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2008年12月03日

図解 地方議会改革―実践のポイント100

■ 書籍情報

図解 地方議会改革―実践のポイント100   【図解 地方議会改革―実践のポイント100】(#1413)

  江藤 俊昭
  価格: ¥2835 (税込)
  学陽書房(2008/05)

 本書は、「地方議会の現状を把握しつつ、新たな議会像を提案し、住民と歩みつつ住民福祉のために活動する議会が少しでも増えることを目的」としたものです。
 第1章「地方議会をとりまく状況」では、「地方分権による議会の変化」として、「議会が本来の役割を発揮できなかった理由と、それが変わりつつあり議会が本来の役割を発揮できる可能性を外部環境、政治環境、内部環境の3つから」考えるとしています。
 第2章「地方議会の本来の役割」では、「地方自治は二元代表制に基づいている」として、「首長と議会は、緊張感を持ちつつも協力する、一言で表せば機関競争主義といえよう」と述べています。
 また、「日本の地方自治制度は強首長主義といわれている」として、一般に言われる再議請求権の採用のほか、専決処分、不信任議決に伴う首長による議会解散などの首長の権限の強さを含む場合もあると述べ、「監視機能にとって必要な議決権限、検査権、調査権、『専門的知見の活用』などを積極的に活用することが必要」だと述べています。
 第3章「地方議会の位置づけ」では、「議会改革の特効薬」として、
・住民との懇談会
・議員同士の自由討議
・執行機関との切磋琢磨
などを挙げ、「こうした三者間の緊張関係は、議員の自己研鑽を生み出し、議会の水準を大幅に向上させることになる」と述べています。
 第4章「地方議会の権限」では、「大きな権限を有している」にもかかわらず、「首長の『追認機関』だと揶揄されてきた」地方議会が、「地方分権時代では、議会は首長と切磋琢磨してよりよい地域経営を行うためにこれらの権限を活用できる」と述べ、
・議決権(+追加事項)
・検査権
・監査請求権
・同意権・選挙権
・調査権
・予算の説明書の提出
などについて解説しています。
 そして、条例案提出に関して、「条例の制定改廃の直接請求の条例には、地方税の賦課徴収、分担金・使用料・手数料の徴収に関するものは除かれている」ことについて、「住民自治の基本である税にかかわれないのは奇異に感じられる」と指摘しています。
 また、財政過程について、「執行機関の独壇場、あるいは執行機関による自作自演」だと指摘し、「財政にとって大きな影響がある自治体の設立法人・出資法人への議会の監視県が弱く、また地方公営企業にかかわる契約に議会が関与できていない」と述べ、「予算書が款項のみで実質的なことがよくわからない」上、「議会の議決が款項だけだと審議対象が狭められる」ために、「実際には安易な目・節間の流用が行われることになる」として、「法制度上限界もあるが、財務過程に議会がかかわれる方途はあるし、関与しなければならない」と述べています。
 さらに、「議会には予算編成にかかわれる権限」として、「予算修正」があるが、「修正も組み替えも活用されているとは言いがたい」と指摘し、「予算を定めるのは議会の決議である」にもかかわらず、「それを乗り越える首長の権限、いわばバリアがある」として、「款項のみの予算、政令による契約基準の拘束、専決処分」などを挙げ、「すくなくとも議会費予算を議会が提案できる慣例を作りたい」と述べています。
 また、議会による首長の不信任議決に関して、自治法に即した解説から、
・極度の緊張状態→議会による首長の不信任議決→首長による議会解散→議員選挙(→議会による再度の不信任議決→首長の失職)
・極度の緊張状態→議会による首長の不信任議決→首長の失職(→首長選挙)
の2つの系列があるとの場、「住民が最終的に決着させるのであれば、みずからの失職、議会の解散、といった2つの道のほかに、『失職→再選挙』という選択もあってよい」として、2002年田中康夫長野県知事が、「議会の不信任議決に対して、そうした選択を行った」と述べています。
 第5章「地方議会の組織と運営の課題」では、「議会を自治体の重要な機関として位置づけると、定例会と臨時会という会期制は問題なしとはいえない」として、「自治法制定時、連合国軍総司令部は、地方議会の開催数を増やすこと、具体的には年12回以上を提案していた」ことを挙げ、自治法では、「定例会は毎年6回以上の招集が義務付けられた」が、1952年に「毎年4回」に、1956年には「毎年4回以内」に改正されたと解説した上で、「議会運営を活性化させるためには、議会の開催日数を増やすことを暗示している」と述べ、「議会運営を活性化するために、通年議会も模索されている」としています。
 そして、委員会制について、「問題も多い」として、「実質審議が委員会で行われることから、本会議が形骸化すること」や、「本会議は法定で公開となっているものの、委員会やその議事録は実質的に非公開という議会も少なくない」ことを挙げ、「これでは委員改正は密室政治の温床となる」と指摘しています。
 また、自治法の改正によって、「1人1委員会の規制が解除されたことによって、予算委員会(あるいは決算委員会)も常任委員会として設置することもできる」ようになったとしたうえで、「不当な処理の再発防止、政策の変更、責任の所在の明確化などについて、首長が議会に説明することを義務付けるルールを確立することが必要」だと述べています。
 さらに、「従来の一括質問一括回答から一問一答方式に移りつつある」として、「書面を読み上げるだけに終始していた『朗読会』から離脱し、論点を明確にするには、まずもって一問一答方式が必要」だと述べ、「これまでは、議員から執行機関への質問、逆に執行機関から議会(議員)への回答というように議員からのいいっぱなしであった」と指摘しています。
 第6章「会派の課題」では、「会派は政策集団として生まれ変わることが必要である」として、「会派の政策と議員間討議の関係が論点になる」と述べ、
(1)選挙公約と議会における討議との関係
(2)討議によるローカル・マニフェストの修正
の2点を挙げ、「従来のような政策なき選挙から比べれば大きな転換である」と述べています。
 第7章「地方議会の組織と運営の諸問題」では、「自治体の多くの政策に必要な優先順位づけは、賛成か反対かを問う住民投票には馴染まない」理由として、「住民投票は重要であることは認めるとしても、それは単なる住民による多数決ではない」と述べています。
 そして、多くの議場が、「国会議事堂のように議員に向かって、執行機関に質問している」方式であるが、「二元代表制を強調すると対面式の議場」、「討議する場を強調すると円形あるいはコの字型が想定できる」として、静岡県掛川市議会、愛知県名古屋市議会、同県稲沢市議会、島根県石見町議会、高知県馬路村議会などの例を紹介しています。
 また、政務調査費について、「領収書添付を義務付けていないところ」もあり、「早急な義務づけは当然である」とした上で、「義務づけているところでも疑問も多い」として、「選挙の年などは、選挙事務所も、月単位で借りている駐車場代、なども含まれている」として、「およそ1割ぐらいが政務調査費に該当」するに過ぎないとする指摘を紹介しています。
 さらに、討議による調整のパターンとして、
(1)討議によっても一致を見出せないもの
(2)妥協を見出せるもの
(3)新しい提案をつくり出すもの
の3点を挙げ、「もちろん、公開による討議である」と述べています。
 このほか、夜間休日議会の可能性に関して、「これまでに、休日・夜間議会は、会議規則を改定せず、臨時的・試行的に開催されてきた」が、「最初は、傍聴者が増大しても次第に飽きられ減少してきた」上、「自治体職員の時間外手当がかさんできた」として、市川市議会、会津若松市議会では中止したと述べています。
 第8章「現在の地方議員像」では、「議員がいまだ住民代表とはいえないのではないかという疑問も聞かれる」として、「社会の多数を占めるサラリーマンや、半数を占める女性が議員になりにくい状況」について、「早急に改善しなければならない課題」だと述べています。
 そして、フランスの地方議員や首長が、「一般職公務員だけではなく、国会議員を兼ねることが多い」として、
(1)政治家の活動範囲を広げ、政治的影響力を大きくする。
(2)中央―地方間の意思疎通の回路となる。
(3)若手の政治家が、小さな自治体の議員から始め、首長、県議などから国会議員といったプロセスを支える。
などの効果を挙げています。
 また、「今後の議員は、住民の提言を政策化する調整と提案の能力、地域デザイン構想者としての提案を討議の能力、監視の能力をそれぞれ有して活動する」として、「これらの一連の過程には、市民的感覚という市民性とともに専門的能力を持つ専門性が必要となる」と述べ、「議員は市民感覚や専門能力という点では特別な人としては描けず、たら議員となることによって公的活動に積極的にかかわる意欲、及び選挙で当選できるネットワークを有していることからだけで区別されるべきであろう」と述べています。
 第9章「議員への公費支給とその監視」では、議員の「待遇」が、住民からは見えにくいところで、「第2報酬、第3報酬の意味を持っていることも少なくない」として、「待遇だけはプロだが、実際の議会活動はボランティア以下」という人も散見されると指摘されていると述べています。
 また、「議員の報酬を月給制から日給制に変えることもできる」として、福島県矢祭町議会の例を紹介しています。
 第10章「新しい議員を選出する制度」では、「制度的にも現実的にも、議員になれない職業がある」という問題を挙げた上で、「当該自治体の自治体職員でないならば、議員となることは問題はない」として、「兼業禁止の緩和」や、「休職制度の拡大などを社会的にも、さらには法律によって認知させることも検討してよい」と述べています。
 本書は、地方分権が進むと必然的に重要性が増す、地方議会の改革の方向を示してくれる一冊です。


■ 個人的な視点から

 こういう地方分権の流れを受けた議会改革の話をすると、まず出てくるのが市町村議会です。基礎的自治体の役割が劇的に変化するからということはありますが、ますます空洞化してしまう都道府県議会の、「明日はどっち」なのでしょうか。


■ どんな人にオススメ?

・地方議会なんかに関心を持ってない人。


■ 関連しそうな本

 村松 岐夫, 伊藤 光利 『地方議員の研究―日本的政治風土の主役たち』 2005年02月21日
 加藤 幸雄 『市町村議会の常識―「知らなかった」ではすまされない』
 橋場 利勝, 神原 勝 『栗山町発・議会基本条例』
 江藤 俊昭 (著), 自治体議会政策学会 (監修) 『増補版 自治を担う議会改革―住民と歩む協働型議会の実現―』
 大和田 一紘 『習うより慣れろの市町村財政分析―基礎からステップアップまで』
 神原 勝 『自治・議会基本条例論―自治体運営の先端を拓く』


■ 百夜百マンガ

杉浦日向子全集【杉浦日向子全集 】

 NHKの「お江戸でござる」で江戸時代の解説をしてくれる女性、ということでお茶の間にも愛されていましたが、本職は漫画家さんです。惜しまれます。


投稿者 tozaki : 2008年12月03日 06:00

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