« わが子に「お金」をどう教えるか | メイン | 鉄道地図は謎だらけ »
2008年09月28日
ユビキタス、TRONに出会う―「どこでもコンピュータ」の時代へ
■ 書籍情報
【ユビキタス、TRONに出会う―「どこでもコンピュータ」の時代へ】(#1347)
坂村 健
価格: ¥1365 (税込)
NTT出版(2004/10)
本書は、「ユビキタス・コンピューティングという技術の周辺で、どういうことが起ころうとしているのか、できるだけやさしく」解説するとともに、「社会と密着した技術では、技術設計と同程度かそれ以上に制度設計が重要であること」の理解を目指したものです。
第1章「TRONの20年とユビキタス・コンピューティング」では、「コンピュータの使い方は、ドラマチックに、大きく動いている」として、現在、重要視されているコンピュータを、「組み込みシステムをベースにしたモバイル(持ち運べる)や、ウェアラブル(身につけられる)といった、小さく、いつでもそばにあるようなタイプになってきている」と述べています。
そして、著者が取り組んできた「TRON」(The Realtime Operating System Nucleus)が、その目的を「『どこでもコンピュータ』の実現に置いて、トップダウンとボトムアップの両面からアプローチを行い、20年にわたって推進してきたプロジェクト」だと述べ、オープンアーキテクチャで普及してきたTRONが、「もし課金してもここまで普及したと仮定」すると、「間違いなく10兆円を超える経済効果があったとされている」が、「日本人として世界に対し、自分たちができることで最大の貢献をする」という目標については、「満足できる結果は出ている」と述べています。
第2章「ユビキタス・コンピューティングの現況」では、組み込みコンピュータの最先端で起こっていることとして、「コンピュータの微小化が急速に進み、驚異的なサイズのコンピュータが作られようとしている。例えば、砂粒のようなコンピュータも実現しつつある」として、「このくらい小さくなると、まさに『どこでもコンピュータ』が実現する」と述べています。
そして、「ユビキタス・コンピューティングと呼ばれる分野にはトータルシステムの考え方が必要だ」として、大型コンピュータを含めた要素が、「ネットワークで結ばれることが重要」だと述べています。
また、RFIDの活用について、「国ごとにその部分に関して意識が大きく違う」と感じていると述べ、米国で最も関心をもたれているのは、「間違いなく流通分野でのコスト低減」だとして、具体的には、「従業員や業者による内部犯行、万引きあるいは何らかの手違いにより商品がなくなること」を意味する「シューリンケージ(流通過程での滅失)防止」を挙げています。
そして、「ユビキタス・コンピューティングの応用はきわめて地域密着型、生活密着型の技術であり、RFIDの利用に関しても、日本は米国と同じやり方で運用するとまず失敗する。分けて考える必要があるだろう」と述べています。
第3章「ユビキタス社会に向けて」では、産業政策について、「なぜか日本では深く知らない人のほうが声が大きいという不思議なことが起こる。それこそが、日本の産業政策の問題の根源ではないかと思うくらい」だと述べ、「問題は知識ではない」、「重要なのは、根本的な理解」であり、「問題なのは無知を自覚せず、生半可な理解で議論に加わり、またそのままでいいと思っている一部の人たちだ」と指摘しています。
そして、「技術的なことをよく理解しないで議論に参加して、そのままの思い込みで極端な議論を語る人の声の方がなぜか特によく通るのが、日本の特徴だ」と述べています。
また、いまの時代で重要な考え方として、「ベストエフォート」を挙げ、「実際問題として、パソコンもインターネットもそのシステムを構築する、個々の要素についてばらばらの主体が提供しており、全体に責任を持つ主体がいないというところに特徴がある。ベストエフォートの考えでしか、大きなシステムの提供はできない」と述べています。
本書は、「コンピュータ」という言葉でイメージするコンピュータの姿が近い将来まったく変わってしまうことを教えてくれる一冊です。
■ 個人的な視点から
本書の第3章では、一章のかなりの部分を、技術のことはまるでわからないのに、生齧りの知識でわかった気になって、経済の考えでしかものを語れない「半可通」への批判に割いています。BTRONでは「非関税障壁」として槍玉に挙げられ、通産官僚に生贄に差し出されたとかの話もありますが、個人的には「B-Right V」や「Tipo」を使っていたので坂村先生応援したいです。
■ どんな人にオススメ?
・コンピュータは四角いものだと思っている人。
■ 関連しそうな本
坂村 健 『TRON概論』
坂村 健 『ユビキタス・コンピュータ革命―次世代社会の世界標準』
坂村 健 『痛快!コンピュータ学』 2005年07月02日
ペッカ ヒマネン, リーナス トーバルズ, マニュエル カステル (著), 安原 和見, 山形 浩生 (翻訳) 『リナックスの革命 ― ハッカー倫理とネット社会の精神』 2005年10月29日
アラン・C. ケイ (著), 鶴岡 雄二 (翻訳) 『アラン・ケイ』
山形 浩生 『コンピュータのきもち 新教養としてのパソコン入門』 2005年07月23日
■ 百夜百音
【ソルティ・シュガー】 ソルティ・シュガー茶歌集<走れコウタロー> オリジナル盤発売: 2005
ライブ映像を見ていると、当時の雰囲気を知らないと盛り上がれないんじゃないかと思いますが、こういう時代性がある曲こそ、時代を超えた普遍性があるのではないかと思います。
投稿者 tozaki : 2008年09月28日 06:00
トラックバック
このエントリーのトラックバックURL:
http://www.pm-forum.org/MT3/mt-tb.cgi/1875