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2009年01月09日

シティマネージャー制度論―市町村長を廃止する

■ 書籍情報

シティマネージャー制度論―市町村長を廃止する   【シティマネージャー制度論―市町村長を廃止する】(#1450)

  佐々木 信夫, 金井 利之, 工藤 裕子, 土岐 寛, 牛山 久仁彦, 穂坂 邦夫
  価格: ¥1500 (税込)
  埼玉新聞社(2008/12)

 本書は、住民自治を確立し、民主主義を保障する合理的で効率的な地方行政制度の設計が必然的な時代の要請として強く求められている」なか、世界の政治制度や地方自治制度を比較し、制度の長所・短所を様々な角度から分析したものです。
 第1章「我が国と主要国の地方制度に関する比較」では、「世界的にみると、すべての地方自治体の長について、直接公選することを憲法で規定しているのは、我が国独特の制度」であり、「諸外国では、議会が議員の中から首長を選ぶ議院内閣制型、立法機関と執行機関をかねる評議会(理事会)を設置する評議会(理事会)型など、多様な統治形態」があり、「これらの制度を地方自治体が選択できるようになっている場合もある」と述べています。
 第2章「わが国における自治制度の検証」では、日本の首長制度について、
(1)政治家である首長が、人事・予算を握る。政治優位の仕組である。
(2)首長と議会は、それぞれ住民から直接選挙される二元的代表制であるが、現実には首長の力が議会より圧倒的に大きい。
(3)教科書的には執行機関多元主義と呼ばれ、各種の委員会・委員がおかれているが、現実には、首長に総合調整権があるため、基本的には、首長が全行政の統合を担う。
の3つのポイントを挙げた上で、首長に強い権力が集中することを想定した戦後日本の首長制は、市支配人制度とは「水と油」のようなものであることを指摘した上で、アメリカで市支配人制度を必要とした理由が、
(1)政治の過剰な優位
(2)各分野の過剰な分立傾向
であることに鑑みると、「住民から直接選挙される首長以上に、各分野を統合できる正統性のある主体は想定できない」ため、(2)の観点からの市支配人制度の導入は「あまり意味がない」とした上で、「権力は集中しているが、十分な賢慮をすることのできない首長は、膨大な行政分野に実際には配慮することはできず、結果的に、『気まぐれ』あるいは『人気取り』で、政策・事業をつまみ食いする可能性も増えている」という点では、「市支配人制度には意味が見出せよう」と述べています。
 第3章「シティマネージャー制度の紹介と実態調査」では、米国のシティマネージャー制について、「日々の市の政策運営を行うために市議会によって雇用された行政経営の専門家」とする定義を紹介した上で、国際シティマネージャー協会(ICMA)によるシティマネージャーに求められる資質として、
(1)分析と総合の能力
(2)社会哲学
(3)優先順の決定
(4)イニシアティブ
(5)組織的指導
(6)よき公共関係
(7)専門的知識
(8)職業的精神
の8点を挙げつつ、今後の課題として、
(1)シティマネージャーの能力
(2)いかに政治的に中立を保とうと思っても、政策判断が政治家の意見と異なる場合、すぐれた政策であっても、それを遂行することが難しい場合もある。
の2点を挙げています。
 また、英国の地方自治体について、2006年現在では、「リーダーと内閣制度」と「公選首長と内閣制度」の2つのない武功増も出るに分かれているとした上で、「従来の『委員会制度』に近い『リーダーと内閣制度』を採用する自治体が圧倒的に多く、これらの自治体については、従来型のチーフ・エグゼクティブが活躍すること考えられる」と述べています。
 さらに、イタリアの地方自治制度について、1997年のバッサニーニ法が、「補完性の原理に基づいて、国から州、県、コムーネへ、権限・事務、税源、人員の移譲を実施した」ことを、一般に、『行政的連邦主義』といわれるとした上で、この一連の地方分権改革を2001年憲法改正が完成させたとして、
(1)コムーネ、大都市圏、県、州を、国と相互に対等な関係にある自治体として明確に位置づけた。
(2)立法権は、国と州に帰属するとした。
(3)地方自治体の財政自主権が規定されているが、この規定は地方自治体の財政は自主財源によりまかなうことを意味すると理解されている(財政連邦主義)都道時に、担税力の乏しい地方自治体のために均衡化基金の設置が規定された。
の3点を挙げています。
 さらに、日本でシティマネージャー制度が比較的評価を受けているのは、「知らないから受けているという点もある」ことを指摘したうえで、シティマネージャーにとって一番重要なことは、「人当たりが柔らかい」ことで、「日本流に言うと根回しのうまい人が、シティマネージャーには多い」と述べています。
 第4章「日本型シティマネージャー制度の導入」では、「代議員制度が適正に機能しているとすれば『住民参加』の必要性は考えられない」が、「二元制の実態を検証すると随所にその必要性が生じる」として、「一般市民の多くは負担とサービスの関係を理解すると、個々の利害を超えて全体の利益や市民の連帯を考えることができるため、政策決定における住民の参加が必要不可欠ともなる。本末転倒とも言えるがこれが実態である」と述べています。
 そして、我が国の二元制が持つ大きな矛盾として、
(1)首長と議員の双方に政策機能が付与されていること。
(2)首長は一人を選出するが議員は複数であるという異質な選出方法
の2点を挙げたうえで、「首長は政治と行政的な機能のみならず行政活動と永続的に展開するための財政規律機能も同時的に発揮して経営責任を果たさなければならない」一方で、二元制のもう一つの柱である議会には、「予算編成権や執行権を持たないだけでなく、縮小された政策機能だけを行使することになる」と述べ、このような矛盾が、「地方と国の集権的関係の中では顕在化しなかったが、分権化が加速することによって様々な問題が顕在化した」と指摘しています。
 また、市支配人制度の要素として、
(1)公選=政治機関は市支配人とは別にあり、その高専機関からの選任・解任・監督を受ける
(2)市支配人は独任制である
(3)市支配人は行政運営の様々な権限(特に、人事権、予算編成兼など)を持つ
(4)市支配人は、公選でないのは勿論であるが、政治的任用ではなく、中立的に成績主義に基づいて資格任用されるものである。
の4つの革新的要素を挙げたうえで、「既存の制度の中にも、市支配人的制度での運用は可能なものもある」が、「それが市支配人的に運用されない」とすれば、「その原因は、制度そのものではなく別の要因にある」として、「同一組織内での終身職としてのジェネラリストの内部昇進という日本型人事慣行」を指摘しています。
 第5章「多様な地方制度のあり方について」では、埼玉県志木市が、2003年から2005年にかけて、計4回「市町村長の必置規定の廃止」を提案したが、構造改革特区推進室は、憲法第93条に抵触するとして「対応不可」としたと述べたうえで、「地方制度の抜本的な改革によって、住民の行政参加が加速して、行政経費の削減が進み、住民負担が軽減されるとすれば国民にとって、痛みを伴わない改革が実現し、多大な利益を還元することができる」おして、「住民自身が様々な自治制度を選択することによって、住民自治は確かなものとなり、財政規律も回復して、小規模自治体におけるコミュニティも再生する」と述べています。
 本書は、日本における地方自治のあり方と課題をシティマネージャーという切り口から論じた一冊です。


■ 個人的な視点から

 本書の面白さは、現場の人と学者との温度差でしょうか。現場からの問題意識は、シティマネージャー制度の導入を目的にしているわけではなくそれを切り口にして改善の糸口を見つけたい、というところにあるのではないかと思いますが、研究者はまじめなので既存のシティマネージャー制度について詳細に分析していて、その部分の温度差というか、向いている方向の違いに本書を読んだ人は戸惑うのではないかと思います。


■ どんな人にオススメ?

・地方自治体の長は公選が常識だと思っている人。


■ 関連しそうな本

 NPO法人地方自立政策研究所役割分担明確化研究会 (著), 穂坂 邦夫 『地方自治自立へのシナリオ―国と地方を救う「役割分担明確化」の視点』
 穂坂 邦夫 『教育委員会廃止論』 2006年01月26日
 穂坂 邦夫 『市町村崩壊 破壊と再生のシナリオ』
 埼玉新聞社 (編集) 『生き生きまちづくり 埼玉県志木市の挑戦』 2005年04月17日
 小滝 敏之 『アメリカの地方自治』 2006年02月02日


■ 百夜百マンガ

熱闘コンドルズ【熱闘コンドルズ 】

 架空のプロ野球チームという設定はマンガの世界では定番ですが、そういえばドラマではなかなか見かけない気がします。スポンサーとかの制約がきついのでしょうか。


投稿者 tozaki : 2009年01月09日 06:00

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