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2007年06月15日
蛍の思い出
いただいたメールにホタルのことが書いてあり、郷愁に誘われた。
母の実家は兵庫県多紀郡丹南町。今は篠山市に合併したけれど。
最後に訪ねたのは祖母のお葬式以来でずいぶんになる。
三方が山に囲まれた住山の集落ではこの季節になるとホタルが舞う。
田舎に行くのは決まって夏休みと冬休みだが、その夏は蛍狩りに出かけた。
空は満天の星だがちょうど月はなかったように思う。
そんな田舎の夜はたいそう暗い。
虫取り網でとるのかと思えば竹箒を渡され、さあ、ホタルを取りにいくで、という。
遠くに行くわけではない。祖母の庭先の石段を降り町道に降りると、もう、目の前の田んぼのそこかしこからホタルが舞い立ち舞い降りる。
光ったり消えたりするのはホタルやけど、ずっと光っているのは蛇の目玉や
と誰か大人がいう。もうそれを聞くだけであぜに寄るのも恐ろしいけれど、ホタルの群舞に向けて竹箒を一振りすると、その中にホタルがたくさん入ってくるのだ。
夢中でそれを手でつかみ出し、虫かごに移す。
星をつかまえたようにわくわくしたのを昨日のことのように思い出した。
静かな田舎の夜のたんぼに、都会から来たわたしたち姉弟の声があがると、さっきまで高らかに恋の歌を歌っていた蛙がちょっと声をひそめ、喉を鳴らす。
何も見えない闇夜でもそうしていると目が闇に慣れてくる。するとやっぱり蛇と目があうかも知れないと怖くなる。ホタルの入った虫かごを抱えて、竹箒は投げ出して明るい家に逃げ込んだ。
電気を消した玄関の三和土のすみに虫かごをおいて、点ったり、消えたりする青いような、緑のような、黄色いような光を見ていた。そのうちに、これまたこわい五右衛門風呂に入ったり、玄関から入った蛾や虫を寝間から追い出したりして寝入ったあとも、ホタルは光を放ち続けていたのだろう。
朝になって、この首の赤い黒い虫がホタルなのだとまじまじと見た。
光は嘘のように弱弱しくなっていて、大阪に帰りついても元気に生きているのはわずかだった。
ああ、捕まえないでおけばよかったなあ、とちょっと後悔したものだ。
ホタルの幼虫はカワニナを食べて成長するのだそうで、丹波のホタルは祖母の家から100mほどの小川から農業用水路にかけて生息しているようだった。この小川では本当によく遊んだ。ミズカマキリやイモリ、小魚をすくいに行って、ここでも蛇に追いかけられて(相手は追いかけているつもりはないはずだが)転びながら泣き帰ったあぜのそこここにカワニナはいた。
ところで田舎の自然の小川は公共事業で一変してしまった。
ホタルも減ったンえ、といつだったか祖母が話していたような気がする。
そのことがほろ苦い。
投稿者 kamimaki : 2007年06月15日 00:05