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2008年12月31日
国家の罠 外務省のラスプーチンと呼ばれて
■ 書籍情報
【国家の罠 外務省のラスプーチンと呼ばれて】(#1441)
佐藤 優
価格: ¥1680 (税込)
新潮社(2005/3/26)
本書は、外務省の外交官で、ロシアを巡る背任容疑で逮捕された著者の、保釈されるまでの512日間の独房生活を綴ったもので、著者が毎晩、「なぜ私は逮捕され、ここに閉じ込められ、手錠・捕縄姿で裁判所に引き立てられるようなことになってしまったのか」を自問したものです。
第1章「逮捕前夜」では、鈴木宗男氏が、「他人に対する恨みつらみの話しをほとんどしない」ことについて、「鈴木氏には嫉妬心が希薄」であるだけでなく、「他人がもつ嫉妬心に鈴木氏が鈍感である」ことが、「他の政治家や官僚が持つ嫉妬心や恨みつらみの累積を鈴木氏が感知できなかった最大の理由」だと述べています。
第2章「田中眞紀子と鈴木宗男の闘い」では、「日本という国の根本的な方針が、小泉政権の登場前と後では大きく変貌を遂げた」という分析を述べ、冷戦構造の崩壊を受け、外務省内部で、
(1)日本はこれまで異常にアメリカとの同盟関係を強化しようという考え方。
(2)日本は歴史的、地理的にアジア国家であるということをもう一度見直し、中国と安定した関係を構築することに国家戦略の比重を移し、その上でアジアにおいて安定した地位を得ようとする「アジア主義」。
(3)日本、アメリカ、中国、ロシアの四大国によるパワーゲームの時代に、最も距離のある日本とロシアの関係を近づけることが、日本にとってもロシアにとっても、そして地域全体にとってもプラスになる、とする地政学論。
の3つの異なった潮流が形成されたと解説しています。
そして、国際情報屋のタイプとして、
・猟犬型:ヒエラルキーの中で与えられた場所を良く守り、上司の命令を忠実に遂行する。
・野良猫型:たとえ与えられた命令でも、自分が心底納得し、自分なりの全体像をつかまないと決してリスクを引き受けない。独立心が強く、癖がある。しかし、難しい情報源に食い込んだり、通常の分析家に描けないような構図を見て取ることができる。
の2つのタイプを挙げ、著者が「諸外国の野良猫型情報屋から多くのことを学んだ」として、「国際情報屋は、猟犬型は9割5分、野良猫型5分くらいに分かれる」とした上で、情報入手の方法が、
・虎式:獲物の通り道を見つけ、誰にも見えないような場所でひたすら待ち、獲物が近づいたら一気に襲い掛かる。
・蜘蛛式:幅広く網を張り、獲物がかかるのを待つ。
に分かれると述べ、著者自身は諸外国の専門家たちから、「蜘蛛式が得意だ」とよく言われたと述べています。
また、「小泉政権の誕生により、日本国家は確実に変貌した」として、その意義として、
(1)外交潮流の変化:冷戦後存在した3つの外交潮流は、「親米主義」に整理された。
(2)ポピュリズム現象によるナショナリズムの昂揚。
(3)官僚支配の強化。
の3点を挙げています。
第3章「作られた疑惑」では、著者にかけられた疑惑として、
(1)背任
(2)偽計業務妨害
の2点を挙げています。
また、「ロシアウォッチャーにとって、大晦日は重要だ」として、大統領が毎年大晦日の午後11時台後半に国民に読み上げる新年祝賀メッセージに「内外政のヒントが多く隠されている」として、1999年の大晦日に、「エリツィン大統領が本日辞任して、プーチン首相が大統領代行に任命される。既に大統領の特別声明が録画されており、モスクワ時間正午に放送される」という重大情報が引っかかったと述べています。
第4章「『国策捜査』開始」では、取調べを担当した西村検事から、「だってこれは『国策捜査』なんだから」という言葉を聞いたときに、「この検事が本格的に私との試合を始めたということを感じた」と述べています。
そして、弁護団に対して、「ふつう中にいる人は外の様子を少しでも多く知りたがり、自分の置かれた状況について全体像を知りたがる」野に対し、「全体像に関する情報をもつ人を限定する」という「情報の世界では当たり前」の「クオーター化の原則」を要請したと述べています。
また、「今回の国策捜査が鈴木宗男氏をターゲットとしていたことは疑いの余地が」なく、「私はその露払いとして逮捕された」とともに、「私を逮捕すれば、外務省と鈴木宗男氏を直接絡める犯罪を見つけ出すことができるとの強い期待を抱いていた」と述べています。
第5章「『時代のけじめ』としての『国策捜査』」では、「私が逮捕、起訴され、その後も交流されているのは、佐藤優と鈴木宗男を絡める事件を作り、現下の政官の関係を摘発、断罪し、検察官のことばでいうところの『時代のけじめ』をつけるため」だとしたうえで、「他の政治家ではなく鈴木宗男氏がターゲットにされた」理由として、「現在の日本では、内政におけるケインズ型公平配分路線からハイエク型傾斜配分路線への転換、外交における地政学的国際協調主義から排外主義的ナショナリズムへの転換という二つの線で『時代のけじめ』をつける必要があり、その線が交錯するとことに鈴木宗男氏がいるので、どうも国策捜査の対象になったのではないかという構図が見えてきた」としています。
そして、「国策捜査」と「冤罪事件」の違いとして、冤罪事件では、「捜査当局が犯罪を摘発する過程で無理や過ちが生じ、無実の人を犯人としてしまったにもかかわらず、捜査当局の面子や組織防衛のために自らの誤りを認めずに犯罪として処理」することであるのに対し、国策捜査は、「国家がいわば『自己保存の本能』に基づいて、検察を道具にして政事事件を作り出していくこと」だと述べ、「初めから特定の人物を断罪することを想定した上で捜査が始まる」と述べています。
第6章「獄中から保釈、そして裁判闘争へ」では、新獄舎への引越しに伴い、看守から「ちょっと難しい人たちのいるとこ」への移動を頼まれ、週に1、2回、両側の独房でビデオ付テレビが入れられ、映画を鑑賞していることに気づき、ビデオを見れるのは、「確定者」だけであることをサジェスチョンされたと述べています。
また、間違えて隣の房の人の電気カミソリが差し入れられたことで隣人の氏名を知り、隣人が、「30年以上前、共産主義革命を目指して大きな事件を起こした人物」であることを知った著者が、保釈後、「いちばん最初に買い求めた本はこの隣人の書いた獄中手記だった」と述べています。
また、公判における最終陳述の機会に、
(1)今回の国策捜査がなぜに必要とされたか
(2)国策捜査とマスメディアの関係
(3)今回の国策捜査で真の勝利者は誰だったか
(4)今回の国策捜査が日本外交にどのような実害をもたらしたか
の4点について、意見を述べたと述べています。
本書は、マスコミで面白おかしく取り上げられたこの事件を、一方の当事者とはいえ、時系列に整理して知ることができる一冊です。
■ 個人的な視点から
当時、2チャンネルなどでも「ムネオ」といえば「悪の化身」的なイメージでずいぶんたたかれ、「ムネオハウス」なる曲まで登場しました。著者も、「外務省のラスプーチン」と言われることに関して、日本ではラスプーチンはロシアを裏から操った怪僧というイメージがあるが、ロシアでのイメージはまるで違うと語っています。日本でイメージが悪いのは、山田風太郎の『ラスプーチンが来た』のイメージがあるからでしょうか。
■ どんな人にオススメ?
・ムネオは諸悪の根源だと思う人。
■ 関連しそうな本
佐藤 優 『国家の罠―外務省のラスプーチンと呼ばれて』
佐藤 優 『獄中記』
佐藤 優 『自壊する帝国』
佐藤 優 『国家の崩壊』
佐藤 優 『国家と神とマルクス―「自由主義的保守主義者」かく語りき』
手嶋 龍一, 佐藤 優 『インテリジェンス 武器なき戦争』 2008年02月06日
■ 百夜百マンガ
登場人物も千葉県内の地名を使った千葉ローカルな作品。幕張でキャンパスといえば神田外語大学ですが、どんな関わりなのかは不明。
投稿者 tozaki : 2008年12月31日 06:00
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