ずしも『情報発信』だけではなく、外部情報を組織内に反映させるツーウェーの活動が求められる」と述べています。
 さらに、広報活動が必要な理由として、「何らかの『課題(解決しなければならない問題)』がある」ことをあげ、「対象とする相手、人々からその『課題』について理解や了解を得たい」という「パブリック・アクセプタンス(PA)」=社会から受容されること=こそが、「すべての広報活動の原点ともいえる命題である」と述べています。
 第1章「取材対応の基本」では、「不測の事態発生」には、
(1)事故、災害発生
(2)いわゆる不祥事(不正行為、違法行為、反社会的・反動儀的行為など)
の二通りの内容があるとしています。
 そして、「記者との関係を一番悪化させる」ウソとして、「広報担当者がつい事実を違う話をしてしまい、その結果、記者をミスリードしてしまう」ことを挙げ、「緊急時の"第一のタブー"」であると述べています。
 また、「ポジション・ペーパー」について、
・ある問題をめぐって
・"彼我"(企業vs消費者、企業vs地域住民、企業vs取引先など)の間で
・立場、見解の相違や対応の是非をめぐって紛糾や論争が生じているとき(イシュー状態の場合)
・コトの経緯や事実関係について
・相手の主張、見解、要求とともに、こちら側の対応行動の一部始終を
・時系列に、個条書きで整理し
・この問題に関する双方の対応行動、方針、主張を、客観的にまとめた資料
であると解説しています。
 第2章「緊急記者会見」では、「Q&A」を作る目的として、
(1)予想外の質問が出てきても動揺しないため
(2)回答のガイドラインを示すため
の2点を挙げ、「Q&Aの回答は表現の問題より『どういう基本認識と方針で挑むか』というスタンスが大切」だと述べています。
 また、スポークスパーソンは一人にすべき理由として、「記者会見の基本方針」である、「『同一情報』を『同時点』で『同一人物』の口を通して全メディアに伝えることにある」と同じであると述べ、「スポークスパーソンを一人に限定するというのは、情報の不統一や混乱を避けるためであり、その方針を守る限り、マスコミから非難されることはない」と解説しています。
 第3章「クライシス・コミュニケーション」では、「大切なのは、『起したこと』よりも『起した後にどう銅対応したか』が問われる」と述べ、「クライシス・コミュニケーション」を、「不測の事態発生時に欠かせない危機管理広報のキーワード」だと述べています。
 また、緊急事態発生時に具体的にすべきこととして、
(1)スピード(迅速な意思決定と行動)
(2)疑惑を生まない徹底した情報開示(説明責任を果たす)
(3)社会的視点に立った判断(企業論理や組織論理から判断しない)
の「3つのキーワード」に従って解説しています。
 第4章「マニュアルの作り方」では、不測の事態発生時の初期対応の失敗を避けるガイド役を果たすものとして、危機管理マニュアルを挙げ、その目的と意義として、
(1)予測もしなかったある危機が発生した場合に
(2)新人でもパートでもベテランでも
(3)迷わずに(ムダな議論や時間を費やさずに)
(4)これだけは必ずやらなければならないことと(MUST)
(5)これだけは絶対にやってはならないことについて(MUST NOT'S)
(6)明快な行動手順を示すことによって
(7)迅速な対応行動ができることで
(8)初期対応の失敗を防止すること
の8点を挙げ、ここで、「MUST」と「MUST NOT'S」をはっきり示すことがポイントだと述べています。
 第5章「メディアトレーニングの方法」では、民間企業や官庁で「緊急記者会見に備えてトップのメディアトレーニングが一般的に行われるようになった」ことについて、「限定された株主しか出席しない株主総会ですら念入りにリハーサルをするのに対し、マスコミを対象とした記者会見のリハーサルをしないというのは考えれば妙な話である」と述べています。
 そして、メディアトレーニングの効用として、
(1)緊急記者会見という緊張した場面を経験したことがないこと。
(2)顔を知らない模擬記者からの矢継ぎ早の鋭い質問に、適切なことばで回答することがいかに難しいものであるかに気づくこと
の2点を挙げています。
 また、ある著名な新聞記者が、「記者会見に望むトップにひと言、アドバイス」することとして、
(1)一人で出てくること
(2)自分のことばで話せ
(3)もっと役者になれ
の3点を挙げたことを紹介しています。
 さらに、スポークスパーソンに不可欠な行動として、
・わかりやすいことばで話す
・納得感を与える話し方をする
・説得力のある話し方をする
の3点を挙げています。
 第6章「こんなとき、どう対応するか」では、「いったん報道されてしまうと、放たれた矢と同じく、もはやコントロールしにくい状況になってしまう」誤報対応について、「広報担当者にとって、頭を痛める最難題の一つ」とした上で、メディア側と交渉する際に守るべき基本ルールとして、
(1)「抗議文書」ではなく「申し入れ文書」のタイトルにする
(2)「申し入れ書」を持参する場合、事前に担当記者に連絡する
(3)持参相手はメディアの部長
(4)誤報記事(放送)が出た2日以内に持参する
の4点を挙げています。
 そして、「"ささいなようで""案外重要"」な問題として、不祥事の記者会見時に、「いつ、どの状況で頭を下げるのだろうか。また、会見席に立つスポークスパーソンが座るタイミングとは?」について、「ステートメントの最初の部分で、まず、おわびのことばを表明し、全員頭を下げたあと、『では、ここで着席して説明させていただきます』と断った上で着席するようにする」と解説しています。
 また、緊急記者会見の心得として、
(1)定刻に入室、着席すること。絶対に定刻前には着席しないこと
(2)ステートメントを読み上げるときはワンテンポ、ゆっくり話すこと
(3)淡々とした口調で話す。力説したり強調したりしないこと
(4)語尾をハッキリ言う。語尾があいまいだと説得力が弱い
(5)一問一答を心掛ける
(6)わからない質問が出た場合、同席者と席上で打ち合わせしないこと
(7)会見が終了したら即座に退室する
の7点を挙げています。
 さらに、緊急記者会見でのタブー集として、「無意識でとった些細なしぐさや動作」が、"隠された一面"を表面化させることになりかねないという、「メラビアンの法則」の解説をした上で、
(1)こんな"しぐさ"はするな―――汗をふく、メガネをずり上げる、めがねをふく、手に持った筆記具を指先でいじる、組み合わせた両手の指先を動かす、ひんぱんに鼻や頭を指で触る
(2)隣の人とコソコソ話をするな―――「核心を突いた」「応答に窮している」という印象を与える上、マイクロホンにキャッチされる恐れがある。
(3)マイクを"横取り"するな
(4)座ったまま頭を下げるな
(5)服装であれこれ迷うな
の5点を挙げています。
 本書は、「危機管理」時にマイクの前に立たされる可能性がある人はもちろん、自分の上司、または将来的には自分が、記者会見の場に立たなくてはならなくなる可能性がある人すべてにとって、読んでおいて損はない一冊です。


■ 個人的な視点から

 広報的な「危機管理」の必要性を痛感させる出来事として、今日は相撲協会の大麻汚染と、「事故米」による有害物質汚染が報じられました。自分の組織に原因があって矢面に立たされる人は潔く会見に臨んでほしいと思いますが、「薩摩宝山」の西酒造はじめ、汚染された米だとは知らなかった(とされている)企業にとって、今回の事件こそ、まさに「危機管理」そのものではないかと思います。本書を読んだ上でニュースなどの会見を見ると、リアリティが増すのではないでしょうか。


■ どんな人にオススメ?

・「危機管理」なんて自分には関係ないと思う人。


■ 関連しそうな本

 石川 慶子 『マスコミ対応緊急マニュアル―広報活動のプロフェッショナル』 2006年10月26日
 尾関 謙一郎 『メディアと広報 プロが教えるホンネのマスコミ対応術』 2008年05月02日
 井之上パブリックリレーションズ (著), 井之上 喬 (編集) 『入門 パブリックリレーションズ―双方向コミュニケーションを可能にする新広報戦略』 2006年12月13日
 ポール・A. アージェンティ, ジャニス フォーマン (著), 矢野 充彦 (翻訳) 『コーポレート・コミュニケーションの時代』 2006年10月23日
 矢島 尚 『好かれる方法 戦略的PRの発想』 2006年10月25日
 猪狩 誠也 『広報・パブリックリレーションズ入門』 2007年03月29日


■ 百夜百マンガ

爆れつハンター【爆れつハンター 】

 タイトルを考えるときに「裂」の字が思い浮かばなかったのでひらがなにしておいたら、そのままタイトルになってしまったというのが潔いです。


投稿者 tozaki : 2008年09月08日 06:00

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