2005年01月31日
農林水産省政策評価WS(7)
昨日は昼からえんえんとこればっかり書いてきた。
現時点では忘備録であり、今後整理して発表していくことがよいと考えている。
国と民間との役割がこのような政策においてはうまく分担されずに議論されることが多い。
行きの新幹線ではこの役割をSWOT分析して公共性と収益性のマトリクスに落とし込みつつ、国の役割に応じた議論がなされるような作業をイメージしてのぞんだ。
しかしながら、これまでの来し方も背景も違う皆さんと、そのような煩雑な作業をすることは限界があった。
意外なことに、今回のWSでは、国が新戦略に盛り込んでいる外国人観光客へのアピールなどの効用はほとんど議論さえされなかった。WS参加者がグリーンツーリズムに望んだのは「日本人総体としての農への理解の促進」であり、最終的にはこの目標に純化されていくようであった。
政策評価にかかせないものはその政策にたずさわる組織のビジョンとミッションの記述にある。それがあってはじめて、評価の軸が明確になる。
国民からなるワークショップが「日本のグリーンツーリズムの原則」を、イギリスの田園地域委員会にならって記述をしたことは一つの強力なアピールにはなるだろう。
投稿者 kamimaki : 08:16
農林水産省政策評価WS(6)
最後に、われわれワークショップからは、いくつかの新しい指標を提案した。
まず、実績評価の指標として
a)自律可能な経済を達成した地域の割合
これまでの補助制度が交付金制度に変更される今だからこそ、交付金のオプションに目標管理制度や品質管理の考えを導入するべきだと主張した。それらオプションにみあった目標を達成した地域の割合を向上させることを提案した。
b)グリーンツーリズムビジネスに精通した人材の育成・活用の実績
当面国施策により養成された人材を積極的に地域に結びつけることをその実績とする。(これは財団法人の事業に対する評価導入への提案でもあった。実は政策的インプットの多くは、交流機構などの財団法人へ流れているのであるが、これらは国の政策評価法ではその事業の実績は問われないのである。このような踏み込んだ議論を可能にしてくれた交流機構の方に敬意を表したい。)
c)農林漁業の理解を深める教育の推進については、小中学生に対する農林漁業の理解を直接問うアンケートの実施を行い、種種の方法論の結果として農に対する理解の向上を得ることを目標値とする。
この政策分野の現在の指標の設定については、「小中学生の自然体験の完全実施とは、グリーンツーリズムの人口を増やすがための指標設定ではないか」との批判が他のWSのメンバーから出た。残念な誤解であると思われるが、教育プログラムとしての質が担保されない以上、そのような見方があるということも、よく考慮されねばなるまい。質こそがもっとも問われるべきであり、そのため直接的には教育の効果そのものをアウトカムにすることがよいだろうと思われる。
そして、事業評価に関しては、現行のハード面での費用対効果の事後評価にとどまらず、ソフト事業に対しても
a)経済波及効果
b)リピータ率
c)教育効果
を、定点的にモニタリングすべきとした。これは私見としてはベストプラクティスを見つけ広めることにつながるものだと考えている。
投稿者 kamimaki : 08:15
農林水産省政策評価WS(5)
ワークショップでは次に、それら課題に対応する国政策の、現在の指標について検討した。
現在の国の政策評価の指標は3つある。
1.グリーンツーリズム人口
2.市民農園の整備区画数
3.三大都市圏の農業産出額の全国に占める割合の維持
である。
1.グリーンツーリズム人口
国民運動の結果としての最終アウトカムとして人口の把握は必要であるが、課題としては、これが宿泊のみの推計値でありより広範な意味での精査は必要であるとした。例えば日帰りも認めるというものである。また、中間アウトカムとして、政策実施の直的影響によるものを把握することが提案された。
2.市民農園の整備促進についてはアウトプットに近いものであり、三大都市圏の農業産出額の全国に占める割合の維持は、グリーンツーリズムの主要な舞台である中山間村をなぜ含めないかについて適切な国の説明を受けることができなかった。このためワークショップでは、都市と農村の交流と言う幅広い政策目標のアウトカムとしての妥当性の評価はしなかった。
現在の指標の検討に関して、わたしたちワークショップのメンバーを困惑させたものは最後に一つ。
それは
「子供たちが農林漁業への理解を深めるための教育の推進」というグリーンツーリズムとは異なる政策分野に関わるものであった。
この指標は、
「小中学校の農林漁業体験学習の実施割合をそれぞれ100%とする」というものだ。
この検討段階にあって農水省の職員が欠席していること、またこの直接の担当課からの説明もまた事前には受けていないことから、この情報収集のための手段である「小中学校へのアンケート内容」が不明であることが議論の妨げとなった。
指標の取り方には「学校の内外で」とあり、学校内での体験も許されるのであれば特に小学校について下記の問題点があった。
まず小学校の目標として100%にならないことはおかしい。
教科書の指導に従えば学校「内で」の農作物の栽培は必修であり、達成が容易すぎる指標といわざるをえない。
つぎに、中学ではどうか。
現在のカリキュラムをみるとき、体験学習は100以上あるなかの一選択肢に過ぎないなか、文部科学省が自ら主導的に農林漁業体験学習に対する強力なコミットをしめさない限り、農林水産省が単独で立てるこの目標の達成はあまりにも困難なものといわざるを得ない。
このため、中学生の場合はより実質的な指標を考慮する必要はある。体験はもちろん重要であるとこのWSでは考えるが、一過性のイベントではあまり意味が無いのであり、小学校や中学校の総合的な学習の時間の中で、「時系列をおって成果をおさめる教育プログラム」が提供されるのでなければ理解は得られない。
その点で、現在の教師、校長、教育委員会はそれら自然体験学習のプログラム作成と提供のスキルに問題を抱えていることがあまり考慮されていないのではないか。このため例として食育や職業教育の機会の中で、理解を深めていく種種の方法の検討をしていく余地がある、とした。
政策評価の指標は実現可能なものでありかつ低すぎる目標ではなく意欲的なものでなければその政策の効果はあがらないのである。
この教育の推進にかかる目標はあまりにも両極端であるというのがわれわれの意見であった。
投稿者 kamimaki : 08:13
農林水産省政策評価WS(4)
あるべきグリーンツーリズムの姿の検討の後、わたしたちは次に「現実の問題点」について討議した。より実感のこもった意見を引き出すため、「こんなグリーンツーリズムはいらない!」と銘打って、自由な討議を行った。そこで抽出された意見は下記のようなものであった。
1.経済の持続可能性
補助金だのみのグリーンツーリズムはいらない。
補助金がなければ消失してしまうようなイベントは実に多い。
そこで、国の取り組むべきこととして、補助金だのみの地域の自立促進やビジネスとして成立させる仕組み作りの必要性があげられた。
2.環境保全のためのチェック機能がない。
環境保全は自明の理として整理されているが現実のグリーンツリーリズムと称されるもののなかには、ごみ問題などの環境破壊を引き起こしているものもあるのではないかと危惧される。そもそも人の手の入った農村にあって、環境との共生、景観保全の含意も含めながらのチェック機能をツーリズム成立の条件にするべきである。
3.プログラムの質が確保されず、一過性のイベントに終わっている。
この質的確保にあたっては民間の力の活用がのぞまれる。しかしそれらがまだ十分な量を確保していない現状にあって当分の間国の積極な支援に基く人材育成が図られることはやぶさかではない。
4.納税者の目で見て無駄が多い。
補助金で整備された施設のうち、活用が図られていないものが目立つ。補助施設の目的外使用を認めるなど地域活性化につなぐ方策や規制緩和がより推進される必要があるほか、田舎に行きたい人の支援なども同時にすすめていくべきである。
個人的には環境と景観保全の問題は日本ではもっとも軽視されていると感じていた。昨年、本府環境農林水産部の若手の職員と意見交換した際に出ていたものの中に、里山の景観を一変させる農道開発の先にあったものが、まっさらな農産物直売所であったという笑うに笑えない事例もあった。なんのための農村開発か、意義なきツーリズムがその言い訳になるのはやはり許せないのである。
投稿者 kamimaki : 08:11
農林水産省政策評価WS(3)
このワークショップの話し合いの経過を下記に記す。
1.あるべきグリーンツーリズムの姿の検討
2.現実の問題点の抽出
3.1と2のギャップに対する国施策の検討
4.国の果たすべき役割を
(1)国民全体を巻き込む運動の展開
(2)あるべき姿の実現を阻害する要因の排除
の2点にしぼりこみ
5.現在と未来の政策にふさわしい目標の検討とした。
わたしたちはあるべきグリーンツーリズムの姿を下記の原則にまとめた。これは国のみならず、国民、農業者をはじめとするあらゆる主体の「農」に関するあらゆる活動プログラムに共通の理念としてビジョン化されることがのぞまれるとした。
「WSが提案するグリーンツーリズムの原則」※
1.季節感を大切にする。
2.体験の積み重ねと交流の継続
3.食を支える農林水産業・農山漁村を知る
4.農山漁村にある暮らしの中の伝統的な技術と文化を受け継ぐ
5.食育・教育の場である
6.始源産業としての農を知る
7.環境共生のツーリズム
※ 内容的には一部重複する感のあるものがあるが、WSのメンバーのそれぞれ異なる立場からの一言一言を集約した。
投稿者 kamimaki : 08:10
農林水産省政策評価WS(2)
ところでわたしたちのWSのメンバー構成は下記のとおりである。
1.農水省グリーンツーリズム推進室企画官
2.大阪府環境農林水産部職員(私:都市公共政策にかかる大学院修士課程に在籍中)
3.兵庫県農業者
4.財団法人都市農山村交流活性化機構職員
5.元渋谷区立中学校校長
6.横浜市在住の消費者(農業体験コーディネータ歴8年)
7.生活協同組合員(元役員)
8.WS受託財団の調査役
たいへん素晴らしいメンバーに出会えたと思う。まず国の企画官。途中抜けたのは残念であったけれど、このWSに求めるものについての極端なまでの国の意見(指標について定性的なものはいっさい認めず定量的なもので確実な実績値に限る議論をすべきこと)などを明確に伝えてくれた。
他のWSはそのような情報共有がされたのか、若干不明な指標が提案されていたが、わたしたちはおかげで論点を曇らせることはなかった。
また、書記をしてくださった財団職員も大変優秀な方であり、わたしたちのWSの大前提に「わが国のめざすべき農政を表現するビジョン」が必要であること、このWSではそれにつながる提案をする点で忌憚無く賛成してくれた。
また国の政策がむしろ持続可能な農業経営をめざす事業者にとっての弊害になる点について、クリティカルな意見を出してくれた農業者の方は、農産物の提供に高い付加価値を添える新しいビジネスモデルの実現をされている点で起業家精神あふれる方であった。
そして日本の自然の中での体験そのものを日本人のアイデンティティの確立という時系列的な成果をおさめる優れたプログラムとして子供たちに提供することを実践されてきた元校長先生。「文部科学省・教育委員会はいらない!」と行政めった斬りにして痛快、その理論に心服した。
また、地域で農業体験を手作りでコーディネートしてきた主婦の方は、一過的なものでは本当に交流をつくりえないことをわたしたちに納得させてくれたし、中高年のレジャーの変容や顧客のニーズの視点で生協の元役員の方はプロダクトアウトからマーケットインの視点の大切さをあらためて認識させてくださった。
またオブザーバーとして参加した調査役の方は「あらゆる産業の源としての農への理解」という、農政のビジョンに盛り込まれるべき大極的な見方をもたれていた。また農水省の経済中心主義的なグリーンツーリズムの取り上げ方に疑問を呈されていたことを付記しておきたい。
これらの皆さんの声を総合すると、グリーンツーリズムの原則といっていいものが確かにうまれてくる。2日目の午後、わたしたちはその原則について大きな時間をとることにした。
投稿者 kamimaki : 08:07
農林水産省政策評価WS(1)
1/26-28.仕事はお休みして東京でワークショップに参加した。
これは農林水産省の委託事業で財団法人農林水産政策情報センターの主催するものである。
このお声がかかったのは、財団調査部長の谷口さんに、大学院のリサーチでグリーンツーリズム政策を扱うこと、また適切と思われる訪問先を紹介していただいたご縁からである。
希有な機会をあたえてくださった谷口さんに感謝の意を表したい。
さて、ワークショップは26日の午後から始まった。
1日目は、1.都市と農村の交流2.環境保全型農業3.食の安全・安心という3つの政策分野を対象に、国政策の説明からはじまった。
このWSの成果の一つには国の政策評価のあり方についての議論に国民参加を図るものだという理解をわたしはしている。
そうでなければ、政策評価というマニアックなものに、その専門家でない者を巻き込むことにかける時間は3日ではすまないはずだ。
国民を巻き込むことにそもそもの力点がおかれるのであれば、それらは終了したときに参加者の理解と納得を得ていなければならない。
この母体となる研究事業の名称は、「政策評価の円滑・適正な実施のためのシステム構築に関する調査研究」というものだ。
特にこの研究においての最大の課題は指標とそれに関するデータの収集の問題であり、このWSでは、政策評価の現在の指標の検討のほか、必要な指標をどのように設定するかという議論が、民間人の視点で展開されるべきであろう。
ところで参加者は政策評価の専門家ではなく、民間の事業者や消費者である。だから現在の政府における政策の概要と指標についての設定について1日目は十分な理解を得ることが必要であった。
しかし残念なことに、わたしの参加するWSの資料は十分とはいえなかった。国民であればだれもがインターネットでとれる情報の中でも、一部しか提供されず、その不備を指摘するとインターネットでみてくれという。しかも二日目午後は国の役人が欠席し補充的な説明を欠くというありさまである。
都市と農村の交流という広い意義をもつ政策分野において「グリーンツーリズム」についての資料しか出ていない。そこで議論をどこまで展開するかについては「グリーンツーリズムにしぼって」ということであった。
このためこれらが今後2日目、3日目に議論が展開されていくなかでどんどん足かせになっていった。少しだけいえば、商業主義的・一過的なツーリズムと、WSメンバーが重視した教育的・継続的でしかも持続可能なツーリズムは対極をなすものであり、国の果たすべき役割の中で経済性の追及を検証する指標について、外部不経済を生み出す他の要素とのバランス論が必要になっていったからである。
このWSが、わが国ではじめて政策評価の指標設定に国民参加を促しながら実施されたものであることに、十分な注意が払われていないのはまことに遺憾であった。
しかしそのような怒りを感じてもしかたのないことだ。
わたしはWSの司会進行の役割をいただき、まずは「あるべき都市と農村の交流とは」ということについて、KJ法で意見抽出をこころみた。そこで1日目は終了した。
1日目終了後、参加者の中で特に主婦層からは大きな嘆息がもれていた。こんな内容とは知らなかったというものである。
すなわち最初からこれらWS招集の意図さえ十分に共有されていないことにわたしは打撃を受けたがこれもまたいまさら言ってもしかたのないことである。
少なくとも自治体で政策に携わる人間として最善を払おう、このことをこころに決めた。
投稿者 kamimaki : 08:03
2005年01月24日
清渓川再生事業(1)
一昨年、大学院の課題研究でお隣の国、韓国に行った。ソウル市では、ちょうど市内を走る高架道路を撤去して以前そこにあり、今は鉄板で蓋をされ暗渠になっていた清渓川という小川を再生するという事業にとりかかっているところだった。
大阪にも多くの河川が都市部に流れている。これらの河川はかつての主要な都市交通であった舟運の名残である。市内のほとんどの川は戦後の焼け跡処理のため埋め立てられたが現在も道頓堀川、東横堀川などが残る。
清渓川の場合、環境再生のため行う公共工事であるというが、その環境がそれ以後長く保全されなければ、川はすぐどぶ川に、それこそ大阪の道頓堀川のような様相を呈するだろう。それには絶え間ない努力が必要だ。
事前の調査で高架道路の存続にあたっては、老朽化のため撤去もしくは建替えせざるを得ないことがわかった。いずれにせよ撤去しなくてはならないものらしい。その廃棄物はどうなるのか?また、都市交通はどうなるのだろう?人々の利便は?また、周辺の露天商の立ち退き問題の決着は?などなどの疑問点が浮かんできた。また先にこの清渓川再生事業を調査した日本の学識経験者はこれらを「サステナブルシティを目指す取り組み」と賞賛していた。そのように断言できる根拠は何なのか。すくなくともその時点でのわたしの認識・疑問点はその程度だった。大学院の課題研究として取り組むには十分すぎる内容になるだろう。にわか大学院生であるお気楽にもあらゆる段取りを教授にまかせきり、自分はろくに下調べもせずに、ソウルに向かう飛行機に飛び乗ったのだった。
投稿者 kamimaki : 13:02