2008年05月14日

超人気ワークライフバランスコンサルタントが教える キャリアも恋も手に入れる、あなたが輝く働き方

■ 書籍情報

超人気ワークライフバランスコンサルタントが教える キャリアも恋も手に入れる、あなたが輝く働き方   【超人気ワークライフバランスコンサルタントが教える キャリアも恋も手に入れる、あなたが輝く働き方】(#1210)

  小室 淑恵
  価格: ¥1365 (税込)
  ダイヤモンド社(2008/3/14)

 本書は、「ワーク・ライフバランス」の伝道師として、コンサルティングや講演に全国を飛び回っている著者が語った、「ワーク・ライフバランス的キャリア指南書」です。同じ著者のこれまでの著書と比較すると、『新しい人事戦略 ワークライフバランス』がコンサルタントとしてのメインの顧客である企業の人事担当者を主なターゲットにしていたものであり、『結果を出して定時に帰る時間術』が入社3~5年目くらいの会社員の女性を主なターゲットとしていたのに対し、より「人生」にシフトしているというか、「長い目で見た仕事生活のパターン」としての「キャリア」をどう組み立てていくか、という視点から書かれています。その意味では、本書のメインターゲットは、20代後半から30代前半、結婚や出産を前にして、自分の「人生」と「キャリア」をどうバランスさせていくかに悩む高学歴女性がメインのターゲットといえるでしょうか。そうなると、「ワーク・ライフバランス」というよりも、「キャリア・人生バランス」という感じなのかもしれません。本の装丁も表紙の著者の写真も、ちょっとフェミニンさと「仕事できる感」を強調した印象を受けますし、本文も、これまで以上に自らの生い立ちを語っている部分がある一方で、内容的にはきちんとビジネス書としての格調を持っています。
 「プロローグ」では、「ワーク・ライフバランス」という考え方を、「ライフ(プライベート)を充実させることでワーク(仕事)の効率や成果がアップし、そのことでまたライフ(プライベート)が潤っていく好循環を生み出す」と解説し、著者がここにたどり着くまでの、
(1)大学3年生のときに聴いた猪口邦子教授の講演
(2)自分を変えるための1年間のアメリカ生活
(3)大手化粧品会社でのビジネスモデルコンテスト優勝
(4)コンサルティング会社の起業
の4つのステップを語っています。
 第1章「『仕事』と『プライベート』がうまくいかないのはなぜ?」では、「人生がなかなかうまくいかない」原因として、
(1)仕事で頑張るには、何かを犠牲にしなければならない
(2)弱みを見せず男性と同じように働くことが、あとに続く女性たちのためになる
(3)子どもの都合でフルに働けないのは、会社に申しわけない
(4)女性には、いろいろ人生の選択肢がある
(5)いったん専業主婦になると、働くのはパートしかない
(6)仕事のコツを上司や先輩から教わるために、長い時間行動をともにしたほうがいい
(7)女性は短距離型、男性は長距離型
(8)若手がすぐ辞めるのは、本人に問題があるからだ
の8つの「誤解」を挙げたうえで、「実は学生時代まで、私自身がどっぷり信じていました」と、「"筋金入り"の専業主婦志望」であったことを語っています。
 第2章「私はこうして、キャリアも恋も手に入れました」では、学生時代の著者が、「女性としての幸せをつかむには、仕事なんかしちゃいけない。両立はできないんだ」と思い込み、「負け戦にわざわざ出て行って、完全に負けたりしたらつらいな」と考えていた著者が、大学の授業で聞いた、猪口邦子上智大学教授(当時)の講演をきっかけに、「自分は変わらないといけない」と考えるようになり、1年間休学してアメリカ行きを決めたことを語っています。
 そして、アメリカでは、ベビーシッターの経験から、育児休業中にキャリアアップしている女性と出会い、「日本も働いて子育てができる国にしたい」というテーマを見つけるとともに、当時日本ではまだまだ高額だったインターネットと出会っています。著者は、このアメリカ時代の経験から、「新しい環境でしかできない『新たに得られるもの』に意識が向き出すと、新しい環境を前向きに、ポジティブに楽しめるようになっていく」と述べています。
 また、大手化粧品会社に入社し、営業の仕事を経験する中で、「お店のお手伝い」に時間を割かれる「丁稚サービス」営業からの脱却を図るために、「グチと文句ばかり言っているようにしか聞こえないことも、相手が無意識のうちに発している相談なんだ」と気づいたことから、「お店のイタリアンレストラン化計画」など売上げ向上の提案書をまとめる営業スタイルを身に付けた経験を語っています。
 その後、入社2年目の社内ビジネスモデルコンテストでは、「社のビジネス領域を超えた斬新な」新規事業プランで優勝し、「育児休業者の職場復帰支援」プログラムは「次世代育成法」という追い風を受けて社外にも売れ始めますが、導入企業から、
・男性の育児休業者が使いにくい
・年配男性の介護休業に対応できないか
・メンタルでの休業者に対応できないか
などの不満の声を受け、「個人がいろいろな事情を抱えていても、働き続けられる職場づくりを支援するビジネス」の需要に気づき、起業を決意したことを語っています。
 さらに、社長業と生活の両立に関しては、夫婦で交代で子どもの面倒をみる生活が、「子どもにとって理想的な家庭ではないのではないか」と考え、「家族のワーク・ライフバランス」、すなわち、「平日も夫婦がともに仕事の時間をやりくりして、家族で一緒に過ごす時間をきちんと確保すること」が欠かせないと語り、「個人のワーク・ライフバランス」だけではなく、「家族の絆が深まるようなワーク・ライフバランス」の重要性を訴えています。
 第3章「ワーク・ライフバランスのための小室流仕事術」では、「20代に毎日『残業』という切り札を使って成果を出していた人は、育児や介護などでその切り札を使えなくなる」として、「時間制約のない20代こそ、短時間で成果を出す方法にチャレンジする」べきだと述べています。
 また、ワーク・ライフバランスは、「さりげなく、でも堂々と情報発信し、周りの理解を得、さらには巻き込んでいくことが重要」だと述べています。
 第4章「信頼できるパートナーの見分け方、つきあい方」では、「ワーク・ライフバランスを実践し、少しずつプライベートの時間ができれば、会社の外でいろいろな出会いを増やせる」と述べています。
 そして、「パートナーを見分ける"目印"」として、「女性のまじめな話を最後まできちんと聞く人かどうか」を挙げています。
 また、日常生活の中でのワーク・ライフバランスにとって欠かせない、夫の家事については、「夫を部下にしない」ために、「ぐっと我慢して、ほめながら相手が自分で気がつく」のを待つことや、「8割ほめて、2割付け足す」という「もったいない理論」を紹介しています。
 第5章「ワーク・ライフバランスが日本を救う」では、第1章で挙げた8つの「誤解」が生まれた背景について解説しています。
 また、「高い付加価値を提供しなくてはモノやサービスが売れない時代には、思い切りライフの時間を持っている人のほうが、アイデアに満ち溢れて高い成果を短時間であげている」と述べています。
 さらに、「国がワーク・ライフバランスを言いはじめた理由」について、「このままでは年金や医療などの社会保障制度を根本から見直さざるを」得ないことを挙げ、その対策として、
(1)子どもを増やすこと
(2)女性の社会進出
の2つがあることを解説しています。
 著者は、「これからの日本に必要なこと」として、「お互いの多様性を認め合うこと」を挙げ、「そのためには、ひとりひとりが多様な経験をする」必要があると述べています。
 本書は、主に女性のキャリアを問題に取り上げていますが、男性にとってもキャリアと人生を考える上で大きな示唆を与えてくれる一冊です。


■ 個人的な視点から

 よくよく見ると、タイトルで「超人気」って自分で書いちゃうのはいかがなものかと思ってしまうのですが、現実に「超」が付いてまったく恥ずかしくないくらい「人気」となっています。そして、周囲を含めたそのテンションの高さが、本書の勢いになっているのではないかと思います。


■ どんな人にオススメ?

・キャリアと人生のどちらも諦めたくない人。


■ 関連しそうな本

 小室 淑恵 『新しい人事戦略 ワークライフバランス―考え方と導入法―』 2007年08月22日
 小室 淑恵 『結果を出して定時に帰る時間術』 2008年02月20日
 金井 壽宏 『働くひとのためのキャリア・デザイン』 2005年01月30日
 山田 正人 『経産省の山田課長補佐、ただいま育休中』 2006年10月10日
 佐々木 常夫 『ビッグツリー 私は仕事も家族も決してあきらめない』 2006年10月31日
 大沢 真知子 『ワークライフバランス社会へ―個人が主役の働き方』 2006年07月24日


■ 百夜百マンガ

スローステップ【スローステップ 】

 少女マンガの雰囲気を少年/青年漫画に持ってきて成功した人の作品を、少女漫画に持って帰ったらどうなるか、という意味で興味深い作品です。読むのはやっぱり男の人が多いのかもしれませんが。

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2008年04月10日

働くパパのための「幸福な家族」のつくり方

■ 書籍情報

働くパパのための「幸福な家族」のつくり方   【働くパパのための「幸福な家族」のつくり方】(#1176)

  あいはらひろゆき, 読売広告社ネオパパ研究プロジェクト
  価格: ¥1365 (税込)
  日経BP社(2007/2/15)

 本書は、「かつては『やり手ビジネスマン』としてあこがれの存在でもあった、家庭を顧みない仕事人間たち」が、「いまやすっかり時代遅れと見なされ」、「家族があこがれの対象になっている」時代に、若い父親予備軍からの多くの支持を集める「新しい父親のスタイル」を提案しているものです。
 第1章「『幸福な家族』のつくり方」では、父親たちのとっての最大のテーマとして、「仕事と家庭の両立」を挙げ、「日本ではワークライフ・バランスと言えば、働く女性の育児問題だという認識が特に強い」が、「これは実は、父親にとっても重要な問題」だと指摘し、労働問題の先進地域である北欧諸国の施策として、ノルウェーの「パパ・クオータ制」やスウェーデンの「サバティカル休暇制度」、フィンランドの「ジョブローテーション制度」などの父親も対象にした長期休暇制度を紹介しています。
 そして、ワークライフ・バランスの実践のための提案として、「わがまま社員」になる勇気を持ってほしいと述べ、「わがまま」な仕事の仕方で生きていくためには、
・仕事の実力をつけること
・スケジュールや内容以外のことでわがままは言わないこと
等を挙げ、「仕事に対して、いい意味でわがままになることは、仕事の質や能力を高めることに通じる」と述べています。
 また、「仕事と家族の狭間で動きが取れなくなる」時には、「いま、本当に重要なのはどっちだ?」と自問する「プライオリティ・シンキング(優先順位発想)」を徹底すると述べています。そして、「会社と違って、家族はぼくらのがんばりに、ちゃんと理解を示してくれ」、「ぼくらのがんばりに必ず応えて」くれると述べ、「だからこそ、綱渡りのようなハードな生活でも、何とか頑張っていける」と述べています。
 著者は、「幸福な家族」を、「総合的人間力に満ちたメンバーが円滑なコミュニケーションを行なう家庭」であると述べ、「かつて、会社と社員が、そしてその家族が密接に繋がっていた時代には、家族のブランドシンボルは父親」だったが、「ぼくらにとっての『幸福な家族』づくりとは、オンリーワンの家族ブランドをつくること」であると述べています。
 第2章「いまどきの父親たち(ネオパパ vs オールドパパ)」では、「ネオパパの特徴」として、
(1)父親を楽しむ――とにかく前向き、積極的!
(2)親子で共通の夢や目標を持つ――子どもと一緒に体験したい!
(3)積極的な子ども消費――子供服選びは最高!
(4)幼い頃からの教育環境重視――お受験ブームの先導者
(5)子どもの食は父親の担当――情報収集は欠かせません!
(6)子どもとの会話重視――テレビよりも食事、絵本だ!
(7)子どもと街を歩くのが大好き――娘連れの姿を見られたい!
(8)かっこいいパパでありたい――おしゃれは自己証明なんだ!
の8点を上げ、「家族を愛し、ときに甘やかしや消費専攻になりながらも、父親として子どもとのコミュニケーションや子育てでの関わりを積極的に楽しもうとしている父親たち。そして、いくつになってもおしゃれで、素敵な男としてありたいという意識を持ち続ける父親たち」という「新しいタイプの父親=ネオパパ」が増えてきていることが「データからも裏付けられた」と述べています。
 第3章「ネオパパ、3つのタイプ」では、父親のタイプを、「情報感度の高さ」と「個性、自分らしさ重視か保守的、社会性重視」かの2つの軸で分類し、ネオパパについては、
(1)コンサバ優秀パパ:まさに「優等生」で、子どもに英才教育を施し、理想の家族像を作ろうとしている。
(2)ちょいモテ志向パパ:遊び人で見栄っ張り。でも、奥さんや子どもには頭が上がらない「ダメパパ」の面も持っている。
(3)らしさ追求パパ:「自分らしさ」にこだわり、消費や流行にも惑わされることなく、生粋の家族志向でもある。
の3つのタイプに分け、「あえて言えば、子育てへの積極性、父親であることを楽しむ姿勢は『コンサバ優秀パパ』がトップ、仕事より子育て、そして子育ての楽しさについては『らしさ追及パパ』がトップ」であると述べています。
 第4章「オールドパパたちの安穏と苦悩」では、オールドパパを、
(1)住圧ローンパパ:幸か不幸か向上心がなく、自分の現在の生き方に疑問を持つこともないので、結果として生活への満足度は比較的高い。
(2)ふわりさまよいパパ:会社からも家族からも離れ、行き場を失った苦悩するパパ。
の2つのタイプに分け、特に(2)に関しては、「なんらかの方法で、家族や子どもたちにもっと愛情を向けるようになってほしいと思わずにはいられません」と述べています。
 終章「『幸福な家族』づくりは今日も続く」では、著者が講演会で話す最近の父親たちの変化について、
(1)とても共感したり、興味を示す人:30代前半が多く、自分が思い描く理想の家族像に近いものを感じてくれている。
(2)そうでない人:40代の管理職の人が多く、「ぼくのまわりには、あなたが言うような父親は見当たりません→私は、そんな父親になりたいとは思わない」と一様に反応する。
とに大きく分かれると述べています。
 そして、著者が、「朝起きてから夜寝るまで、分刻みでスケジュールをこなす、まさに『ジェットコースターライフ』そのもの」の「仕事と家庭の両立で、息つく暇もない」生活を楽しむことが出来るのは、それが「ぼくら家族のスタイル」だからだと語っています。
 本書は、軽い書き振りの中に父親の責任の重さを感じさせる一冊です。


■ 個人的な視点から

 著者は、20代後半の頃にバブル期を体験している広告代理店社員だっただけに、旺盛な消費やファッションやブランドへのこだわりを隠さないところなどに、なんとなく世代の違いを感じてしまいますが、40代のお父さんが「ネオパパ」を標榜してくれるのはありがたいことです。


■ どんな人にオススメ?

・自分は「ネオ」か「オールド」かが気になる人。


■ 関連しそうな本

 小室 淑恵 『新しい人事戦略 ワークライフバランス―考え方と導入法―』 2007年08月22日
 大沢 真知子 『ワークライフバランス社会へ―個人が主役の働き方』 『仕事の社会学―変貌する働き方』 2005年12月01日
 玄田 有史, 斎藤 珠里 『仕事とセックスのあいだ』 2008年01月10日
 パク ジョアン・スックチャ 『会社人間が会社をつぶす―ワーク・ライフ・バランスの提案』 2006年10月13日
 佐藤 博樹, 武石 恵美子 『男性の育児休業―社員のニーズ、会社のメリット』 2005年04月07日


■ 百夜百マンガ

社長DEジャンケン隊【社長DEジャンケン隊 】

 元々は芸能人とか有名人とかガチャピンとかにターゲットを定めていましたが、やっぱりおごってもらうなら社長でしょうか。

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2008年03月31日

実は悲惨な公務員

■ 書籍情報

実は悲惨な公務員   【実は悲惨な公務員】(#1166)

  山本 直治
  価格: ¥798 (税込)
  光文社(2008/03)

 本書は、「世の中にはお役所の実像と虚像の区別がつかず、独り歩きしたイメージのみを信じて公務員に憧れる人もいれば、批判している人もいる」という現状を乗り越えるべく、「お役所に対して植えつけられたイメージの『虚実』を明らかにするための材料」を提示しようとするものです。
 著者は、これまでマスメディアや一般国民が、「終わりの見えないお役所の不祥事に接するたびに、お役所のダメさ加減にほとほとあきれつつ、北風のようにきびしくバッシングする態度をとって」きたことを、「まさに"北風思考"」であると述べ、「幾度のバッシングを経ても、不祥事はとどまる様子を」見せない理由として、「この態度は、公務員の指揮を落とすばかりで、実は不祥事をなくしてよりよい行政活動を進めるうえで逆効果になっているのではないか」と指摘しています。
 第1章「給与・福利厚生 お役人の待遇は本当にオイシイのか」では、結婚を機に公務員宿舎に入ろうと考えている部下に、上司が、「悪いことはいわん。新婚早々公務員宿舎に入ることだけは止めておけ。下見にでも行けば奥さんに泣かれるぞ」と賃貸住宅を薦める上司の言葉を紹介し、公務員宿舎の4割前後は、築30年以上であるばかりか、トイレや風呂などの水周りの貧弱さ、そして、台所には「昔ながらの瞬間湯沸かし器」を入居時に自分でつけ、退去時にはそれを撤去しなければならないことの理不尽さを伝えています。
 また、官民人事交流などで、一時的にお役所で働いた経験のある民間企業の人の話として、「公務員の給料って安すぎる」といわれている話を取り上げ、「そこまで話のブレが生じる原因」は、「たかだか『公務員』という三文字が共通するというだけの約372.5万人の多種多様な労働者をついつい一緒くたに扱い、しかも平均値というラフな数字に引きずられて議論してしまっているからでは」内科と指摘しています。 そして、お役所における中途採用が難しい背景として、「実はお役所の待遇が民間より低いために、民間から優秀な人材を採用しにくいという実態もあることはあまり知られて」いないと述べています。
 第2章「天下り問題 ケシカラン天下りを徹底検証」では、「民間と比べて公務員の待遇が高いか低いかという話は、『大手企業などから見れば公務員の給与は安く、中小企業や地方の地場産業から見れば公務員の給与はうらやましい』ということ」が言えそうだと述べています。
 そして、「世の中には悪い天下りと、許される天下りがあるはずだ」と述べ、許されない天下りの要素として、
(1)歪んだ競争・市場を作り出している。
(2)不適材不適所となっている。
(3)過分な待遇を与えられている。
の3点を挙げ、この1つ以上に当てはまる場合としています。
 さらに、民間企業も、マスメディアなどはそれ自身が「天下り天国」であることを指摘した上で、「市場競争の中で消費者(法人も含みます)に選択されることで社会から承認されている民間企業と違って、お役所とその外郭団体については、社会で本当に必要なものごとにお金が使われているのかどうか、市場原理の中では判断」されないと述べています。
 そして、「天下りに頼らず、積極的な理由で民間に飛び出そうとする公務員」に対して、「偏見を持ち罵声を浴びせ、民間へのソフトランディングを阻もうとする考えこそ、『北風思考』」であり、「俺なんか、お役所から民間に移っても通用するわけないよな」と、「彼らはお役所内の待遇や天下りにいっそう強くしがみつくことになる」と述べています。
 第3章「勤務実態 『グータラなくせにクビがない税金泥棒』の実像」では、「政治主導」「官邸主導」の流れのなか、「内閣官房や内閣府に『○○本部』『××会議』といったものが増設・強化」された結果、「タダでさえ留学などで省外にいて手薄な各省庁の若手(課長補佐・係長クラス)が、こうした本部などの事務局スタッフとしてかき集められ」た結果、「霞が関が外部の戦力に頼らざるを得ない状況」になり、「地方自治体や外郭団体などから相当数のスタッフを『中央官庁で業務研修を受けさせる』という名目で、派遣元が人件費を負担するかたち」で派遣させ、「実際には戦力として日々の業務を手伝ってもらっている」(正しくは「使役している」または「酷使している」が実態)のが現実だと述べています。
 また、「公務員はクビにならない」という話の引き合いに出される「民間で離職率の激しい会社」についても、「歩合制報酬とノルマ達成への厳しい突き上げに耐えかねて大量の離職者が出ることを織り込んで、毎年大量の新卒者を採用し続けるビジネスモデルの会社」や、「外資系コンサルティング会社などのように、後輩に追い抜かれたり社内でプロジェクトから外されたりして、いたたまれなくなって辞めざるをえない会社」のような、「ビジネスモデルや組織設計思想がお役所とまったく異なる」物を比較して、「公務員の安定がうらやましいとかケシカランとかいうこと自体、必ずしも的を射ていない」と指摘しています。
 第4章「コスト感覚 お役所はなぜ税金をムダ遣いするのか」では、「予算は余らせるな、使い切れ」という発想が、お役所が「計画経済の発想」で動いていて、その発想自体に限界があると指摘しています。
 また、通商産業省を舞台にした城山三郎作『官僚たちの夏』のなかで、「無定量・無際限に働く」という表現が使われていることについて、「この文脈にこそ、お役所仕事の本質が隠されている」と述べ、「『やればやっただけ日本がよくなる』系統の企画立案仕事こそ、むしろ曲者」であり、「『世の中のためになる』という前提で、いくらでも仕事をする材料が掘り起こされて」いくとして、「お役所では労働コストが正確かつ十分にカウントされていない点」を指摘し、「作業時間と作業内容(いわば品質)のあいだである程度の折り合い」をつけようとしないと述べています。
 第5章「無責任体質 リスクや責任をとらない理由」では、異動が多い官公庁では「それまでまったく経験のない部署から別の部署に移ってくることは少なく」ないなかで、「ときんは、古くから手をつけられていないしがらみや不祥事が澱のように溜まっている部署に配属されること」があり、新しいポストの仕事に慣れるに従い、「この部署(ポスト)は、目の前にパンドラの箱が置かれた状態であるということ」に気づくとして、「お役所に限らず、民間の不祥事も長年たなざらしになる背景は、こういうことにある」のではないかと述べています。そして、「自分の在任中、『臭いもの』を隠し通せば」大変な対処に追われずにすむうえに、「フタを開けた人は、問題が発覚したときの責任者だったという理由により、相当な確率で出世競争上、回復困難なダメージを受け」るため、「普通の人ならフタを開けずに逃げ切りたい」と思うようになると述べています。
 また、「お役所の施策・事業には中長期的なものが多い」ため、「施策の継続中に変更や撤退などを決断した/しなかったことに対する責任については、、特定するのが難しい」として、「中央官庁のキャリア組のように、早いところだと1~2年ごとに人事異動が行われるので、"責任のバトン・リレー"が起きてしまう」と述べています。
 さらに、著者自身が、文部科学省で、宇宙開発を担当する部署に在籍していた経験を述べた上で、「日本人がリスクに耐えられないのではないか」という懸念を示し、「お役所のリスク感覚は、マスメディアや国民が持っている感覚(リスク許容性)に依存している、いわば『役所は国民の映し鏡だ』」と述べています。
 第6章「マスメディア TVもダメ、新聞もヘン?」では、「バッシングにも動と静があります」として、「当初は激しいもののしぼんでいくのも早い一時的なバッシングよりも、穏やかだがしぶとく真綿で首を絞めるように、そして理性的に行政への監視を続けたほうが、実は所期の目的を達成できるのではないでしょうか」と述べています。
 また、公務員による不祥事を、
(1)公務員という立場(環境)が作用して起きた不祥事
(2)当事者(犯罪者・容疑者)がたまたま公務員だった不祥事
の2つに大きく分け、両者の違いを、「その不祥事に『公務員性(あるいはお役所性)』があるかないか」であると分類しています。
 そして、「何かあればすぐ『公務員なのになんであんなことをするのか』『国民(市民)の代表たる公務員が……』『不祥事を起こしたアイツと同じ組織の人間はみなケシカラン』『どうせみんな一緒だ』と、当事者以外の公務員にまでレッテルを貼ることが建設的なのかどうかを、今一度考えていただきたい」と述べています。
 第7章「クレーマー 国民からの苦情窓口としてのお役所」では、行政に対する苦情電話を、
(A)当事者型苦情電話
(B)一般型苦情電話
(C)豹変型(または目的混在型)電話
(D)自分の話を聞いてほしい電話
の4つに類型化したうえで、「こうした苦情電話を含めた一般からのお役所への連絡・問い合わせ電話全般」に対応するため、日本ではじめて市役所内にコールセンターを開設した札幌市役所の例を挙げ、これを主導した職員の北川憲司さんが、「玉子酒の作り方を教えてほしい」「香典はいくらぐらい包んだらいいんでしょうか」等の行政への問い合わせとは無関係の問い合わせもコールセンターにかかってくると明かしていることを紹介しています。
 また、「お気楽公務員」の常識を覆す「激務」として、「セイホの仕事」(生活保護を扱うケースワーカー業務)を挙げ、「実は福祉系の勉強をしてきた人ほど、学問や理想と現実のあまりのギャップに悩み、辞めてしまう人もいる」と述べています。
 「エピローグ」では、「これまでの『古い』お役所バッシングを卒業し、公務員のモチベーションを損なわず、むしろ奮起させるような適度な緊張感を持った『新しい』お役所バッシングに変えていくため」に必要なものとして、
(1)短期は損気。どやしつけずにまずは冷静に考えること
(2)お役所の改革・改善を見守る根気を持とう
(3)怒りも根気を持って
の3点を挙げています。
 本書は、「お役所」や「公務員」を、本当の意味で自分達の役に立つものとして使うためにはどうしたらいいかを考えさせてくれる一冊です。


■ 個人的な視点から

 「北風と太陽」の話は、公務員バッシングの目的が、ストレス発散の矛先を向けることにあるのか、自分が住む社会をより良くしていくことにあるのか、の違いにあるような気がしてならないです。その意味で、本書で著者が理性的に整理していることは意味があると思います。


■ どんな人にオススメ?

・公務員は恵まれていると思う人。
・公務員は悲惨だと思う人。


■ 関連しそうな本

 山本 直治 『公務員、辞めたらどうする?』 2007年08月24日
 末弘 厳太郎 (著), 佐高 信 (編集) 『役人学三則』 2005年12月12日
 新しい霞ヶ関を創る若手の会 (編集) 『霞ヶ関構造改革・プロジェクトK』 2005年12月22日
 宮崎 哲弥, 小野 展克 『ドキュメント平成革新官僚―「公僕」たちの構造改革』 2006年04月13日
 テリー伊藤 『お笑いニッポン公務員―アホ役人「殲滅計画」』 2006年03月16日
 西村 健 『霞が関残酷物語―さまよえる官僚たち』 2007年09月05日


■ 百夜百マンガ

巌窟王【巌窟王 】

 アレクサンドル・デュマ・ペールの『モンテ・クリスト伯』を、舞台を変えてアニメ化した作品を元にしたコミカライズ作品(ややこしい)。マンガとしても独特の雰囲気のある絵がよいです。

投稿者 tozaki : 07:00 | コメント (0) | トラックバック

2008年01月27日

若者はなぜ3年で辞めるのか? 年功序列が奪う日本の未来

■ 書籍情報

若者はなぜ3年で辞めるのか? 年功序列が奪う日本の未来   【若者はなぜ3年で辞めるのか? 年功序列が奪う日本の未来】(#1102)

  城 繁幸
  価格: ¥735 (税込)
  光文社(2006/9/15)

 本書は、多くの若者が口にする「閉塞感の正体」を指し示すことで、「自分が人生地図の中でどの位置にいるのか」を理解することを助けることを目的としたものです。
 第1章「若者はなぜ3年で辞めるのか?」では、日本全体を包み込んできた「昭和的価値観」にとって何より重要なものが、「本人の能力やそれによる収入ではなく、『あるシステムに乗っかっているかどうか』」であると述べています。
 そして、「昭和的価値観の中では勝者と言っても差し支えない」正社員としての地位を確保した若者たちの中に、「わずか数年で途中下車してしまう人間が急増している」として、「大卒入社3年以内で36.5%」に達することを指摘しています。
 著者は、企業の人事担当者が若者を語った話の中に、"わがまま""忍耐不足"という単語が頻繁に登場していることを指摘し、「このニ語こそ、若者たちが企業から途中下車する理由を説明するキーワードになりそうだ」と述べています。そして、90年代末の就職氷河期に、学生の姿勢に変化が表れ、「明確なキャリアプランを持ち、そのために努力し、厳選採用に対応して正社員としての地位を獲得できるグループ」が、「就職までのプロセスにおいて、あまりにも『仕事に対する意識』が高くなりすぎている」ため、「彼らが入社後、希望していた業務と実際に割り振られた業務にギャップがあった場合、強烈なフラストレーションを抱え込むことになる」と解説しています。一方で、企業の人事部が、「入口で厳しく要求する能力など、半分くらいの若者、いや、ひょっとすると大半の若者には、生涯発揮する機会すらないのではないか」と指摘しています。
 そして、年功序列のシステムが崩壊し、「半数以上の人間は"働き損"で終わること」になり、「彼が受け取るのはポストではなく、やり場のない徒労感でしかない」ことが、「若者が会社を途中下車する最大の理由」であると述べています。
 第2章「やる気を失った30代社員たち」では、就職氷河期を経験した世代からは「温室育ち」と揶揄されるバブル世代を、「もっとも貧乏くじを引いた存在」であると述べ、「バブル世代ほど、年功序列というレールを深く信頼しきっていた世代はおそらく他にないだろう」と指摘しています。
 そして、30代でのメンタルトラブル発症率の高さの原因として、「モチベーションの消失」を挙げ、「企業の中でレールに乗って順調に先に進めるか、それとも完全にキャリアパスが止まってしまうのか」が自分ではっきり分かる年齢が、「大方の企業において30代」であることが、「企業内で30代が壊れていく最大の理由だろう」と述べています。
 第3章「若者にツケを回す国」では、バブル崩壊後、人件費抑制のために採用を抑えた企業にとって、「いままでよりずっと安い賃金で、ずっと下っ端のままこき使える存在」が、「1990年代、長引く不況の中で、企業側の強い圧力により新しく作り出されて」いったとして、「派遣社員と呼ばれる新しい形態の労働者集団」を解説しています。
 そして、「若者を切り捨てたのは、なにも年老いた欲深い経営者だけではない」として、「労働組合も、まだ組合費を払っていない将来の組合員には冷酷そのものだ」と述べ、
「若い人間は必要だ」(経営者)
「でも、リストラや賃下げは絶対に認められない」(労働組合)
という両者の声の妥協の産物が、「派遣や請負などの非正規労働者の増加」であると指摘しています。
 第4章「年功序列の光と影」では、就職先を決めないまま大学を卒業してしまった「既卒」扱いの若者たちが、「ほとんどの企業で『既卒者は門前払いされる』ことになる」として、東京大学法学部を卒業し、司法試験浪人をしていた若者の例を挙げています。そして、「企業が年功序列に固執する限り、彼らが正社員になれる可能性は今後も低いだろう」と述べています。
 著者は、「年功序列制度の本質」を、「ねずみ講」であると指摘し、「『若いうちは我慢して働け』と言う上司は、いわば若者をそそのかして人生を出資させているようなものだ」と述べています。
 第5章「日本人はなぜ年功序列を好むのか?」では、豊臣秀吉が作った制度であり、「ある大名が、自分の許可なく勝手に過信を辞めた人間を"奉公構い"扱いと宣言したとする。すると、どんなに有能であっても、他家は決して彼を採用できない仕組み」である「奉公構い」という制度を紹介し、現代でも、同業の大手企業同士が「現役社員については、お互いに中途採用しない」ことを取り決めていた例を挙げ、「やたら熱心に結婚を勧める」「早くマイホームを買えと言う」ことも理由は同じで、「足につける重しという意味では、奉公構いと変わらない」と解説しています。
 そして、企業がそこまでして従業員を囲い込むメリットとして、労働の量そのものを挙げ、数年前、日本の年間総実労働時間がアメリカを下回ったという調査に、
(1)パートタイマーもカウントされている。
(2)年俸制や裁量労働制といった、時給という概念のない新しい勤務形態が増えている。
(3)この統計自体が、給与支払い実績を元に作成されており、サービス残業分はカウントされていない。
という留意点があることを指摘し、「平均的な日本人は、今でも欧米人の1.5倍程度は働いている計算になる」と述べています。
 第6章「『働く理由』を取り戻す」では、「日本型教育システムにおける優秀層の人間ほど、逆に自らの動機が希薄なように思えることがある」として、「むしろ、彼らは動機を失うことで、その地位を手にしたのかもしれない」と述べています。
 そして、国内最大手の生命保険会社を1年で辞め、政治家に転身した若者、ソニーを退職しベンチャー企業を起こした若者、フリーター生活からライターになり友人たちと編集プロダクションを立ち上げた若者、の3人の例を紹介し、「一見すると彼らの行動基準はてんでんばらばら」だが、「常に自分の動機と真剣に向き合っていることがよくわかる」、「彼らが義務を負っているのは、他の何者でもない、自分自身の内なる動機に対してだ」と述べています。
 著者は、本書を、「これほど希望に満ちた明るい書はない」と述べ、「本書を読んで胸が躍る代わりに、不安にさいなまれたという人」は、「例の昭和的価値観」を捨てなければならない、と述べ、「それさえ捨てることが出来れば、実はわれわれには、先人たちにはない、ある貴重な宝物があることに気づく」として、「自分で道を決める自由」を挙げています。
 本書は、若者が直面している人生に対する閉塞感の原因をわかりやすく解説した一冊です。


■ 個人的な視点から

 著者は元々、大企業における成果主義の実態を世の中に明らかにした告発本で有名になっただけに、労働組合などから講師に招かれることが多いようなのですが、著者自身は、成果主義自体には反対ではなく、成果主義が徹底されていないことに対して告発したつもりがあったようで、思惑をはずしてしまった労働組合関係者はずいぶん戸惑ったのではないかと思います。


■ どんな人にオススメ?

・入社3年以内の若者と学生。


■ 関連しそうな本

 城 繁幸 『内側から見た富士通「成果主義」の崩壊』 
 城 繁幸 『日本型「成果主義」の可能性』 2005年12月08日
 高橋 伸夫 『虚妄の成果主義―日本型年功制復活のススメ』 2005年3月30日
 高橋 伸夫 『〈育てる経営〉の戦略―ポスト成果主義への道』 2005年06月16日
 本田 由紀 『若者と仕事―「学校経由の就職」を超えて』 2006年03月02日
 玄田 有史 『仕事のなかの曖昧な不安―揺れる若年の現在』 2005年07月20日


■ 百夜百音

TOKIO【TOKIO】 沢田研二 オリジナル盤発売: 1979

 よくよく見るとタケちゃんマンの衣装だということをはじめて知りました。ナハナハ。タイマーズのゼリーとは別人のようです。

『MIS CAST』MIS CAST

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2008年01月10日

仕事とセックスのあいだ

■ 書籍情報

仕事とセックスのあいだ   【仕事とセックスのあいだ】(#1085)

  玄田 有史, 斎藤 珠里
  価格: ¥735 (税込)
  朝日新聞社出版局(2007/01)

 本書は、日本社会のなかに、「セックスレスをもたらす要因を、仕事もしくは働き方の中に探し」たものです。著者は、「本気で少子化問題に取り組むなら、今よりもっと恋人やパートナーとのセックスに積極的になれるような環境が実現しない限り、子どもが増えることはまずないだろう」と述べています。
 第1章「セックスレスの実態」では、「既婚就業者のうち、セックスレスの状態にある割合は、45.2%に達している」として、「まさに日本では、2組にほぼ1組がセックスレスになっている」と述べています。
 また、確かな要因として、パートナーとの間の「子どもの数」を挙げ、「子どもを1人持ってセックスレスに突入するカップルと、子どもが増えるに連れてますますセックスを楽しむカップルへの二局化傾向が、まさに1人目を分岐点に起こっている」と指摘しています。
 第2章「世界一セクシーな国の女性労働者」では、「出産期に当たる25~44歳のフランスの女性労働率」が、2000年時点で79.5%に達していることを挙げ、「今やフランス女性にとっては、仕事か出産か、等という選択はナンセンス。2つの要素は妨げあう関係ではなく、むしろ人生設計の要として手に手を取り合っている」と述べています。
 また、「35時間をオーバーして働かせた場合には罰金が科せられる」という、2000年に施行された35時間労働のメリットについて、パリでは、男性の帰宅時間が、
・午後8時以降:26%強
・午後6時ごろ:17%
・午後7時ごろ:17%
・午後5時ごろ:12%程度
と、「7時前に帰宅できる男性を合わせると全体の5割を占めている」のに対し、東京では、「午後8時以降の帰宅」という男性が60%を超えていることを挙げ、「セックスは、男女のコミュニケーションの延長線上にあるもんと考えると、長時間労働で夫婦の会話はゼロに等しく、見るのは相手の寝顔だけなどという日本の夫婦のセックスレスはむしろ無理からぬこと」と指摘しています。
 第3章「仕事とセックスレス」では、本書の仮説として、「個人の意思や力を超えて、社会の中にある何か強い力が、個人をセックスから遠ざけている。その何かは、就業者の日常時間の相当部分を占める『労働』そのものにあるのではないだろうか」と述べています。そして、「労働時間の長さだけでなく、働き方の中身そのものに注目しようと考え方を改めて検証を続けた結果、いくつかの思いがけない事実に出会うことになった」としています。
 まず、「妻の就業形態別に見たセックスレスの割合」について、「女性が働くことをやめて家庭に専念するべきだという意見を持つ人もいる」が、「女性の働く形態によってセックスレスへのなりやすさに違いがあるといった傾向は、一切確認できなかった」だけではなく、「妻もほどほどに働いたほうが、セックスレスになりにくいことを示唆する、別の興味深い関係」として、「女性にたずねたパートナーとの収入者とセックスレスの関係」を挙げ、「夫婦で収入差がかなり大きいことも、セックスレスになりやすくする背景となっている」と述べ、「女性が専業主婦であるよりも、ほどほど働いて収入を得ているほうが、夫に収入を稼がなければといった過剰なプレッシャーをかけずにすむ。生活や時間に余裕が生まれる結果としてセックスレスになりにくいのかもしれない」と述べています。
 また、「仕事上の挫折経験が、セックスレスになる確率に与える純粋な影響」として、「20代から50代の女性全般と、さらには20代、30台といった比較的若い年齢の男性について、仕事上での挫折経験を持っている人ほど、セックスレスになりやすくなっている」と指摘しています。
 さらに、職場の雰囲気とセックスレスの関係について、「職場の雰囲気が悪く、働くのがつまらないと思えば、仕事以外の別の事柄に喜びを求めるのではないかと、考えたくもなる」が、「事実はそれとは正反対」で、「職場が辛い人は、セックスにも消極的になっている」ことを指摘し、「日常的な高揚感の有無は、仕事や職場のアリ様とも深く関わっているのかもしれない」と述べています。
 配偶者以外とのセックス、つまり「不倫」については、最初の特徴として、「30代で不倫をしている場合が9.2%と最も高くなっている」という年齢との関係を挙げた上で、さらに顕著なものとして、「所得との関係」を挙げ、「既婚者のうち、年収の高い人ほど、パートナー以外とセックスをしていることが多い」ことを指摘し、「不倫は文化というよりは、むしろ経済状況によって左右されているというほうが正しいのかもしれない」と述べています。そして、「1週間の労働時間が長い人ほど、不倫をしている人は多い。特に週労働時間が60時間を越えると、不倫中の割合は急増している」ことを指摘し、「そんなに労働時間が長く多忙で、いつ不倫をするのだろうかという気がしないでもない」が、「働く時間が長く、帰宅時間が遅いのが隠れ蓑となって、不倫を続けているということもあるのではないだろうか」と述べています。
 第4章「ヒト・フェロモンと職場の関係」では、「職場に気になる異性がいれば、仕事にやる気がでますか」という項目について、「やる気がでる」と答えた割合が高かったのは女性、なかでも20代と40代が突出していたことを挙げ、「女性の場合は、職場で異性を意識すると『認められたい』『役に立ちたい』という感情が働くこと」が多く、「『認めて欲しい』と思う男性の年齢は自分より年上であることが重要」であるため、「社会に入ったばかりの20代女性は、まわりがすべて対象者」であるが、30代は出産や子育てと重なり、「育児と仕事の両立で手一杯。異性どころではない」こと、そして、40代になると子育てが一段落するが、50代の女性の場合は、「認められたい」と思える対象者である年上男性そのものが激減していることなどを解説しています。
 一方、男性30代と男性20代では、「気になる異性がいると集中力を欠く」という割合が多いことについて、「若い男性にとっては、気になる異性は平常心を脅かす危険な存在ともいえる」と述べています。
 第5章「セックスレスの再検証」では、「同じ事実が複数のデータによって再現できること」が「研究の掟」であるとして、本書が主に用いている『アエラ』のインターネットを通じて行われたモニター調査のほかに、「日本版General Social Surveys (JGSS)」による検証の再現を行なっています。
 第6章「負け犬とワーク・ライフ・バランス」では、エッセイ『負け犬の遠吠え』で「負け犬」と定義された「未婚、子ナシ、30代以上の女性」について取り上げています。
 そして、『一般に男性の方が仕事人間になりやすいので、失業や左遷といった仕事上の精神的ショックが男性の性機能を低下させるのではないかと想像できるが、『アエラ』の調査結果ではむしろ女性の方が心理的な影響を受けやすく、セックスに対しても消極的になる傾向が強い」ことを指摘しています。
 第7章「変わりゆく職場で」では、本書の分析からわかったこととして、「セックスレスの問題は、すべてが個人の自由な選択の結果だとは言い切れないということ」を挙げ、「どうやら私たちの働き方、そして職場や仕事のあり方というものが、私たちの根っこの深い部分で、個人の性生活に無意識のうちに大きな影響を及ぼしている。失業など仕事をする上での過去の苦しかった体験があったり、日常的な職場の雰囲気に不満を感じていたり、経済的に苦しかったりする個人ほど、セックスレスになる可能性が高くなっていることが、複数の統計調査から明らかになった」と述べています。
 本書は、仕事という社会生活と、セックスという私生活とが、完全に分けられるものではなく、個人の深いところで強く結びついたものであることを示してくれる一冊です。


■ 個人的な視点から

 少子化対策というと、いかにして育児をしやすい環境を創るか、というところに力点が置かれますが、その前段である、いかに子どもを作りやすい環境を創るか、というところも重要であることを本書は示唆しています。
 一方で、そういうプライベートなところに政府が踏み込んでくることに抵抗のある人が多いのも確かではないかと思います。


■ どんな人にオススメ?

・仕事とプライベートはまったく別だ、と思っている人。


■ 関連しそうな本

 玄田 有史 『働く過剰 大人のための若者読本』 2006年06月26日
 小室 淑恵 『新しい人事戦略 ワークライフバランス―考え方と導入法―』 2007年08月22日
 大沢 真知子 『ワークライフバランス社会へ―個人が主役の働き方』 2006年07月24日
 佐藤 博樹, 佐藤 厚 (編集) 『仕事の社会学―変貌する働き方』 2005年12月01日
 橘木 俊詔 『現代女性の労働・結婚・子育て―少子化時代の女性活用政策』 2006年08月18日
 パク ジョアン・スックチャ 『会社人間が会社をつぶす―ワーク・ライフ・バランスの提案』 2006年10月13日


■ 百夜百マンガ

One piece【One piece 】

 自分の世代では「海賊」といえば「宇宙海賊」だったり「宝島」だったりとしたのですが、今の子どもたちにとっては海賊といえばこの作品なんでしょうか。

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2007年11月15日

「女性を活かす」会社の法則

■ 書籍情報

「女性を活かす」会社の法則   【「女性を活かす」会社の法則】(#1029)

  植田 寿乃
  価格: ¥1470 (税込)
  日本経済新聞出版社(2007/06)

 本書は、「女性を生かす組織」をテーマに、5つの会社を勤務してきた著者自身の経験を元に語ったものです。
 第1章「女性を活かせない会社にもう未来はない」では、「ただ会社を活性化するために女性を活かすという方程式を信じるような意識だけではだめ」で、「女性が生き生き働けるような組織を作っていくことこそが、これからの自分達の企業の生死に関わる」と指摘しています。
 また、「社員の一人ひとりが、自らの生活と仕事を無理なく両立し、活き活きと働けるような企業風土」を歓迎するのは女性だけではなく、ライフワークバランスを大切にする現代の若い男性社員も、同じような環境を望んでいると述べています。
 著者は、モチベーションの高い会社の共通点として、
・個人が「キャリア自立」をし、目標を持っている
・フラットな組織、柔軟な人事
・「人間力」のある経営陣・管理職が多い
・社内コミュニケーションが活発
・女性が活き活きと働いている
の5点を挙げています。
 第2章「女性活用はまず意識改革から」では、働く女性の悩みとして、
・周囲にロールモデルがいない
・自分の未来像が描けない、キャリアの考え方がわからない
・頑張っても、会社の風土が変わらない
・世の中の情報に「取り残され感」を感じる
の4点を挙げた上で、働く管理職女性の悩みとして、
・他の女性たちから孤立してしまう
・「女だから」と思われるので制度が使えない
・メンターがいない
・ロールモデルがいない
の4点を挙げています。
 第3章「キーワードは『メンター』『ロールモデル』」では、メンターに望まれる条件として、
・人間力がある
・ある程度の地位・権限を持っている
・直属の上司ではない関係
・見返りを期待しない
の4点を挙げています。
 また、企業側がロールモデルの設定に失敗する理由として、「女性たちにとってのロールモデルではなく、企業側にとってのロールモデルとなる人を選定してしまう」ことを挙げ、
・スーパーウーマン
・「ガンダム女」(男性と同じように働く女性)
の例を挙げ、今の女性が憧れる女性像が、「肩の力が抜けていて、バランスよく楽しそうに働いている、そして仕事の実績を出している」女性であると述べています。
 そして、ロールモデル設定のポイントとして、
・ロールモデルには多様性が必要
・年齢によって段階的に設定する
・ロールモデルにはフォローアップ体制が必要
の3点を挙げています。
 第4章「職場の『男子更衣室』脱皮計画」では、これまでの日本企業の多くが、「部活の男子更衣室のようなノリ」をもった男ばかりの空間であったと指摘しています。
 そして職場のタブーとして、
(1)体育会系的な叱咤や命令
(2)タバコ部屋で仕事の話をする
(3)部下の相談ごとに「飲みニケーション」で対応する
(4)休日出勤、残業の多い人を「仕事熱心だ」と称える
(5)「女のくせに」、「女性だから」
(6)「○○ちゃん」とよぶ
(7)お菓子で「餌付け」しようとする
(8)女性を褒めすぎる
(9)恋愛、結婚、妊娠に関して話題を振る
の9点を挙げています。
 第5章「女性を活かす上司、潰す上司」では、モチベーションストッパー上司の傾向として、
(1)専制君主の「信長上司」「卑弥呼上司」
(2)性悪説の「殺し屋上司」
(3)成果主義の弊害「チューリップ上司」
(4)すべて頭で解決「アンドロイド上司」
(5)エリート主義の権化「スワット上司」
の5点を挙げています。
 一方で、女性を活かす管理職として、
(1)自己理解ができている
(2)他人が理解でき、他人を尊重するコミュニケーションができる
(3)状況により適切なリーダーシップを発揮できるか
(4)ストレスマネージメントについての知識がある
(5)部下に対して、カウンセリングやコーチングの知識・スキルがあるか
(6)女性のワークライフバランスに対して理解がある
(7)セクハラに関する知識がある
の7点を挙げています。
 第6章「実践・女性活用『最初の一歩』」では、
・自社の実態を知ること
・なぜ取り組むのか、目的を明確にすること
・ピンポイント対応ではなく長期的計画を
・制度整備と同時に、意識改革、組織風土改革を
・意識改革は経営層、管理職、人事開発部門から
・女性のコミュニティの形成
などのポイントを挙げています。
 本書は、女性の活用が喫緊の課題となっている経営者や人事担当者はもちろん、女性の部下や上司を持つ人にもお勧めの一冊です。


■ 個人的な視点から

 本書の内容自体は、比較的オーソドックスですが、読みやすく簡潔にまとまっているので、ビジネス書を読みなれていない人も抵抗なく読めるのではないかと思います。


■ どんな人にオススメ?

・自分は女性社員の気持を理解できている、と思っている人。


■ 関連しそうな本

 佐野 陽子, 志野 澄人, 嶋根 政充 (編著) 『ジェンダー・マネジメント―21世紀型男女共創企業に向けて』 2005年12月06日
 ロザベス・モス カンター (著), 高井 葉子 (翻訳) 『企業のなかの男と女―女性が増えれば職場が変わる』 2005年10月11日
 脇坂 明, 冨田 安信 (編集) 『大卒女性の働き方―女性が仕事をつづけるとき、やめるとき』 2006年05月02日
 赤岡 功, 長坂 寛, 渡辺 峻, 筒井 清子, 山岡 煕子 『男女共同参画と女性労働―新しい働き方の実現をめざして』 2005年09月08日
 大沢 真理 『男女共同参画社会をつくる』 2007年3月6日
 伊藤 公雄 『「男女共同参画」が問いかけるもの―現代日本社会とジェンダー・ポリティクス』 2007年05月19日


■ 百夜百マンガ

新首代引受人【新首代引受人 】

 劇画の第一人者の絵師でありながら、すべてMacとタブレットで描かれたという作品。こんな作品を描いているのにコンピュータとシンセ好きというオヤジはなんだか楽しそうです。

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2007年11月09日

実践!自治体の人事評価―「評価される側」からのアプローチ

■ 書籍情報

実践!自治体の人事評価―「評価される側」からのアプローチ   【実践!自治体の人事評価―「評価される側」からのアプローチ】(#1023)

  中村 圭介
  価格: ¥2000 (税込)
  ぎょうせい(2007/04)

 本書は、地方公務員の「働きぶり、仕事で発揮する能力を評価するためには、どのような制度がふさわしいのだろうか」、つまり、「地方公務員にふさわしい評価制度」を探ることを目的としたものです。
 第1章「評価の必要性」では、著者が前著『変わるのはいま――地方公務員改革は自らの手で』で指摘した地方公務員の人事管理の問題点として、
(1)管理職の選抜に当たって、人事評価を使う自治体は民間と比べて少ない。
(2)長期間休まず規則を破らず、ただ勤務していれば、仕事ぶりにかかわらず、誰でも同じように毎年給料が上がる。
(3)3年から5年で職場を異動し、しかも、相互に関連のない職場を異動する。
の3点を挙げ、「個々の職員について、どんな知識、スキルが不足しているのか、どのような能力を開発していくべきなのか、どのような仕事に向いているのかを知る必要」があり、そのために人事評価が必要であると述べています。
 そして、「民間のような人事管理は自治体には適さない」という声に対し、「良質な行政サービスを効率的に提供していくためには、マーケット・メカニズムに変わる、何らかの工夫が必要となる」として、その一つとして「適切な人事管理」を挙げ、「自治体では、民間以上に人事管理が重要となる」と述べています。
 また、評価制度の設計に当たっては、「職場の目線を大事にしたい」と述べ、その理由として、
(1)評価される側の納得を得たいから。
(2)評価する側の負担も軽くなるから。
の2点を挙げています。
 第2章「職員の意識」では、自治労福岡県本部に所属する組合員30,580人を対象に実施したアンケート調査に対して、42.2%にあたる16,242人から得た回答について解説しています。
 まず、人事評価制度導入に対しては、10人中6人と予想以上に高く、その理由として、「現在の人事処遇への不満」が背景にあると述べています。
 そして、「積極派、慎重派、反対派」を分かつものとして、「現状の人事管理への不満」を挙げ、「積極派の4分の3、慎重派の3分の2は人事管理に不満を持ち、これに対して反対派は2人に1人となる。不満があるからこそ、積極派になるし、あるいは慎重派になる」と解説しています。さらに、人事評価制度がうまく機能していくためには、「フィードバックの仕組みを作ること、評価者訓練を行うこと」を挙げた人が覆いと述べています。
 第3章「職場の目線(1)――一般職」では、「県の出先機関、市町村そして県」の順序で、著者が分類し、概念化した職場の目線を、その根拠となった発言とともに述べています。
 県の出先機関については、「仲間の働きぶりや能力を見る目線を分類し概念化」したものとして、
(1)法令に関する知識
(2)顧客である市民への対応力
(3)個々の市民が置かれている状況を推理、分析し、的確な判断を下す能力
(4)仕事への積極性
(5)仲間たちとの協調性
の5点を挙げ、発言からは抽出されなかったが、
(6)業務に関する知識
を加えても良いかもしれない、と述べています。
 つぎに、市町村で働く一般職については、「多くの仕事に共通のものと、特定の部署の仕事だけに限られる固有のものとがある」として、前者については、
(1)法令に関する知識
(2)業務に関する知識
(3)仕事への積極性(ただし、県の出先機関で指摘されたものと違うものも含まれる)
(4)仲間たちとの協調性
の4点を挙げ、部署に固有の目線である後者については、
(1)企画立案能力
(2)顧客である市民への対応力
の2点を挙げています。
 さらに、県庁で働く一般職については、市町村の一般職と異なる点として、
(1)窓口で市民と直接、応対するような仕事がない。
(2)県の出先機関、市町村の指導、監督といった仕事がある。
(3)迅速に仕事をこなしていくことが特に求められる。
(4)議会対応が仕事の中で大きな比重を占める。
の4点を挙げ、多くの仕事に共通する目線として、
(1)法令に関する知識
(2)業務に関する知識
(3)仕事への積極性
(4)仲間たちとの協調性
(5)仕事の迅速性
の5点を挙げた上で、特定の仕事に固有の目線として、
(1)企画立案能力
(2)指導監督の対象となる出先機関、市町村の関係部署とのコミュニケーション能力
の2点を挙げています。このうち、「仕事のへの積極性」の中では、「アンテナを高く張っている人とそうでない人がいる」として、「そういう情報って自分で探さないと、降ってくるものじゃない」という発言を紹介しています。
 さらに、市町村、県の本庁、出先機関で働く一般職が、「どのような目線で、係長や課長などの働きぶりや能力を見つめているか」について、「一般職は、管理職の働きぶりや能力を、まずは、同僚と同じ目線で見る」上で、管理職固有の目線として、
(1)リーダーシップ
(2)部下に対する信頼
(3)責任
の3点、さらに県庁だけは、
(4)議会対応力
が加わると述べています。
 第4章「職場の目線(2)――現業職」では、「現業職は決して『単純労務職』ではない」と述べ、「単純労務」という言葉から一般的にイメージされる、「体を動かすだけで、知的な判断業務も必要とせず、かつ、技も不要であるような仕事」とは、現業職の実像は「大きくかけ離れている」と指摘しています。
 まず、県の道路技術員については、道路の維持管理業務に必要な知識と能力として、
(1)担当している道路の状況、その周辺環境についての知識
(2)天候や道路の状況に応じて、監視する対象を絞り込む、点検の目線を集中する能力
の2点を挙げ、「この2つの能力をあわせて以上の早期発見能力とでも言えようか。点検目線を絞り込み、道路に見られるわずかな兆候を見逃さずに、以上を早期に発見できるかどうか」が求められると述べています。
 次に、農業技術員に必要な能力としては、
(1)作業の立案能力(段取り能力)
(2)各作業の適切な時期を判断していく能力
(3)質の異なる土をうまく耕作し、農作物をうまく栽培していく技術
などを挙げています。
 次に、学校給食調理員については、仕事がうまくいったかどうかは、「おごちそうさまという声が聞こえた時」や「残滓とかが少なかった時」という正直な結果が還ってくることが述べられています。
 次に、清掃・し尿処理作業員については、「数台ある清掃車、バキューム・カーに、どの区域を担当させれば、もっとも効率的にごみ収集、し尿処理ができるだろうか」という「パズルを解かなければ、配車計画は立てられない」と述べ、「このパズルを解いているのは、清掃・し尿処理作業員自身である」ことについて、「プロジェクト班(収集ルートを策定している)を現業がもっているから、直営でやっていける。当局側に渡してしまったら、くみ取るだけの仕事になる」という発言にプライドが現れると述べています。
 著者は、これらの抽出した項目について、「抽出した諸項目こそが、現業職場における目線である」と述べ、「ここに概念化されている言葉を、現実に即して理解すること」が重要であると述べています。
 第5章「人事評価制度案」では、グループ討議から抽出した職場の目線をもとに、人事評価制度案を述べています。その概要として、
(1)一般職員を初級、中級、上級の3クラスに分け、その上に、係長を持ってくる。
(2)このクラスごとに、クラスごとに具体的な評価基準を作る。
の手順を挙げ、評価基準作成の方法として、
(1)職員個々人が保有する知識、能力などを質的、量的に把握し、かつ表現することが比較的容易な評価項目
(2)職員個々人が保有する知識、能力などを質的、量的に把握することは比較的容易だが、それを直接、表現することが比較的難しい評価項目
(3)仕事への積極性、企画立案能力については、積極性を向ける対象、企画立案する事業計画や条例案などの難易度
(4)協調性については、チームの中で果たすべき役割
(5)よりよい市民サービスを提供するという姿勢
の5点を挙げています。
 その上で、注意すべきこととして、
(1)実際に自分達の職場で求められている具体的な知識を念頭において、評価を下すこと。
(2)仕事への積極性や企画立案能力については、求められている知識、能力等を、クラスごとに具体的に確定しておくこと
の2点を挙げています。
 第6章「自治体が変わる」では、著者が、「人事評価制度は自治体の人事管理を変え、そればかりでなく、自治体そのものを変える」という思いから、地方自治体の人事管理、人事評価制度を調査研究してきたと述べています。
 本書は、職員自身の言葉から自治体職員の仕事と能力を拾い出した一冊です。


■ 個人的な視点から

 自治労のアンケートがベースになっているだけに、市町村から県までの幅広い職種の職員を対象にしている点が本書の強みでしょうか。ただし、実際の評価制度の構築部分は、残念ながら概論レベルで終わっている点があります。
 これは、研究者というスタンスの限界ということもあり、ここから先は、実際の実務担当者がどれだけ取り組めるかにかかってくる部分なので、研究者にこれ以上を求めるのは酷ではないかと思います。


■ どんな人にオススメ?

・人事評価の仕組みに不満がある人。


■ 関連しそうな本

 山本 直治 『公務員、辞めたらどうする?』 2007年08月24日
 稲継 裕昭 『日本の官僚人事システム』 2005年02月10日
 稲継 裕昭 『人事・給与と地方自治』 2005年12月09日
 川手 摂 『戦後日本の公務員制度史 「キャリア」システムの成立と展開』 2005年12月29日
 早川 征一郎 『国家公務員の昇進・キャリア形成』 2006年04月20日
 山中 俊之 『公務員人事の研究―非効率部門脱却の処方箋』 2006年06月08日


■ 百夜百マンガ

宇宙海賊キャプテンハーロック【宇宙海賊キャプテンハーロック 】

 「ヤマト」や「999」に比べて通好みのする作品ですが、作者の男のロマンと美学をこれほど表した作品とキャラクターはありません。

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2007年10月15日

仕事の社会科学―労働研究のフロンティア

■ 書籍情報

仕事の社会科学―労働研究のフロンティア   【仕事の社会科学―労働研究のフロンティア】(#998)

  石田 光男
  価格: ¥3675 (税込)
  ミネルヴァ書房(2003/07)

 本書は、労働制度研究者である著者が、ある労働経済学者から、「労働経済学は労働の制度的研究からこれまで多くの着想を教えられてきたけれど、近年、そういう制度研究がないですね、そういう制度研究をしてください」とハッパをかけられたことに対する回答です。
 第1章「労働研究の方法的伝統」では、1970年以降の労働研究が、「経済的『富裕』の『種明かし』の研究にならざるを得」ず、「かつて近代化への遅れの幅として解釈された雇用に関するルール」が、「ジャパンを『種明かし』するルールとしてまったく新しい解釈を施すことを必要」とし、「この最も大胆な革新的解釈者の栄誉」が小池和男のものであると述べ、小池が、「年功的熟練は(産業の高度化が必然化する)内部化した労働市場に最も適合的で合理的な熟練のあり方であり、そうした職場でのOJTを通じてのみよく培われる年功的な熟練は生産現場で思いのほかよく発生する変化と異常への対応力と言い替えてよく、その対応力こそが生産性を決する」と主張したことを紹介しています。
 そして、1975年度の労資関係研究会議における小池と熊沢誠の論争を取り上げ、小池が日本の労資関係の特質を、
(1)日本の労働者の方がキャリアがやや広い。
(2)日本の方が人の配置が柔構造をなしている。
(3)日本の本工労働者のキャリアの上限がアメリカよりわずかに高い。
(4)キャリアの下限は日本の方がやや「狭い」。
(5)雇用の保証はアメリカのほうが高いといえる。
(6)総じてキャリアに関して日本には「経営の恣意を許さないようなマギレのないルールが見られない」が「アメリカでは、労働組合がほとんどすみからすみまで介入し、交渉し、マギレのないルールを確立している」。
の6点にまとめたのに対し、熊沢が、6つの「『特質』の基軸を(2)『配置の柔構造』に求めたいと思う」、「私たちの国ではまさしく『変化適応的』に、労働者の作業範囲と作業量、職場の定員、配置、昇進、レイオフの人選などがフレキシブルなのだ。」「配置のルール、昇進のルートが柔構造であることは、日本的能力評価を媒介として、労働者を従業員としての成功者と不成功者に分けるほとんど生涯的な競争に巻き込んでいる」。「柔構造が労働者間競争によってこなされているとすれば、それは一方では組合規制の後退を、他方では経営権の貫徹を、分かちがたく同時に意味するのである」、と述べていることを紹介しています。
 著者は、小池和男と熊沢誠のいずれもが、「その道筋はそれぞれに個性的であった」が、「経営管理」という「同じ一つの欠落を私たちに残している」と述べています。
 第2章「仕事の社会科学」では、バブル崩壊後の日本の人事管理に対する半生と改革の議論の特徴として、
(1)雇用システムについてその企業間流動性が高まる、もしくは高めるべきだという主張が労使でおおむね共通していること。
(2)処遇システムについてはより成果や業績を重視した仕組みに変えるべきだという点では労使の相違を見つけることはほぼ困難なほどに一致していること。
の2点を挙げ、「改革の方途について労使の思惑が基本的に一致している」という今時の改革論議の特徴を、「過去4半世紀ほどの日本の労使関係の過熱あるいは風化の事実をわれわれに確認させるものである」と述べています。
 第3章「工場労働の生産性管理」では、「リーン生産方式」をめぐって、
(1)労働内容の理解:リーン生産方式のもとでの労働はwork smarterなのかwork harderなのか。
(2)労働者の合意調達の仕組み
の2つの点が研究者の間で議論になったことが紹介されています。
 第4章「ホワイトカラー労働の生産性管理」では、ホワイトカラー労働の生産性への「接近方法を極力明快に示すことが枢要」であると述べ、その理由を、「ホワイトカラー労働の生産性は個別企業の従業員がますます拾い意味でのホワイトカラー労働の範疇に属する実態の中では、それは企業の競争力を直接に左右するのであって、それだけに企業活動の実践の中で様々な試行がなされておりそれらの実践行為は多かれ少なかれホワイトカラー労働の生産性に無縁ではないはずであり、したがって、この課題への接近は一見して極めて広範囲な切り口が用意されているからである」と述べています。
 また、ホワイトカラーのリストラの研究に当たり、「工場部門で実践されている仕事の管理の厳格さに類する管理が、管理間接部門や製造業以外の諸企業でも実践されていたならば場当たり的な雇用調整を必要としないのではないか」という「素朴な疑問」を呈し、「日本の経営の見直し論が急速に台頭しているが、変えるべき点と継承すべき点の峻別が必要で、変えるべき点の焦点は仕事の管理の側にあり、人事諸制度における一本調子の年功主義→能力主義→成果主義への変更は大いに慎重であるべき」だと述べています。
 第5章「報酬改革」では、戦後日本の人事制度を、
・第1期(1950~60年代前半):日本社会の近代化への希求が人事の面でも色濃く現れた時期であり、「職務給化」が象徴的な改革の標語とされたが多くは失敗に終わった。
・第2期(1965~1980年代):「能力主義」という兵庫の発見により、日本の労働の性格に内在的に労働の活力を引き出そうとすれば[人]の序列化のルールを組みかえる以外にないということを直視することができた結果である。
・第3期(1990年代~現在):年功制の可能な限りの圧縮と能力主義の再定義。
の3期に分けて論じています。
 また、「いかなる人事・賃金制度であっても備えていなくてはならない基本的構成要素」として、
(1)序列=秩序の設定
(2)出来映え(パフォーマンス)の評価方法の設定
(3)賃金の設計
(4)仕事と人のマッチング方式の設計
の4点を挙げ、能力主義人事と成果主義人事とを対比しています。
 第6章「労働組合」では、「通常の外国人の日本の観察の水準をはるかに越えて、日本企業を深く洞察した一フランス人」の言葉として、「日本企業の基盤にはインセンティヴ装置は整っているが、明示的な契約関係は希薄である。したがって、日本企業はまったく民主的ではない。」という言葉を紹介し、こうした非難に対して、「実はこうしていますと言えるささやかな実践の試みが貴重」であり、「その一つ一つが歴史の前人未到の知への教訓多き歩みに違いない」と述べています。
 本書は、経済学や経営学に偏りがちな労働研究にバランスを与えてくれる一冊です。


■ 個人的な視点から

 今では経済学や経営学の世界では仕事の分析は一般的であるため、そういった見方を出発点にしてしまいがちになります。何しろ、一昔前は、「労働」という言葉がついた時点で、マルクス経済学の人たちの声が大きかったため、そういった始点から離れた労働経済学の切り口は相当新鮮に見えたのではないかと想像します。


■ どんな人にオススメ?

・「仕事」の姿を多面的に捉えたい人。


■ 関連しそうな本

 小池 和男 『日本の雇用システム―その普遍性と強み』 2005年04月06日
 熊沢 誠 『女性労働と企業社会』 2006年07月25日
 チャールズ オライリー , ジェフリー フェファー (著), 広田 里子, 有賀 裕子 (翻訳), 長谷川 喜一郎 『隠れた人材価値―高業績を続ける組織の秘密』 2005年02月03日
 八代 尚宏 『日本的雇用慣行の経済学―労働市場の流動化と日本経済』 2005年03月23日
 エドワード・P. ラジアー (著), 樋口 美雄, 清家 篤 (翻訳) 『人事と組織の経済学』 2005年04月05日
 小池 和男 『日本企業の人材形成―不確実性に対処するためのノウハウ』 2006年01月03日


■ 百夜百マンガ

小類人(ちゃいるど)【小類人(ちゃいるど) 】

 ジョジョ的な必殺技の部分はさておき、人間の子供にそっくりな"長命族"が人間社会に紛れ込む、という設定は色々応用が利きそうです。

投稿者 tozaki : 23:00 | コメント (0) | トラックバック

2007年08月22日

新しい人事戦略 ワークライフバランス―考え方と導入法―

■ 書籍情報

新しい人事戦略 ワークライフバランス―考え方と導入法―   【新しい人事戦略 ワークライフバランス―考え方と導入法―】(#944)

  小室 淑恵
  価格: ¥2625 (税込)
  日本能率協会マネジメント 出版情報事業(2007/7/26)

 本書は、「私生活の充実により仕事がうまく進み」「仕事がうまくいくことによって私生活も潤う」という、「仕事と生活の相乗効果を高める考え方と取り組み」全般である「ワークライフバランス」に関して、600社以上のコンサルティングに携わった著者の経験と各種資料をもとに、「企業の人事部、ワークライフバランス改革の推進担当となった方に向けての実務入門書として企画・執筆したもの」であり、「ワークライフバランスを戦略的に捉える視点と、実際に企業の現場に導入するための手法を具体的に解説し、明日からでも役に立つ」ことを目指したとしています。
 著者は、ワークライフバランスというテーマとの出会いとして、
(1)大学生時代に聞いた猪口邦子氏の講演
(2)大学を休学して滞在した米国でのスザーンというシングルマザーとの出会い
(3)王手化粧品メーカー入社後に応募したビジネスモデルコンテスト
の3つの大きな転機を挙げています。
 第1章「ワークライフバランスは21世紀の経営戦略」では、「ワークライフバランス」の本質を、時間の配分だけではなく、「仕事以外の場を大切にすることによって、仕事も短時間で成果を挙げることができるようになる」など、「双方をうまく調和させ、相乗効果を及ぼしあう好循環を生み出す」ことであるとし、"バランス"よりも"ハーモニー"のほうが近いと述べ、その核心は、「仕事での成果を上げるために『働き方の柔軟性を追求する』」ことであると述べています。
 また、ワークライフバランスが、
・短期的には人事労務面のメリット
 (1)優秀な人材の確保
 (2)女性社員の定着
 (3)職場全体のモチベーションアップ
 (4)人事コストの削減
・中長期的には経営全般のメリット
 (1)労働力不足への準備
 (2)労働生産性の改善
 (3)企業体質の改善・強化
 (4)企業イメージの向上
を有していると述べています。
 さらに、ワークライフバランス度によって、
・ファミリー・フレンドリー度
・男女均等推進度
の2つの軸によって、
<A>本物先進ワークライフバランス企業
<B>モーレツ均等企業
<C>見せかけワークライフバランス企業
<D>20世紀の遺物企業
4つの企業タイプ
の4つのタイプに企業をタイプ分けしています。
 第2章「先進企業に見るワークライフバランスへの取り組み」では、NTTデータ、花王、クレディセゾン、サイボウズ、松下電器産業、三菱UFJ信託銀行の6社を取り上げています。
 NTTデータでは、2004年に実施した「企業診断調査と社員満足度調査」の結果、創業当初のチャレンジ精神・新種の気風が薄れ、現状維持のマインドが蔓延していることに危機感を持った経営層の呼びかけによって、新たなグループビジョンとそれに伴なう3つの宣言が決定され、これらを具体化するために社員公募で「経営層へ提案する改革案の作成」作業メンバーが集められ、このWGの中から、「女性活躍推進(後にワークライフバランスWGに発展)」と「社内ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)」という2つのプロジェクトが承認されたことが紹介されています。そして、社内SNS内に女性専用のバーチャル名コミュニティを立ち上げ、「仕事の悩みからプライベートまで、多岐にわたる意見交換が行われている」ことが紹介されています。
 クレディセゾンでは、もともと販売担当としての女性社員が多く、小売業から金融業への業態変換の中で、「男性社員の多くが関連会社へと転籍していった」ため、「会社が生き残っていくためには、女性が中心となって頑張るしかなかった」ことが紹介されています。
 第3章「ワークライフバランスを導入する8ステップ」では、変革のステップとして、
(1)プロジェクトチームを作る
(2)スケジュールを組む
(3)社内ニーズを把握する
(4)導入プランを策定する
(5)経営層の理解と承認を得る
(6)計画を実行し、告知する
(7)マネジメント層の協力を得る
(8)チェック&フォローを行う
の8つのステップが示されています。
 このうち(1)では、
・専任メンバーを含むプロジェクトチームを設け、リーダーを決定する。
・各部門の現場とプロジェクトチームをつなぐ応援団的な存在となるワーキンググループを設ける。
の2つの取り組みを紹介しています。
 また(2)では、これからワークライフバランス施策に取り組む企業が、「1年半=18ヶ月」を1つの区切りとして考えることを勧めたうえで、著者が企業から依頼されるケースとして、
・導入プランへの落とし込み
・アンケート結果分析
・インタビュー代行・ファシリテーション
・社内広報
・進行チェック
・社外事例・データの収集
・意識改革研修の講師
などを挙げています。
 (5)では、ワークライフバランス施策の導入プランを「事業計画書」の形で経営層に提出する上で、
・自社にはどんな人事労務上の問題があるのか
・それをワークライフバランス施策でどのように解決するのか
・それはどんな経営メリットに結びつくのか
というシナリオを明確に示すことが非常に重要であると述べています。そして、具体的な人件費削減効果として、ある企業では1日・1人当たり平均1.2時間の残業時間削減を達成することで年間9億円の時間外手当を削減したことなどを示すことで、経営層が、「作業効率が落ちる時間帯の労働に高いコストをかけている」ことを理解しやすく、「ワークライフバランスはラクする社員を増やすための施策ではない」ことを伝えるためのシナリオを示してます。
 (7)では、「ワークライフバランスの各種施策を社内に定着させる鍵を握っている」のが、現場のマネジメント層であり、ワークライフバランスに拒絶反応を示す彼らの価値観が、「『4時間働ける』男性社員を中心に、『同じ釜の飯を食う』関係を構築し、『以心伝心』で業務を進めることで、業績が伸びる時代」を経験してきたという「過去の時代と企業の要請に基づいたもの」であると述べた上で、彼らの「これまでの功績を認めた上で、会社として変化を求めていることを明確に伝える必要がある」として、「時間当たりで生み出される成果」を評価基準とした、仕事の"見える化"が必要になると述べています。
 第4章「ワークライフバランスの各種制度とメニュー」では、制度・メニューの例として、
・休業・休暇
・働き方の見直し
・代替要員の確保
・経済的支援
・意識改革
・その他
のジャンルごとにメニュー例を紹介しています。
 休業・休暇に関しては、育休を初めとした長期休業が、「労使双方からキャリアのブランクという受け止め方をされることが多い」ことについて、「企業側はこれを社員の能力開発のチャンスにしていくべきなのだ」と述べています。
 また、働き方の見直しに関しては、長時間労働の削減のステップとして、
(1)長時間労働の実態把握:残業が恒常化している部門の把握と要因分析
(2)時間コスト意識の徹底:業務効率化の研修実施、業務フローの見直し、マネジメント層による業務整理と再分担など
(3)実際の削減策に着手:残業や休日出勤の禁止、定型作業の廃止、残業の事前申請の徹底など
の3段階を示し、「業務の見直しを伴なわない『ノー残業デー』の設置では社員の負担が増すだけだ」と述べています。
 さらに、代替要員の確保に関して、よく見られる、「社内で同じような業務を担当している、同等ランクの社員」に休業者分の業務を割り振るやり方では、割り振られた社員の負担感が増すことを指摘したうえで、「休業者の1つ下のランク(役職や経験)の社員を代替要員として抜擢する方法」である「ドミノ人事制度」が、ステップアップのためのOJTになり、「休業者が出ることが若手社員のチャンスに結びつき、職場全体のモチベーションアップにもつながる」として勧めています。
 この他、事業所内託児施設について、著者がその整備を多くの企業に薦めている理由として、「託児施設そのものが『既存の、そして未来の社員への強力なメッセージ発信』だと考えている」と述べ、「子供が産まれても保育の心配をすることなく、必ず復職できるという安心感は企業への忠誠心とやる気につながるはず」であるとしています。
 第5章「実務で役立つ基本データ30」では、
(1)人口の変化
(2)海外比較
(3)女性の社会進出
(4)家族のあり方と意識
(5)仕事のあり方と意識
(6)ワークライフバランスと企業経営
の6つのジャンルごとに、「プロジェクトチームでの意識統一や導入プランの作成、経営層へのプレゼンテーションなどにあたって参考になる基本データや統計資料」を紹介しています。
 その内容としては、
・週50時間以上働く労働者の比率は、日本が28.1%と突出して高い。
・男性の4割強は事情が許せば育児休業を取得したい、との希望を持っている。
・子育て期にある男性が、仕事優先の働き方により、家事や育児の時間が確保できていない。
などが挙げられています。
 本書は、人事部の担当者はもちろん、自分自身のワークライフバランスを確立したいと思っている社員自身にとっても、大きな示唆を得ることができる一冊です。


■ 個人的な視点から

 著者の小室さんには、春に講演をお願いしました。さすがに伝説の営業で知られているだけに、大きな会場でもすぐに聴衆をひきつける話し振りでした。
 現在、ビジネス誌でプレゼンテーションの講座を連載されていますが、次著は心を掴むプレゼン術の本になるのでしょうか。期待しています。


■ どんな人にオススメ?

・仕事と生活をトレードオフの関係で捉えてしまう人。


■ 関連しそうな本

 大沢 真知子 『ワークライフバランス社会へ―個人が主役の働き方』 2006年07月24日
 佐藤 博樹, 佐藤 厚 (編集) 『仕事の社会学―変貌する働き方』 2005年12月01日
 橘木 俊詔 『現代女性の労働・結婚・子育て―少子化時代の女性活用政策』 2006年08月18日
 パク ジョアン・スックチャ 『会社人間が会社をつぶす―ワーク・ライフ・バランスの提案』 2006年10月13日
 佐々木 常夫 『ビッグツリー 私は仕事も家族も決してあきらめない』 2006年10月31日
 山田 正人 『経産省の山田課長補佐、ただいま育休中』 2006年10月10日


■ 百夜百マンガ

専務島耕作【専務島耕作 】

 団塊の世代の夢を描き続けるこの作品。帯には、「祝 昇進!! 仕事も女性も心の底から愛してる――。彼の生き方こそ、ラブ&サクセス」の文字が。このまま、社長、会長と登りつめた後は、どんな「夢」を実現するんでしょうか? 田舎で自然農業でも始める「隠居」路線に向かうのか、スピリチュアルな方向の「教祖」に向かうのか、気になるところです。

投稿者 tozaki : 08:00 | コメント (0) | トラックバック

2007年04月06日

間違いだらけの公務員制度改革―なぜ成果主義が貫けないのか

■ 書籍情報

間違いだらけの公務員制度改革―なぜ成果主義が貫けないのか   【間違いだらけの公務員制度改革―なぜ成果主義が貫けないのか】(#806)