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2008年10月04日

国債と金利をめぐる300年史~英国・米国・日本の国債管理政策

■ 書籍情報

国債と金利をめぐる300年史~英国・米国・日本の国債管理政策   【国債と金利をめぐる300年史~英国・米国・日本の国債管理政策】(#1353)

  真壁 昭夫, 玉木 伸介, 平山 賢一
  価格: ¥2940 (税込)
  東洋経済新報社(2005/7/15)

 本書は、「国際市場参加者(ファンド・マネージャー)、中央銀行、政策構築の視点に立ち、英国・米国・日本の300年の国債をめぐる歴史から考察し、国債管理政策を原点から見つめなおすもの」です。
 序章「歴史から見る国債と金利──中世以降イタリア・オランダで本格化した国債発行の歴史」では、「一国の経済問題としての国債管理ではなく、グローバル経済システムの維持という視点から、政府の資金調達の円滑運営を維持していく必要が強調されるべきである」と述べています。
 また、オランダが、17世紀を通じて、「チューリップ・バブルを経験し、物価変動の影響を受けつつ」も金利が低下していった理由として、「予算管理も含めた調達管理の仕組みを導入することに成功した点」に注目すべきであるとして、その特徴として、
(1)政治と経済が融合し官民一体となった政策運営は、増税に対する抵抗が少ないという特質をもたらし、デフォルトのリスクが極端に低くなることで、投資家からの信用度を高く維持することができた。
(2)貿易などによる富の累積が一般家計に広く行きわたっており、一般家計が国債を購入するという資金の流れを確保したため調達管理が上手く機能していた。
の2点を挙げています。
  第1部「英国の公債管理政策300年史」、第1章「三大特権会社による国債投資をバブルの崩壊:18世紀」では、「度重なる予算管理としての『減殺制度の工夫』や、調達管理としての『多様な国債の統一化』は、投資家層の拡大にはとってはきわめて重要な要素となってくる」と述べた上で、必ずしも有期債よりも永久債を好むとは限らない投資家の反発を惹起させないような変革を成し遂げた理由として、「英国国債を保有する投資家構成の特殊性」を挙げ、「18世紀初頭から英国国債の保有構成は大きく変化し始め」、「英国政府の方針に同調する投資家勢力が拡大し、投資家からの反発が発生しないように、管理しながらの永久債化を図ることが可能になった」と解説し、「当時、英国国債の大部分を保有していたのは、ごく一握りの三大特権会社であった」として、イングランド銀行、東インド会社、南海会社の3つを挙げています。
 また、英国政府が、「投資家からのクレティビリティ(信任)を獲ることと、低利借換を合理的に執行するために、減債資金制度を確立」下として、1717年に設立した「ウォルポール減殺基金」の仕組みを解説しています。
 第2章「戦争と資金調達:18世紀後半」では、英国政府が、「独善的に国債発行を考えるのではなく、市場の反応を、そのシンジケートの中心的役割を果たした公債請負人から常にヒアリングしつつ、国債を管理した」と述べています。
 そして、「戦時体制への切替えと、資金潤沢な一部市場参加者の意思に左右されすぎた国際市場という要因」を背景に、「減殺資金という効果的な仕組みが作り上げられたとしても、戦時経済環境に翻弄されつつ、結果的には政府債務の削減には貢献できなかった」と述べています。
 第3章「平和と技術革新の時代:19世紀」では、「資金調達の中心者が、英国政府から民間企業、そして外国政府へと移行するにつれて、国債管理も19世紀初頭までとは様相が異なることになる。代替的な投資対象が台頭してきたことから、英国国債が窮地に陥ったわけではなく、むしろ政府の資金調達ニーズが後退する中で投資対象の多様性が進んだため、金利低下を伴いつつ資金循環の経路が円滑に移行していった」として、「国債管理政策に対する圧力が大きくかかることはなく、むしろ市場の資金最適配分機能を高めることに注力することが可能になるのであった」と解説しています。
 また、1875年以降に顕著であった政府債務の圧縮が、「財政支出の削減により達成されたのではなく、増税と債務削減の具体的な方策としての減債努力により遂行された」のであり、「増税を実施できるだけの国府の増大があってこそ達成できた」と述べています。
 そして、「18世紀が戦争の世紀だったのに対して、対仏戦争終結後の19世紀は、英国にとって平和の世紀であった」として、「資金調達の中心者も、戦費調達の楔を解かれた英国政府から民間企業へ、そして外国政府へと移行するに伴って、予算管理も19世紀初頭までとは異なり、緩やかなスタンスへ変転することになる」と解説しています。
 第4章「2つの世界大戦の戦費調達:20世紀前半」では、20世紀の英国長期金利の推移を第二次世界大戦後も振り返っての特徴として、
(1)長期金利がピークを打つ時期が米国と異なっている。
(2)18世紀から19世紀にかけての200年間が2.25%から6.00%のレンジ内での循環推移であったのに対して、20世紀の金利変動幅が大幅に拡大し、ボラティリティ(変動率)水準も高まっている。
(3)財政状態の悪化が、米国以上に長期金利の上昇に影響した。
の3点を挙げています。
 そして、「19世紀末の『減税よりも債務減』と好対照を成す第一次世界大戦中の『増税よりも債務増』という姿勢は、その後の第二次世界大戦の際に、債務増加のリフレインとなって現れてくる」として、最終的に標準税額が最高50.0%間で上昇したことを挙げています。
 第5章「社会福祉と財政赤字:20世紀後半」では、20世紀の英国国債管理政策について概括した上で、18世紀から20世紀にかけ、「英国においては、予算管理の度合いは環境に応じて大きく変化するものの、調達管理の伝統は持続的に保たれている傾向がある」とし、「19世紀以降の国債市場は、政府の資金調達の場、もしくは市場参加者の資産選択の場としての機能のみではなく、国民資源の効率的配分機能を満たす動きも強まった」ことを強調しています。
 第2部「米国の国債管理政策200年史」、第6章「国家の台頭と信用制度の構築:19世紀」では、1789年に初代財務長官となったアレキサンダー・ハミルトンが、「独立戦争に要した費用を捻出するために、拡大した政府債務の問題に着手した」として、「新政府の将来にわたる財政基盤を確立するために公債額面償還政策を実施し、信用システムの再構築に乗り出すこと」となったと述べています。
 そして、「戦争債務を着実に完済したという事実」が、「多くの投資家に、債権発行者としての米国の高信用度を印象づけること」となり、「その後の米国政府に対する財政的信任(クレディビリティ)は、ハミルトン等の長期的戦略(大計)により確保された」と述べています。
 第7章「世界大戦と大恐慌:20世紀前半」では、米国の国債管理政策について、「第二次世界大戦に至るまでに、古典的国債管理政策→景気対策型国債管理政策→国債価格支持政策という変転をたどることになる」として、「国債管理政策の軸足も、予算管理中心→予算管理の後退→市場統制という具合に変化した」と述べています。
 第8章「累積する債務と調達管理:20世紀後半」では、1951年に、「中長期財務省証券の価格支持政策も解除されることになった」として、1951年3月4日、「財務省と連邦準備制度との『アコード』が発表され、連邦準備制度による中長期財務省証券買いオペが停止された」と述べ、「国債管理政策は新たな局面にはいることになった」と解説しています。
 そして、1970年代の長期金利上昇期を乗り越えた後、「膨大な累積財政赤字をマクロ経済的与件として捉えることで、予算管理の範疇よりも調達管理こそが国債管理政策の中心軸であると考えられるようになった」と述べ、その主眼として、
(1)「国債発行の定期化」により、市場参加者が予測可能な発行を実施することで、需給の不確実性を低下させた。
(2)市中国債平均残存年限の「長期債の発行」が図られた。
(3)市場参加者のニーズを把握するために、公共債協会の「国債及び政府機関債委員会」が、四半期に一度、財務長官に報告書を提出することにした。
の3点を挙げています。
 著者は、米国の国債管理政策史の200年を振り返り、「英国の国債管理政策のよさを生かしながら、さらに発展的に市場の機能を高める工夫が見られた」と解説しています。
 第3部「日本経済の歩みと国債管理政策──日本銀行と国債のかかわりを中心に」、第9章「戦前の国債発行と日本銀行──戦争とハイパーインフレーション」では、「1882年(明治15年)いらいの日本銀行の歴史の中で、それぞれの時代を反映して、日本銀行と国債のかかわり方は、今とは大きく異なるものであった」として、
・しばしば政府に対する貸し出しを行っていた。
・日露戦争においては、外債発行のため、高橋是清日本銀行副総裁が、英米を奔走した。
等の例を挙げています。
 第10章「日本銀行による国債を用いた金融調節の開始:昭和30年代──昭和37年の『新金融調整方式』」では、オーソドックスなセントラルバンキングの考え方では、「中央銀行貸し出しは緊急の流動性供給のための手段であり、資産・負債を管理していくことが想定される」が、「当時は、大幅な日本銀行借り入れが主要な銀行において恒常化していた」として、「オーバーローン・オーバーボロイング」という状況を解説しています。
 第12章「財政政策と国債管理政策:昭和50年代──国債流通市場の本格的な成長」では、「昭和50年代は国債大量発行の時代であり、『大量』発行という事実が、わが国の国債市場に質的な変化を起こした」と述べています。
 第13章「累増した国債と深刻化した国債管理:昭和60年代から平成の時代へ」では、1985年(昭和60年)前後の、わが国の国債市場における大きな変化として、
(1)1984年(昭和59年)の金融機関による国債ディーリングの開始
(2)1985年の国債先物市場の創設
の2点を挙げています。
 第14章「平成10年の『運用部ショック』:現代の国債問題」では、最近の国債管理政策の「一つのターニング・ポイント」として、1998年(平成10年)に起きた、いわゆる「運用部ショック」を挙げ、「デフレーションの進行と金融不安や世界的な信用不安を背景に、大量の資金が国債に流れ込み、長期金利が史上最低水準まで低下する一方で、それまでの財政再建路線が一転して積極財政に転換され、度重なる補正予算編成で国債発行額は倍々ゲームのように増大した」として、「国債の需給に対する懸念から長期金利は秋ごろからじりじり上昇に転じ、同年末に至って『運用部が国債買い入れを中止する』との報道をきっかけに一気に急騰した」と述べています。
 第15章「現代の金融政策と国債──国債の日本銀行引き受けはなぜいけないのか」では、「財政規律の維持は、大事業である」として、「財政当局が一人で頑張るのではなく、他の力を動員する仕組みを、社会にビルトインしてしまうことが求められる」と述べ、「中央銀行が引き受けをしないという仕組みは、ここに言う『他の力』の一つとして重要である」と解説しています。
 第4部「わが国の国債管理政策の進展と課題」、第16章「国債管理政策のバックグラウンド」では、「国債には多くの種類が存在する」として、予算制度に即して分類すると、
(1)新規財源債
(2)借換債
(3)財投債
の3つに分けられる、と述べています。
 そして、わが国の国債残高が「大きく膨らんで」いて、「主要先進国と比較しても際立っている」と述べ、「このように国債発行額が増大してくると、いかにして低コストで国債を発行し金利負担を低く抑えるかが重要になってくる」戸述べています。
 第19章「競争的で効率的な市場の育成」では、「国債発行当局は、競争入札の拡充を通じた競争性、効率性の向上と、未達をはじめとする国債入札のリスクの抑制という、二兎を追うことが求められている」と述べ、こうした観点からわが国でも導入される「プライマリー・ディーラ制度(PD)」について解説しています。
 第22章「国債管理政策とリスク対応等」では、「近年とられてきた各般の施策、すなわち国債市場の流動性を高める、市場のニーズを十分に吸い上げる、市場の予見可能性を高めるといった施策は、基本的には、市場にショックを起こさない、あるいは何らかの兆候が生じてもそれが金利の乱高下に繋がらないようにするための施策であったといえる。つまり、金利急騰に臨機応変に対応できるための施策というよりも、金利急騰を起こさないための施策である」と解説しています。
 本書は、家計の感覚で、「一人当たりいくら」ということばかりが取りざたされがちな国債と金利の姿を理解するためにお勧めの一冊です。


■ 個人的な視点から

 どうしても、富田俊基著『国債の歴史―金利に凝縮された過去と未来』と比較されてしまう内容ですが、イギリスとアメリカのところは、『国債の歴史』を読んだ後でも十分楽しく読めました。
 一方で日本部分はと言えば、封鎖経済での国債消化など、『国債の歴史』の方が面白い部分が多かったように感じます。


■ どんな人にオススメ?

・国債の歴史をたどりたい人。


■ 関連しそうな本

 富田 俊基 『国債の歴史―金利に凝縮された過去と未来』 2008年08月01日
 落合 弘樹 『秩禄処分―明治維新と武士のリストラ』 2005年05月19日
 新藤 宗幸 『財政投融資』 2007年04月11日
 星 岳雄, アニル カシャップ (著), 鯉渕 賢 (翻訳) 『日本金融システム進化論』 2007年05月08日
 鶴 光太郎 『日本の経済システム改革―「失われた15年」を超えて』 2007年05月23日
 池尾 和人 『開発主義の暴走と保身 金融システムと平成経済』 2007年06月06日


■ 百夜百音

Shangri-La【Shangri-La】 BeForU オリジナル盤発売: 2008

 電気のファンは、こんなの見ると怒り出しそうだけど、卓球も瀧もこういうPVは嫌いではなさそうなので、本人たちに会えたりしたら喜びそうです。

『Shangri-La』Shangri-La

投稿者 tozaki : 2008年10月04日 06:00

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