2008年09月22日

アメリカの雑誌ビジネス

■ 書籍情報

アメリカの雑誌ビジネス   【アメリカの雑誌ビジネス】(#1341)

  桑名 淳二
  価格: ¥3150 (税込)
  風涛社(2008/07)

 本書は、「広告収入に頼る雑誌ビジネスではなく、販売収入に頼った雑誌ビジネス」を目指すなど、「アメリカ雑誌業界の読者研究の取り組みから、新しいビジネスモデルを」探ったものです。
 第1章「アメリカ雑誌ビジネスのキーワードは『熱狂的な読者を掴まえる』」では、「アメリカ雑誌は、広告収入なしでは存在できないビジネスとなっている。そこで、雑誌社は、広告収入を増やすためには、読者数を伸ばすことが最善策であると判断し、年間予約購読料金を大幅に割引して、読者を集めようと躍起になってきた。いわゆる数の多さを競うナンバー・ゲームを展開してきたのである」と述べています。
  第3章「アメリカ雑誌ビジネス『読者をどのように考えればよいのか』」では、新しいビジネス・モデルの考え方として、
(1)販売収入で利益が出るビジネスを構築すること
(2)熱狂的なファンを読者にすること
(3)雑誌をマーケティング媒体としてアピールすること
(4)雑誌関連のサービスをビジネスに加えること
(5)収入源を多様化すること
(6)雑誌ビジネスにドット・コムを活用すること
(7)ビジネスはダウン・サイジングを基本にすること
(8)新しい販売ルートを開拓すること
の8点を挙げています。
 第5章「雑誌作り『クオリティのある読者を掴まえる』」では、「現在、アメリカの雑誌ビジネスは、単に雑誌を販売する、広告を獲得するというだけではなく、第三の収入の柱を探し求めている」として、「イベントやカンファレンスの開催や、関連商品の販売にとどまらず、いろいろな方面に広がってきている」と述べています。
 第8章「雑誌広告『雑誌広告と読者の関係』」では、「編集記事そっくりのページで、通常、スペシャル・アドバタイジング・セクションと呼ばれる記事広告」が「アドバトリアル」と呼ばれるとした上で、「雑誌社は広告を割り引きなしの価格で獲得するうえでの取引にアドバトリアルを使うことが多い」と述べ、「あまり、多すぎると問題がある」のでは、「アメリカ雑誌発行者協会とアメリカ雑誌編集者協会はスペシャル・アドバタイジング・セクションと明記し、書体を本文と変えなければならないというようなガイドラインを作っている」と述べています。
 第10章「雑誌創刊のポイント『読者第一主義』」では、「雑誌創刊で最も重要なのは最初の1年間である」として、「雑誌ビジネス、長い期間の投資が必要で、週刊誌や月刊誌、または、50万部以上の部数では、支出が多く、早期における利益は見込めない。最初の2~3年を生き残るためには、雑誌社は多くの資金が相当必要になる」と述べています。
 第13章「雑誌ブランドの拡張で読者を拡大する『どのように読者を増やすか』」では、アメリカの雑誌社にとって、海外版の発行が、有望なビジネスとなっているとして、
(1)ハイテクの普及によって、製作、ファイル転送、意思の伝達などがきわめて容易である。
(2)現地通貨支払いなど、現地スタッフの雇用の面で有利である。
(3)有能な人たちがアメリカ雑誌関連事業に参加してくれる可能性が大である。
(4)海外版の発行を通じて新しいビジネスモデルを習得できるチャンスがある。
の4点を挙げています。
 第15章「カスタム・マガジン『企業と連携して顧客を読者に』」では、企業がその顧客に向けて発行する雑誌であるカスタム・マガジンについて、その目的は、「現顧客の維持と新しい顧客の獲得である」と述べ、「雑誌社は企業と連携してカスタム・マガジンを発行することによって、新しい読者を掴まえることが可能になったことから、今後は、カスタム・マガジンの状況を調べてみる」と述べています。
 第18章「雑誌の生き残りの道『定価で購入してくれる人々を掴まえる』」では、「新しいビジネスモデルを作り上げなければ生き残れない」として、「従来の広告収入依存のビジネスから販売収入依存のビジネスへの転換を図ることで、そのためには、熱狂的な読者を掴まえ、年間予約購読でも割引料金ではなく、低下で購入してもらうことである」と述べています。
 そして、「変革の時代における最重要課題は雑誌の役割を再確認することである。そして、掴まえた読者の要求に合わせた雑誌作りをすることである」として、「雑誌には他のメディアにない長所がたくさんある。その優れた面を強調していけば、雑誌は必ず生き残れる」と述べています。
 本書は、日本の雑誌関係者にとっても、雑誌の読者にとっても、新しい姿のヒントを与えてくれる一冊です。


■ 個人的な視点から

 アメリカの雑誌をテーマにしているからなのか、本書の文体もやけに翻訳調なところがあり、最初は、アメリカのビジネス書を訳したものかと思いましたが、日本人が書いています。パクリじゃないといいんですが。


■ どんな人にオススメ?

・最近の雑誌はつまらないと感じている人。


■ 関連しそうな本

 桑名 淳二 『データが語るアメリカ雑誌』
 桑名 淳二 『アメリカ雑誌は表紙で勝負する』
 桑名 淳二 『データで見るアメリカ雑誌』
 桑名 淳二 『アメリカ雑誌をリードした人びと』
 サミール フスニ (著), 桑名 淳二 (翻訳) 『ミスター・マガジンの「アメリカ雑誌で成功する方法」』


■ 百夜百マンガ

ハロー張りネズミ【ハロー張りネズミ 】

 「探偵」という職業も、ドラマや映画の中では良く見かけますが、実際のところ何をしている人なのかよくわからないところがあります。とりあえず、人の人生に首を突っ込む仕事、ということでの設定なのですが。


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2008年09月12日

社名・商品名検定 キミの名は

■ 書籍情報

社名・商品名検定 キミの名は   【社名・商品名検定 キミの名は】(#1331)

  朝日新聞be編集グループ
  価格: ¥777 (税込)
  朝日新聞社(2008/1/11)

 本書は、「よく耳にする会社名、愛用している商品」の「意外と知られていない名前の由来」を紹介したもので、朝日新聞土曜版「be」に連載された「キミの名は」をベースに検定のスタイルにまとめたものです。
 「まずは腕だめし ○×10問チャレンジ」では、ミツカンの「味ぽん」の名は、「味付けぽん酢」を縮めたもので、「ぽん酢」とは、「かんきつ果汁を指すオランダ語」である「ポンス」荷由来することを解説しています。
 第1科目「売れ筋にはワケがある【商品編】」では、社名・商品名の由来本では定番の「国誉」や、「ヒドリ印→S&B」、「アヲハタ」、「遊波→UHA」、「カルビー」「山河あり→サンガリア」などを紹介しています。
 第2科目「ご先祖さま、ありがとう【ネーミング編】」では、「ウナコーワ」の「ウナ」が、至急電報の「ウナ電」に由来すること、天ぷらの「ハゲ天」が文化人たちに愛され、店主がハゲだったことから「ハゲの天ぷら屋」として親しまれ、背水の陣で銀座に進出した際に、それまでの店名「たから」を、作家・水上滝太郎の助言に従って「ハゲ天」に改めたことなどを紹介しています。
 また、化粧品の通販で知られるディーエイチシーが、「大学翻訳センター」の頭文字だったことなどを紹介しています。
 第3科目「「知識のちゃんこ鍋【トリビア編】」では、ニッカウヰスキーが、理想のウイスキーを追求しようと会社を興したが、「ウイスキーは熟成に時間がかかる」ため、「その間の収入を確保するため、初めはリンゴの100%ジュースを売った」ので、「大日本果汁株式会社」という社名でスタートし、ここから「日」と「果」をとったことを解説しています。
 また、サンリオが、創業者の出身地である「山梨」を音読みして「サンリ」に、「エイエイ、オー」の「オ」をつけたと解説されていますが、他の本では「山梨王」で「サンリオ」とする説もあります。
 第4科目「あのとき、歴史が動いた【史実編】」では、「段ボール」が、レンゴーの創業者・井上貞治郎が「自作の機械でボール紙に波型の段をつけた放送用緩衝材の製造に成功」し、「段ボール」と命名したことを解説しています。
 また、時計メーカーだったエプソンが、畑違いのプリンターに進出するきっかけは、東京オリンピックの公式競技の掲示を請け負い、持ち運びできる「プリンティングタイマー」を開発したことであることが紹介されています。
 第5科目「アイデア勝負、20番【デザイン編】」では、ゼブラが元々「石川ペン先製作所」だったが、社名を英語にしようとして、辞書を最後のほうから開いたときに、「ZEBRA」が目に留まり、漢字では「斑馬」と書き、「文」と「王」の組み合わせであることから決まったことが紹介されています。
 また、サランラップは元々太平洋戦線で使われていた銃や弾丸を湿気から守る放送フィルムなどに使われていたが、ある日、ダウケミカル社の技術者2人が、ピクニックに出かけたときに、たまたま奥さんがフィルムでレタスを包んで持っていったところ、大変な評判になり、この2人の妻の名前、「サラ(Sarah)とアン(Ann)」にちなんで「Saran Wrap」と名づけたことを紹介しています。
 本書は、よく知っている名前にもさまざまな思いが込められていることを知ることができる一冊です。


■ 個人的な視点から

 社名や商品名は、トリビア的にも面白いのですが、特に昔の会社の社名や商品名には、創業者の熱い思いや志がこもっていて知るだけで元気になります。
 それに比べて、最近の商品名は広告代理店任せになってしまったのか、当事者の思いが伝わってこないものが多いような気がします。


■ どんな人にオススメ?

・名前にこめられた思いを感じたい人。


■ 関連しそうな本

 田中 ひろみ 『思わず話したくなる社名&商品名の謎―なぜか気になる社名・商品名の由来760』 2008年02月23日
 本間 之英 『誰かに教えたくなる社名の由来』 2005年09月10日
 本間 之英 『誰かに教えたくなる社名の由来〈Part2〉』 2005年9月11日
 湯元 俊紀 『語源ブログ ネットで探るコトバの由来』
 成美堂出版編集部 『日本のロゴ―企業・美術館・博物館・老舗…シンボルマークとしての由来と変遷』
 梅原 淳 『鉄道用語の不思議』


■ 百夜百マンガ

メスよ輝け!!【メスよ輝け!! 】

 最近、医療ドラマブームなのか、何本か放送しているような気がしますが、原作関係的にも内容的にも漫画とドラマの境目がなくなってきているようです。


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2008年09月10日

図解「通販」業界ハンドブック Ver.2

■ 書籍情報

図解「通販」業界ハンドブック Ver.2   【図解「通販」業界ハンドブック Ver.2】(#1329)

  店舗システム協会
  価格: ¥1680 (税込)
  東洋経済新報社(2007/10)

 本書は、「他の業態の補助手段としてではなく、独自の可能性を持った販売分野として、新たな発展の入り口にある」通信販売業について、網羅的に紹介しているものです。
 第1章「『通販』業界の基礎知識」では、通信販売というビジネス形態について、
(1)顧客データベースをよりどころに、
(2)メディア(媒体)を活用して、
(3)双方向コミュニケーションを行い、
(4)その結果(レスポンス)を計測することによって、次のよりよい手法を構築していく
の4点が大きな特徴だと述べています。
 そして、通信販売という業態が、「他の小売チャネルと比較すると、はるかにシステマティックに組み立てられたビジネス」であるとして、「マーケティング」のデータを活用した「"仮説立て→実行→検証→次の仮説立て"というサイクルをいかにして常に上手に回していくか」がポイントであるとして、「通販の基本は"欲しい人に、欲しいモノを、ほしいときに"いかにスピーディに追求していくかということであり、その前提として、"信頼される商品とサービス"と"それを正しく理解してもらえるクリエイティブ"、さらに"適切な潜在ターゲットに適切なオファーをするためのデータベース"が必要」だと述べています。
 また、「商品の受注・配送・代金回収や業務全体にかかわるコンピュータシステム」など、「ビジネスを背後から支える機能」を意味する「フルフィルメント」について、今日の通販ビジネスにおけるフルフィルメント機能の最大の課題は、「いかにして顧客への提供手段(顧客の選択肢)を多くし、顧客満足を高めるか」だと述べています。
 第2章「モバイル環境の進展とメディアミックスの動き」では、「ケータイの消費行動のきっかけ」として、「事業者側からの『働きかけ』である」として、マーケティングでの一般的な消費行動のサイクルが、「AIDMA」と表現され、
・Attention(注意)→Interest(興味・関心)→Desire(欲求)→Memory(記憶)→Action(行動・購買)→Attention
のサイクルであるのに対し、ケータイ通販では、「記憶」が「働きかけ(Push)」に置き換わる「AIDPA」、
・Attention(注意)→Interest(興味・関心)→Desire(欲求)→ Push(働きかけ)→Action(行動・購買)→Attention
になると述べています。なお、パソコンによる消費行動は、「AISAS」と呼ばれ、「興味・関心」のあとに「検索(Search)」がくること、「行動・購買」を起こした後に「情報共有(Share)」が行われることが特徴である、
・Attention(注意)→Interest(興味・関心)→Search(検索)→Action(行動・購買)→Share(情報共有)→Attention
というサイクルと述べています。
 第3章「『通販』業界の現状」では、「小売業界において、通信販売ほど企業の浮き沈みの激しいチャネルはない」とした上で、業績を拡大しているタイプとして、
(1)化粧品・健康食品やパソコンといった単品、もしくは類似カテゴリーに絞り込んで販売を行っている企業・・・ディーエイチシー、ファンケル、デルなど
(2)企業をターゲット顧客として事業を行う、B to B通販企業・・・アスクル、ミスミグループ本社など
(3)ケーブルテレビなどを活用し、24時間専門放送のチャンネルをもつ「テレビ通販」企業・・・ジュピターショップチャンネル、QVCジャパンなど
の3点を挙げています。
 そして、「大手総合通販企業が相対的に苦戦している一方で、取扱商品を絞り込んだ専門店型通販会社やテレビショッピングやインターネット、衛星放送などの媒体を活用して飛躍した企業の躍進が顕著に見られる」と述べています。
 また、「近年、通信販売業界で行世紀を急拡大している企業のタイプ」として、「食品(特に健康食品)を手がけている企業」を挙げ、主要な食品通販企業には、「それぞれ何らかの他社にない特長があり、それが生活者に受け入れられた結果、大きな売り上げを作っている」と述べ、「日本で初めてチューブ詰めハチミツの生産やハチミツ梅漬の製品化に成功する一方で、そういったビジネス化の裏づけとなる『山田式蜂蜜チューブ充填機』や『蜂蜜用蜂球内部型給餌機』などの機器まで自社で開発するなど、徹底的にミツバチにこだわった商品提案が生活者の大きな共感を呼んでいる」食品関連通販企業第3位の山田養蜂場を紹介しています。
 さらに、「総合通販が伸び悩んだ大きな要因として、顧客セグメンテーション上の問題」を挙げ、「一人ひとり異なる買い手のニーズを漏れなく満たすのは難しいため、売り手は市場(顧客)をいくつかのセグメントに細分化して対応していこうとする」として、「地理的変数、年齢や性別などの人口動態的変数、ライフスタイルやパーソナリティなどのサイコグラフィック変数等」を挙げ、「売り手は、ターゲットとする市場を設定しなければならない」と述べています。
 第4章「『通販』ビジネスに不可欠なマーケティング要素」では、「一つのレスポンスの獲得についてかかったプロモーション費用」を示す、「CPR: Cost Per Response」について、「プロモーション費用/レスポンス数=CPR」の式で求めることができると述べ、「一件あたりの受注にかかるプロモーションのコスト」については、「プロモーション費用/受注数=CPO: Cost Per Order」の式で求めることができると解説しています。
 第5章「ベーシックな『通販』ビジネスモデル」では、メーカーの通販参入で注意すべき点として、
(1)既存の流通ルートを損なわないこと
(2)本業のイメージを損なわないこと
(3)採算性を重視すること
の3点を挙げています。
 第7章「『通販』業界の歴史」では、ブルワーカー、ルームランナー、アブトロニック、ビリーズブートキャンプなどの代表的な健康機器のヒット商品を紹介しています。
 本書は、もっとも先鋭的なマーケティングの激戦場である通販の世界を概括した一冊です。


■ 個人的な視点から

 先日、単品通販の第一人者、株式会社ディーエムネットワークの伊澤社長にお会いしてお話を聞く機会がありましたが、単品通販の世界が、マーケティングの粋を凝らした激戦場であると同時に、そこを勝ち抜くには、思いやストーリーが大事であると伺いました。
 ちなみに、社名がティーエムネットワークに似ているのは偶然なのでしょうか。


■ どんな人にオススメ?

・通販と聞くと雑誌の裏表紙の怪しげなグッズ類を思い出す人。


■ 関連しそうな本

 芳子 ビューエル 『なぜ、テレビショッピングで買ってしまうのか?』
 中村 あつ子 『イラスト図解 通販のしくみ』
 斎藤 駿 『なぜ通販で買うのですか』
 鈴木 隆祐 『「通販」だけがなぜ伸びる』
 ダイレクト・マーケティング・グループ 『失敗しない単品通販―はじめるなら成長業種だ!』
 西野 博道, 山下 眞理 『「ワクワクドキドキ」やずや式少数盛栄術』


■ 百夜百マンガ

ゴーマニズム宣言【ゴーマニズム宣言 】

 元々はギャグ漫画家だったのにいつの間にか思想家というか言論の人になってしまっていました。漫画として面白いかというと、個人的には読み物という感じの扱いです。


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2008年09月08日

実践危機管理広報

■ 書籍情報

実践危機管理広報   【実践危機管理広報】(#1327)

  田中 正博
  価格: ¥1785 (税込)
  時事通信出版局(2008/4/30)

 本書は、広報担当者に対して、「危機管理広報のノウハウを習得し、万一の時には勇気を持ってトップにアドバイス」する、という「辛いミッション」を遂行して欲しい、との願いが込められたものです。
 プロローグ「危機管理広報の時代」では、危機管理広報手法として、
・公開質問状:質問内容を社会的に公開し、世論に訴えていく手法。マスコミ関係のみならず、多くのオピニオンリーダーや機関にも配布される。
・ポジション・ペーパーひとつのテーマについて、のアピール資料を定期的に、マスコミに持ち込み、マスコミ論調に影響を与える重鎮に説明し、関係者への理解を図る。
・ニューズレター:定期的に、理解してもらうことを目的に、多様な関係者に数ページの分量を送付する。
などの手法を取り上げ、事例とともに解説しています。
 また、広報担当者の機能として、マスコミ報道を分析して、その教訓を社内にフィードバックする機能を上げ、「広報の機能は、必ずしも『情報発信』だけではなく、外部情報を組織内に反映させるツーウェーの活動が求められる」と述べています。
 さらに、広報活動が必要な理由として、「何らかの『課題(解決しなければならない問題)』がある」ことをあげ、「対象とする相手、人々からその『課題』について理解や了解を得たい」という「パブリック・アクセプタンス(PA)」=社会から受容されること=こそが、「すべての広報活動の原点ともいえる命題である」と述べています。
 第1章「取材対応の基本」では、「不測の事態発生」には、
(1)事故、災害発生
(2)いわゆる不祥事(不正行為、違法行為、反社会的・反動儀的行為など)
の二通りの内容があるとしています。
 そして、「記者との関係を一番悪化させる」ウソとして、「広報担当者がつい事実を違う話をしてしまい、その結果、記者をミスリードしてしまう」ことを挙げ、「緊急時の"第一のタブー"」であると述べています。
 また、「ポジション・ペーパー」について、
・ある問題をめぐって
・"彼我"(企業vs消費者、企業vs地域住民、企業vs取引先など)の間で
・立場、見解の相違や対応の是非をめぐって紛糾や論争が生じているとき(イシュー状態の場合)
・コトの経緯や事実関係について
・相手の主張、見解、要求とともに、こちら側の対応行動の一部始終を
・時系列に、個条書きで整理し
・この問題に関する双方の対応行動、方針、主張を、客観的にまとめた資料
であると解説しています。
 第2章「緊急記者会見」では、「Q&A」を作る目的として、
(1)予想外の質問が出てきても動揺しないため
(2)回答のガイドラインを示すため
の2点を挙げ、「Q&Aの回答は表現の問題より『どういう基本認識と方針で挑むか』というスタンスが大切」だと述べています。
 また、スポークスパーソンは一人にすべき理由として、「記者会見の基本方針」である、「『同一情報』を『同時点』で『同一人物』の口を通して全メディアに伝えることにある」と同じであると述べ、「スポークスパーソンを一人に限定するというのは、情報の不統一や混乱を避けるためであり、その方針を守る限り、マスコミから非難されることはない」と解説しています。
 第3章「クライシス・コミュニケーション」では、「大切なのは、『起したこと』よりも『起した後にどう銅対応したか』が問われる」と述べ、「クライシス・コミュニケーション」を、「不測の事態発生時に欠かせない危機管理広報のキーワード」だと述べています。
 また、緊急事態発生時に具体的にすべきこととして、
(1)スピード(迅速な意思決定と行動)
(2)疑惑を生まない徹底した情報開示(説明責任を果たす)
(3)社会的視点に立った判断(企業論理や組織論理から判断しない)
の「3つのキーワード」に従って解説しています。
 第4章「マニュアルの作り方」では、不測の事態発生時の初期対応の失敗を避けるガイド役を果たすものとして、危機管理マニュアルを挙げ、その目的と意義として、
(1)予測もしなかったある危機が発生した場合に
(2)新人でもパートでもベテランでも
(3)迷わずに(ムダな議論や時間を費やさずに)
(4)これだけは必ずやらなければならないことと(MUST)
(5)これだけは絶対にやってはならないことについて(MUST NOT'S)
(6)明快な行動手順を示すことによって
(7)迅速な対応行動ができることで
(8)初期対応の失敗を防止すること
の8点を挙げ、ここで、「MUST」と「MUST NOT'S」をはっきり示すことがポイントだと述べています。
 第5章「メディアトレーニングの方法」では、民間企業や官庁で「緊急記者会見に備えてトップのメディアトレーニングが一般的に行われるようになった」ことについて、「限定された株主しか出席しない株主総会ですら念入りにリハーサルをするのに対し、マスコミを対象とした記者会見のリハーサルをしないというのは考えれば妙な話である」と述べています。
 そして、メディアトレーニングの効用として、
(1)緊急記者会見という緊張した場面を経験したことがないこと。
(2)顔を知らない模擬記者からの矢継ぎ早の鋭い質問に、適切なことばで回答することがいかに難しいものであるかに気づくこと
の2点を挙げています。
 また、ある著名な新聞記者が、「記者会見に望むトップにひと言、アドバイス」することとして、
(1)一人で出てくること
(2)自分のことばで話せ
(3)もっと役者になれ
の3点を挙げたことを紹介しています。
 さらに、スポークスパーソンに不可欠な行動として、
・わかりやすいことばで話す
・納得感を与える話し方をする
・説得力のある話し方をする
の3点を挙げています。
 第6章「こんなとき、どう対応するか」では、「いったん報道されてしまうと、放たれた矢と同じく、もはやコントロールしにくい状況になってしまう」誤報対応について、「広報担当者にとって、頭を痛める最難題の一つ」とした上で、メディア側と交渉する際に守るべき基本ルールとして、
(1)「抗議文書」ではなく「申し入れ文書」のタイトルにする
(2)「申し入れ書」を持参する場合、事前に担当記者に連絡する
(3)持参相手はメディアの部長
(4)誤報記事(放送)が出た2日以内に持参する
の4点を挙げています。
 そして、「"ささいなようで""案外重要"」な問題として、不祥事の記者会見時に、「いつ、どの状況で頭を下げるのだろうか。また、会見席に立つスポークスパーソンが座るタイミングとは?」について、「ステートメントの最初の部分で、まず、おわびのことばを表明し、全員頭を下げたあと、『では、ここで着席して説明させていただきます』と断った上で着席するようにする」と解説しています。
 また、緊急記者会見の心得として、
(1)定刻に入室、着席すること。絶対に定刻前には着席しないこと
(2)ステートメントを読み上げるときはワンテンポ、ゆっくり話すこと
(3)淡々とした口調で話す。力説したり強調したりしないこと
(4)語尾をハッキリ言う。語尾があいまいだと説得力が弱い
(5)一問一答を心掛ける
(6)わからない質問が出た場合、同席者と席上で打ち合わせしないこと
(7)会見が終了したら即座に退室する
の7点を挙げています。
 さらに、緊急記者会見でのタブー集として、「無意識でとった些細なしぐさや動作」が、"隠された一面"を表面化させることになりかねないという、「メラビアンの法則」の解説をした上で、
(1)こんな"しぐさ"はするな―――汗をふく、メガネをずり上げる、めがねをふく、手に持った筆記具を指先でいじる、組み合わせた両手の指先を動かす、ひんぱんに鼻や頭を指で触る
(2)隣の人とコソコソ話をするな―――「核心を突いた」「応答に窮している」という印象を与える上、マイクロホンにキャッチされる恐れがある。
(3)マイクを"横取り"するな
(4)座ったまま頭を下げるな
(5)服装であれこれ迷うな
の5点を挙げています。
 本書は、「危機管理」時にマイクの前に立たされる可能性がある人はもちろん、自分の上司、または将来的には自分が、記者会見の場に立たなくてはならなくなる可能性がある人すべてにとって、読んでおいて損はない一冊です。


■ 個人的な視点から

 広報的な「危機管理」の必要性を痛感させる出来事として、今日は相撲協会の大麻汚染と、「事故米」による有害物質汚染が報じられました。自分の組織に原因があって矢面に立たされる人は潔く会見に臨んでほしいと思いますが、「薩摩宝山」の西酒造はじめ、汚染された米だとは知らなかった(とされている)企業にとって、今回の事件こそ、まさに「危機管理」そのものではないかと思います。本書を読んだ上でニュースなどの会見を見ると、リアリティが増すのではないでしょうか。


■ どんな人にオススメ?

・「危機管理」なんて自分には関係ないと思う人。


■ 関連しそうな本

 石川 慶子 『マスコミ対応緊急マニュアル―広報活動のプロフェッショナル』 2006年10月26日
 尾関 謙一郎 『メディアと広報 プロが教えるホンネのマスコミ対応術』 2008年05月02日
 井之上パブリックリレーションズ (著), 井之上 喬 (編集) 『入門 パブリックリレーションズ―双方向コミュニケーションを可能にする新広報戦略』 2006年12月13日
 ポール・A. アージェンティ, ジャニス フォーマン (著), 矢野 充彦 (翻訳) 『コーポレート・コミュニケーションの時代』 2006年10月23日
 矢島 尚 『好かれる方法 戦略的PRの発想』 2006年10月25日
 猪狩 誠也 『広報・パブリックリレーションズ入門』 2007年03月29日


■ 百夜百マンガ

爆れつハンター【爆れつハンター 】

 タイトルを考えるときに「裂」の字が思い浮かばなかったのでひらがなにしておいたら、そのままタイトルになってしまったというのが潔いです。


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2008年08月27日

影響力の法則―現代組織を生き抜くバイブル

■ 書籍情報

影響力の法則―現代組織を生き抜くバイブル   【影響力の法則―現代組織を生き抜くバイブル】(#1315)

  デビッド L.ブラッドフォード, アラン R.コーエン (著), 高嶋 薫, 高嶋 成豪 (翻訳)
  価格: ¥2625 (税込)
  税務経理協会(2007/12/3)

 本書は、フラットになった組織において、権力など使わなくても人に動いてもらうことができる原理、「レシプロシティ」(互恵性)について解説したものです。
 第1章「なぜ影響力なのか――この本から得られること」では、本書で解説する影響力のモデルとして、
(1)影響力を発揮するとは、相手が価値を置くものを提供し、その代わりにこちらが得たいものを得る、つまり価値の交換である。
(2)人間関係は重要だ。周囲とよい関係を築いているほど、協力者は見つけやすい。
(3)職場で人を動かすには、準備が必要である。
(4)影響力を発揮するには、自分のためではなく仕事のために必要だから頼む、という姿勢が不可欠だ。
(5)残念だが、人を動かせないのは、本人に原因のあることが多い。
(6)どんな人にも、本人が思っているよりも、もっと人を動かす力がある。
の6つの法則を挙げています。
 また、「影響力のモデルが役に立つ」場合として、
・相手が非協力的なとき
・信頼関係ができていない相手に、負担をかける可能性があるとき
・相手との関係がよくないとき
・依頼に応えること自体が相手に大きな負担になるとき
・頼む機会が二度となさそうなとき
の5点を挙げています。
 第2章「影響力の法則――レシプロシティを活かす」では、「『レシプロシティ(互恵性)』は、ほとんどあらゆる文化に共通する社会通念のひとつである」と述べ、「一般的に、誰かのために何かをした場合、相手はこちらに対して恩を感じると考え、また同等の見返りがあると期待する」と述べています。
 そして、「さまざまな"人を動かす"状況の中で、共通する法則が働いている」として、
(1)味方になると考える
(2)目標を明確にする
(3)相手の世界を理解する
(4)カレンシーを見つける
(5)関係に配慮する
(6)目的を見失わない
の6つからなる「影響力の法則 コーエン&ブラッドフォードモデル」を解説しています。
 また、「まず自らの手で人を動かせなくなる状況」として、
(1)相手を否定的に考える
(2)目標があいまい
(3)相手の世界を理解していない――目標や懸念、ニーズは、組織の要請に左右される
(4)相手が何に動くかに気づかない
(5)相手が価値を置くものを認めない
(6)相手の求めに応じられる自分のリソースに気づいていない
(7)相手との人間関係の敬意に配慮しない・修復しない
(8)交換の仕方を決めない、働きかけない
の8つの「障壁」について解説しています。
 第3章「交換メカニズムで人は動く――何を交換するのか」では、「相手から行動を引き出す対価として提供される」リソースである「カレンシー(通貨)」について、「相手が関心を持つカレンシーと、自分が提供できるカレンシーがわかって、初めて価値の交換が成立する」として、
(1)気持ちの高揚や意欲を喚起するもの:ビジョン、卓越性、道徳的/倫理的な正しさ
(2)仕事そのものに役立つもの:新しいリソース、チャレンジ又は成長(学び)の手伝い、組織的な支援、すばやい対応、情報
(3)立場に関するもの:承認、ビジビリティ、評判、所属意識/重要性、接点
(4)人間関係に関するもの:理解、受容/一体感、私的な支援
(5)個人的なもの(その人自身に関すること):感謝、当事者意識/参画意識、自己意識、安楽さ
の5種類のカレンシーが、「様々な場面で使われている」と述べています。
 また、「否定的なカレンシー、人が否定的な価値を置くもの、避けようとするものも存在する」として、「状況によっては必要だったり、選択肢の一つにもなりうる」と述べ、
(1)建設的なカレンシーを出さない
(2)相手が嫌がるカレンシーを使う
の2点を挙げています。
 第4章「なにが人を動かすのか――相手の世界を知る」では、「相手が何に動くかわからないときにも相手との互恵的な関係を築き上げられるように、相手の世界をどう把握するか、そのプロセスに焦点を当てて解説」しています。
 そして、「影響力を損なう否定的なサイクルに陥らないためには、否定的なサイクルが起きるパターンを理解すること」だと述べ、「上司でも同僚でも、協力してくれない相手の性格が悪いと感じられるときは、それを警告だととらえ、もっと理解する必要があると自分を説得するのだ」と述べています。
 著者は、「相手の世界を理解しようと忍耐強く努力することによって、不可能とも思えた価値の交換が可能になり、相手から行動を引き出す突破口につながる」と述べています。
 第5章「使っていない力を活かす――目標、優先順位、リソース」では、「あなたには、自分で思っているよりも遥かに人を動かす力がある。あなたが使えるリソースには何があるかを把握しておけば、難しい場面でも人を動かせるようになるのだ」と述べています。
 そして、「自分にとって最も重要なことは何かを明確にする必要」があるとして、「もし、組織から自由で革新的であること」が最も重要であったら、上司とは対立するだろうと述べ、「多くの野心的な若者が、この落とし穴に落ちて上司をいらだたせている。そしてその結果、自分が思うように動けるチャンスを失い、新規の取引案件を見つけ出す時間を持てなくなっただろう」と述べています。
 また、個人的欲求の最大の問題は、「それが組織のための目標と区別できなくなることではなく、その人の影響力を高める能力を妨げてしまうこと」であると述べています。
 さらに、「相手の求めるカレンシーを把握することが、あなたのパワーの源になる」とした上で、「影響力の障壁」を自分で作ってしまう理由として、
・相手にはっきりと"貸しがある"と主張しない。
・自分が何をして欲しいかをはっきり言わない。
・相手に響くカレンシーを知っているが、使いたくない。
・相手に響くカレンシーを知っているが、相手を喜ばせたくない。
の4点を挙げています。
 第6章「人間関係を築く」では、帝国主義時代のイギリスの役人たちが、「植民地をつつがなく統治するために、女王と同じように考えることを訓練された」ことを紹介した上で、「現代は違う。協力し合わなければならない相手は、多種多様なバックグラウンドや価値観を持つため、うまくつきあうには努力が必要なのだ」と述べています。
 また、「仕事上の信頼関係を構築する際の注意点」として、
・必要に迫られるまで、相手との信頼関係作りに目を向けない。
・どのように相手に近づけばいいかわからないので、そのままにする。
・我慢しすぎて爆発する。
・自分が理解できない言動を否定的に解釈する。
などの点を挙げています。
 著者は、「目標は、相手と親友になることではない。問題のある関係であっても、仕事はやり遂げられる」が、優れた仕事の成功のためには、「人間関係を改善する努力をした方が得策なのだ。『影響力の法則』を実践すれば、改善は可能になる」と述べています。
 第7章「交換の戦略」では、時間をカレンシーとして使うときの戦略として、「タイミングは常に『すぐ』とは限らない」と述べ、
(1)すぐその場で:お返しとして、そこですぐにカレンシーを提供する。
(2)過去を活用:相手の信頼を勝ち得るために、過去の自分の努力を引き合いに出すことができる。
(3)将来に向けて:後でお返しすることを約束する。
の3つのタイミングについて解説しています。
 そして、「将来借りるか引き出すために、今あるリソースを投資するのには意味がある。こちらから頼み事をする前に、日頃から相手の要請に応えておくのだ。実際に交換する前から、将来に備えて積み上げておくというわけだ。将来への備えだといえる」と述べています。
 また、「価値を交換する場で対処すべき5つの課題」として、
(1)強く出るか、後退するか?
(2)率直に全部話すか、一部だけにするか?
(3)当初の予定通りに進めるか、その場にあわせるか?
(4)ウィン・ウィンで行くか、否定的な交換にするか?
(5)仕事中心で行くか、関係重視で行くか?
の5点を挙げています。
 さらに、「価値の交換時の5つの落とし穴」として、
・相手が気にかけていることを大切にしない
・その場の生きた証拠に触れても、過去の分析結果にしがみつく
・力がないのに、相手にしかける
・否定的な反応を恐れるあまり、自分が考え付いた方法を使わない
・この相手と再び会う可能性があるということを忘れ、自分だけひとり勝ちしようとする
の5点を挙げています。
 第8章「上司に影響を与える」では、上司を動かすためのアプローチ方法として、
(1)上司を信頼できるパートナーと考える。
(2)上司の世界をしっかりと理解する。
(3)あなたが使えるカレンシーを知る。
(4)相手が望む関わり方に注意を払う。
の4点を挙げています。
 そして、「自分の働きかけを受け付けない上司のことを、最悪でどうしようもないと決め付けている人は少なくない。彼らは、上司の性格を否定的に考え、重要な局面でさえ、上司との関わりを避けてしまう」ことを指摘させた上で、「自分が真のパートナーだと上司に理解させるのは簡単ではないが、それで一生の付き合いができる場合もある」と述べています。
 第9章「やっかいな部下を動かす」では、「部下を動かすふたつの形」として、
(1)次のステップのポジションで求められる能力要件は何か。
(2)事前に何を頼むか決める。
の2点を挙げています。
 また、「最後のアドバイス」として、「権限を振り回さないほうが、部下を動かせる。権限を使えば、一瞬は思い通りになるかもしれない。しかし、目に見えない抵抗に遭うとわかっていたら、無理な命令を下すことはない」と述べ、「部下に権限を委譲し、自分に対して影響力を発揮させることで、あなたの力は強まっていく」と解説しています。
 そして、「自分自身がパートナーとしてふるまうことを上司から求められたと想像して、自分もそうして欲しいのだと伝えよう」と述べています。
 本書は、組織において、権限以上に力を発揮することができる影響力のロジックを教えてくれる一冊です。


■ 個人的な視点から

 本書で紹介されている、「外交官のルール」というのがあるのですが、
(1)うそは言わない
(2)本当のことのすべては言わない
(3)不確かなときはトイレに行く
(出典不詳)
というのは、外交官に限らず、普段、組織の中でも活用している人がいるような気がします。


■ どんな人にオススメ?

・権力がないと人を動かせないと思う人。


■ 関連しそうな本

 ロバート・B・チャルディーニ (著), 社会行動研究会 『影響力の武器―なぜ、人は動かされるのか』 2006年02月16日
 榊 博文 『説得と影響―交渉のための社会心理学』 2006年02月23日
 フランク・ベトガー (著), 土屋 健 『私はどうして販売外交に成功したか』 2006年11月17日
 印南 一路 『ビジネス交渉と意思決定―脱"あいまいさ"の戦略思考』 2005年6月28日
 鈴木 有香 (著), 八代 京子(監修) 『交渉とミディエーション―協調的問題解決のためのコミュニケーション』 2005年09月30日
 マックス H・ベイザーマン (著), マーガレット A・ニール (著), 奥村 哲史 『マネジャーのための交渉の認知心理学―戦略的思考の処方箋』 2005年07月04日


■ 百夜百マンガ

赤ずきんチャチャ【赤ずきんチャチャ 】

 「魔法少女」といえば、女の子向けアニメの定番ですが、おもちゃが売れないとスポンサーがつかないのはいずこも同じようです。「ゲキレンジャー」でおもちゃが売れなかったので次の「ゴーオンジャー」では次から次へと新しいロボット(ちょっと違うけど)が出てきたり、「プリキュア」も作中のおもちゃの登場場面のほうがCMよりも長いほどだったりします。


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2008年08月21日

プロフェッショナル仕事の流儀あえて、困難な道を行け

■ 書籍情報

プロフェッショナル仕事の流儀あえて、困難な道を行け   【プロフェッショナル仕事の流儀あえて、困難な道を行け】(#1309)

  茂木 健一郎, NHK「プロフェッショナル」制作班
  価格: ¥1365 (税込)
  日本放送出版協会(2008/03)

 本書は、NHKの人気番組『プロフェッショナル』から、5人の出演者との対話をまとめたものです。
 第1章「環境金融コンサルタント 吉高まり」では、温室効果ガスの「排出権」を売買するビジネスについて、「経済の仕組みを使って環境問題の解決を図ろうという新しい取り組みに、今、世界が注目している」とした上で、「そのパイオニアといわれるのが、吉高まりだ」と述べています。
 そして、男女雇用機会均等法の前年に就職した吉高が、「会社に行けば、仕事というのはあるものだと思っていた」が、「何もない状況というのは、自分では受け入れられ」ず、外資系企業に転職し、ニューヨークに転勤し、環境ビジネスにであったことを語った上で、「やはり探さないと、求めて動かないと、やりたいものは見つからない」と述べています。
 また、「すごく悩んでいるときに難しいほうを選ぶ」、「答えはわかっているのに悩んでいて、結局は難しいほうを選ぶ」といわれると語っています。
 第2章「公立高校校長 荒瀬克己」では、堀川高校の学校改革が、「生徒の誰もが持っている『知りたい』という気持ちを中心に据えたものだ」と述べています。
 そして、「探求する心は、きっと子供たちの中にある」とした上で、「一つの学問研究につながるようなことを高校の間に経験できないだろうかと考えて、『探求基礎』という科目を作った」と語っています。
 さらに、「生徒や先生のやる気を引き出すキーワード」として、
・アドバイスはするが教えない。
・まっすぐに聞く、まっすぐに見る。
・すでに効果が証明されたものを取り入れる。
などのキーワードについて解説しています。
 第3章「自閉症支援 服巻智子」では、「一口に自閉症といっても、いまでは、『自閉症巣ペクトラム障害』という名前で呼ばれているように、とても多様な症状」を示すと述べ、あるオーストラリア在住の研究者が、「すべての人はいくつかのピースを持っている。もしも自閉症スペクトラムだという診断をするのに80ピース必要だとすると、多くの人は10ピースくらいは何かしら持っているだろう」という言い方をしていることを紹介しています。
 そして、服巻が、「誰かとわかり合いたい」という気持ちを自分の中に確認できるので、「誰かの『共感し合いたい』という気持ちを手助けしたい」と語り、それは、「結果的に忍耐という言葉になるのかもしれませんが、そうではなくて『ひもとく』だけ」だと解説しています。
 また、「自閉症支援を通じて、私自身の人生のためにすごく良かったのは、多様さを受け入れること、多様であっていいということを学んだこと」だと語り、「彼らが生まれてきた意味を探りたいと思ってこの仕事を選んだけれど、その子どもたちから、生きていくとはどういうことか、人として社会に存在するとはどういうことかを、教わった」と語っています。
 第4章「漫画編集者・原作者 長崎尚志」では、「企画からシナリオづくり、宣伝戦略まで、絵を描く以外の漫画制作すべてに関わる」、「絵を描かない漫画家」だとした上で、「面白いストーリーを創るキーワード」として、
(1)わかりにくいものを選ぶ:わかりにくいものをわかりやすく描いているから面白い。
(2)上下左右から見る:物語の形というのは大昔の神話や伝説に始まって、ほとんどパターンが出尽くしている。
(3)裏切りながら安心させる:「自分はこうなると思ってたのに、どうしてこうなったんだ」というのが、読者には面白い。
(4)自分が面白いと思うものをやる:漫画家なり編集者なりが面白いと信じているものをやるしかない。
の4点を挙げています。
 第5章「義肢装具士 佐喜眞保」では、「手術によって、気持ちが変わるほど大きな変化がある」として、自身が、脊椎の手術で身長が2センチ伸びただけで、「性格が変わるぐらいに幸せだった」と述べた上で、「本人の希望がかなうということが、どんなにうれしいことかわかる」として、「装具づくりでも、本人がどうありたいと願っているのかといういうのを、常に聞いて、本人の気持ちを入れながらつくって」いると語っています。
 また、子どもの頃の事故で障害を持つようになったことで、サングラスをかけるなど、「弱い自分を見せたくない」という時期があり、「本当は弱いんだけれど、弱く見せたくない」と思っていたが、「この仕事に出会って、人様が喜んでくれる、人のお役に立てるというのが実感できるようになった」と語っています。
 そして、「弱いから、弱いということがわかるから、それをカバーする努力もするし、自身を人の拓に立つ部分にぶつけたいという気持ちがある」と語っています。
 本書は、テレビで何となく見ていたのでは気づかないかもしれない、「プロフェッショナル」たちの心の機微に気づかせるきっかけを与えてくれる一冊です。


■ 個人的な視点から

 前身となった「プロジェクト×」がドラマティックなプロジェクトを追い求めたあげくに、都合の悪い部分は都合よく改変したりしてしまったために、信用を失って打ち切りの憂き目にあったのに対し、多くの雑誌や評伝が出ているように、個人の話は、それほど極端にドラマティックなプロジェクトでなくても、人生としてのドラマが人の心を揺さぶるのではないかと思います。
 個人的には、最近『20世紀少年』全22巻と『21世紀少年』上下巻を一気読みしてしまった勢いで長崎さんの話は楽しかったです。


■ どんな人にオススメ?

・プロフェッショナルの仕事をしたい人。


■ 関連しそうな本

 村山 昇 『「ピカソ」のキャリア「ゆでガエル」のキャリア』 2005年07月19日
 渡邊 奈々 『チェンジメーカー 社会起業家が世の中を変える』 2005年08月11日
 大島 謙 『高校を変えたい!―民間人校長奮戦記』 2006年02月13日
 吉田 新一郎 『校長先生という仕事』 2006年02月15日
 うしお そうじ 『手塚治虫とボク』 2007年10月06日
 斎藤 槙 『社会起業家―社会責任ビジネスの新しい潮流』 2005年06月01日


■ 百夜百マンガ

あいつとララバイ【あいつとララバイ 】

 バイク乗りの作品ですが、なぜか映画化されたときには少年隊が主役で、主人公はニッキでした。ちなみにカッちゃんは千葉の出身です。


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2008年08月20日

マッキンゼーをつくった男 マービン・バウワー

■ 書籍情報

マッキンゼーをつくった男 マービン・バウワー   【マッキンゼーをつくった男 マービン・バウワー】(#1308)

  エリザベス・イーダスハイム (著), 村井 章子 (翻訳)
  価格: ¥1,890 (税込)
  ダイヤモンド社(2007/3/2)

 本書は、「主に最高経営責任者(CEO)を対象とするトップ・マネジメント・コンサルティングという職業」を確立し、「もともと経営システムの改善・効率化などを主とするマネジメント・エンジニアリング・ファームだったマッキンゼー&カンパニーを、経営者や指導者に高度なコンサルティングを提供する組織に変えた」男、マービン・バウワーの評伝です。
 第1章「マービンの一世紀」では、「マービン・バウワーがビジネスの世界に進出したことは、世界の企業経営に計り知れない波及効果があった」として、「マービンはコンサルティングの仕組みを作り、理念を掲げ、それを職業として確立し、世界中の経営者に影響を与えた」と述べています。
 そして、マービンが、「クライアントを、そしてファームを支えるパートナーをあくまで大切にするという価値観にこだわる姿勢は度外れ」であったとして、「サービスを提供する組織というものは単に能力と経験だけでなく、構成員の行動と姿勢が問われるのだと固く信じていた」と述べています。
 第2章「ビジョン」では、マービンが、「わるいのは上下関係であり、上への服従あるいは盲従だ」と考え、「CEOが必要とする知識の多くは最前線の現場に埋もれている」ことを知ったマービンが、「CEOを助けることを任務と心得、社内の知識や情報からトップを遮断している障壁を無くすべきだとアドバイス」したと述べ、「組織や運営の事となると、助言してくれる専門会社はどこにもなかった」当時、「そうした助言を与える仕事を経営コンサルティング」と名づけたが、後から聞いた話では、「経営に関するコンサルティング」と名づけたかったそうであると述べています。
 第3章「プロフェッショナル・ファーム」では、マービンが、経営コンサルティングを、「一つの職業であり、医師や弁護士と同じく、評判を確立しクライアントを獲得するには高い職業規範が必要だと考えていた」として、「クライアントの利益を最優先し、職業倫理を護り、真の価値を提供できる仕事に専念する。また顧客に常に真実を話すことによって独立性を維持することである」という規範を掲げたと述べています。
 そして、マッキンゼーのビジョンとして、
(1)全国展開する。
(2)ファームとしてのアイデンティティを確立する。
(3)高い専門能力をもつ意欲的な人材を集めて育てる。
(4)自己満足をいましめ、常に外部要因に注意を払う。
(5)リーダーを育てる。
の5つの項目を掲げたと述べています。
 また、マービンがマッキンゼーのアイデンティティとして、
(1)プロフェッショナルとしてのリーダーシップ
(2)共通の問題解決アプローチ
(3)実行の重視
の3点を考えていたと述べています。
 そして、マービンが、「プロフェッショナルが価値を置くのは金銭ではない。金銭的利益を無視するわけにはいかないが、それを目標にしてはならない」ということを口癖にしていたことを紹介しています。
 さらに、マービンが提唱する「プロフェッショナルとしてのリーダーシップ」として、
(1)顧客の利益を最優先する。
(2)つねに耳を傾ける。
(3)事実に立脚する。
(4)行動に結びつける。
(5)各人に最善を尽くさせる。
(6)職業倫理を徹底させる。
の6項目にまとめています。
 また、「優秀な人間をひきつけるには、そこで働くことに誇りを持てるような組織文化がなければならず、また経営コンサルティングという職業が価値ある職業でなければならない」と述べていることを紹介しています。
 さらに、マービンが87歳のときの理事会で収益性改善が問題になったとき、「プロフェッショナル・ファームの人間は、どうすれば収入を増やせるかを論じるべきではないと思う。ファームのディレクターやパートナーが論じるべき唯一の議題は、どうすればクライアントによりよいサービスを提供できるか、ということだ。よりよいサービスを提供できれば収入は増える。だが収入にこだわったらクライアントを失い、結局は収入も失う」と語ったことを紹介しています。
 そして、「よきリーダーシップ」について、1955年の講演で、「リーダーであることを命令指揮することと勘違いするようなリーダーがいたら、チームワークは乱れて」しまう、として、「企業を経営するとは次の経営者を育てること」に他ならず、「次世代のリーダーを生み出す土壌を豊かにすることは、競争優位、事業規模、利益のすべての面で企業自体の成長を促すことにつながるから」と語っていることを紹介しています。
 第4章「リーダーの決断」では、マービンが唱え続けた「共通のアイデンティティの確立」について、「ワン・ファーム」というコンセプトとして、
(1)経営コンサルタントという新しい職業を定着させ尊敬を勝ち得るために、プロフェッショナルのイメージを打ち出した。
(2)主要都市に構えたオフィスに、中央から指揮命令して足並みを揃える代わりに、各オフィスに自主運営・自由裁量の余地を与え、しかも統一性を保つために、ワン・ファームのコンセプトを浸透させた。
(3)クライアントへのサービス提供に一貫性を保つために、トレーニングと同時に一定のガイドラインを定めた。
(4)マッキンゼーというブランドのイメージを確立したいと考えていた。
の4点を挙げ、マービンが服装に関してはなかなかうるさく、「各人はプロフェッショナルらしい服装をしなければならないというだけでなく、ビジネスの世界で違和感のない服装、悪目立ちしない服装をするように指導された」と述べています。
 そして、マッキンゼーが株式公開をすることになった際には、「株式公開で巨万の富を得ようとするどころか、正反対の挙に出る」として、「遠い将来を慮り、保有株をパートナーに簿価で(時価ではない)譲渡した」、「それによって、健全な財務基盤を持つ公正で独立したプロフェッショナル・ファームとして、マッキンゼーを恒久的に存続させようとした」と述べ、マービンのこの行為が、「当時のパートナーからは称賛を、次世代のパートナーからは深い尊敬を集めている」と述べています。
 著者は、「1939年にマッキンゼーを買い戻してから正式退職する92年までの長いキャリアを通じて、マービンはリーダーシップの生きた手本だった。正しい決定を下し実行することをマービンは身をもって示し続けた」と述べています。
 第5章「リーダーシップ」では、マービンが示したリーダーとしての素質について、
・誠実さ
・現実的
・高い規範
・他人の尊重
・コミュニケーション能力
・配慮と検診
の6点を挙げています。
 そして、マービンが、「企業を動かすのは人であり、したがって企業は民主的な組織であるべきで、その中では自由な競争が行われなければならない」と固く信じていたことを紹介しています。
 第6章「改革の勇気」では、クライアントとチームを組んで問題解決に取り組むときに、マービンが決まって経営者に言うこととして、「リーダーとして、何かを変える勇気を社員に与えなさい」という言葉を紹介し、「マービンは、企業のトップを相手に組織改革のコーチングを行っていた」と述べています。
 また、ハーバード・ビジネススクールの改革に取り組んださいには、ビジネススクールの卒業生がリーダーシップを発揮できているか、をフォーチュン500社のトップ25社から話を聞くことにし、このインタビューに同行したスティーブ・ウォーレックは、マービンから、「この仕事から何を学んだかな」、「君の今後のキャリアで大いに役立つことだ」と訊かれ、「フォーチュン25社のCEOとあって話ができたということ」だと答えたことを紹介しています。
 第7章「マービン・スクール」では、マービンが、「人を育てることを第一に組織を設計」し、「仕事を共にした部下やクライアントに多くの影響を与え、それがまた受け継がれていった」として、「言わば『マービン・スクール』である」と述べています。
 そして、「マービン・スクール」の卒業生の中から、
・アメリカン・エキスプレスのハーベイ・ゴルフ
・イリノイ州の福祉改革を推進したギャリー・マクドゥガル
・広告代理店オグルビー&メイザーの創始者デービッド・オグルビー
の3人を取り上げて紹介しています。
 このほかの卒業生の中では、IBM会長のルイス・ガースナーが、「ビジネスに関してマービンから教わったのは、行動規範の大切さだ。しっかりとした規範を浸透させることは、規則で縛るよりずっと効果がある。とりわけコンサルティングのようにナレッジベースの組織では、そうだ」と語っていることを紹介しています。
 著者は、本書の最後に、マービン自身の言葉として、
「企業というシステムには人を育てる働きがある。私には、このシステムをよりよいものにする義務があると感じている。自分の経験を他に人に伝えようとするのはこのためだ」
という言葉を紹介しています。
 本書は、「経営コンサルティング」そのものを生み出した人物が何よりリーダーシップそのものを体現した人物であることを伝える一冊です。


■ 個人的な視点から

 何より共感したのは、マービンの高潔な人柄です。日々仕事をする中で、ミッションに忠実にあろうとすると、現実には、上司からの薄笑いに遭って凹むこともたびたびあろうかと思いますですが、そんなときにも勇気と希望を与えてくれる一冊です。


■ どんな人にオススメ?

・職場の現実に屈せずに、高く理想を持ち続けたい人。


■ 関連しそうな本

 若松 茂美, 織山 和久, 上山 信一 『変革のマネジメント―明るい「リストラ」を考える』 2005年08月10日
 チャールズ オライリー , ジェフリー フェファー (著), 広田 里子, 有賀 裕子 (翻訳), 長谷川 喜一郎 『隠れた人材価値―高業績を続ける組織の秘密』 2005年02月03日
 エティエンヌ・ウェンガー, リチャード・マクダーモット, ウィリアム・M・スナイダー, 櫻井 祐子 (翻訳), 野中 郁次郎(解説), 野村 恭彦 (監修) 『コミュニティ・オブ・プラクティス―ナレッジ社会の新たな知識形態の実践』 2005年08月25日
 上山 信一 『だから、改革は成功する』 2005年11月2日
 モーガン マッコール (著), 金井 壽宏, リクルートワークス研究所 (翻訳) 『ハイ・フライヤー―次世代リーダーの育成法』 2005年08月09日


■ 百夜百マンガ

新 ど忘れ日本政治【新 ど忘れ日本政治 】

 政治家の漫画を描かせたら当代随一の漫画家。源さんが政治漫画になっちゃったと思っていたら、作者自身、政治漫画をメインにするようになってしまいました。


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2008年08月18日

プロ法律家のクレーマー対応術

■ 書籍情報

プロ法律家のクレーマー対応術   【プロ法律家のクレーマー対応術】(#1306)

  横山 雅文
  価格: ¥756 (税込)
  PHP研究所(2008/5/16)

 本書は、「苦情・クレームに名を借りて、執拗に不当な要求や嫌がらせを繰り返す人々」である「悪質クレーマー」を、いくつかのタイプに分類して、「それぞれのタイプの特質を指摘すると同時に、その特質に即して対処のポイントの解説」を行っているものです。
 第1章「悪質クレーマーに潰される!」では、悪質クレーマー増加の背景として、
(1)消費者保護関連法の施行による権利意識の高揚
(2)度重なる企業不祥事とそれに対する一般社会の激烈な反応
(3)インターネットの普及によって一般人でも企業・行政に対する攻撃が可能となったこと
の3点を挙げています。
 そして、「従業員の精神的健康のため、また善良な顧客に対するサービスの質を落とさないために、顧客と悪質クレーマーとは峻別して対応すべき」だと述べています。
 第2章「顧客? それとも悪質クレーマー?」では、「顧客として扱うか、悪質クレーマーとして対応するかの判断」のポイントとして、
(1)クレームの原因に法的根拠はあるか
(2)損害は発生しているのか
(3)クレームの原因と損害に因果関係はあるか
(4)損害と要求の関連性はあるか
(5)クレーマーの行為は適法か
の5点を挙げています。
 第3章「悪質クレーマーの4タイプと対応の基本」では、悪質クレーマーのタイプを、
(1)性格的問題クレーマー:自己保身には敏感
(2)精神的問題クレーマー:突発的な加害行為に要注意
(3)常習的悪質クレーマー:具体的な事実を根掘り葉掘り聞く
(4)反社会的悪質クレーマー:決して秘密を共有しない
の4つのタイプに分け、それぞれについて「対応の基本」を示しています。
 第5章「悪質クレーマーの術中にはまるな」では、企業の担当者の悪質クレーム対応が、「悪質クレーマーの術中にはまっている」と見られるケースについて、「企業側に、クレーマーの要求が不当要求か否かを判断する手順が確立されておらず、不用意な行為をしてしまうことによって、悪質クレーマーのペースに乗せられていくことが原因」だと述べています。
 また、「製品の欠陥による回収・交換の新聞広告が出ると、必ず、架空の被害を申告して金銭を得ようとする悪質クレーマーが出てくる」と述べています。
 第6章「クレーマーに言質・念書を取られるな」では、「クレーマーに念書を取られる要因のほとんどは、迫力負けによる混乱と長時間の拘束、いわゆる軟禁状態」であるとした上で、これを避けるコツとして、「自分には決裁権はないが、事実調査については自分が責任者である」ということを常に念頭において、事実関係の確認に集中することだと述べています。
 また、「裁判官は書面重視」であり、「特に書いたほうが不利になる内容の書面」、本章で紹介されている事例のような「賠償約束の念書などがあるのであれば、それは、ほとんど決定的」だとして、「裁判は、常に事後的判断」であると述べています。
 第7章「悪質クレーマーの犯罪行為」では、「悪質クレーマーの迷惑行為が犯罪を構成する場合を具体的事例を挙げて説明」しています。
 そして、「苦情の受付担当者の使命は、事実の確認に尽き」ると述べたうえで、「悪質クレーマーと判断するには、クレーマーの要求を明確にすること」だと述べています。
 第8章「企業不祥事が起こったときのクレーム対応」では、企業不祥事発生時に、直接の原因以外にクレームがふえる原因として、
(1)不信感による消費者の被害意識の拡大
(2)常日頃の製品・サービスに対する不満
(3)一般消費者からのご意見的なクレーム
(4)同業他社の不祥事の影響によるクレーム
(5)不祥事企業に対する嫌がらせ・いたずら
(6)弱みにつけ込んだ架空請求・過剰請求などの不当要求
の6点を挙げています。
 第9章「悪質クレーマー対応の7つの鉄則」では、「悪質クレーム対応の7つの鉄則」として、
(1)まずお詫びから:謝罪の言葉と、過失や法的責任の有無とはまったく別の問題
(2)事実の確認を潜行させる:損害額の査定など、責任を前提とした行為は、事実確認が確定するまでしてはならない
(3)感情的な対応は厳禁:人間は、その対象を分析する姿勢に立つことで、その対象が原因で感情的になることを回避することができる
(4)堂々巡りになったときが最初のポイント
(5)文書による最終回答・交渉窓口を弁護士に移管する通知を送る
(6)加害行為には素早い仮処分と刑事告訴で対応
(7)悪質クレーム事例を記録して対応の指針とする
の7点を挙げています。
 第10章「今後の課題」では、「弁護士費用は悪質クレーマーのもたらす損失よりはるかに安い」ことを解説しています。
 本書は、クレーマーの矢面に立たされている人はもちろん、潜在的なクレームのリスクを抱える多くの人にとって読んで損はない一冊です。


■ 個人的な視点から

 本書は、弁護士が登場しないと収まらないような「病状」の重たいケースを中心に取り上げているので、日々のクレーム処理をどううまく対応するか、というニーズには直接的には対応していません。
 しかし、1万件に1件でも、致命的なクレーム処理のミスがあったときのことを考えると、悪質クレーマーへの対処方法は身につけておいて損はないのではないでしょうか。


■ どんな人にオススメ?

・悪質クレーマーに怯えている人。


■ 関連しそうな本

 吉野 秀 『お客さま!そういう理屈は通りません』
 関根 眞一 『となりのクレーマー―「苦情を言う人」との交渉術』
 川田 茂雄 『社長をだせ!―実録クレームとの死闘』
 吉野 秀 『クレーマー・シンドローム―「いちゃもん化社会」を生き抜く交渉術』
 援川 聡 『超プロがついに明かすクレーマーの急所はここだ!―どんな問題もすべて解決』
 森山 満 『企業のためのクレーム処理と悪質クレーマーへの対応 改訂版』


■ 百夜百マンガ

軽井沢シンドローム【軽井沢シンドローム 】

 リアルタイムで経験する世代ではなかったのですが、この作品に刺激されてカメラを手にした人は少なくないのではないかと思います。


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2008年08月14日

情報大爆発―コミュニケーション・デザインはどう変わるか

■ 書籍情報

情報大爆発―コミュニケーション・デザインはどう変わるか   【情報大爆発―コミュニケーション・デザインはどう変わるか】(#1302)

  秋山 隆平
  価格: ¥1890 (税込)
  宣伝会議(2007/10/15)

 本書は、インターネットの出現によって、「ネットワークの形が変わることによって、情報の流れが変わり、情報の流れが変わることによって、影響力の流れが変わ」り、「影響力の流れの変化」が「われわれの社会や経済、生活を大きく」変えるなか、「一体、われわれはどこへ行こうとしているのか」を論じたものです。
 第1章「何が起きているのか」では、1999年ころから、「われわれの社会に出回る応報が、指数関数的に増え始め」、中でも、「パーソナルメディアによる『選択可能情報量』」は、この10年間で、「なんと1万1千倍に増加」したと述べています。著者はこのことを、「情報化時代」が終わり、「情報過剰時代」が始まっていると述べています。
 そして、ハーバート・サイモンが、
「情報過剰時代には、アテンションが希少になり、それを消費する膨大な情報源に対して、アテンションを効率的に割り当てる必要が生じる」
と語っていることを紹介しています。
 第2章「アテンション・エコノミー」では、これまでのマスメディアのバリューチェーンでは、印刷工場や、新聞の宅配ネットワーク、電波資源がボトルネックとなっていたが、「制作・物流面のボトルネックが解消されることによって、UGC(ユーザー・ジェネレイテッド・コンテンツ)と呼ばれる、消費者発信情報が激増」し、「バリューチェーンの末尾に、新たなボトルネック、『アテンション』が出現した」と述べています。
 また、メディアのロングテールかに関して、「ロングテールが成り立つ」条件として、
・アイテムが「べき分布」している。
・「限界費用」「機会損失」が無視できるほど小さい。
・「検索エンジン」や「リコメンド機能」が発達していて、アイテムが簡単に見つけ出せる。
の3点を挙げています。
 第3章「過剰の経済学」では、「Abundance」という言葉に、「需要を超えて供給が満ち溢れていることを表すために『過剰』という言葉を当てて」います。
 また、2003年11月にブリニョルフソン、スミス、フーの3人が、「デジタル経済における消費者余剰」という論文で、「オンライン書店によってもたらされた選択肢増加の効果は、書店間競争の激化や、市場価格の下落による効果よりも、7倍から10倍大きい」と述べていることを紹介しています。
 第4章「ネットワークの歴史」では、「多対多のネットワーク」である「メッシュ型ネットワーク」が、その中に「1対1のネットワーク」も「1対多のネットワーク」もつくれることを述べています。
 また、「インターネットの父」と呼ばれるJ.C.リックライダーが、構想したコンピュータネットワークは、「現在のインターネットのようなものではなく、タイム・シェアリングしたホスト・コンピュータを次々につなげていったものだった」と述べています。
 そして、ソヴィエトとの「第二撃能力」競争の中で、「スター型」や「ツリー型」のナットワークではなく、いくつかの拠点が壊滅しても、「サバイバビリティ」が高い「メッシュ型」ネットワークが選択されたと解説しています。
 第5章「産業革命のパラダイム」では、「インターネットがもたらしたものは、末端からの情報配信コストの驚異的な低下と、スピードの加速」であるとした上で、産業革命では、「情報や資源の『セントラリゼーション(中心化)』」がみられたが、情報革命では、「情報や資源の『デ・セントラリゼーション(脱・中心化)』が顕著に」見られると述べています。
 第6章「ネットワーク・ダイナミクス」では、「マス社会の終焉」といわれるが、そのイメージは、「マス(升)に入った、節分の豆」が「ばらばらになった状態」ではなく、「ネットが浸透」して、「ネットリ」と「糸を引いている」納豆に近い状態であると述べています。
 そして、インターネットの特性として、ワッツとストロガッツが提唱した「スモールワールド・ネットワーク性」を挙げ、人間社会も、「仲間を越えたショートカットをいくつか設けることで、情報は、比較的少ステップで全体に行きわたる」と述べ、その特性として、「L: characteristic path length」が小さい割には、「C: clustering coefficient」が大きいという特性を持っていると解説しています。
 また、インターネットのもう一つの特性として、バラバシが発表した、「一部のノードが膨大なリンクを持つのに対し、ほとんどのノードがごくわずかなリンクしか持たないネットワーク」である「スケールフリー・ネットワーク性」を挙げています。
 さらに、消費者を、「商品関与度」と「情報発信力」により、
・インフルエンサー(影響者):情報発信力高、商品関与度高
・スプレッダー(伝播者):情報発信力高、商品関与度低
・シーカー(求道者):情報発信力低、商品関与度高
・オーディエンス(聴衆):情報発信力低、商品関与度
の4つのタイプに分類しています。
 第7章「発信―共振―増幅」では、『電車男』のヒットを例に、「2ちゃんねる→出版→映画→テレビ番組」というヒットの図式を、「雪だるま式(スノーボール・エフェクト)流行」と解説し、「ある日、山頂にできた小さな雪の玉が、ころころと転がっていくうちに、どんどん大きくなって、最後は巨大な雪の塊になる」というタイプのヒットの作られ方であると述べ、これまでの「ブロックバスター方式」のメガヒットの事例と対比した上で、前者が「ボトムアップ」プロセスを強化し、加速するものであるのに対し、後者は、トップダウンからはじめていくと解説しています。
 その上で、今流行の「きめの細かい消費者セグメントと、それに合わせた、ターゲティング広告」にもかかわらず、「それぞれ、別の方向を向いていた消費者が、超伝導のように同じ方向」を向いた「韓流ブーム」について、「これこそが最も効率がよく、かつ効果的なプロモーション手法」だとして、「マイクロ・ターゲティングといわれるような、あまりにも微細な手法を追い求めすぎると、広告が本来持っていた、ダイナミズムが失われてしまう」と述べています。
 第8章「情報過剰時代の消費行動」では、1920年代に作られた「AIDMAの法則」を取り上げた上で、「アクティブ・コンシューマーの際立った行動特性」である、「サーチ(情報検索)とシェア(情報共有)」を組み込んだ、
・Atention:注目
・Interest:興味
・Search:検索
・Action:行動
・Share:情報共有
の5点からなる、「AISAS(アイサス)モデル」を提唱しています。
 そして、このモデルの特徴として、
(1)インタラクティブ・モデル:企業と消費者が、互いにアクティブに関与しあっている。
(2)消費行動は購買で終わらない:消費行動の経験を共有しあうところまでを、消費行動プロセスの視野に入れている。
の2点を挙げています。
 第9章「クロスメディアをどう考えるか」では、飽和状態になった消費者を、飽和食塩水にたとえ、「新たに入れる塩をコップの水に溶け込ませる工夫が、大切になってくる」として、
(1)アテンション・マーケティング→受容性を高める
(2)ペネトレーション・マーケティング→浸透性を高める
の2つが必要になると述べています。
 また、イギリスのコミュニケーション・コンサルティング会社である「naked(ネイキッド)」による「消費者を囲むコミュニケーション・レイヤー」について、
・Viral/Personal(クチコミ)
・Experiential(経験メディア)
・Two-Way Communication(双方向コミュニケーション)
・One-Way Advertising(一方向的な広告)
の4段階を解説した上で、「いかにして注目を惹くか」という「アテンション・マーケティング」のキーワードが「キャッチ」であるのに対し、「いかに浸透させるか」という「ペネトレーション・マーケティング」のキーワードは「マッチ」であると解説しています。
 第9章「クロスメディアをどう考えるか」では、「アメリカ人は、二言目には多様な選択肢が必要だ」というが、「選択肢が多いことがそんなのいいことか」と多様性に疑問を呈しています。
 そして、「IT系の人が広告を語ると、ダイレクトメールのデリバリーシステムをいかに効率よくするか、という発想」になってしまうが、「広告は単純にメッセージ・デリバリーをやっているわけ」ではなく、「購入者以外に届けられた広告は、ムダ打ちではなくて、商品価値の『評価社会』をつくっている」と解説しています。
 また、「真のバズ・マーケティング」は、「消費者のクチコミをコントロールすることではなく、消費者のクチコミに耳を傾けて、それを商品やサービスの開発・改良に生かすこと」だと解説しています。
 第10章「アテンション・プログラム」では、「これでもかという、圧倒的な広告の集中投下」という言葉を、「最近あまり耳にしませんが、子々孫々まで伝えたい『美しい日本語』」だと語っています。
 また、ハードディスク・ビデオレコーダーを使った「CF飛ばし」について、「番組をハードディスクに溜めて、広告だけスキップをして見るような行為は、避妊具をつけて子づくりに励むような、神をも恐れぬ行為ですから、良い子の皆さんは、厳に慎んでください」と訴えています。
 第12章「さて、これから」では、「われわれの社会が求めているもの」が、「人類が迎えつつある、数多くの困難な課題を解決するための『集中処理と分散処理の最適な組み合わせ』」であるとして、「この2つが調和した、新しい情報処理システム、コミュニケーション・システムが、創発されてくることを願ってやみません」と述べています。
 本書は、めまぐるしく変化するネットワーク社会と広告のあり方をわかりやすく解説した一冊です。


■ 個人的な視点から

 本書は、著者曰く、「プレゼンテーション・ブック」という、著者があちこちで講演やプレゼンテーションをしてきた1000枚近いスライドをベースに、擬似的にプレゼンをしているかのように解説しているものです。
 その時々の関心に沿ってさまざまなテーマを取り上げているのですが、全体として少々統一感に欠けることが若干残念なところではないかと思います。


■ どんな人にオススメ?

・情報がこんなに多くてどうするんだ、と思う人。


■ 関連しそうな本

 アルバート・ラズロ・バラバシ (著), 青木 薫 (翻訳) 『新ネットワーク思考―世界のしくみを読み解く』 2005年10月24日
 ダンカン ワッツ (著), 辻 竜平, 友知 政樹 (翻訳) 『スモールワールド・ネットワーク―世界を知るための新科学的思考法』 2005年09月28日
 スティーヴン・ストロガッツ (著), 蔵本由紀, 長尾力 (翻訳) 『SYNC』 2006年04月10日
 増田 直紀, 今野 紀雄 『「複雑ネットワーク」とは何か―複雑な関係を読み解く新しいアプローチ』 2006年04月18日
 ウィリアム パウンドストーン 『囚人のジレンマ―フォン・ノイマンとゲームの理論』 2006年09月11日
 安田 雪 『ネットワーク分析―何が行為を決定するか』 2005年10月13日


■ 百夜百マンガ

ホムンクルス【ホムンクルス 】

 頭蓋骨に穴を開ける「トレパネーション」という古くからの民間療法があるそうですが、その効果そのものはともかくとして、瀉血とかトレパレーションとかの民間療法に対する憧れが、「WRYYYYYYYYYYY!」とかの吸血鬼の誕生に結びつかないことを祈りたいと思います。


投稿者 tozaki : 22:00 | コメント (0) | トラックバック

2008年08月06日

ミュージアム・マーケティング

■ 書籍情報

ミュージアム・マーケティング   【ミュージアム・マーケティング】(#1294)

  フィリップ コトラー, ニール コトラー (著), 井関 利明, 石田 和晴 (翻訳)
  価格: ¥3675 (税込)
  第一法規(2006/04)

 本書は、「ミュージアムの資源、使命、機会、課題を検討するための概念的・方法論的フレームワークを、ニュージアムに関連する人々に提供するもの」です。
 著者は、ニュージアムを、「類のない独特の提供物、すなわち豊かで、感覚的で、多面的な『経験』を真正で形ある物品を使い、学術的でかつ充実した情報と解釈を加えながら提供する場」であると述べています。
 第1章「ニュージアムの多様な世界」では、ニュージアムが、「他では得られない特別な経験、とりわけ希少で真正な物品に出会う悦び、美しく興味深い品々に遭遇することによる知覚的経験、コレクションや展示の背後にある研究や学問から得られる知識を提供する」ものであると述べた上で、「ニュージアム同士もさまざまな点で異なる」としています。
 第2章「ミュージアムの戦略的課題」では、ニュージアムが直面するであろう課題として、
(1)独自の魅力的な使命を策定し、その使命と外部からの期待・需要とを両立させる現実的な解決策を見つけること。
(2)利用者と地域社会からの強固な支援を確保すること。
(3)ミュージアムが長期的に運営できるように十分な資金と積立金を確保すること。
の3点を挙げています。
 そして、ミュージアムの重要な目的である、「利用者を獲得し、拡大し、そして維持すること」を達成するための行動を、
(1)ミュージアムの注目度、認知度、魅力を高め、ミュージアムに来館したことがない多くの人々に来館したいと思わせる。
(2)継続的な来館者または会員になってもらえるような魅力的な提供物と満足できる経験を企画・提供することにより、何度も来館する気にさせる。
(3)多くの人々の自由時間の大部分を占めるレジャー活動を提供している多組織と対等に競争する。
の3点に集約しています。
 第3章「戦略的プランニングに着手し始めたミュージアム」では、ミュージアムが、「戦略的マーケット・プランニング・プロセス」(SMPP)を採用することで、「その使命、提供物、対象市場を定義し、そして計画を立案・実施することができる」と述べています。
 そして、SMPPの最初の要素である「戦略的マーケット・プランニング・システム」の開発が、
(1)マーケティング計画を実施する環境分析
(2)内部資源分析
(3)使命、目的、目標の策定
(4)戦略策定
の4ステップに分けられると述べています。
 また、ミュージアムには、「4つのタイプの競争圧力と競争相手が存在する」として、
(1)欲望競争相手:潜在的利用者が抱いているさまざまな一般的欲求や嗜好(例:旅行、読書、テレビの視聴)
(2)一般的競争相手:潜在的利用者の特定のニーズや欲求を満たすさまざまな方法(例:何かを学習するためにミュージアムにいくのではなく、講演を聴く)
(3)サービス形態競争相手:選択した特定レジャー活動の目的を満たすさまざまな代替サービス(例:ミュージアムの美術コレクションをミュージアムに足を運んでみるのではなく、インターネットで鑑賞する)
(4)事業競争相手:潜在顧客ニーズを満たすことができるさまざまなタイプの組織(例:近隣の小規模美術館に行くのではなく、市中心部の大規模美術館に行く、または娯楽としてテーマパークやショッピング・センターに出かける)
の4点を挙げています。
 著者は、戦略的マーケット・プランニング・プロセスをミュージアムが策定した使命、提供するプログラム・プロダクト・サービス、訴求しようとする利用者セグメントの範囲を定義・計画・管理するためのフレームワーク」であるとした上で、
(1)環境要因、組織の強みと弱み、使命、目的、目標を分析する計画システムを策定し、戦略を決定する。
(2)選択した戦略に適応する組織設計を行なう。
(3)計画の実施と成果を観察するシステム(すなわちマーケティング情報システム・計画システム・管理システムを構築する)。
の3段階で構成されると述べています。
 第4章「ミュージアムの利用者を理解する」では、ミュージアム利用者大半に認められる最も際立った特徴として、「その学歴の高さであり、次に所得が高いこと」を挙げた上で、「ミュージアムの種類によって、その利用者の学歴は異なる」としています。
 また、「個人や集団は、さまざまなプロダクト、サービス、活動の中から選択を行う際に、一定のはっきりしたプロセスに従う場合が多く、マーケティング専門家は、顧客がどのように意思決定を行うかを示すいくつかのモデルを開発している」として、
(1)ニーズ喚起:利用者がある種のレクリエーション活動への関心を最初にどのように抱くか、そして意思決定の背後にあるニーズと欲求は何かを理解する必要がある。
(2)情報収集:利用者の経験レベルが上がり、特定タイプの取引に関わる知識が増えると、意思決定は単純で機械的なものになる。
(3)決定の評価:利用者は、自分が求めている要素を特定し、次にどの活動が求める要素を最も高いレベルで提供できるかを判断する。
(4)決定実行:選択肢の優先順位を確定すると通常は最も好ましい選択肢を選ぶが、他の人の意見、予想された事態または予想外の事態の発生、知覚リスク、の3つの要因により、最終意思決定に繋がらないことがある。
(5)決定後の評価と行為:利用者の満足には、「期待―成果理論」と「認知的不協和理論」の2つの主要な理論がある。
という5つの段階があると解説しています。
 著者は、ミュージアム・マネジャーがミュージアム利用者を理解するためには、「なぜ多くの人はまったく来館しないのか、なぜ人々はたまにしか来館しないのか、そしてなぜよく来館する人がいるのか、を知ることが重要である」と述べています。
 第5章「市場細分化、ターゲティング、ポジショニングの実施」では、「組織は、すべての人に訴求しようとするのではなく、その組織利用者として最も自然である人々を特定し、その人々に訴求してサービスを提供するために努力しなければならない」と述べ、「ミュージアムがそのミュージアム提供物に関心のある利用者や潜在的利用者をどのように特定するか、そしてそうした人々に訴求してサービスを提供するのに有効なマーケティング計画をどのように策定するか」を解説しています。
 そして、「すべての利用者を同じように扱う」ことは、「市場多様性を無視する結果」になり、逆に「各利用者を個別に扱うのは、ほとんどの場合には費用がかかりすぎて非現実的である」として、「現実的な解は、この両極端の間に存在する」と述べたうえで、ミュージアムが、
(1)マス・マーケティング
(2)市場細分化マーケティング
(3)ニッチ・マーケティング
(4)セグメント・オブ・ワン・マーケティング(個別セグメント・マーケティング)
の4つのレベルで市場にアプローチできると述べています。
 また、「市場を細分化する方法は数多く存在する」が、セグメントは、
(1)測定可能:特定したセグメントの大きさを推定できる必要がある。
(2)規模:ミュージアムが獲得する価値のある十分な大きさでなければならない。
(3)訴求可能:選択したセグメントを構成する個人に対し、効率的に情報を伝えられなければならない。
の「3つの特徴を示す場合にもっとも利用価値が高い」と述べています。
 第6章「マーケティング調査と情報収集ツールの利用」では、「歴史的にミュージアム・マネジャーは、コレクション、施設、資金、スタッフを管理することが中心であり、もう一つの重要資源である『情報』にはあまり関心を払っていなかった」が、「近年では、高度調査技法と情報技術の出現により、情報の収集・分析が革命的に進化し、最も小規模なミュージアムでも利用できるようになっている」と述べています。
 著者は、マーケティング調査を、「組織の利用者、組織に影響を与える環境要因