« 地方を殺すな!―ファスト風土化から"まち"を守れ! | メイン | テレビだョ!全員集合―自作自演の1970年代 »
2008年09月20日
アニメーションとライフサイクルの心理学
■ 書籍情報
【アニメーションとライフサイクルの心理学】(#1339)
横田 正夫
価格: ¥2730 (税込)
臨川書店(2008/04)
本書は、「人間にはライフサイクルに従ったテーマがあり、特定の年代には特定のテーマに迫られることがある」というライフサイクルをテーマに、「人生のいくつかの時期に、自分の生き方についての問い直しが起こり、また生き方の変換を迫られるようなときが訪れる」という説明を、アニメーションの中に見いだそうとするものです。
第2章「イジー・トルンカのアニメーション」では、トルンカのアニメーションを年代別に検討した上で、「アニメーションにおいて語られている内容は、心理学的な意味が多く込められており、それをもとに考えると20代、30代、といった十年ごとの年代別の分類とは別の分け方が可能になる」と述べ、「トルンカはほぼ5年ステップで自己の作品を変革してきている。それは習作期、確立期、展開期、警句期ならびに死の自覚期とみなすことができる」と解説し、「アニメーション作家の心理的な発展はライフサイクルに従って、洋の東西を問わず、同様に展開しているとみなせよう」と述べています。
第4章「『ゲゲゲの鬼太郎』のライフサイクル」では、「個人作家によって作られる抽象度の高い作品ではなく、プロダクションによって制作される特定の年代をターゲットにしているような作品」であるが、「シリーズものとして作り続けられるうちに、そのテーマの中に、作り手のライフサイクル的テーマが入り込んでくることがある」ことを検証するとしています。
そして、「シリーズものが、繰り返されると行ったことは、一つのシリーズを症例の一つの展開と同様に考え、シリーズの繰り返しを症例の再発と捉え、臨床心理学的な方法で検討することができる」と述べています。
また、1960年から1964年までに、「鬼太郎の誕生からその鬼太郎世界に作者が同化するまでの過程が描かれ」手いることについて、「そこには現実の作者の家の問題、結婚、出産といった生活上の出来事が盛り込まれていた」として、「中年期危機に入った水木しげるの、妖怪漫画家としての新たなアイデンティティを確立するプロセスが、漫画の中に描き込まれていた」と解説しています。
さらに、「第3部から第4部という変遷は、ライフサイクル的には説明しやすい変化」であるとして、「第3部では、成人期のテーマが語られ、伴侶を得ることがテーマとなっていた」が、11年たった第4部では、「むしろ中年期危機と認められるような内容が見いだせる」と述べています。
著者は、「第1部では妖怪を退治し、第2部では人間の起こす環境汚染などの文明による不調和を批判し、第3部では異性を意識し、伴侶を獲得するテーマを描いていた。そして第4部では、中年期危機を描いていた」として、「第1部から第4部までは、人間のライフサイクルのテーマをそのまま見事に描いてきているとみなすことができる」と述べています。
本書は、アニメーションといえども、作り手のライフサイクルが反映されている様子を分かりやすく解説した一冊です。
■ 個人的な視点から
ライフサイクルという点では、同じことをより作家性の強い漫画でやると、はっきりとした結果が出るのではないかと思います。すでに結構行われているのではないかともおもいますが。
■ どんな人にオススメ?
・アニメは商業的だ、と感じている人。
■ 関連しそうな本
横田 正夫 『アニメーションの臨床心理学』
フレデリック・L. ショット (著), 樋口 あやこ (翻訳) 『ニッポンマンガ論―日本マンガにはまったアメリカ人の熱血マンガ論』 2006年04月29日
平林 重雄 『水木しげると鬼太郎変遷史』 2007年08月12日
杉山 知之 『クール・ジャパン 世界が買いたがる日本』 2007年08月19日
斎藤 環 『戦闘美少女の精神分析』 2007年11月02日
堀淵 清治 『萌えるアメリカ 米国人はいかにしてMANGAを読むようになったか』 2007年04月15日
■ 百夜百音
【ハチャトゥリャン: 管弦楽作品集 ~剣の舞】 ラザレフ(アレクサンドル) オリジナル盤発売: 2002
ただでさえ速い表題曲ですが、ニコニコ動画に2分以内の超スピードで演奏したものが紹介されていました。しかも指揮者は、「まだ速さが足りないと思いませんか?」と再演奏しているし。
投稿者 tozaki : 2008年09月20日 06:00
トラックバック
このエントリーのトラックバックURL:
http://www.pm-forum.org/MT3/mt-tb.cgi/1867