2008年07月28日
日本リスクマネジャネットワーク設立総会
3月に阪大の環境リスク管理のための人材養成プログラムを修了したあと、これまでの修了者の皆さんとリスクマネジャのネットワークを作っていこうという話になり、これまで4回の準備会を経て、7月27日、ようやく発足にこぎつけた。
会則や倫理憲章などの策定作業にあたり、いろいろな意見を反映しながら今日の日を迎えたのだが、よくあるシャンシャン総会にはせず、最後まで意見を聞くかたちになった。司会ということもあり、代表世話人の方に、多数決などを用いるかどうかを確認したが、今後も例会を重ねて修正していくので今後の課題としてまとめましょう、とのこと。実際にそういう会をやってみて、不思議に最後落ち着いたのは、この会に参加するメンバーの見識の高さだなあ、とつくづく。
リスクマネジメント、と一口に言っても、最近の偽装問題や、さまざまな不祥事への後付的な事後対策をいうものではない。しかし今のところ多くの経営組織がそれを取り入れようとするのは、端的に言って転ばぬ先の杖という発想が主流ではないか、と思う。リスクが不確実なものである以上、その対策は、利益を生み出さないコスト、いわば必要悪なので、いやいやながら対策を余儀なくされているのがほとんどなのではないか。
なのでできるだけリスク対策のために費用をかけない、人もかけない、顕在化が確実になりそうなものに応急的に対応し、事なきをえれば喉元過ぎたる熱さのごとく忘れてしまう。先進的な企業では、社会全体のリスクへの対応を事業領域としてとらえるところもあるというが、まだほんの一握りの企業にすぎない。
社会人リスクマネジャの多くは組織人なので、自社内のリスク管理のあり方に一言呈したい思いがあっても、業務分担や立場の違いに支障されることが多い、険しい道にある。ネットワークで活動をすることが組織内の自分のキャリアパスに直接つながるわけではない人もいるだろう。わたしもたぶんその一人だ。にもかかわらず、思いのほか高い組織率でネットワークが発足できたのはなかなか稀有なことだと思う。目先の益だけ考えていたらできないことだ。
ゆるやかな連携でスタートした会だが、企業のリスクマネジメント研修に講師を派遣するなど実際に動き出している面もある。サイエンスカフェなど、誰もが気軽に立ち止まってリスクを考える機会となる事業も行う予定。ご期待ください。
投稿者 kamimaki : 01:37
2008年06月27日
行政組織とリスクマネジメント
土地に関わる仕事をしていると、時折ヒヤリ・ハットといえる事象に遭遇するときがある。
本庁にいて報告や相談を受けるだけでもいくらかあるのだから、現場で生身の交渉をされている方々には、見えない氷山のようなリスクは数多くあるだろう。それらに果敢に挑む現場の皆さんにはいつも頭が下がる思いがある。その一方で、本庁でのうのうとしていていいのだろうか。もっと現場の出来事に耳を傾けなくてならないと思いながら、戦々恐々とするところもままある。
この春に日本リスク研究学会認定の阪大講座を修了しリスクマネジャの登録をさせていただいた。この講座で学んだことは多い。行政組織にいる限り、市民生活を脅かす様々なリスク事象に直面する機会は多々ある。講座を受講するきっかけになったのは、前職の廃棄物管理での経験も大きいが、思いのほか公共事業にかかる環境リスクも見逃しがたいものがある。災害や犯罪、感染症パンデミック、場合によってはテロといったクライシスに直面することも、公共空間を管理し、人身の安全に責任を持つ行政機関の宿命だ。
しかし実際には、何万分の一、何千分の一の確率で発生するそのような事件事故、災害のリスク対応よりも、普段の行政実務に潜むそれぞれの行政パーソンが抱えるリスク事象の発現可能性のほうが一般には高いのではなかろうか。
今国内の企業ではJ-SOX法への対応のため、リスク事象を洗い出し、内部統制を高めるための文書化、システム化に余念がない。わたしも可能な限り担当業務において土地に関わる関係法規を逸脱することがないよう、マニュアルを整備し共有することをすすめてきたつもりだが、どうしても収用担当という切り口以上に踏み込むことの難しさも感じているところがある。
リスクマネジメントは、ある業務執行部門が単一に、さらにいえばボトムからやり遂げるには、大いに限界がある。例えば法令順守ひとつをとっても、土地に関わる法規は民法も含め無数にあるといってよく、わたしは土地収用法の専門であるといってそれ一つにおさまるわけにはいかない。リスクマネジメントは上位組織の経営管理のマネジメント、管理者クラスの業務管理のマネジメント、担当者レベルの業務執行のマネジメントにおいて、立て板に水のごと、管理とフィードバックがなされてこそ意義があるものだ、と痛感する。
残念ながら、大阪府庁に20年勤務していて、これまで「ヒヤリ・ハット」を積極的に上部組織が収集し、リスクの発現を未然に防ぐための経営計画をたてたという経験がない。
経理や人事管理面では、多数の不祥事をこれまで経験してきた府庁だが、残念ながら過去の痛い経験はどこへやら、のど元過ぎれば熱さ忘れるといった具合で、まだまだ過去の経験から学んでいるとは言いがたい状態だ。
日々の細やかな業務執行のPDCAサイクルの中からリスクを認知し、管理をする経験は、予見しえないクライシスへの対応時に大きな威力を発揮する。小さなリスク事象と思われるものも、それがみのがされたがゆえに重大な事件事故につながっていくこともしばしばある。
社会情勢は日々刻々変化しており、これまでどおりは通用しないのがすでに常識だ。
しかし現実の組織には、これまでどおり、という、厚い壁が目の前に聳え立っているのを、感じている。
せめて失敗経験やヒヤリ・ハットを、責められることなく共有できる基盤がなくては、これまでどおりは打破できない。このような考えは甘いのだろうか。個人責任が強く問われはじめた組織の中で、組織のミッションを再確認しながら、リスクの海を渡るのは、なみたいていのことではない。
投稿者 kamimaki : 00:36